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この夏のバカンスは、何処へ2

サンセバスチャンの海岸

またまた昨夏の話で大変恐縮だが、たまたま今年6月のパリメンズのショーで著名なフリージャーナリストがショーの後、スペイン・バスクの美食の町、サンセバスチャンへ赴くと話していたのを思い出し、これまた今夏の旅先にいかがかと書かせていただくことにした。これまた取材旅行で、スペイン・バスクからビアリッツ、ボルドーなどを回った時の話である。


サンセバスチャンの旧市街

星付きレストランの数が世界で一番と言われているサンセバスチャン(スペインでは、ドノスティアと表記が出る)には、美食を求めて世界中から人が集まる。またあの有名な牛追い祭りの開かれるパンプローナも車で1時間ほどのところにあり、7月初めのこのエリアのホテル予約は苛烈を極める。予定が決まっていれば、早めの予約がオススメだ。
旧市街には雰囲気の良い数多くのバルが集まっているが、そこはやはり観光地。少々お高いのである。そこでオススメしたいのが、旧市街のちょっと外側のバルなのだ。こちらは、住人たちが普通に行き付けにしているところが多く、値段も驚くほど安い。バスクのバルでは、薄いバゲットの上に様々な食材を載せたピンチョスという一口料理(カナッペよりは大きいので二口かもしれない)が供される。もちろんメイン料理もあるのだが、これらのピンチョスを立ち飲みしながら、はしごするのがバルの楽しみ方。
海鮮物と合わせるなら、バスク名産の微発泡白ワイン「チャコーリ」がお勧め。細かな泡とさっぱり感がマッチする。ちなみに少し西へ向かったZARAの故郷、ガリシア地方ではチャコーリを出す店がほとんど無い。ローカリズムが強い土地柄なのかもしれない?。
さて、どれだけお安いかの具体例。このフォアグラのソテーが、わずか3ユーロ程というからコスパが良すぎる。



マテ貝(NAVAJAS)のソテーは絶品。揚げ物も多い


生ハムなら、JAMON IBERICO BELLOTA をチョイス。ハブーゴ村産ならベストだ

サンセバスチャンから西へ車を1時間ほど走らすとバスクの主要都市、ビルバオに行きつく。20年以上前に、「ミリアム・オカリス」を取材しに訪れて以来の訪問だ。まずは現代アートを中心に集めたGuggenheim Museum(グッゲンハイム)美術館へ。もちろんフランク・ゲーリー建築の外観は20年経っても変わらない。



そしてケーブルカーを吊るしたようなデッキが川を渡る世界最古の運搬橋、ビスカヤ橋も見ておきたいスポットの一つ。エッフェル塔で有名なギュスターヴ・エッフェルの弟子の一人、建築家のアルベルト・パラシオによって設計されたもので世界遺産でもある。
次はフランスに戻りながらの食中心の話を第3話で。
 2017/07/23 17:00  この記事のURL  / 

大きなトレードショーが敬遠される理由


2018年春夏シーズンのパリメンズ(6月23〜25日)を回り、率直に感じたのが、大きなトレードショーが困難な時期を迎えているということだ。
グラフと表は、メンズ春夏シーズンに開かれた主要3展示会の出展者数とその合計のこの4年間の推移だ。総出展者数が明らかに減少していることが分かる。一方で、ロンドンの「ジャケットリワイヤード」のメンバーが17-18年秋冬シーズンに立ち上げた「レジデントショールーム」がバスチーユ・デザインセンターで開かれ、2回目となる今回は45ブランドが出展し、うち18が日本ブランドで「マスターピース」や「FDMTL」がカプセルから移って参加していた。
また3展の中で唯一、出展者を増やしているのが、「マン」だ。共通して言えるのは、前回までのマン(会場がエスパス・モンゴルフィエールでナチュラル感があった)もレジデントも、比較的コジーな空間とアットホームな雰囲気で、スペースもさほど大きくなく、サクッと見て回れる規模感だという事だ。
総じて言えることは、巨大化した展示会場で来場者の徒労感とブランドの見落としが広がっているという事だ。それに加えて、テロ事件以降の出張日程の短縮化や出張者数の削減で、回り切れなくなりつつあり、既存取引先優先で回り、新規を見つける点でトレードショーが後回しになっているような気がする。またその徒労感との対比で、小規模なショールームでのゆったりとしたオーダーを望むバイヤーも増えている。
そして、高くなり過ぎたトレードショーの出展料の影響も大きい。小さな新規ブランドにとっての過大な投資額が重荷になっており、バイヤーからすれば、面白い若手や新規ブランドが見つけにくくなっているという側面もあるからだ。最近になって「トラノイ」が「トラノイ・コレクティブ」という若手のコーナーを作ってはいるが、インパクトを与えるほどのスペースではない。
もう一つの大きな流れは、圧倒的にSPAやバリューチェーンが跋扈して、品揃え専門店販路を根こそぎ奪っていることも忘れてはならない。卸型アパレルの売り先が間違いなく減っているのだ。決して無くなる訳ではないが、確実に減少していることも、トレードショーの活気を失わせている一因と言える。
こうした中で、トレードショーが復活する可能性はあるのか? 筆者は以下の2点を挙げたい。ひとつは、もう一度本来のトレードビジネス支援という目的に沿って、組み立て直すことだ。小さなブランドたちをインキュベートする役割とバイヤーとのビジネスマッチングの場としての位置付けを再度明確化し、新たに立ち上がるブランドたちに初期投資額が少なく出展できるシステムを考えるべきだ。しかも出展者、来場者ともにコンフォタブルで新しい何か「サムシング・ニュー」を見つけられるヒントの数々を提示することも肝要である。もう一つは、ECなど変化する流通システムに対するブランド、バイヤー双方へのサポートとITを駆使したファッションテックをシステムに組み込んだトレードショーへと進化することだと思う。
シュリンクする中で、「卸型ビジネスモデルは終わった」との声も聞こえるが、他人とは違うものを身に着けたいという気持ちは、そう簡単には無くならない。またこれから先進国化する国々では、そのマーケットの拡大がまだまだ見込まれるはずだ。ブランドもトレードショーも、そこを目指して取り組みを始めるべきではなかろうか。




 2017/07/20 00:27  この記事のURL  / 

この夏のバカンスは、何処へ1

星付きレストラン「ミシェル・ブラス」から見渡す限りの高原台地

昨夏、取材で訪れた魅惑の南仏アヴェロン県で、いくつか素敵なツーリスト・スポットに出会った。
このエリアでは何といってもミシュランの星付きレストラン「Michel Bras(ミシェル・ブラス)」が頭に浮かぶ。残念ながら、この時は予約していなかったのと別件の用事が入っていたため、前で写真を撮るに留めて店をあとにしたが、アヴェロン県の美しい高原台地が眼前に広がり、ゆったりと寛げそうな環境であることが分かった。次回は是非とも味わってみたいものだ。


全面ガラス張りのミシェル・ブラス

さて、オーブラック牛でも有名な当地の村、ST.URCIZE(サンウルシズ)に立ち寄った。村の小さなレストラン「REMISE(ロミーズ)」にて、ランチに。ホロホロ鶏をメインに選んで、濃厚なブラウンソースを堪能。



すぐ近くには奇妙だが興味深いシャンブルドット(民宿)「La Fontaine de Gregoire(ラ・フォンテーヌ・ド・グレゴワール)」を見つけた。大きな屋根裏部屋を持ち、エキシビションが開かれており、古い厨房や重厚なリビングで寛げる。奇妙さの真骨頂は部屋にある独房。檻があり、なんとも奇怪な部屋ばかりだ。もちろん新たに作り付けたものではなく元々この館に備わっていたものらしい。




アヴェロン県の中でのちょっとした観光地と言えば、Belcastel(ベルカステル)城だ。小さな川のほとりに立つ、中世の城でしばし浮世を忘れるのも良い。



晩には、宿泊先の近くの町、Entraygues-sur-Truyere(アントエギュ・シュル・トリュイエール)のピザ屋で、当地の名物、アリゴを添えたお肉料理を戴いた。このアリゴ、マッシュポテトにチーズをたっぷり練り込んだもので、コクとまろやかさが相まって肉とのハーモニーも素晴らしい。エスペラック村に住む友人宅でも郷土料理としてこのアリゴを付け合わせにしていた。


左はピザ屋のアリゴ、中央と右はエスペラック村に住む友人宅で供されたステーキとアリゴ

パリからは車で約6時間と行きづらいエリアだが、それだけに素朴な自然と美しい村々、独特の食文化も楽しめる。飛行機だとトゥルーズまで飛んで、そこから車で2時間半の旅となる。
今夏のバカンス、こんな田舎町でのんびりと過ごしてみるのは、いかがだろうか。
 2017/07/18 02:57  この記事のURL  / 

芸術家二人の人生から見える友情の複雑さ 映画『セザンヌと過ごした時間』

(c) 2016 - G FILMS - PATHE - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINEMA - UMEDIA - ALTER FILMS

かつて暮らしたパリのアパルトモンは結構便利なところで、3つほどのメトロの駅が使えた。そのひとつに10番線のエミール・ゾラ駅があった。アベニュー・エミール・ゾラに面しているため、その駅名になったようだが、お恥ずかしいことに、この時初めて、小説家のエミール・ゾラを知った。皮肉なことに、生前名誉に恵まれたゾラと、生前認められず没後誰もが知る画家となったポール・セザンヌが幼馴染みで、その二人の間に在った葛藤が映画『セザンヌと過ごした時間』の焦点だ。



1852年南仏エクサンプロヴァンス。イタリア人で貧しい母子家庭のゾラがいじめられているところを裕福な銀行家の息子セザンヌが、助けて二人の友情がスタートする。パリに出て以降、小説家として成功を収めるゾラは、少年時代に支えてもらった恩もあり、セザンヌを物心両面で支える。ゾラの小説『居酒屋』『ナナ』のベストセラーの後、『制作』の発表が転機となる。そのモチーフがセザンヌを思わせ、セザンヌを酷く傷つけることとなる。二人の間に徐々に亀裂が生まれ、パリと南仏の距離のように離れていくことになる。
印象派が台頭する時期でもあり、画壇では認められず、くすぶっていた新たな潮流が勃興する時期だけに勢いのある若き天才たちの鼓動が垣間見え、有名な印象派の面々の登場も楽しめる作品だ。



セザンヌ役は、『イヴ・サンローラン』でピエール・ベルジェ役を演じたギョーム・カリエンヌが、ゾラ役は近年監督もこなすギョーム・カネが務めた。監督は、『シェフと素顔と、おいしい時間』などのダニエル・トンプソン。
以前エクサンプロヴァンスのセザンヌのアトリエを訪ねたことがあるが、映画のシーンでも見事に再現されていた。そして何よりもあの美しい「サント・ビクトワール山」の風景こそが、セザンヌの激しい気性を癒してくれる友だったのかもしれない。
9月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。


 2017/07/09 03:07  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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