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MDとデザイナー
以前、ある会社のMDと話しをしていたとき、彼はデザイナー不要論を唱えていました。彼いわく、売れる商品といえばあまりデザイン性のあるものよりむしろシンプルなもので、最も重要なのは価格であるということなのでした。そうなると、いくらの原料を使ってどの生産ルートで収益性の高い商品を企画・開発できるかが問われることになります。これはデザイナーの仕事ではなくMDの仕事なので、必要なのはデザイナーよりむしろ優秀なMDであるとのことなのです。

「なるほど」と言ってしまえばそれまでかもしれませんが、おおむね業界全体にそんな価値観があったことは否定できません。今や専門学校を卒業してデザイナー職を希望しても、新卒でデザイナー採用している企業はごくわずかになってしまいました。これはここ1・2年の話しではなく、極端なことを言えば10年以上前からこのような傾向があったのではないかと思えます。新卒のデザイナーを採用して育てるのは大変で、育った頃にはよその会社に行ってしまいます。それなら、デザイナーは中途採用をした方が良いと考えてしまうので、大手アパレルでもあまり新卒採用をしなくなってしまったのです。多くの会社で同じことをするため、業界に若手デザイナーが少なくなってしまいました。これはまずいと思っていた頃に、「ファストファッションブーム」「リーマンショック」「顧客の買い控え」「SPA化&OEM(ODM)化」がどっと押し寄せてきました。ですから、アパレルメーカーは「それならいっそのこと、全部商社に頼んでしまえばいいか。」みたいな発想になってしまっています。

しかし、それでブランドアイデンティティは構築できるのか、ブランドバリューは発揮できるのか。いや、それは不可能なのです。しばらくして生活者の価値基準が変わり、ブランドの独自性やデザイン性・オリジナリティが求められる時代が来たら、大手アパレルはどうするのでしょうか。現状にシステマティックに対応するのも良いのですが、デザイナーやクリエイターをもう少し大事にしないと、いずれ大きなしっぺ返しを食らうことになると思うのです。
 2010/02/15 10:53  この記事のURL  / 


プロフィール
栗山 志明 (くりやま しあき)
1977年に(株)キングに入社。
基幹ブランド「ピノーレ」のデザイナー・チーフデザイナー・コーディネーターを経て1987年に独立。1988年に(株)プレールを設立して代表取締役に就任、現在に至る。
ファッション業界の様々な業態のクライアントに、質の高い情報と独自のマーケティング手法に基づくブランド開発、ディレクション、商品企画などの提案を行う。
1988年〜1994年までバンタンデザイン研究所・商品企画講師、1999年〜現在までIFIビジネススクール・マスターコース講座主任を担当。

株式会社プレールのホームページ

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