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『エスプリ ディオール ディオールの世界(ESPRIT DIOR)』展と『ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰』展











フランスモードを代表するラグジュアリーブランド「DIOR(ディオール)」の歴史やクリエーションを一望にできる展覧会『エスプリ ディオール ディオールの世界(ESPRIT DIOR)』東京・銀座で2015年1月4日まで開催されています。入場無料というのが申し訳なく思えてしまうほどの充実した展示内容で、ファッションや装飾に興味のある人には見逃せないイベントと言えます。

銀座の中央通りに面した、銀座アップルストア隣の特設会場は、ビルの地下1階から地上3階までを贅沢に使っています。「ディオールと日本」「ディオールと芸術家たち」など、「ディオール」のエスプリを物語る12のテーマに沿って、実物のアーカイブ作品、関連の写真・資料などが見やすく配置されています。映像作品やインタラクティブ展示もあり、圧倒されるほどの質と量ですので、たっぷり1時間は用意して訪れることをお勧めします。

“ニュールック”と名づけられた、ムッシュ・クリスチャン・ディオールの伝説的作品はなかなかお目にかかれない貴重なアーカイブ。今見てもそのデザインの先進性や成熟度が感じられます。同時に、現在のデザイナーを務めるラフ・シモンズ氏が彼の流儀でどのように再解釈しているかを示す近年の作品も展示されていて、時を超えたブランドの継承と再創造の取り組みも理解できるようになっています。

実物の展示以外に、言葉やエピソードという切り口からも「ディオール」のクリエーションやブランドヒストリーに迫っています。日本との関係では皇后・美智子さまの婚礼にまつわる秘話も紹介されています。「ディオール」を愛した著名人に関連する展示も多く、故ダイアナ妃が着たドレスも展示されていました。指で画面上の星に触れると、ゆかりの深い女優の写真を見ることができるタッチパネル展示はいつまでも触っていたくなる面白さです。

動画もブランドの美学を映し出しています。オスカー女優のシャーリーズ・セロンが出演した香水「J'Adore」のショートムービー風CMはゴージャスな映像美にうっとりさせられます。往年の大女優マレーネ・ディートリッヒやグレース・ケリー、マリリン・モンローが“共演”して話題を集めたバージョンも上映されています。









服、バッグ、香水などにわたる多面的な「ディオール」の全体像を伝える試みです。静的な展示に加え、地下1階の「ディオールとアトリエ」セクションでは、パリのクチュール縫製担当者や香水瓶の専門家が実際にプロの技やノウハウを披露してくれます。私が訪れたときも香水の秘密に、大勢の来場者が耳を傾けていました。

全体を通じて印象深く映ったのは、創始者ムッシュ・ディオールから現在のシモンズ氏に至る長い歴史の一貫性です。ムッシュの築き上げた価値観を見詰め直しつつ、その時代にふさわしい才能を迎え入れ、美に磨きを掛けていく取り組みは気の遠くなるような熱意と努力に支えられてきたことが、この展覧会でよく分かります。単なる「ブランド」ではなく、「メゾン」と称される別格的な老舗の奥深さにあらためて感銘を受けました。


エスプリ ディオール ディオールの世界(ESPRIT DIOR)
http://www.dior.com/couture/en_int/the-house-of-dior/exhibitions/esprit-dior






若き日の画家ピカソやダリとも、ムッシュは交遊があったと紹介されています。同じくムッシュと縁があったアーティストの1人に、シュルレアリスムの先駆者、Giorgio de Chirico(ジョルジョ・デ・キリコ)(1888〜1978年)がいます。憂鬱な哲学を宿し、不安と懐かしさに誘う作品を残した彼の70年の画業を回顧した『ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰』展東京・汐留のパナソニック汐留ミュージアムで12月26日まで開催されています。ディオールつながりの縁もあって、こちらにも足を運びました。

キリコは謎めいた画風で知られています。建築物の影が異常なほど長く伸びた広場の風景、古代ギリシャを思わせる彫刻などの絵が有名です。彼が提唱した「形而上(けいじじょう)絵画」には、従来の美術技法の常識に逆らう不思議な特質がいくつもあります。「影がやたらと長い」「アーチの多い広場が舞台」「遠近法が正しくない」「マネキンが登場する」「時間がずれている」などがその例です。こういった「ありのまま」ではない、幻想的な空間を暗示めいた描き方でキャンバスに落とし込む技法によって、見る者は感覚を揺さぶられ、虚無や違和感を覚えます。一種の後味の悪さもキリコの持ち味です。静かなメランコリーを秘めているのも、キリコ絵画の特徴と言えるでしょう。

後のシュルレアリストたちにも大きな影響を与えたキリコの創作を、今回の展覧会は約100点で振り返りました。キリコが好んで画題に選んだ回廊や彫像などを描いた作品も展示されています。

キリコの絵『愛の歌』は別のシュルレアリストも誕生させています。この絵の複製を見たルネ・マグリット(1898〜1967年)は、涙を流すほどの感銘を受け、シュルレアリストの道に進むことを決意したとされます。マグリットは山高帽をかぶり、コートに身を包んだ黒ずくめの紳士や、青空に浮かぶ雲のモチーフでおなじみです。後にシュルレアリスムの代表的な画家となったマグリットの大規模な回顧展『マグリット展』2015年3月25日〜6月29日、東京・六本木の国立新美術館で予定されています。シュルレアリスム好きにはたまらない展覧会が続くことになります。


ジョルジョ・デ・キリコ 変遷と回帰
http://panasonic.co.jp/es/museum/exhibition/14/141025/




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★個人ブログ「fashion bible」、ほぼ毎日更新中♪
 2014/11/12 01:18  この記事のURL  / 


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宮田理江(みやたりえ)
ファッションジャーナリスト

複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスを経験後、ファッションジャーナリストへ。新聞や雑誌、テレビ、ウェブなど、数々のメディアでコメント提供や記事執筆を手がける。

コレクションのリポート、トレンドの解説、スタイリングの提案、セレブリティ・有名人・ストリートの着こなし分析のほか、企業・商品ブランディング、広告、イベント出演、セミナーなどを幅広くこなす。著書にファッション指南本『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(共に学研)がある。

公式サイト:http://riemiyata.com/
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