« 前へ | Main | 次へ »
アパレルに若者はもう来ないのか〜服飾専門学校の戦い〜
服飾専門学校の入学募集が熾烈を極めている。

少子高齢化はもちろん、アパレル分野に進みたい若者の希望者が減少していることも深刻な問題である。業界のイメージの悪さもあるだろう。販売員などのファッションビジネス分野は人手不足のあおりで求人は増加傾向にあるものの、待遇の低さから学生に人気が無い。デザイナー・パタンナー分野は、日本では独立ブランドデビューの道が険しいうえ、企業就職に切り替えたとしても働き口自体が少ない。

かつては"おしゃれっ子"達が集まった服飾専門学校だったが、某メディアが直近で実施した服飾専門学生対象「好きなブランドアンケート」では、ファストファッションが上位を占めるに至っている。服が好きな感度の高い若者は、低年収・低待遇なアパレル分野で働くよりも、安定した職種を望み、消費者として服を購入する側にまわっているのかもしれない。

さて、今回はDCブランドブームが去った90年代以降の服飾専門学校の入学募集の歴史について書こうと思う。

@「すごいパンフレット」の時代(1990年代)

80年代のDCブランドブームでは入学定員が満たされていた服飾専門学校だったが、そのブームが去り、90年代に入って「すごいパンフレット合戦」を繰り広げ始めるようになった。それまでモノクロで固いイメージのあったパンフレットのクオリティアップを図り、高品質な用紙を使ったり、一流モデルを使ったり、オリジナルDVDを入れたり、まるで雑誌のようなパンフレットセットを贈った。地方の高校生は都会から届いた豪華なパンフレットに狂喜したに違いない。この頃から地方の服飾系専門学校が淘汰され、東京・大阪に学生が集中した。印刷業者や不動産業者はさぞかし儲かったことだろう。

A「個人リストと雑誌ブランディング」時代(2000年代)

2000年代に突入すると携帯電話が若者に普及。これに伴って個人リストを手に入れたものが入学募集を制覇する時代に突入した。資料請求者に対して、前述したパンフレットはもちろん、その後のフォローとしてメルマガ、DM、電話などあらゆる情報を送ることで入学者の獲得につなげた。オープンスクールの増発、バスツアーによる地方出身者の囲い込み、入学前プレ授業による入学辞退の阻止などの営業施策が次々と開発された。

またこの時期からファッション雑誌の活用も増加。雑誌社と提携し、学校名記載の読者モデルの掲載や学校主体の記事広告を増発。就職実績を誇るというよりは、お洒落な在校生をピックアップして"学校に通いたくなる"ようなイメージアップを図った。個人リストを獲得するための「専門学校はがき一括請求」や「専門学校ポータルサイト」が一時代を築いた。

しかしこのあたりから、入学前のイメージと入学後のイメージのGAPが発生し、一部の学校ではクレームが多発。別分野ではあるが、世間を騒がせたNOVA事件も発生し、これを機に消費者保護法の見直しが進んだ。各学校に対して、消費者(入学検討者)への説明責任が問われ始めた。

B「脱パンフレット・ウェブ全載せ」時代(2010年〜現在)

スマートフォンの普及により、若者はウェブサイトおよびSNSでの情報取得がメインとなる。豪華なパンフレットは効果を発揮しなくなり、若者はウェブサイト上ですべての情報を欲しがるようになった。かつては資料請求をさせるために、ウェブサイト上に学費の詳細を載せことはタブーとされてきたが、現在はすべての情報を開示するのが常識である。学校によっては入学願書までダウンロードできるようになっている。過度なメルマガ配信、DM郵送、TELアプローチはかえって学校のイメージダウンとなった。

またSNSが購買の決定権を左右するようになる。入学者・在校生・卒業生がつながるようになり、各校とも過剰なイメージ戦略やあおりができなくなった。つまり「本当のこと」を正しくPRする必要が出てきた。ブログやSNSの更新が入学募集に不可欠になった。ちなみに雑誌社は、メイン顧客(カモ!?)だった専門学校からの出稿が激減したことが一部要因となり、次々と廃刊に追い込まれていった。

ちなみにスタイリストやファッションライター、ゴスロリ系のデザインコースなど、就職先が極端に少ない特殊コースに学生が集まるようになったのもこの時期の特徴である。

C「残存者利益」の争い(新時代〜)

前述したように現在の服飾専門学校の入学募集は熾烈である。もはや販促やPRを強めるだけでは入学者の確保が難しくなっている。入学希望者の絶対数も減り、まさに生き残ったものだけが残存者利益を享受する時代に入ったといえるだろう。ここにきて高校とのパイプを持つ老舗・大手の専門学校が強さを発揮している傾向にある。弱小スクールは残された時間をどう生きていくかを考える必要があるだろう。ただし学校法人は国からの援助があるので、株式会社立スクールよりは淘汰は遅くなることが予想される。

学校数はまだまだ減ることが予想される。旨味の少ない服飾専門学校への新規参入はまず有り得ないし、大学が服飾分野のコースを新説することは考えにくい。バンタンのようにドワンゴに買収され、ファッション以外の別分野の強化を図るのが賢いのかもしれない。

とはいえゼロになるわけではない。デザイナー、パタンナーは日本に必ず要るし、販売員の人手不足は深刻である。ただひとついえるのは、かつてのように若者がアパレル業界に夢や希望を持つ時代ではなくなってきているということである。
 2015/01/24 11:00  この記事のURL  / 


« 前へ | Main | 次へ »
レモネード伯爵(教育ビジネス専門家)


関西在住。主に社会人の教育ビジネスに携わる。経験業界はファッション、出版、広告、建築、美容、IT。直近では販促マーケティング、学校経営プロデュース、教育コンサル、ウェブディレクションなどを手がけている。
最新記事
月別アーカイブ
カテゴリアーカイブ