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ユニクロは夏場が死角?
 先日、ダイヤモンドオンラインで面白い記事を見つけたのでご紹介したい。
高田直芳さんが「絶好調ユニクロとビール業界に共通する意外な死角」をまとめておられる。

http://diamond.jp/articles/-/8255

公認会計士として独自の企業分析指標「タカダデフレーター」によってユニクロを分析したところ、「秋冬に強く、夏場に弱い」という側面が見えてくるという。以下に引用する。

タカダデフレーターの意義を簡単に説明すると、ブーム(特需)による上ブレと、販売不振による下ブレを、縦軸にある「パニック度」で表わす指標である。

ユニクロの場合、黒い線で描いた「対前年同月増減率」の波形が50%を超えない凪(なぎ)状態を続けているのに対し、青い線で描いたタカダデフレーターは、毎年11月期(9月〜11月)に大きなパニックを引き起こしていることがわかる。秋(9月〜11月)にブーム(特需)を巻き起こし、冬から春にかけては巡航速度に戻り、夏(6月〜8月)には失速する商売を、ユニクロは繰り返しているようだ。


とのことである。さらに

ユニクロについては、以下の特徴を指摘できる。

 1つめは、〔図表 3〕が春夏秋冬の周期性を描いていることである。ユニクロは「一過性のブーム」以外にも「季節的な変動」を受けやすい企業であるといえる。前回コラム(京セラ&日本電産編)で扱った電子部品メーカーでは、こうした周期性は認められない。

 2つめは、〔図表 2〕で示した「一過性のブーム」と、〔図表 3〕で示した「季節的な変動」とが、ほぼ連動することである。後ほど紹介するアサヒビールとキリンビールでは、両者は連動しない。

 ユニクロの場合、「一過性のブーム」を「季節的な変動」と勘違いした場合、過剰在庫を抱えるリスクがあることを、同社の死角として指摘しておこう。おそらく、杞憂だとは思うが。

 3つめは、季節的な変動の底が八月に現われ、その四半期実際操業度率が50%〜60%と半分に落ち込む点である。夏場にどのようなヒット商品を生み出すかが、相変わらずの課題といえるだろう。


とのことである。

個人的な印象で語ることを許していただけるなら、
ユニクロは、秋冬に限りフリースとヒートテックというヒットアイテムを2つ持っている。消費者には一巡したが、毎年、買い替え需要や買い足し需要がある程度見込まれる。
一方、夏(6月〜8月)にかけては、毎年「ドライ」を打ち出しているものの、フリースやヒートテックほど爆発的な売れ行きはない。
とくに「ドライ」はユニクロの先行開発商品でもなんでもなく、以前から各カジュアルアパレル、スポーツアパレルが展開していた。

自分は、ユニクロが「ドライ」と言い出すか言い出さないかのころに、メンズビギやジュンで「ドライ」Tシャツを何枚か買っている過去がある。こと「ドライ」に関していえば、ユニクロでなくともそれなりの価格で商品は見つけられる。
もうひとつ、身の回りで聞きまわると、50代半ば以上の男性で「夏場にポリエステルを着ることへの嫌悪感」を示す方がけっこういらっしゃる。

暑さ、寒さの感じ方は個人差があり、ヒートテックを着ても「世間で言われるほど暖かくない」と感じる人間がいる。その一方で「夏にポリエステルは暑い」と感じる人間もいる。
とくに50代半ば以上の方々は、昔の、吸水性の悪い繊維というイメージがこびりついており、容易にそれを払しょくすることは難しい側面があるようだ。

このように考えるとユニクロは夏場に関しては決して安泰ではない。


今回、高田直芳さんの記事を採りあげたのは、決算報告書やプロモーションの手腕で絶賛されているユニクロだが、分析手法によってはまだまだ死角があるということを提示したかったからである。
ユニクロにケチをつけるために死角を提示したのではなく、多面的に分析するための材料の一つとして紹介をさせていただいた。

物事を一方的に断じて、そちら一辺倒になるのは、つまらないし健全な思考方法とは言い難いから。
 2010/05/31 08:51  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

続・開発素材を安売りした機屋
 あまり多くはないのだが、ありがたいことにブログに対してご意見をいただくことがある。賛同も反論もあるが、すべて目を通させていただいている。
昨日の開発生地を安売りしてしまった機屋に対するブログに関してご意見をいただいたので、ご紹介したい。

機屋さんも難しいですよね。ラインを開けるわけにはいかないじゃないですか。
生きるためにはそんな仕事も受けないと生きていけないのではないですかね。
機屋さんに自ら「安物生地屋」というイメージを消費者にも、業界内にも撒き散
らしたことになる。
なんておっしゃってるけど
お金を工面して会社を経営しているのは彼らなのだから
彼らの経営を批判しても何もならないのではと私は思いました


とのことである。
この方のご意見はごもっともであり、経営的立場から同様の判断をされる方も多いと思う。

実はブログを書いている自分もこの方と同様の意見も持ち合わせている。
この方のご意見を否定するわけではないが、それでも機屋が国内で生き残るためには、開発素材を安売りするべきではないと考えている。

昨日の開発素材を安売りした機屋の問題点を改めてまとめたい。

デザイナーと開発した素材は色柄だけの問題ではなく、生地の織り方自体にも踏み込んだものである。これを量販店業者の要望通りに「店頭価格2000円」に合わせて卸してしまえば、今後この生地は安物向けとして認知される。
量販店に対応したいのであれば、開発素材ではない素材を供給すべきだった。

今回のオーダーを受けたことにより、ラインは埋まったかもしれないが、開発素材というブランドは潰れてしまった。

ラインを埋めたいという気持ちはわかるが、国内で生き残りたいのなら、経営者は我慢をすべきであり、それでもどうしてもラインを埋めたいのなら、共同開発したデザイナーさんと横並びの価格で販売できる先を自らが営業開拓すべきである。

多くの方々がご指摘されているように、国内で生き残りたい機屋は、バブル期以前のような「受注待ち」の姿勢では立ち行かない。そんな時代は二度と戻ってこない。
ニット素材メーカー、エイガールズの山下雅生社長も「産地は物作りという作業に特化しすぎた。自らの営業力、企画提案力がなさすぎる」と指摘されている。

機屋の経営者自らが新規営業先を開拓するのは、しんどい作業だし、未経験の物事をやり始めることへの抵抗感もあるだろう。自分も何度も経験しているので十分にわかるつもりだ。
しかし、それでも敢えてそれをやらないと国内の機屋は生き残れない。

もし、大ロットで数を追う商売がしたいのであるなら、腹を決めて、資金調達して中国やベトナム、カンボジア、バングラディシュあたりに自家工場を建設して、世界規模での素材供給を目指すべきである。

国内に残るのなら、新規販路を血まみれで探しまわるか、数を追う商売がしたいのなら、資金を工面してアジア地区へ進出する。そのどちらかしかない。
そしてどちらの道にも大きなリスクがある。

「ラインを埋めるためには仕方がない」。そういう態度と周囲の理解が国内の機屋の育つ芽をつぶしてきたのではないかと思う。
だから自分は敢えてこの機屋の経営者を批判させていただく。

 2010/05/28 08:50  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

価値を自ら下げる機屋
 国内繊維産地にも新しいスタイルを模索し、構築しつつある企業が各地にチラホラと現れはじめている。しかし、そうした努力を一挙に無駄にする行為を一つご紹介したい。

あるデザイナーさんが某産地の機屋と密接なミーティングを繰り返して、低密度織物を完成させ、それをストールにした。
ストールの価格設定は難しいと思う。名も知れないようなブランドで1万を越えるような価格では売れにくいことが予想されるが、1000円前後の価格では利益どころか原価にもならない。
そのデザイナーさんは、いろいろ考えた末に4000〜6000円という価格に設定した。

この価格が適切かどうか、この価格で売れるのかどうか、それは市場に出してみないと最終的な答えはわからない。
もちろん、産地とのコラボ商品であることもしっかりと謳ってある。
産地名を打ち出すことは、農作物と同様、消費者に向かって「理由あって安くないですよ」という説得材料の一つとなる。

しかし、その機屋に別の量販店向け商品の供給業者も商談に訪れた。
機屋はその業者にも商品を供給したという。当然、量販店の店頭にもストール類が並ぶ。
店頭価格は2000円前。

もちろんデザイナーの商品とは色柄も違うが、低密度織布の風合いはそれほど変わらない。
これではせっかく、デザイナーとコラボして開発した商品が、単なる「量販店向けの安物」というイメージで発信されてしまう。

幸か不幸か自分はその機屋とは面識がないのだが、よく知る人に聞くと「すごく良い人で、よほどひどい条件でない限り断らない」という。
この機屋は、新規商品の開発という段階までは非常に熱心だったようだが、その後の「営業、販売、販促、ブランド化」という作業には、まったく勉強不足だった。

さらに事情を伺うとこの量販向けの企画もそれほど大ロットではないという。そうするとこの機屋は、それほどロットのメリットもない企画につき合った挙句、自ら「安物生地屋」というイメージを消費者にも、業界内にも撒き散らしたことになる。

産地企業の新規素材開発、製品化ビジネスへの着手はもう数年以上前から盛んに取り組まれているが、成功している例は少ない。そこには、この機屋と同じく「営業、販売、販促」に対する研究不熱心があったのだと感じている。

 2010/05/27 07:06  この記事のURL  /  コメント(1)  / トラックバック(0)

カイハラの現状〜毎日新聞より〜
 先週、毎日新聞にデニム産地の苦境を伝える記事が掲載された。

「ジーンズ 生産地苦境 ファッション多様化や海外製流入で」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100517-00000017-maip-bus_all

何を今さらという感じのある記事だが、興味深いのは、国内最大手のデニムメーカー、カイハラの決算や工場稼働率などの数字を具体的に掲載しているところである。

JR福山駅(広島県福山市)から車で1時間。同県神石高原町の山中に、デニム製造最大手のカイハラ(本社・同市)の三和工場がある。総投資額160億円で05年に稼働した。整然と並んだ最新鋭の紡績機20台と織機120台がダダダダと音を立てて糸を織り込み、デニム生地が仕上がっていく。世界有数のデニム工場だが、「8割を見込んでいた稼働率は7割程度しかない」と貝原良治会長の顔色はさえない。

10年2月期の売上高は前期比2割減の118億円。2期連続の最終赤字に陥った。現在、生産調整のため月に4日、従業員700人を休ませている。貝原会長は「1カ月先の注文も見えないが、何とか雇用は守りたい」と話す。


とのことである。
業界紙では書きにくいことだが、掲載できる一般紙を評価したい。

カイハラの低迷の原因をプレミアムジーンズブームの終焉と激安ジーンズとしているのだが、それは原因の一つであって、すべてではない。

三和工場はプレミアムジーンズブームがピークだった05年に新造された。自分も三度ほど、貝原会長自らのご案内によって、工場内部を見学させていただいたことがあるが、すべての工程に最新設備が導入されている。
この三和工場は、増加する「ユニクロ」への供給を目的に造られたと業界内部では言われている。その後、ジーンズがトレンドアイテムでなくなったこと、ユニクロがカイハラ以外のクラボウや日清紡、中国企業産デニムを使用したことが工場稼働率の低下を招いた。

そして、この記事は
「2万円以上する高級ジーンズは市場全体の5%程度」(大手商社)しかないとみられ、生産地復活の決め手にはなっていないのが実情だ。

と締めくくるのだが、
なぜいきなり「2万円以上する高級ジーンズ」が産地復活の切り札として登場するのかわからない。
内容空疎だったプレミアムジーンズブームが終わり、2万円以上するジーンズへの需要は激減している。そうした状況下で2万円以上のジーンズを打ち出すのは、得策ではない。

個人的には、8000〜1万5000円前後までの価格帯をしっかり作って、しっかり販促することが国内産地延命の策ではないかと考えている。
たとえば、児島のベティスミスだが、自社ブランド以外にもOEM生産を請け負っている。請負先のブランドにもよるが、8000〜1万円くらいで供給している。

もちろん、利益率は低いだろうが、国産ジーンズで8000円〜1万円という価格はある程度の訴求力がある。
ジーンズバブル華やかなりし頃の「2万円以上の商品」を追い求めるのは現実的ではない。
そういう企業が存在しても良いが、産地を挙げてそうなるべきではないと思う。

一般紙も新聞低迷しているが、まだまだ世間への影響力は大きい。
なんでもかんでも格安ジーンズありきの報道はどうにかならないのだろうか。
 2010/05/26 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(1)

ライトオンとジーンズメイトの5月売上速報
ライトオンとジーンズメイトの5月売上速報が発表された。

ライトオンは
既存店売上高が前年同月比18・9%減
既存店客数が同16・1%減
既存店客単価が同3・3%減

ジーンズメイトは
既存店売上高が同21・9%減
既存店客数が同12・0%減
既存店客単価が同10・4%減

と2社とも引き続き不調に終わった。

ジーンズメイトはワンピースなどのアニメキャラクターTシャツはそこそこ動いたものの、
それ以外の商品が動かなかった。
ライトオンは全般的に動きが鈍かった。

ライトオンは昨年の9月と12月を除いてずっと2ケタの減少、
ジーンズメイトも昨年9月以外すべて2ケタ減だ。

このままではおそらく決算予想の下方修正が発表される。
PB(プライベートブランド)がどうとか、NB(ナショナルブランド)がどうと言っている場合ではない。
3度目のSPA化にシフトすると宣言したライトオンは自社の低調はある程度織り込み済みかもしれない。そのSPA化はいまだ店頭ではハッキリとした形で見えないのだが。

一方のジーンズメイトは、店づくりそのものを陳列法、内装から根本的に変える必要があるのではないだろうか。今のジーンズメイトの店頭は「ファッション専門店」という顔には見えない。商品は山積み。店頭の特価ワゴンは掘り返されてクチャクチャ。
ハンギングも量が多すぎる。
もしかして抱えている在庫が多すぎるのではないかと推測したくなるほどだ。

仕入れ商品のテイストがどうのこのとか、デニムのデザインがどうのこうのという段階ではなく、これまでのスタイルを捨て、一新された「ファッション店」らしい店づくりが早急に求められている。
 2010/05/25 08:52  この記事のURL  /  コメント(0)  / トラックバック(0)

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プロフィール
南 充浩(みなみ みつひろ)
ファッションメディアプランナー。
「繊維ニュース」記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを担当。
同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

掲載実績
繊維流通研究会ウエブ記事、WWD

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