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モーリシャスから浅草まで


パリファッションウイーク出張中に長年フランス関係でお世話になっているPR会社の方から講演の依頼メールが届いた。金曜日に帰国し、週末に英文のPPTデータを作り、月曜日午前中にモーリシャス共和国から来るアパレルミッションの為に「日本のファッションマーケットと参入する際のアドバイス」というような講演を行った。
90年代後半には良く欧州各地でこの種の講演を行ったものだが、既にその頃のデータは古過ぎて使い物にならない。この2〜3年でもフランス大使館やスペイン・カタルーニャ州政府ミッション向けに講演したが、それもちと古い。結局最新データを集めて作り直さねばならないのだ。
さて、そもそもモーリシャスがどの辺りにあるのか曖昧だったので改めて確認してみると、マダガスカル島の東側。英語も話すがフランス語もいけるようだ。ということで、挨拶はフランス語で!
確か子供服の「ボンポワン」を立ち上げたコーエン夫妻が、ブランド売却後にライフスタイルコンセプトショップ「メルシー」を立ち上げ、売上げの一部を寄付していたのが、マダガスカルの女性と子供達だったと思い出した。ボンポワンの一部はマダガスカル製だったから、恩返しのようなものだった。同じくモーリシャスにも繊維縫製業があるのだと納得。どうやら紡績、機屋から縫製まで揃っているらしい。企業数は174社、従業員数4万5000人、輸出額9億3300万ドルの規模を持ち、グローバルSPAの生産地として発達してきた。講演中でも彼らは積極的に質問してくる。複雑な流通チャネルの中で、「どこにアプローチすべきか」「これから会う日本企業は、どのポジションなのか」など、実に現実的かつ具体的な質問が多かった。
そして、東コレを挟んで昨日、今度は浅草ものづくり工房で、「国内外の市場動向と海外販路開拓を含めた展示会情勢」について、皮革関連企業を対象に講演を行った。こちらは、やはり日本人だから実にポライト!全体の話が終わった後に、続々と質問が出て議論が行われ、2時間にも及ぶ充実した中身になった。
どちらも結果的には、質疑応答が存分にあり、濃い内容になったが、やはりその場その場で疑問を解決していった方が、より深く高い到達点へと届く気がする。少人数であれば、そんな進め方の講座にしていくようにしようと思った次第だ。

 2017/03/28 21:21  この記事のURL  / 

東京のファッションウイークは1ヶ月前倒しを!!

左からTAAKK sulvam doublet

アマゾンファッションウイーク東京になって2回目のシーズンが終わった。最終日の東京新人ファッションアワード・ウィナーズデーなど、大いに盛り上がった気がする。
しかし、メンズで披露したブランドの多くは既にオーダーを締め切った後だ。「これまで関ってくれた多くの人たちに感謝の気持ちを込めて」とか「顧客へのアピールやサービス」とか、いろいろと理由は付けられているが、17-18年秋冬物を見せるのは、ビジネス的にはどうにも中途半端というしかない。
世界的に見ると、メンズウイークとウィメンズのプレコレが重なり、メンズとウィメンズを統合したショーを行う動き、小売によるデリバリー時期早期化のプレッシャーに伴うプレコレへの比重の増大、それに寄り添う形での生産サイクルの前倒しの流れ、そして言わずもがなの「シーナウ・バイナウ(SNBN)」。誰に向けたショーなのか、ファッションウイークなのかを巡って迷走が始まっていることは間違いない。昨年9月のSNBNのショーが販売不発に終わったとしてB向けに戻すと発表したトムフォードの報道もあった。まさに試行錯誤の時期なのだ。
従来通りのバイヤーに向けてであるとすれば、もしかしたらメンズ・ウィメンズ統合で一気に見せる流れも起こり得るし、顧客や消費者に向けてであれば、1月と7月の立ち上がり期にそのシーズンのショーを宣伝と実売のための販促を兼ねて行っても良い。プレスからするとBなのかCなのかで、その対応を変えれば良い話で、昨今のブロガー、インフルエンサーのCへの影響力を借りるならSNBNが最も有効な手段だ。でもそれはSPAや直営店政策を採る大手にしかできないことでもある。在庫を持たない卸中心のブランドは、やはりB対策でのプレゼンスがまずは必要だ。
そんな混沌とした状況下で、パリの翌々週に開かれる東京は、いつまで経っても世界の生産流通サイクルに参加できないでいる。3月中旬と10月中旬にウイークを行い、オーダーの刈り取りを3月末から4月初めまで行っていると、既に3月初旬に締めてしまっている世界のブランドには追い付けないし、ましてやプレコレに比重が移っている中で更に後れを取りかねない。であれば、パリより先に見せて、予算を確保してもらうという活路もアリではなかろうか。
もちろん現実的には、国内の専門店のオーダーに引っ張られて3月末の締めだったり、或いはサンプルアップが間に合わないという問題も抱えている。しかし日本の川上から川下までが、世界標準に合わせていくことで、日本ブランドの世界展開が加速できるはずだ。既に川上・素材段階では、随分前から世界標準のスケジュールで動き始めており、川中の海外進出を本格化させるためのリード役として、2月ニューヨーク前のファッションウイークの開催をそろそろ模索していっても良いのではなかろうかと思う次第である。
そのためには、国内小売りサイドも早めの発注を心掛けてもらわなくては困る。「実態はそんなに甘いもんじゃない。消費の先行き不透明感が強すぎて、そんなに早くは決められない」との声も聞こえてきそうだが、日本のブランドを海外へと押し出していくためには、業界一丸となった助けが必要だ。少々乱暴な言い方になるかもしれないが、ほとんど中小零細が占める川中の卸型ブランドの為に、大手セレクトショップや大手生地問屋などの社会的役割、いや責任を少しは肝に銘じてほしいと思う。
 2017/03/26 19:55  この記事のURL  / 

トレードショーやショールームとの付き合い方

トラノイ(パレ・ド・ラ・ブルス会場内)

この3月、パリ・ファッションウイーク中のトレードショー取材で面白いことを話してくれた日本企業の出展者が居た。それは主催者に対し、「不明点があったら何度も連絡しないと駄目。日本人は引っ込み思案だが、しつこいのではなく、これが海外では誠実なのだと思わないといけない」というものだった。ついつい日本人はそのDNAのせいか、チャンスを逃してしまうケースが多いような気がする。ダメもとでも言ってみるのが、海外勢だ。大体、海外バイヤーは値引きや「DDPにできないか」とか、結構無理なことを言ってくるのだが、「無理」と言うと案外あっさり引き下がる。海外は日本と違い、「忖度してくれる」文化が少ない。積極的にアプローチしていかないと存在している事すら気付かれないという側面がある。まずは言ってみる事をお勧めする。
それから「パリは世界中からバイヤーが来るので、出てみて反応の良い国を把握して、その国のトレードショーに出ても良いと思う」という出展者も居た。なるほど、世界レベルで一気にマーケティングできるのは、確かにパリしかないだろう。NYでもここまではインターナショナルではない。その点でのパリの優位性は微塵も揺らいではいない気がした。
そして悩ましいのがショールームにするかどうかだ。「本気でビジネス拡大するなら、最終的にはショールームが必要。ただ自身のブランドと似た傾向のショールームで、しかも欠けているアイテムかどうかが潜り込める条件になる」と語ってくれたのは既にショールームと契約して、同時にトレードショーにも出展しているメーカーだ。確かにテーストに合ったショールームに入れれば、確実に来場したショップに見てもらえ、受注の確率は高くなる。しかしフィックスを取られるショールームも多く、トレードショーの出展料と同じようなものだ。更に販売手数料が上乗せされ、高いものが更に高くなるという面もある。一方で海外のブランドは普通にトレードショーでビジネスを成立させている。この事実は誰も否定できない。どちらを選択するかはそのブランドの戦略次第だが、契約できるショールームの伝手や当てがない場合、まずはトレードショーからスタートしていくのが一般的と言えるだろう。


プルミエールクラス               ウーマン



 2017/03/18 17:18  この記事のURL  / 

巨大な宣伝装置と美術館の資金集めでウィンウィンの関係

(c)2016 MB Productions, LLC

2015年5月2日に開かれたNYメトロポリタン美術館(メット)のファッション・イベント「メットガラ」の裏側からその日までを追いかけたドキュメンタリー映画『メットガラ〜ドレスをまとった美術館(原題; THE FIRST MONDAY IN MAY)』が公開される。主催は『プラダを着た悪魔』のモデルとなった米国版『ヴォーグ』編集長のアナ・ウィンターと企画展示を担当するキュレーターのアンドリュー・ボルトン。芸術監督にはウォン・カーウァイを起用し、テーマは「China」。中国メディアの政治性を帯びた執拗なインタビューに辟易したり、値が張るポップスターのリアーナには、アナ本人から電話を入れて、やんわりとプッシュするなど生々しい舞台裏が明かされる。



招待されるのは、アカデミー賞の常連たちやミュージシャン、ビッグメゾンのデザイナーなど各界のセレブリティーばかり。ジョージ・クルーニー、レディー・ガガ、アン・ハサウェイ、マドンナ、ジャスティン・ビーバー、サラ・ジェシカ・パーカー、ビヨンセ、クロエ・セヴィニー、ジェニファー・ロペス、カニエ・ウエスト、ビル・カニンガムなど錚々たる面々。 



そもそもメットがファッション部門を持ち、膨大なドレスやコスチュームを保管している点もファッション界からすれば有り難いことだが、やはりそこには、「ファッションはアートなのか?」との問いかけが付きまとう。それに対してジョン・ガリアーノやカール・ラガーフェルドらの発言が面白い。またその資金集めの策としての意味を持つメットガラというイベントの本質も観る者に新たな知見と鬱屈とした感覚を与えることになるだろう。
まるで結婚式の席次を決めるように、いやもっと身近なのはショーのフロントロウの配置を決める時のようかもしれない。誰と誰は仲が悪いとか、どっちが格上とか。下々から皮肉たっぷりに仰ぎ見ることもできる作品でもある。それはある種、滑稽な姿かもしれない。
別の視点から言えば、ビッグメゾンが座席を何席も買い取り、自らのドレスを提供したセレブリティーを招待し、大きな宣伝効果を狙う。その巨大な宣伝装置をプラットフォームにして、メットの資金集めを行う。ウィンウィンのプラットフォームを作り上げて、マスコミが喧伝して効果抜群。この記事も一端を担っているのか。いや、ちっぽけ過ぎて担っているとは言えないな。
4月15日からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開。

さて、本作とのコラボアイテムがアッシュペーフランスから発売される。「ジャマン・ピュエッシュ」のバッグ(75000円)、「ルパート・サンダーソン」のパンプス(82000円)、「セルジュ・トラバル」のリング(38000円)、「イオッセリアーニ」のネックレス(45000円)など8ブランドから1アイテムずつ登場する。店頭でのコラボイベントも開催される予定だ。

ジャマン・ピュエッシュ、ルパート・サンダーソン
セルジュ・トラバル、イオッセリアーニ



 2017/03/01 00:01  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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