« 2016年12月 | Main | 2017年02月 »
すべてそろっている
 先日、ある製造工場社長が、取引先の売り場を視察に行った。
この工場は単なる下請けだけではない。OEM生産も請け負うし、自社ブランドも製造販売している。

そうした形態だからこそ定期的に店頭をリサーチする。

その結果、「今後何を作ったら良いのかますますわからなくなった。店にはありとあらゆるテイストの商品がそろっている。これ以上、新しい物はちょっと思いつかない」という感想を抱いたそうだ。

これはたしかにそうで、現在の店頭には洋服も雑貨もありとあらゆる商品がそろっている。しかもそこそこの安値でだ。

新たに売り上げを作るためには、今更〇〇テイストを後追いしても仕方がない。
その場合は価格競争を仕掛けるしかないが、資本の小さい会社はそれは不可能である。
市場にないテイストの商品を考えることはかなり難しい。

そういう意味では新興企業やこれから世に出ていく人は不幸だといえる。
ちょっとやそっとでは目新しい商品なんて考え付かないからだ。

高度経済成長期やバブル期はそこまでの苦労はなかった。
いくらでも新しいテイストの商品が手つかずで残っていた。

とはいえ、今さら社会システムすべてをリセットすることは不可能だから、環境に適応するしかないのだが。
 2017/01/31 10:10  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

良い時代
 先日、某デザイン会社の社長が「このシャツ、国産品でこのデザインで9800円なんですよ。消費者にとっては良い時代になりましたね」とおっしゃっていた。

このファッション好きの社長からすると、15年位前までは同じ品質、デザインのシャツを買おうと思うと2万円くらいしたから、その半額程度で買えるようになった現在は「良い時代」だというわけである。

同年輩の筆者もそう思う。

何度も書いているが、94年当時に、黒無地のファッションスーツはDCブランド系の店しか販売していなかったのである。
定価が8万円で、バーゲンで4万〜5万円に下がる商品しか市場に存在していなかった。

必然的にそれを買うほかなかった。

ところが今はどうだろうか。使用している生地だとかステッチだとか芯地だとか細かいことを言い出すときりがないが、そういうものを度外視して見た目だけのことを言うなら、黒無地のファッションスーツはツープライススーツショップで2万円弱で買える。

他のカジュアルアイテムもしかりだ。

最上品にこだわらなければ1990円で紺無地の綿100%トレーナーがユニクロで販売されている。
品質はそこそこに悪くないし、見た目はもっと悪くない。

ユニクロやら無印良品やらツープライスショップやらのみですべての人が満足できるとは思わないが、それで十分使えると考える人が増えるのは当然である。

いわゆる「ブランド」でジャケットは買うが、黒無地タートルネックセーターはユニクロの1990円で十分と考える人も少なくない。

そこを理解せずに「本物ガー」とか「感性ガー」などと業界人が叫んでみてもまったく何の効果もない。
業界人はその浮世離れした感覚を是正すべきではないか。

 2017/01/30 10:14  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

破壊
 ユニクロが今春物でリペア加工ジーンズを3990円で発売しており、今日から2月2日まで期間限定で価格が2990円に下がる。

穴をあけただけのクラッシュ加工と穴をあけてからもう一度当て布などでふさぐリペア加工は似ているが別物であり、加工賃はリペア加工の方が格段に高くなる。

国内の洗い加工場でリペア加工を施した場合、加工賃だけで5000円内外はくだらない。

ちなみにクラッシュ加工は好きではない。穿くときに必ず足を穴に引っかけてさらに破れを大きくしてしまうからだ。
不便なことこの上ない。

穴をふさいだリペア加工ならその心配がないから2990円の期間にユニクロで1本買ってみようと思っている。

それはさておき。

国内工場での加工賃が5000円内外することから、長らくリペア加工ジーンズは高額商品として君臨してきた。
最低でも1万5000円の価格で販売しないと不採算になるからだ。

しかし、ユニクロがそれを3990円で発売した。
今後、リペア加工というだけで高価格を設定するのは不可能になったということだ。

ブランドストーリーだったり付加価値だったりがキチンと提案されていない高額リペア加工ジーンズはユニクロと比較されてしまうということになる。

今後、こういうアイテムはまだまだ登場するだろう。
業界どっぷりの夜郎自大人たちが、「価値」だと思ってきたものは、今後、ユニクロにことごとく破壊されつくすだろう。

夜郎自大人たちの目はこれでもまだ覚めないだろうか。覚めないだろうな(笑)。
目が覚めないなら眠ったままで永眠することになるだけだが。

 2017/01/27 09:47  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

欲しい物がない
 洋服、バッグ、靴、などのファッション用品で猛烈に欲しくてたまらない商品ってあるだろうか?
この5年くらいは筆者にはない。

これが老化によるものかどうかはわからないが、一般消費者もこんな心境なのではないかと想像してしまう。

もっと若いころは欲しい商品があった。
買えた物もあるし買えなかった物もある。

例えばナイキのエアマックス95だ。
品薄だったことに加えて価格が高くて買えなかった。

今では復刻されて買おうと思えば変える。
ただし価格は高いままだが。

しかし、わざわざ今買おうとは思わない。
もちろんケチんぼなので、価格がネックとなって購買意欲がないことは否定しない。
もしスニーカーのステップで3990円くらいに下がっていたら買うかもしれない。

でも95年当時の「欲しさ」とはなんだか違うような気がする。

別に特定の商品にこだわらなくても、そこそこの安値でそこそこの見た目の商品が市場には溢れている。

じゃあ、そういう商品で良いのではないかと消費者が考えてしまうのは当然といえる。

よほどの付加価値やストーリー性、オンリーワンな存在でない商品は、完全に市場に埋没してしまう。
 2017/01/26 10:30  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

同情の余地なし
 最高級品質の商品がどこまで求められているのか、業界に長く染まれば染まるほど、そのあたりの感覚は一般から乖離してしまうように見える。

スポーツウェアで培ったスペックでそこそこに高額なダウンジャケットを一般ファッション用に販売して注目されているブランドがある。
これはこれで新販路の開拓という点では大いに褒められるべきだと思っているのだが、社内には反対派もいると耳にする。

もう、ほぼ老害ともいえるほどのベテラン勢だといわれているのだが、その主張には驚くほかない。
いわく「冬山登山できるほどのハイスペックでないとわが社のダウンジャケットとは言えない」とか「プロのスキーヤーが着用できるほどの商品でなくては販売するのが恥ずかしい」だとか、そういうことらしい。

ちょっとあきれ返るしかないのだが、3000メートル級の冬山登山ができるほどの高スペックなダウンジャケットをほしがる人間が国内にどれだけ存在するのか。

もちろんゼロではないが、せいぜい数千人くらいではないか。
その数千人に向かって1000枚販売したところで、企業の屋台骨は支えられるのか?

そういう高スペック商品を否定しているわけではないし、それを作る技術は伝承されねばならないと考えているが、そういうものだけで企業が食えるのか。

このブランドに限らず、物作り系・伝統工芸系にはこういう人が多い。
そしてそういう偏狭さが物作り系・伝統工芸系の経営をさらに圧迫して縮小させている。

それに気が付かない間は、物作り系・伝統工芸系はさらに縮小するだろうし、それは当たり前のことであり、何ら同情の余地はない。
 2017/01/25 10:16  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

| 次へ
プロフィール
南 充浩(みなみ みつひろ)
ファッションメディアプランナー。
「繊維ニュース」記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを担当。
同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

掲載実績
繊維流通研究会ウエブ記事、WWD

リンク集
最新コメント

異常なファックス信仰 (2017年11月16日)
Pearl
いい服を作っても売れません (2017年08月12日)

その親心は間違っている (2017年08月07日)
ボーダーさん
ユニクロか百貨店か (2017年08月02日)

こんな噂が (2017年07月31日)
洋服屋
いい服を作っても売れません (2017年07月30日)
RUBY
地元のヤンキー集団か? (2017年05月26日)

丈の長さは変わっていない (2017年05月25日)
TT
閑古鳥が鳴く (2017年05月22日)
最新トラックバック
服の歴史は繰り返す (2012年11月11日)
中流の崩壊 (2010年11月17日)
カイハラ  (2010年09月29日)
おそろしいのです (2010年08月22日)
若者のジーンズ離れ (2010年06月16日)
クロックス更新 (2010年05月30日)
更新順ブログ一覧
最新記事
月別アーカイブ

http://apalog.com/minami/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパログ携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード

当ブログ内の全ての文章・画像・映像の無断転載・転用を禁止します。