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「世代論で語る消費分析のワナ」を読んで
 先日、日経ビジネスオンラインに宇南山卓さんの「世代論で語る消費分析のワナ」という記事が掲載された。
不況の原因の一つとして、年配者から若い世代が叩かれる論調を見かけることが増えたが、これらの「若い物が消費をしないから」という主張には少しウンザリしていたところだ。宇南山さんの記事は、消費論を「若者の○○離れ」という陳腐な類型化することなく極めてニュートラルで論理的な視点で書かれた秀作である。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/money/20100617/215019/

長文なので全文をご紹介することは難しいが、たとえば「若者の車離れ」について

昔は若者が日産のスカイラインを買っても、分不相応だと怒る大人はいなくて、「それくらいの年になれば誰でも車は欲しいよね」と言われたでしょう。それが今、自動車なんていらないと言うと、「最近の若者は消費に興味がない、困ったものだ」と論評される。しかし一方で「私、(車は買わないけど)シャネルのバッグ買いました」と言うと、若者のくせに分不相応だと批判する。

車や海外旅行などの“おじさんにも分かりやすいモノ”を買わないからといって、若者はみな消費意欲が落ちているという言い方で結論付けるのは、少々安易ではないでしょうか。


という。
そしてスカイラインは総額250万円、シャネルのバッグは20万円そこそこ。どちらがぜいたく品であるかは、断然スカイラインであろう。
結局、高度経済成長、バブル期に青春を過ごした人々が、今の若者に対して「俺らの価値観と違う。俺らのようになれ」とナンセンスな雄叫びをあげているようにしか聞こえない。

宇南山さんは「消費不況ではなく、画一的な価値観が崩壊し、消費が多様化した」と分析しておられる。
そして記事は後半以降ファッションの消費動向について触れるのだが、今まで気が付かなかった側面からの分析を提供しておられる。


それから、もう一つ、ファッション関係の消費パターンの変化には大きな盲点があります。先ほども述べましたが、「被服及び履物」が消費全体に占めるシェアは大きく低下しています。1970年代には約10%でしたが、今は約5%まで落ちています。その落ち込みの大きな部分は、実は和服なんです。


1970年頃だと、「被服及び履物」のうち約10%が和服でした。今は2.5%程度で、振り袖など高価なものをたまに買っているか、喪服程度と考えられます。衣料品のカテゴリーに和服が入っているというのは忘れがちですよね。そのため、携帯電話のせいで服を買わなくなったという短絡的なストーリーが作られてしまうのだと思います。こういった思い込みをなくすためにも、客観的なデータ観察が重要なのです。


とのことである。

被服及び履物のジャンルに和服が含まれているとは思いもよらなかった。通常の洋服であれば、品種にもよるが2万〜3万円も出せばそこそこの中級品とみなされ、5万円以上なら高額品の領域に分類される。ところが今でこそ、古着や浴衣などでそのレベルの価格の着物が流通しているが、一般に着物といえば少なくとも10万円以上する。
こんなに単価の高い着物が多く含まれていれば、被服及び履物の単価が上がり、それらが売れなくなれば洋服のデフレ以上に単価を下げてしまう。

印象論だけで「デフレだ」「若者が消費しないのはけしからん」などと叫んでも何の解決にもならない。むしろ年配層の傲慢としか映らない。
「今の若者は〜」というセリフは2500年前のギリシア時代からあると言われているが、そもそもその「今の若者」を作ったのは年配層である。自分たちの責任を若者だけに転嫁するような論調はいただけない。
 2010/06/30 08:35  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

国内生産に脚光とは言うものの?
 最近、トヨタやホンダの工場で賃上げストが行われたり、元の切り上げに言及されたりとかで、にわかに生産地としての中国の立場が揺らいでいる。
賃金の安さに惹かれて中国生産に切り替えたアパレルも多いが、ここにきて中国一辺倒の生産体制が見直されつつある。

それに比例してかどうかわからないが、国内生産が再び脚光を浴びているように感じる。先日、日経MJ紙上で「国内生産に再び脚光」というような内容の記事が掲載された。

たびたびこのブログに登場していただいているデザイナー、平井達也さんによると、取引のある台湾、香港のショップは「日本製」にこだわるという。台湾、香港の消費者は、いくらデザイン、シルエット、色柄が良くても「中国製品」に高額な金額を支払いたがらないとのことであり、高くても良いから「日本製」を求めるらしい。

生産拠点として揺らぐ中国、現地の消費者から求められる「日本製」。このような要素を加味すれば「再び国内生産に脚光」という記事が掲載されてもおかしくない。

しかし、中国で生産がやりにくくなっている要素がもう一つある。
日本アパレルがオーダーするロットが小さすぎるのである。
そこそこ名の知れた中堅アパレルですら、1型100枚に満たない場合がある。
平気で「すみません。この型80枚でいいですか?」と訊いてくる。

これに対し、アメリカのアパレルは1型数万枚の受注が入る。日本同様にロットが小さいと言われているヨーロッパブランドですら、1型1000枚程度はまとまる。1型100枚程度の日本のロットでは中国の工場からすればサンプル生産と同じような物である。

ロットが細かい上に縫製仕様については群を抜いて厳しいのが日本のアパレルだ。これで生産が嫌がられない方が不思議である。
中国側が日本の小ロット・高品質を嫌がり生産スペースが確保しにくいという側面もある。

再び国内生産にスポットライトが当たり始めているのは、プラスの要素ばかりではない。これを履き違えてはしゃぎすぎるのは危険な兆候だろう。
現段階で国内生産への要望が高まったとしても、来年以降それが続く保証がない。

その理由は7月から中国人研修生がこれまでのような低賃金で使えなくなるからである。
現在、国内縫製工場の大半以上が低賃金の中国人研修生によって成り立っている。
「メイドインジャパン=メイドバイ中国人」なのである。
来月から中国人研修生を今までのように使えなくなると、はたして国内縫製工場は稼働するのだろうか?
ある業界関係者が「中国人研修生がつかえなくなれば、現在の半数近くの縫製工場が廃業を考えなくてはならない」と指摘している。

「物作り大国日本」というキャッチフレーズは、ことアパレルに関して言えばもはや当てはまらなくなりつつある。
 2010/06/29 01:11  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

リーバイスジャパンが業績を下方修正
 6月25日、リーバイストラウスジャパンが2010年11月期業績の下方修正を発表した。
売上高183億円を139億8700万円に、
営業損益を1億円の黒字から20億600万円の赤字に、
経常損益を2億円の黒字から19億3000万円の赤字に、
当期純損益を8500万円の黒字から32億1000万円の赤字に、
それぞれ引き下げた。

下方修正の原因として1万円以上の高額商品の伸び悩み、ファストファッションや他社ブランドの台頭による売り上げ減を挙げている。
またこれに伴い直営店、FC店の新規開店の遅れも予想されるという。

さて、リーバイストラウスジャパン社のこの業績をどう見るかは立場によってそれぞれ意見が異なると思う。
個人的に言えば、ほぼジーンズ単品の卸売ブランドが100億円規模の売り上げを維持できていることについては「さすがにリーバイス」だと感嘆する。しかし、単品卸売ブランドは100億円内外が限界だろうと思う。
それを踏まえての直営店・FC店の新規拡大なのだろうが、今の商品ラインナップではなかなかに厳しい。ジーンズ、チノ・ワークパンツ、Gジャン類、シャツ、Tシャツがほとんどである。一つの売り場を構築するためにはもっと品種を増やさないと店頭が維持できない。
どこまで総合アパレル化できるかであろう。

また、ジーンズという商品の価格設定の問題もある。以前にも指摘したが2005年のインポートプレミアムジーンズブームに乗っかり、百貨店に進出しすぎたことがリーバイスも含めたジーンズNB各社の首を絞めたのではないだろうか。
2万円以上という高額プレミアムジーンズに対抗するために、それまで9800〜13000円だったNB各社は値段を1万5000円前後まで上昇させた。
あるNBの担当者からは「これでも百貨店からは、まだ安い」と言われるとの声を聞いた。

そのままプレミアムジーンズブームが続いていればそれで良かったのかもしれないが、ブームは2007年夏で終わってしまう。プレミアムジーンズブランドはほとんど店頭から消え、NBの高さばかりが目に付くようになる。
冷静に考えてみれば、いくらファッション用途とはいえ、ジーンズに2万数千円以上の代金を支払うことに納得できる消費者は少数派だ。
やはり大多数の消費者は8000〜1万2000円くらいが妥当な値段だと考えるだろう。

結果論だが、斜陽産業である百貨店にそこまで重点を移すことは得策ではなかった。
もう一度その値段帯を真剣に再構築すべきではないだろうか。

一方、これまで持ちつ持たれつの関係を続けてきたジーンズチェーン店のSPA化もNB各社には厳しい状況だ。
最大手のライトオン、2番手のマックハウスはSPA化に大きく舵を切っている。まだ取り組み始めたばかりなので成功・不成功はわからないが、NB各社からの仕入れを大きく減らしていることは間違いない。

創業当時、品ぞろえ専門店だったGAPが成長とともに完全SPAに移行したことと、まるっきり同じことが30年遅れで行われている。
この流れを止めることは不可能なので、NBはいかに付き合うか、いかに新しい事業を考えるかが課題である。
リーバイスの直営店・FC店強化戦略もある意味当然といえる。


さらにリーバイストラウスジャパン社固有の問題は、社長が短期間に交代しすぎる点である。
外資系なので仕方がないし、短期間の交代にもメリットはある。特定の癒着が生まれにくい、トップを変えることで社内のムードが変わる(良くも悪くも)などである。
しかし、ここ数年のリーバイスの状況は、事業の再構築に取り組んでいる途中であるため、頻繁なトップ交代はその路線がブレることとなる。

やはり5年くらいは一人の社長で事業を継続しないといけないのではないか。
そうは言っても在任10年を越えると今度はさまざまな癒着や執着が生まれる。5年から10年程度が適正なトップの在任期間ではないだろうか。
 2010/06/28 08:13  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

今日からバーゲン開始
 昨日、街角で「SAVVY」の別冊「バーゲンブック2001」が配布されていた。
この夏の関西圏のバーゲン開始日の一覧表である。

パラパラと眺めると今日25日から開始と、明日26日からの開始の商業施設が約半数くらいある感触で、その他のほとんどが7月1日開始。それ以降の開始は本当に数えるほどしかない。
ちなみに今日25日開始は「ブリーゼブリーゼ」「ビッグステップ」「ココエ」「クレフィ三宮」「ミント神戸」「エスト」「ギャレ大阪」「オーパ」「マルイ」「淀屋橋オドナ」「ミーナ京都」などであり、
明日26日開始は「アンド」「フープ」「イーマ」「ヌー茶屋町」「ディアモール大阪」などなど。

7月1日開始は各百貨店、「天王寺ミオ」「なんばシティ」「なんばパークス」などであり「HEPファイブ」だけが7月9日とやや遅めである。

毎年この時期と年始には「バーゲン開始日が年々早まっている」と危機感もあらわな記事が業界紙に掲載されるのだが、一向にとどまる気配もなく、むしろ開始日は早まっている。消費者にとって考えると、まだ梅雨が明けていない(というか梅雨入りして間もない)時期に夏物が半額になることは非常にありがたい。
しかし、メーカー側、流通側として考えるとプロパーで売れる時期がほとんどないといえる。
夏物が最初に動くのはゴールデンウイーク前後であるが、これを過ぎると、6月はセール待ちの買い控えとなる。そして6月25日から夏セールはお盆までダラダラと牛のヨダレのように続く。

4月に低気温が続いた今年は、夏物がプロパーでほとんど売れていないのではないだろうか。

業界紙もそのインタビューに答えるメーカー首脳、流通首脳もみんなが「セールの早期化は問題」との認識で一致しているが、解決される気配もない。
やはり、各自が問題だと考えていても売り上げ確保のためにはセールを早期化せざるを得ないのだろう。

いっそのこと、アパレルも百貨店もSPAも定価設定を見直して、西友のように「エブリデーロープライス」の「KY(カカクヤス)」業態に転換してみてはどうか。セールによる不公平感もなくなると思うのだが。

 2010/06/25 08:16  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

切り捨てられる若者の雇用
 あるファッション専門学校関係者が「新卒求人が少なくて困っている」という。昨年の就職も厳しかったがファッション・繊維業界は今年も厳しそうだ。
とくに「キャリア10年前後の経験者なら欲しい」という声も多いそうだ。

なるほど、業界全体に苦戦しており、名の通った有名企業もドンドン倒産しているからやはり「新卒を育てる余裕などない」ということなのだろう。
しかし、目先の資金繰りはそれでも良いかもしれないが、長期的に見れば新卒者が業界に入れないということは、業界全体の平均年齢が上昇していくばかりである。そうなると、ファッション業界には進みたくないという学生も増えてきて、さらに若者に不人気業界となる。

このまま行けば、極端な話、ファッション業界は「オッサンとおじいちゃんの業界」という未来予想図が描けるようになるのかもしれない。
それはそれで面白いけど。


就職のトピックスとしてつい先日、パナソニックが来年の新卒採用で、1390人中1100人を海外採用、国内290人枠も完全に日本人枠ではなく、国籍を問わず国内にいる留学生も積極的に採用すると発表した。
最終的に国内290人の中に日本人が何人含まれているのか、来年の3月に注目したい。

パナソニックの件は、外国人を採用して日本人の若者を採用しないという例だが、どうやらアパレル業界に限らず、各業界で日本の若者の雇用は減り続けているようだ。
日本の不況が一向に改善しない状況であるためやむを得ないとは思うが、このままではさらに日本国の景気は上向かず税収も増えない。

さらに言えば各業界とも年配層が自分の身を守るために若者を切り捨てているともいえる。
しかし、それは後日必ず国全体にデメリットとしてハネ返ってくることは間違いない。

個人的には、これまでの経済運営に失敗した年配者層が、自分らの失敗のツケを若者に払わせているように見えて仕方がない。
 2010/06/24 07:37  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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プロフィール
南 充浩(みなみ みつひろ)
ファッションメディアプランナー。
「繊維ニュース」記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを担当。
同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

掲載実績
繊維流通研究会ウエブ記事、WWD

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