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デザイナーは量産品に対応する人
 ツイッターでシナジープランニングの坂口昌章さんが「量産品を作るのがデザイナーですよ」ということをおっしゃっておられた。

「大阪レザーアート」という屋号で活動されている革鞄職人の大塚俊治さんと、数年前から交流させていただいているが、彼も「一点物ばかりを作る人は作家、アーティストであり、職人やデザイナーは量産できないとダメ」とおっしゃっておられる。

もちろんブランドの販売戦略として、一点物だけをてがけるブランドがあっても良いし、それに従事するデザイナーがいても良い。

しかし、多くのファッション志望者・業界関係者が陥るのが個性的な一点物に近い「作品」を作るのがデザイナーという幻想である。おそらくパリのオートクチュールをその脳裏に描いているからだろうと推測する。
しかし、現在は、一部のオーダーメイド以外の物はすべて量産品であり、量産品向けにも企画できる力がないと一人前のデザイナーとは言えない。


日本の行政(国も都道府県も)のファッション産業振興はいまだに「デザイナー」育成にこだわり過ぎており、その描いているデザイナー像がどうも「一点物作家」であるように思える。最近はやや軌道修正された部分があるが、大阪商工会議所は「スタイリスト育成」を言い始めた。元来、テレビや映画、雑誌、舞台のために存在するのがスタイリストなのだが、現在の大阪にはテレビも映画も雑誌も舞台もほとんどないからスタイリスト需要がないのだが、何を思ってのスタイリスト育成なのか意図がまったく理解できない。
それとも大阪で育成して東京に派遣するつもりなのだろうか?
ちなみに東京には大阪など足元にも及ばないくらいスタイリスト事務所がある。それぞれにアシスタントを抱えており、大阪で育成する必要などまったくない。
それなら、東京のスタイリスト事務所に就職を決めた地元の若者に大阪から支度金でも持たせてやるのが一番の支援である。

そしてスタイリストもクライアントの意向に沿って組み立てるのが仕事であり、作家・アーティストではない。
その辺りを分かって打ち出しているのだろうか?
 2011/05/31 09:58  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

高校生レストラン
 最近はテレビドラマをあまり見なくなったが、4月から始まったドラマは「JIN」と{BOSS」をほぼ毎週見ている。

それから何となく断続的にだが、土曜日夜9時からの「高校生レストラン」を見ている。これは積極的に見ているというよりも、時間があるときに何となく流し見しているという感じだ。

この高校生レストランは三重県にある実在のレストランで、軌道に乗ってきたということで、ニュース番組でも見たことがある。
村興しを目的として役場主導で「高校生が運営するレストラン」という企画が出来上がり、それを現場の高校に落とし込んだという話である。
上手く行ったからドラマ化されたが、同じような安易な企画はおそらくいくつも各地で失敗例があるのだろう。報道されないだけで。

ドラマは、指導員と生徒が努力して工夫して成果を挙げるという、黄金パターンで展開されており、それなりのカタルシスがある。週刊少年ジャンプ最盛期のころのパターンと同じだ。「努力・友情・勝利」の方程式だ。

現場の意見を無視して、毎回トンチンカンな企画を持ち込む役場の人間がいる。
この人物を金田明夫さんが熱演されており、演技力も相まって、一方ならぬウザさを感じさせてくれる。

ただ、このドラマを見ていると、
同じような構図が繊維業界や繊維産地でも「あるある」と感じる。
行政(国、県、市町村)が助成金や補助金を支出するために、なんだかピントのボケた企画を立ち上げる。産地の現場のおっちゃん達はそのままに動いて、出来上がった商品やブランド、展示会がまったく効果のない物になる。そんなことが今まで数多くあった。


ドラマの中では、伊藤英明さん演じる役場の若手職員が、同級生である一流料亭の元板前をスカウトし、若手職員の熱意と元板前の創意工夫で難関を乗り越える。
現実世界の繊維業界では、この若手職員はいないし、元板前をスカウトすることも稀である。
繊維業界に限らず、ほかの案件でも同じだろう。


熱意のある職員と、良心的な専門家をそろえなくては成功しない。
 2011/05/30 09:43  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

吉野家は弱者、すき家が強者
 明日から3日間、ユニクロ誕生祭が始まる。
平たく言えば「誕生祭」という名の安売りセールが始まるのである。

さて、これに刺激を受けて、またぞろ各ブランドが投げ売りセールを始めるのだろうか?

ユニクロの急成長時期には、各ブランドが「ユニクロがやっているから」という理由で、
投げ売りセールを始めたり、定価設定の見直しを始めた。
この10年間、アパレル業界のプライスリーダーは間違いなくユニクロだった。

さて、急成長時期は別として、数年前からユニクロは国内アパレル業界では、最大手である。この最大手が値下げしたからと言って、それ以下の規模の企業が追随して勝てるのだろうか?答えはNOである。
経営者やマーケティングの方々に良く知られた理論に「ランチェスターの法則」というものがある。
強者の戦略は追随主義、弱者の戦略は特定分野の一点突破が原則である。

この原則に照らしあわせると、ユニクロは強者、それ以外の企業は弱者である。
強者が値下げしたからと言って、弱者がそれに追随すれば必ず負ける。
反対も然りである。
弱者が値下げして、強者が追随すれば弱者は負けるのである。
これの事例は、吉野家とすき家を見ればわかる。

毎回、牛丼値下げ競争では、
吉野家が業界の先頭を切って、値下げを発表する。
そしてその後にすき家がさらなる値下げを発表して、吉野家をつぶす。
企業規模から言って、吉野家は完全に弱者、すき家は強者である。
もしかしたら、吉野家の経営陣は自らをいまだに「強者」だと思っているのだろうか。


自分のような業界の底辺にいる人間でも知っている「ランチェスターの法則」。当然、吉野家の経営陣、ユニクロ追随に敗れた経営者は良く御存じだと思うのだが、なぜ活用されないのか不思議で仕方がない。

 2011/05/27 09:39  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

安い商品が溢れかえる巷
 4月、5月と百貨店や各ブランドは好調なニュースが続いているが、現実問題として消費は不振なままなのだなあと、店頭を巡ると感じる。

あまり、頻繁に行くわけではないが、東京の表参道の大通り沿いにも空き物件となったテナントがいくつもある。これが大阪ならもっとひどい。アメリカ村にも南船場にも北堀江・南堀江にも空き物件がゴロゴロしている。南堀江の立花通りにさえ、1階で空いている物件がある。いずれもショップが撤退した後、借主が見つからなかった物件である。

つい先日、知り合いと再会した。
彼は南船場4丁目に半年ほど前から自分の資金で小さなショップを出店したのだが、
この半年で、近所から8件のショップが撤退していったという。


店頭を覗くと格安商品のオンパレードである。
在庫がダブついているのだろう。
例えば、アメリカ村のビッグステップ1階にはパルグループのアウトレット店がある。
ユニクロには、韓国人グループ「ビッグバン」とタイアップしたTシャツが山積みとなり、500円に値下げされている。このTシャツ発売時には1200人が並んだのにである。

そのほか、クリスタ長堀の各ショップではすでに「スプリングセール」が開催されているし、期間限定ではあったが、5月には心斎橋OPAで「スプリングサマーセール」なる奇妙なセールがあり、思わず「春なのか、夏なのかハッキリせい」と突っ込んでしまった。

そろそろ有名無実化している「夏冬セール」という商習慣をやめて、ユニクロやポイント、GAPのように、一定期間過ぎて売れ残った在庫はどんどん値下げしていくという方式の売り方の方がすっきりするのではないか?

セール開始時期はドンドン早まるし、スプリングサマーセールとかアーリーサマーセールとか良く分からない呼び方のセールを、セールとセールの間に挟んでいるので、実質年中セールしていることになる。夏のセールが終わったらオータムセールで、オータムウィンターセールを挟んで、クリスマスセール、そして年明け早々のセールである。

今のままではプロパーで買う人は、よほどの金持ちかアホかのどちらかでしかない。
一部の強力ブランドを除いて、中途半端なスタンスしかない大多数のブランドは、GAP方式の値下げスタイルを導入するほうがずっとわかりやすい。




 2011/05/26 09:04  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

スーパークールビズと胡服騎射
 スーパークールビズが発表されたが、
知る限りでは、はるやまの「SAVE BIZ」以外には、アパレル業界からの提案はない。

そのスーパークールビズについて先日新聞に
文化学園大学の北方晴子准教授のコメントが掲載されていた。

その中で
「伝統や文化の積み重ねであるスタイルを簡単に崩して良いものか」という一節があり、
これには大いに反論したい。
だいたい服飾系の学校関係者や研究家などは、これまでのクールビズ導入時にも同じ理由で反対しており、お話にならない。
「伝統や文化の積み重ねたスタイル」というが、伝統や文化を積み重ねてスーツスタイルを築いてきたのは欧米諸国であり、日本は何一つ積み重ねていない。
欧米にない規格として「略礼服」が生み出されたくらいだろうか。その「略礼服」もまったくスタイルとしては美しくなく、ダサさの代名詞である。
ついでに言えば、結婚式の白いネクタイもおかしな話しで、本来ならばシルバーのネクタイとなるはずだ。


中華の歴史で「胡服騎射」に服装を改編した時期がある。
まあ、かなり昔の話で春秋戦国時代のことであり、正確には戦国後期のことである。
それまで中華の軍隊は歩兵とウマが引っ張る戦車に載って戦うというスタイルで、馬に乗るのは異民族だけであった。
しかし、機動力で異民族の騎馬部隊に、中華の戦車部隊は圧倒され続けてきた。

そこで趙の武霊王は、それまでの服装を止め、
騎馬部隊を作った。
中華の服装は伝統的に着物のようなスタイルで、跨って馬に乗ることはできなかった。
これを騎馬に適したズボン風の胡服を着用することに改めた。

しかし、「服装文化の伝統」を重んじる人々からは大反対となったが、
結局、武霊王が強引に導入し、騎馬部隊を育成した。
それ以降、中華世界でも騎馬部隊は主力として活躍するようになる。

実態が伴わない服装ならいくら伝統があろうとも改変すべきである。

かなり強引な例えかもしれないが、
スーパークールビズに対して「文化の積み重ね」を言う人々は
武霊王に反対した人々と相通じるような気がする。





 2011/05/25 09:42  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

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プロフィール
南 充浩(みなみ みつひろ)
ファッションメディアプランナー。
「繊維ニュース」記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを担当。
同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

掲載実績
繊維流通研究会ウエブ記事、WWD

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