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当世日伊工場気質
 先日、日本在住15年になるイタリア人をレザー職人に紹介した。このイタリア人女性は建築家でありプロダクトデザイナーである。レザー製品を製作する場合、専門外であるためレザー職人の協力が必要になる。

彼女は、工場や下請け職人のもとに足を運び、彼らと直接ディスカッションすることを望んだ。彼女いわく「イタリアでは常に職人、工場スタッフとデザイナーが意見交換しながら物作りが進む。工場側からの提案も活発に行われる」という。

しかし、日本ではそういう状況は難しい。なぜなら多くの工場は「言われたとおりに作りますよ。でも企画内容はデザイナーさんにお任せします。我々は作ることしかできません」という態度だからだ。これはレザー業界だけでなく、繊維業界の工場でも同じではないだろうか。
もちろん、繊維の工場、生地産地には独自に積極的に企画提案を行う企業や職人もいる。しかし、どちらかといえばそういう工場、職人は少数派で、いまだに賃加工業体質に安住している工場も多い。

「景気が良くなれば昔みたいな何千メートルというロットで発注が来るんでしょうか?」と尋ねる産地生地工場もいまだにいる。うん、まあ、あと100年くらい待てばそういう状況が来るかもしれないが、工場のオヤジの目が黒いうちにはそういう状況は確実に出現しない。

彼女は「なぜリスクを取らないのですか?」と尋ねていたが、今の日本を覆う閉塞感の原因の一つはここにあるのではないだろうか。

で、これは何も製造業だけのことではなく、小売店側にも言えることのようだ。

某雑貨販売業の大手TやLとお付き合いの深い方がいる。T急HンズやLフトと言えばだいたいどんな店かおわかりだろうか?
その方が言うには「リーマンショックまでは、両社とも新しいブランド導入や新規売り場作りに積極的だったが、今ではすっかり及び腰。部長連中がリスクを冒したがらない」という。
T急もLフトもその気持ちはわかる。消費が冷え込んでいる時期に海の物とも山の物ともしれないブランドを導入したくないだろう。
できれば、実績のはっきりしている安全パイの商品をそろえたい。自分が部長の立場でも保身を優先すればそういう結論になる。

しかし、安全パイのブランドはT急HンズやLフトに行かずともそこらへんの雑貨店に溢れている。そして同質化が進むというわけだ。

製造業も小売店もリスクを回避する。そして同じような商品に作り手側も売り場側も集中する。同じような物なら安い方で買うに決まっている。ペプシNEXを買いたいときに120円と100円の自販機が並んでいたら、ほとんどの人間は100円の自販機で買う。
わざわざ120円の自販機で買う人間は少数派だ。「俺がデフレを食い止める」という使命感溢れる変人か、となりの100円自販機が目に入らなかったかのどちらかだろう。


こうのようにリスクを回避しあっている間は、日本の繊維産業もファッション産業も良くなることはないだろう。あとは値段だけの勝負になるから。
 2010/07/30 08:00  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

「グローバル化」は便利な魔法の言葉
 最近「グローバル化」という言葉が安易に使われていて違和感を感じる。これまで日本は製造業は海外進出をしていたが、小売業・飲食業・サービス業なども海外進出し始めているから、まさに「グローバル化」が現在のトレンド用語なのだと思う。
トレンド用語がやたら飛び交うのはどの時代にも共通した現象である。少し前は「IT化」だったし、ファッション業界で言えば「ファストファッション」「SPA」などもトレンド用語だった。


この「グローバル化」なる言葉が相手を論破する言葉として良い意味にも悪い意味にも安易に使われすぎているような気がしてならない。トレンド用語に共通する悪弊なのだが。
たとえば「わが社の○○ブランドはグローバルな展開を目指います」と言えば、具体的な中身があまり煮詰まっていなくても、好材料と判断され株価は上昇する。
逆に、社の方針を巡って議論が重なったときでも「そんなことを言っているからグローバル化に取り残されるんだ」と一喝すれば、相手が渋々黙ってしまう。

そんな風なひどく「便利な言葉」として、トランプで言えばジョーカーのように使われすぎているように思える。

先日、ブログに一通の意見を頂いた。
某ジーンズショップの店員の接客について疑問を投げかけた5月13日の記事に対する物なのだが、「そんな細かいことを言っているからグローバル化の波に取り残される」と締めくくられていたが、まったく噴飯物である。
このジーンズショップはグローバル化どころか、全国展開すら満足にできていない。これこそまさに「何でもグローバル化」といえる。

接客に対して細かいことを言うなという内容だが、ある部分までは賛成である。しかし、この意見を書かれた方は「残念な人の発想法」という本を読まれただろうか?
この本は、マクド(関西人なのであえてマクド)の店員が飲み物のカップにストローを差すサービスについて延々と述べている。
差さずに渡す店と差して渡す店の2種類があり、その差す手際も良い店と悪い店がある。


このグローバル論者の論法で行けば、そんな細かいことを「延々と何ページにも渡って書いているからグローバル化できないんだ」ということになる。しかし残念ながらマクドはすでにグローバルな企業であり、先のジーンズチェーンショップなどとは比べ物にならない。
マクドは進出した先の国々である程度カスタムメイドされているから、グローバル展開ができている。

安易に何でもかんでも「グローバル化」で片付ける前に、少し立ち止まって考えてみた方が良いのではないだろうか。
ちなみにわけもわからず何でも「グローバル化」という人間をさして「グロバカ」と言うらしい。自戒も込めて、お互い「グロバカ」化しないように気をつけたいものだと思う。
 2010/07/29 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

注目集めるセーレン川田達男社長
 繊維、アパレル業界の経営者といえば、ユニクロの柳井正さんがクローズアップされる。その次は誰かな?と考えたところ、ポイントの福田会長はあまり個別インタビューをお受けにならない。注目度急上昇なのはクロスカンパニーの石川社長。先週のIFFでもオープンセミナーの講師をされたが、会場は満席だった。


7月20日に日経ビジネスオンラインに、セーレンの川田達男社長の記事が掲載された。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/manage/20100716/215470/

7月5日にはテレビ東京系の番組「カンブリア宮殿」でも特集されたというから、今月は川田社長の露出がにわかに高まっている。

セーレンは繊維業界紙ではおなじみの北陸のプリント染色工場で、ビスコテックスというデジタルプリント技術が名高い。
また自社オリジナルSPAブランド「マッシュマニア」も全国で展開している。
少し前には、倒産したカネボウの繊維事業部を自社グループに引き取ったこともある。

今回の日経ビジネスオンラインでは、セーレンの主力製品であるところの工業用資材の開発と販路開拓についてまとめられている。
川田社長は入社直後から下請け賃加工業に甘んじていた企業体質を批判したという。創業者一族の世襲企業での自社批判だから当然左遷される。

記事によると川田社長がすごいのは、左遷先でも自社製品開発に執念を燃やし、新規事業立ち上げや販路開拓を少しずつ進めていったところにある。

記事を書かれた三品和広さんは、

セーレンと川田氏のケースからくみ取るべき教訓は大きく2つある。1つは、主力事業が寿命を迎えてから慌てて次の種を探すのでは遅いということだ。
川田氏は社長に就任する10年以上も前に、小規模ながらも次の主力事業を立ち上げていた。これが、セーレンの転地がうまくいった最大の要因だろう。

もう1つは、その新規事業の芽を育んだのは、会社の制度や組織ではなく、川田氏という1人の人間の信念であった点である。転地を成し遂げるのは、制度や組織ではない。人間なのである。
川田氏のように入社直後に会社に反旗を翻すような信念を持った人。不遇が続いてもくじけずに信念を貫き続ける反骨心のある人物。こうした人材は、入社後の教育によって育成できるものではない。もともと、そうした気質や素養を持った人を発掘して採用する必要がある。


と企業が生き残るためのポイントを2つにまとめておられる。

この両方ができている企業はあまりお見かけしたことがない。とくに繊維・アパレル業界では。
さらに言えば、自社批判できるような人間を社内で育成するほど度量のあるアパレル企業はほとんど見かけない。ともすればアパレル企業のトップはイエスマン、お友達経営陣をことのほか好む傾向が強い。
この川田社長の事跡は業界において稀有な例だと思う。

アパレルはどこまで行っても、家内制手工業の家族経営体質から離れられないのだろうか。そうした体質と決別しないと若い優秀な人材はアパレル業界に進もうとは思わない。ファッション専門学校への進学希望者が伸び悩むのは、こうしたアパレル業界の体質に寄るところも大きいのではないだろうか。
 2010/07/28 08:09  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

「若者の○○離れ」2連発(笑)
 「若者の○○離れ」というまとめ方はもっとも記事が書きやすく、記者ないし編集者、媒体が話がもっとも楽をしていると思う。これに頼るとだいたいの消費行動が説明できたつもりになるから危険だ。

先日、インターネットのJ−CASTニュースに短期間に「若者の○○離れ」記事が連続して掲載された。

http://www.j-cast.com/

7月26日の 若い女性の「パンスト離れ」 レギンス、トレンカが台頭

7月25日の 若者に「海離れ」が起きてる 「日焼けが嫌」「海水や砂が汚い」
である。

まあ、なんと安易なまとめ方か。

もう10年近く前にグンゼを担当してきたことがあるので、パンストの需要は毎年減少している。代わりに生足だったり、柄タイツが重要を伸ばしている。最近ではトレンカ、レギンスが伸びているという。
よくわからないのだが、女性がパンストを履かなくなることに何の問題があるのだろうか?百歩譲ってスカート着用時にはパンストが望ましいとして、パンツスタイルの場合、冬の防寒以外にパンストを履く意味があるのだろうか?
需要がなくなった商品は消滅する。これは市場原理である。パンストの記事になるとJ-CASTニュースに限らず業界紙でも「嘆き節」になるがまったく意味がわからない。
それほど、報道機関の編集長クラスの年配層にはパンストに対する思い入れがあるのだろうか。

それから噴飯物が7月25日の若者の海離れ記事である。
自分も塩水と炎天下が苦手なので海があまり好きではない。たぶん、海水浴に行かない年の方が多い。泳ぐならプールにしたい。
で、内容的には同じようなことで、海に行かない若者が増えているという。
自分はもはや若者ではないのだが、若者=海好きというのは、何十年前までの価値観なのだろうか?反対に若者が全員海好きであるという状態の方が正常ではないと思う。

青春=海という図式ってバブル期で終わってるんじゃないかと思う。
昔のくさいドラマでは、若者は事件が起きるたびに海岸へ行ってたような気がする。海岸を走ってみたり、沖に向かって「バカヤロー」と叫んでみたり。
実際にあんな行動を取る奴はほとんどいないわけで、若者=海という図式も、年配者だけが後生大事に抱えているイメージなのではないだろうか。

で、この記事の結末に失笑してしまったのだが、

もっとも、神奈川県藤沢市の観光協会によると、片瀬海岸への海水浴場客数は、09年夏は423万人。1990年夏の324万人から増えている。他の地域でも「減ってはいませんね、むしろ微増傾向にあります」(神奈川県平塚市)といったところがあり、若者に「海離れ」が起きているとしても、影響はまだ限定的なようだ。

と結んでいるのだが、海水浴客は増えているという。
ならば、この記事は何を問題視しているのかまったくわからない。
将来的に海水浴が衰退するという危険性を指摘しているとも感じられない。
実際には将来的に海水浴客は減少していくと思うけど。


この2本の記事、すごく安易に楽チンにまとめたように思うのは自分だけだろうか。
 2010/07/27 08:15  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

勝てば官軍、負ければガラパゴス
 最近ネットでなるほどと唸らされる言葉を発見した。「勝てば官軍、負ければガラパゴス」。出典は忘れたが、もちろん自分の造語ではない。なかなか昨今の状況を一言でうまく言い表していると思う。

日本独自の風習や文化、それに根ざした手法を「ガラパゴス」と自虐的に言う人が増えたように思う。アパレル業界だけではなく、携帯電話も家電製品も全業種で言われている。
実際に、アパレルの製造業や繊維製造業は以前からアジア地区での生産を開始していたが、こと小売業に関して言えば、一部を除いては海外進出はしていなかった。
いち早く10年ほど前から、中国に進出したオンワードやワールド、イトキンだが決してうまくいっているとは言えない。
世界で通用している、もしくは通用しそうなブランドは「無印良品」と「ユニクロ」くらいという印象が強い。


で、日本人の多くはマゾヒスティックに「ガラパゴスだからさあ」と言うのだが、
自国に独自の風習のない国などない。
欧米は世界標準というが、欧米企業だって他国に進出して失敗することも多い。

たとえば、たびたび採り上げた「アバクロ銀座店」はどうだろうか。
アバクロの失敗点は、プレス取材お断りという姿勢ではなく、日本人の嗜好に合わない店作りと、本国をはるかに超えた価格設定にある。
販売員ではなく、モデル契約をしているという噂のある、白人店員が踊り狂っていて、店内がダクトから放出されるきつい香水の匂いに包まれている。こんな店作りでは売れ行き不調も当然だろうと思う。
アバクロ側からすれば、アメリカで成功したスタイルをそのまま持ち込んだだけなのだが、到底日本人消費者の嗜好をリサーチしたとは言えない。

先日、日本から撤退したフランスのGMSカルフールはどうだろうか?
日本だけではなく韓国からも撤退している。カルフールが進出したばかりのときに、大雑把に積み上げられた陳列方法に疑問が呈された。
いくらまとめ買いが安いからと言って、練りがらしを12個もまとめて買う日本人はいない。なぜ2個パック、3個パック程度にまとめて販売しなかったのか。
彼らもフランス本国のやり方をそのまま日本や韓国に持ち込んだ果ての失敗だ。


結局、現地の消費者の嗜好にある程度合わせないと米国企業であれ、仏国企業であれ撤退せざるを得ないということになる。
日本アパレルが中国市場で苦戦しているのは、現地化が不十分であるからだと言える。自国のやり方にこだわる「ガラパゴス」は日本企業だけのことではなく、米国だろうが仏国だろうがみんなその国独自のやり方があり「ガラパゴス」なのである。

さらに言うなら、最近、中国人観光客が増えており、日本もこれの誘致に必死である。世界経済に大きな役割を持ち始めた中国人消費者だが、他国に行ってまで自国の習慣が押し通せると考えているのなら大間違いである。彼らもまた「ガラパゴス」と言われる局面を迎えるに違いない。

結局、あの手この手で勝ち抜いた「ガラパゴス」が世界基準となるわけであり、日本国と日本企業は自国の風習が世界基準となるように努力すべきで、他国基準を「グローバルスタンダード」とありがたがっている場合ではない。「勝てば官軍」なのである。
 2010/07/26 08:16  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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プロフィール
南 充浩(みなみ みつひろ)
ファッションメディアプランナー。
「繊維ニュース」記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを担当。
同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

掲載実績
繊維流通研究会ウエブ記事、WWD

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