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合同展「ソレイユトーキョー」30日から


デザイナー、ブランド側の担当者不在という不思議な合同展「SOLEIL TOKYO(ソレイユトーキョー)」が今週、8月30日(火)13時から始まる。会期は9月2日(金)までで、開催時間は11〜19時。場所は代官山ホワイトルーム

筆者は主催者の一人として、常日頃感じてきた来場者としての想い、出展者の気持ちを忖度すると、このようなニーズが有りはしないかと考え同展を企画した。
合同展では、「出展者とついつい話し込んでしまい、全部回り切れない」という漫然とした不満があった。まあ、自分のせいなのだが…
出展者からすると「なかなか本音が聞けない」、「自ら説明するより、他人が褒めた方が良い時も?」そして経費負担も重い。

ならば、まずは出会いの場なのだから、エッセンスだけ見せて(これなら経費も少なくて済む)、ゆっくりと、でも沢山のブランドをチェックできるような場ができないだろうかと考えた。そして辿り着いたのが、このスタイル、このシステム。来場者は気になったブランドにチェックを入れると個展の案内などブランド側からコンタクトが来る仕組みだ。

今回で3回目となるが、お陰様で評価いただけているのだろう、出展希望者が増えて、会場を少し大きなところへと移転した。

併せて今回からアドバイザー制度を設けた。有力セレクトショップ、百貨店の幹部が全ブランドに本気度の高い(なので匿名にするが)アドバイスコメントを来場して記入してくれる。辛口なコメントも含め、会期後にそれぞれのブランドへ届けられる。

さて、台風の影響が気になるが、それを乗り越えて成果を出してあげたいと思う。
会期中ずっと詰めているので、興味のある方は、ご来場を!!

関連記事→http://www.apalog.com/report/archive/2869
http://www.fashionsnap.com/news/2016-08-21/soleil-tokyo-3rd/
http://riemiyata.com/fashion/9832/
http://roomservice-japan.org/news/detail.php?p=002425&cate=news


Special Thanks



 2016/08/28 16:30  この記事のURL  / 

仏アヴェロン県の伝統を訪ねて(後編)


「フランスの最も美しい村」認定の中でも、かなり上位に位置するだろう街、Conques(コンク)がアヴェロン県にある。山間に佇む小さな街だが、3つあるサンチアゴ・デ・コンポステーラ巡礼路の1つ、ル・ピュイ・アンヴレーがスタート地点となるルートの要所として、またサント・フォワ修道院とドゥルドゥ川に架かる橋が世界遺産に登録されたこともあり、多くの観光客が訪れる。



ロマネスク建築の修道院正面入口上にある彫刻(タンパン)には、「最後の審判」が描かれている。真ん中のキリストの両側に天国と地獄が克明に描かれているそうだ。



さて、そんな田舎町にも素敵な伝統を繋いでいる人が居る。
村への入口近くに、その店はあった。
かつてエルメスで革職人として勤め、独立してこの地で馬具を始めとして、様々な皮革小物を手作りするアルチザン(職人)、Lin ALBERICIさんの店「SELLIER ALBERICI(馬具屋・アルベリシ)」だ。



M.O.F.(Meilleur Ouvrier de France・フランス国家最優秀職人)の称号を持ち、この田舎町から東京の百貨店催事にも呼ばれ、実演することもあるという。仔牛の革をメインの素材しながらも、ガルーシャ(エイ)なども使って小物を作る。
シンプルなベルトのバックルには蹄鉄をモチーフにしたものや変わったところではワインサックなども作っている。もちろん祖業の馬具では、鞍から手綱、馬鞭、馬用のサイドバッグなどもある。



スカーフを皮革の穴に交互に潜らせてアクセントにしたベルトや堅牢だが丸みを帯びた優しいフォルムのバッグなど、どれも素朴さと繊細さが交錯した逸品ばかりだ。まさにアルベリシさんの朴訥で温厚な人柄が、そのまま商品に現れている気がした。
M.O.F.として日本の百貨店まで出向き、この小さなフランスの田舎町で育む伝統と日本を繋いでいる縁にとても貴重なものを感じた。


 2016/08/14 13:22  この記事のURL  / 

仏アヴェロン県の伝統を訪ねて(前編)


フランス中南部にあるアヴェロン県は、ラングドック=ルシオン=ミディ・ピレネー地域圏の北東に位置し、石灰岩の高原地帯の景色が印象的だ。あのオブラック牛で有名なエリアもあり、多くの「フランスの最も美しい村」に認定された田舎街が点在する。
日本では一般的に「Laguiole(ラギオール)」というソムリエナイフで知られる街もこの地域にある。現地では「ライヨール」と発音するらしい。
現在、数多のアルチザン(職人)ブランドはあるものの、ここライヨールで生産する工場は2社のみとなっている。但しラギオールは地名の為、商標登録はできない。かつて隆盛を誇ったライヨールのナイフも1930年には完全に消滅し、現在復活させた2社のみが稼働している。そして、近くのティエール市がラギオールナイフの生産を担ってきたという歴史があり、彼らもまたラギオールナイフの呼称を使っている。


オノレ・デュラン社の博物館

今回訪れた現存する2社のうちの一つ、「HONORE DURAND(オノレ・デュラン)」 は、工場に博物館、直営店を併設している。博物館には数多の機械や部品があったが、そこにあった年表によると1829年にスタートしたライヨールの刃物産業は、一旦1930〜87年に衰退し、全ての生産がティエールで行われていたことを示していた。そして87年に同社が復活し、その後生産量を高めていった様子が覗える。



さて工場では、刃やグリップの台座など各部品を型抜きしたり、グリップの部材を切り出す作業、削って成型する工程、ポリッシュで磨きを掛ける工程など細かく分かれていた。


左の2枚は、グリップと刃の間に付ける飾りで、蜂をモチーフにしているが、蠅という説もある



グリップ部分の材料には、主に木材を使用するが、アフリカの水牛の角、マンモスの歯、象牙、動物の骨、プラスチックなど様々な素材が使われ、その価値によって値段もまちまちだ。


一番左がマンモスの歯

刃の部分では、複数の素材を重ね合わせ、斜めに削りとポリッシュを掛けることで独特のモアレを生み出す加工があり、こちらも高値となる。



もともと農夫の為のポケットナイフとして始まったため、祈りを捧げる際に、土に差して、十字架代わりとしても使えるよう、グリップにドットで十字架があしらわれている。



直営店に戻り、今回はローストビーフを切るために使うナイフとフォークを調達した。右上の写真のように名入れもしてくれる。
200年の歴史を持つライヨールのナイフだが、その生産を担ったティエールとともに訪れてみたいスポットの一つだ。
<後編に続く>
 2016/08/13 20:20  この記事のURL  / 

フランスの郊外の今を切り取った映画2本(後編)

(c) 2015 La Camera Deluxe - Maje Productions - Single Man Productions - Jack Stern Productions - Emotions Film UK - Movie Pictures - Film Factory

もう一つの作品は、フランス映画らしい日常と非日常が絶妙に織り込まれたリアリスティック・ファンタジーともいえる作品『アスファルト』
第26回ストックホルム映画祭で国際批評家連盟賞を受賞している。
こちらは、パリかどうかは分からないが郊外のオンボロ団地が舞台だ。3組の男女のぎこちなくも温かい心の交流を描いている。イザベル・ユペール演じる落ちぶれた女優ジャンヌ・メイヤーが団地に引っ越してくる。向かいに住む母親が常に不在の若者、シャルリを演じるのは、あの『男と女』のジャン=ルイ・トランティニャンの孫、ジュール・ベンシェトリ。無垢な若者の素直な直言が女優の心の琴線に触れていく様が痛快に感じられる。ベテラン女優と大型新人男優の掛け合いに注目だ。



足を悪くし、車椅子生活となった自称カメラマンの中年男、スタンコヴィッチを演じるのはギュスタヴ・ケルヴァン。深夜に病院に忍び込む彼と休憩時間に煙草をふかしに来る夜勤看護師の痛々しくぎこちない会話。看護師役のヴァレリア・ブルーニ・テデスキは、カーラ・ブルーニの姉だ。



そして、もうひと組の男女は団地に住むアルジェリア移民の老婆と、何故かこの団地の屋上に不時着してしまい、老婆に世話になることになったNASAの乗組員。老婆は英語が話せず、コミュニケーションの取れない中で、この奇想天外な組み合わせは、ある種の奇跡を生み出していく。宇宙飛行士役は、マイケル・ピットだ。



人間、素に戻ってみれば、真の心の交流が可能になる事、職業や環境によって身に付いてしまった殻は、何かをきっかけに破ることもできて、その先には素敵な人生体験が待っていることを指し示してくれる、とびっきりの映画だった。9月3日より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、シネ・リーブル池袋ほか全国順次ロードショー。

 2016/08/08 12:40  この記事のURL  / 

フランスの郊外の今を切り取った映画2本(前編)

(c) 2014 LOMA NASHA FILMS - VENDREDI FILM - TF1 DROITS AUDIOVISUELS - UGC IMAGES -FRANCE 2 CIN&#201;MA - ORANGE STUDIO

一般的にバンリューと呼ばれるパリ郊外、特に北部郊外の治安は厳しいものがあり、荒んでいて、移民が多く、立ち入ることを躊躇うといったマイナスイメージが強い。もちろん方角によっては、治安も良く、むしろ高級住宅街すらある地域もあり、一概には言えない。
低所得者用の公共団地が数多く立ち並び、労働力としての北アフリカ系移民を含め、多くの人々が暮らしている。かつては働き手として国を支え、一定の年金や福祉を享受してきた移民1世に対して、失業、就職差別といった冷徹な現実を突き付けられた2世、3世のやり場のない怒りが、ある時は暴動となって立ち現れ、今はイスラム国など危険な思考に傾倒する状況も生まれてしまっている。もちろん、それらはほんのごくひと握りの人たちに過ぎないことは明白で、多くは真面目に生きながら、生きにくいイル・ド・フランス(パリ首都圏)に嘆き、愚痴り、少しだけ当たり散らしながらも生活している。
そんな郊外を舞台にした二つの映画を紹介する。




ひとつは既に8月6日からYEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町、角川シネマ新宿などで公開されている『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』
2015年にはサンタバーバラ国際映画祭で観客賞、セントルイス国際映画祭で最優秀作品賞を受賞するなど各国の映画祭で絶賛された感動作で、実話から生まれたパリ郊外の高校で本当に起こった奇跡のストーリーは、こうだ。
貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校の新学期。様々な人種の生徒たちが集められた落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンが赴任してくる。情熱的な彼女は、生徒たちを全国歴史コンクールに参加するように促すが、「アウシュヴィッツ」という難しいテーマに彼らは反発する。ある日アンヌ先生は、強制収容所の生存者を授業に招待する。生き証人の悲惨な状況を知った生徒たちは、この日を境に変わっていく。




本作は、当時18歳だった「落ちこぼれクラスの元生徒」のアハメッド・ドゥラメが自身の体験を映画化するために、マリー・カスティーユ・マンシオン・シャール監督へ送った一通のメールから始まった。監督はアハメッドとともに、彼の体験を元に脚本を共同執筆し、本作にも出演したアハメッドは、セザール賞有望男優賞にノミネートされた。
<後編に続く>


 2016/08/07 19:20  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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