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ビューティフルピープルからプレインピープルまでの縁(えにし)の話

東京のプレスデー/パリでのプレゼンテーション

「アマゾンファッションウイーク東京」の期間中、ショーの合間を縫って展示会も見て回る。とある昼下がり、空き時間を利用して、「ビューティフルピープル」プレスデーに出かけた。パリのプレゼンテーションは、クチュールブランドなどもショーを行うヴァンドーム広場に面したホテルエヴルー。モデルに対してスタッフが複雑なコーディネートを着付けていくというパフォーマンスも披露された。トレンチとドレスが一体化したかのようなアイテムや左右ジップで組み合わせるドレスなど、その複雑さ故、本番では嘸かし苦労したのではと思い、スタッフの方に尋ねたら「最初は大変で慌てましたが、2〜3回目には慣れてきてスムーズにできました」と微笑んだ。「慣れれば1人でも着られます。朝の忙しい時は大変かもしれませんが」としっかり笑いも取られていた。



その後ビューティフルピープルからほど近いフローリスト「スプーンビル」で開かれている写真展「Messages.U」に立ち寄った。会期中のショー会場で会ったPR女史から勧められたのだが、写真家・ 角田みどりさんのプロフィールには、2002年に宮原夢画氏に師事したと書かれている。99年2月の『senken h(アッシュ)』創刊号やその後複数回に渡って宮原さんにシャッターを押していただいていたので、きっとすれ違っていたのかもしれないと縁(えにし)を感じ、会ってみたくなった。そして、ついでだからと現在携わっている『ファッション力』の展覧会コーナーの情報提供をお願いしようとスタッフの方に尋ねると、企画を担当している方が今丁度打ち合わせに来ているので紹介するとの事。グッドタイミング!
向かうと、そこにはコンサル先企業に以前居た方が現れ、ビックリ。「ファッション以外のところでお会いするとは!」とこれまた何かの縁か?

帰り道の骨董通りで、「犬も歩けば棒に当たるだな」などと納得していると、「プレインピープル」の店が目に留まった。そういえば先日このコーナーで書いた「スズサン」がポップアップをやっていたなと思い出し、店内へ。ポップアップは既に終わっていたが、買取商品がまだ少し残っていた。そしてレジカウンターの背後に「PAIX」の文字が。そう、あのパリ同時多発テロ事件の直後、丸の内仲通りのプレインピープルのVMDを取り上げた事があったのだが、まだ複数言語で「平和」と書かれたA4の紙を置き続けているという。あれから2年が経とうとしているが、未だに続けているという点で、このブランドのストアロイヤリティー向上の確かさを感じた。とても安くて簡単な手法だが、簡単には続けられない事だから、なお一層感銘を受けた。店頭スタッフと、そんな話をして盛り上がり、ほっこりとした気分で、次のショー会場へと向かった。その足取りは幾分か軽かったかもしれない。人(ピープル)から人(ピープル)へと縁(えにし)は繋がっていく。ダジャレですんません(^-^;
 2017/10/29 11:00  この記事のURL  / 

振り幅広げる東京コレクション/AFWT

ハレ/グローバルワーク/ユナイテッドトウキョウ(AFWT2018SSサイトより)/バナナチップス

「アマゾンファッションウイーク東京(AFWT)2018SS」が終わった。デザイナーズコレクションとしての東京コレクションから性格付けを大きく変化させてきたことにより、ある種、ファッションのお祭りのような位置付けになってきたようだ。デザイナーの表現の場だけでなく、リアルショップブランド、子供服、海外国招致、海外進出組のPRなど、その利用価値は多様化しているといえる。そんな視点から今回のAFWTを見てみた。

アダストリアは今季、「ハレ」に加えて「グローバルワーク」も参加させた。更にトウキョウベースの「ユナイテッドトウキョウ」も加わって、リアルショップブランドが増えた。
子供服分野からの参加もあった。「ロニィ」などモデル・ストリートダンス系ブランドも別会社で運営するカンテサンスから「バナナチップス」が参加した。私の記憶にある限り、正式に東京コレクションに参加した子供服は初めてなのではなかろうか?
海外からの参加も喧しい。従来から企画されてきた「アジアンファッション・ミーツ・トーキョー」の括りでタイ、フィリピン、そして「ファッション香港」もジョイントショーを開いたが、更に「バンクーバーファッションウイーク」のオーガナイズで2本のジョイントショーも行われ、9ブランドがランウェイショーを飾った。


タイ/フィリピン/香港/バンクーバー

そして最も注目を浴びたのが「アットトーキョー」の企画だ。「トーガ」「サカイ/アンダーカバー」は、それぞれロンドン、パリコレクションに参加しており、東京でやる必然性は無いのだが、アマゾンという巨大なECプラットフォームの説得力もあったのか、画期的な試みとなった。もっともそれぞれ海外コレクションに参加している立場から「東京コレクションに参加したのではない」との話もあるらしい。やる側の立場は様々だが、盛り上がりに欠けると言われていた東京コレクションが俄かに活気付いたようにも思える。こうした形であれば海外コレクション組も参加する意味を感じるというなら、一層の事、「コムデギャルソン」「イッセイミヤケ」「ヨウジヤマモト」を招致してもらいたいものだ。無理か?(^^;)

但し気掛かりなのは、「ディスカバード」「ドレスドアンドレスド」「ミキオサカベ」など以外、中核を成してきたブランドの存在が無くなった。「ファセッタズム」「ビューティフルピープル」などは海外へと軸足を移し、「ヤストシエズミ」は時期を早めて8月にランウェイショーを行った。それはそれで良い事なのだが、次がなかなか見えてこない。

もちろん「アキコアオキ」「リョウタムラカミ」「ケイスケヨシダ」「ティボー」「ミューラル」「ヨウヘイオオノ」といった若手世代の成長も著しいが、商売ベースで安定感のある中堅が欲しいものだ。ランウェイをやるにはカネがかかる。それを踏まえても投資対効果が望めるなら、挑戦してほしい。もちろん、展示会ベースで着実に伸ばしているブランドもあるし、その方が向いているブランドもある。派手さは無いが、触ってじっくり見てもらった方が良いブランドもある。一方で分かりやすく、キャッチーなブランドなら一気にブレイクできるプラットフォームがランウェイなのかもしれない。

そんな事を思いながら、相変わらず「先生、ガールズコレクションなら知ってま〜す!」などとファッション系学生に言われて、「まだまだ拡散が足りんな」と気を引き締めるのであった。


上段・アキコアオキ/リョウタムラカミ/ケイスケヨシダ
下段・ティボー/ミューラル/ヨウヘイオオノ
 2017/10/22 16:19  この記事のURL  / 

明日から東コレですが、衆院選とファッション業界の行く末は?

総務省のホームページより

明日から「アマゾンファッションウイーク東京」がスタートする。連日、ヒカリエと表参道ヒルズを中心に朝から晩まで駆け抜ける日々が続く。生憎の雨模様のようで少し気も重いが、若手のデビューショーもあり、また合同展や個展も来週にかけて続々と開かれるので、老体に鞭打って回ることにしよう。

さてそんな中、衆議院選挙も真っ盛りだ。東京コレクション終了後の日曜日、10月22日が投票日となる。たとえ疲れていたとしても選挙には行かねばと、こちらも固く決意を持っていこう。
「やれ3極だ。いや実際は2極だ」と様々な意見が飛び交うが、果たしてファッション業界にとって有用な政策は何なのだろう。トリクルダウンを謳って早何年? 一向にその気配も無く、アベノミクスにかなり懐疑的にならざるを得ない。金融政策頼みばかりで、円安に誘導されても、個人消費が回復しなければ、市場の価格指向は減らないから、アジアからの製品輸入が主な入超産業の我が業界は、輸入価格の上昇と小売価格の下押し圧力の狭間で、苦しむところとなっている。もちろん輸出にとって円安は歓迎すべきことだが、ファッション業界では、まだ緒についたばかりだから、その恩恵は少ない。個人消費を回復させるには、将来不安の解消や国民の懐を温める政策が必須と言える。広く薄く取る消費税増税の是非も問われる。

憲法改正もファッションと決して無縁ではない。多くの国々で戦乱が続くが、そこにファッションを楽しむ余裕はあるだろうか。一日一日を生き延びるので精一杯の彼らに、そんな余裕はない。平和であってこそ成り立つのがファッション産業。この国は悲惨な戦争体験から立ち上がってきた唯一の被爆国。武器や失敗した原発技術を輸出する事が、世界を平和にすることになるのだろうか。北朝鮮問題をネタに本当は別の意図を狙っていないだろうかと今一度、立ち止まって日本国憲法の平和に対する理念が世界に果たしてきた役割を考えてみても良いと思う。

最後にひと言。「しっかりと」「愚直に」「丁寧に」など個人の主観によって如何ようにも解釈できる曖昧な言葉で語られるのは困る。「しっかり丁寧にやりました」「いやいや全然足りていませんよ」という何の結論も得られない無駄な議論になってしまう。政治家には「コレコレをやります」「これには賛成もしくは反対です」と明快な政策を述べてもらいたいとつくづくテレビ討論を見ていて思った次第だ。では皆さん、次の日曜日には選挙に行きましょう。

 2017/10/15 13:20  この記事のURL  / 

世界で伍して戦うには、ニュートラルな姿勢が必要


随分以前から知っているような気分にさせる不思議な人がいる。有松鳴海絞り「SUZUSAN(スズサン)」の村瀬弘行さんだ。デュッセルドルフに住む美術学校出身の彼は、いつもひょうひょうとしていて自然体。人をリラックスさせる不思議な力を持っている。ある意味ニュートラルなのだろう。だから、いつの間にかスズサンを有松から出た世界ブランドに育ててしまった。
最初の出会いはパリのインテリア・ライフスタイル大型見本市「メゾン・エ・オブジェ」だったと思う。絞りの照明器具とストールで多くの来場者の関心を集めていた。その後「トラノイ」に出展すると瞬く間にファッション流通にも販売先を広げ、現在はニットウェアも始めている。
村瀬さんは、絞り職人の家に生まれ、一時はアートを志して、英国に留学。その後、学費に苦労する中、無償で学べるドイツへ渡り、デュッセルドルフの美術アカデミーで学んだ。当初は家業の絞りにあまり関心も無かったそうだが、職人が減っていく現状を見て、この技術を伝承していくには、世界のラグジュアリーブランドに伍して売っていかねばと2008年にデュッセルドルフでブランドを立ち上げた。
そんなスズサンが初めて日本でのショールームを開くという。2018年春夏シーズンのテーマは「Garden」。昨年ローンチしたホーム&リビングコレクションでは、ペルーのベビーアルパカを手織りした素材を使いクッション、スローケットを様々な絞り技法で染め上げた。
またデュッセルドルフでは、70年代以降ドイツの新しい音楽を模索し牽引してきた背景があり、「Neu!(ノイ!)」「Hauschka(ハウシュカ)」などのミュージシャンを生み出してきたが、彼の周りで活動するミュージシャンの協力を得て、彼らの音楽を流しながらコレクションを紹介するそうだ。
会期は10月16〜21日、会場はベルサール渋谷ファーストの裏手にある(プレイス)・バイ・メソッド(東京都渋谷区東1-3-1 #14)。
 2017/10/07 12:21  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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