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仏オーベルジュの旅・前編

ル・セルクル・ブールジュの二人のシェフ

パリのメンズとレディスプレビュー、そしてキッズの合同展やショールーム取材を終えて、パリから南へ200キロほどの街へと車を走らせた。サントル=ヴァル・ド・ロワール地方のオーガニックコスメのラボへと向かったのだが、ロワールとなれば、言わずと知れた古城が数多く点在するエリアだ。そして豊かな食材にも出会える。という事でライトな美食の旅を気取ってみた。
筆者がパリに住んでいた頃、よく利用したサイトがLogisだ。フランスのみならず、欧州各地のオーベルジュをリストしたサイトで、リーズナブルでありながら、その土地土地の食事を楽しめる宿がラインナップされている。Demi-pension(ドゥミパンシオン) という朝夕食付きのお得なパックもあるが、ベーシックなコース料理が多いので、結局レストランのメニューから別物を頼むことも多く、最近は素泊まりだけ予約し、併設のレストランでじっくりメニューと取り組むことにしている。
今回は2泊3日の行程。最初の目的地、VIERZON(ビエルゾン)へは、パリから高速で2時間ほど。丁度昼時に到着したので、駅前にあるミシュランガイド掲載店「Les petits plats de Celestin」 (レ・プチ・プラ・ド・セレスタン)へ予約無しで飛び込んでみたところラッキーにも1席空いていた。もう少し南の街、BOURGES(ブールジュ)に本店(Le Cercle)があり、こちらはブラッスリーだ。



「帆立のポワレ・フランボワーズのピュレ・カカオソース風味」(左)と「牛肉のチャックステーキ赤ワイン煮・ベーコンのリゾットに溶けたサンネクテールチーズのせ」(右)の2品をチェック。昼から満足。



コスメのミーティングの後、街の郊外にあるオーベルジュ「Le Chalet de la Foret」へチェックイン。
こちらの宿はコテージスタイルになっていて、玄関まで車を付けられるので、便利だ。



今回の旅では、2泊目も偶然コテージタイプとなったが、以前、南仏に向けて車を走らせ、途中で泊まったオーベルジュでは、下のようなキャンピングカーのコテージという不思議なスタイルの宿もあった。



さて、ひと息ついて本館のレストランへ。続きは後編で。
 2016/01/31 19:15  この記事のURL  / 

テロ後のパリを訪れて


昨年11月の同時テロ後初めて、パリを訪れた。さぞかし警備が強化され、警察官の姿を見かけるかと思いきや意外に少ない。日常生活が回っている訳だから当然のことだが、平和な日本から行くと、余りにも緩過ぎる気がした。
1月の新聞社襲撃事件直後のメンズファッションウィーク時期には、兵士が主要施設前に居り、地下鉄や街中を巡回する姿が散見されたが、3月のファッションウィーク時期には、その姿もあまり見かけなくなったのと同様のようだ。 つまり最初の1ヶ月は警戒体制が厳しく、3ヶ月後には元に戻ったように。そう、11月から既に3ヶ月も経ったのだ。
2月25日まで延長された非常事態宣言下、一見平静を取り戻したかに見えるパリだが、水面下には虐げられた階層の呻き声が渦巻いている事に想いを致す必要がある。
フランスは、かつて高度成長時代に北アフリカから多くの移民を受け入れてきた。それは、あくまでも労働力不足を補う為のものだった。90年代までは地下鉄の運転手に白人以外の人々を見かける事も多かった。しかし長引く不況の中、21世紀に入ると白人女性の運転手も数多く見かけるようになり、いつしかあの移民と思しき運転手達の姿も見えなくなった。移民1世達も日本の団塊世代と同じように定年を迎えて職場を去っていったのだろうか。或いはフランス人に執って代わられたのか。
1世達は、時代も良かった事もあり、仕事や社会保障にも恵まれ、フランス社会に感謝している人達が多いが、2世、3世の代になると不況に伴う就職差別や貧困といった厳しい現実が突きつけられ、不満が鬱積していく。
そこに絶好の口実としてISなるものが立ち現れたのではなかろうか。
出口の見えない貧困の連鎖は、フランス人社会への憎悪という苗床でイスラム原理主義という酵母を得て、発酵と熟成を繰り返し、遂に自己表現の方法と場を得たように思う。
世界は新しい戦争の時代を迎えてしまったようだ。頻度こそ中東の争乱地域とは比べものにならないが、先進国のどこでも起こりうるテロという戦争の形。そして、それは決して空爆などでは解決できない。先進国社会の溝と闇に正面から向き合い、それを埋めていく社会のシステム、移民の受け入れと定着、雇用、社会保障の整備無しには解決できないと感じる。
混乱する地域に武器を売り続けてきた死の商人たちにこそ、「お前たちがそのツケを払いなさい」と言いたくなる。
経済活動最優先のツケが回ってきた。今一度、人道的な立場から一人一人が世界の構成員としての自覚を持って声を上げ、力対力の構造を制御し、世界的社会的弱者をどうしたら作らずに済むのかを真剣に議論していかなければいけない時期に来た。
そんなことを考えながらも、周りに対して細心の注意を払いながら行動しなければならないパリファッションウィークとなった。

ポルト・ド・ベルサイユ見本市会場で開催されているフーズネクスト展
 2016/01/25 08:11  この記事のURL  / 

輪島塗のスマホケースが楽しみ

スマートフォンケースの進化が止まらない。素材のバリエーションやデフォルメされた作りに圧倒されるデコラティブな物もたくさんある。一方でシンプルでありながら、アートのような視点で捉え直そうというケースも登場する。
3月から発売予定の「QUADRO」(クアドロ)は、イタリア語の「額縁」を意味し、スマホを保護するバンパー部の額縁と取り外し可能なTELA(テラ)と呼ばれるキャンバス部を組み合わせた新機構になっている。つまりテラの部分に様々なアートを挿入できるという事だ。
持ち歩くラグジュアリー&パーソナリティーをコンセプトとしたこの商品、洋服を着替えるようにスマホケースも着替えるという視点から生まれた。
基本形はデザイン処理されたアルミニウムのバンパーとテラの基本セット(シルバー、ピンクゴールド、ゴールド)なのだが、楽しみなのは、キャンバスとなるテラのアートコラボレーション先だ。



3月の発売時には、なんと2007年の能登半島地震後に復興プロジェクトとして「ルイ・ヴィトン」と輪島塗のコラボが展開されたが、それを担った桐本泰一氏が手掛けるという。
表面に細かい生地目が出る「薪地技法」や職人の手の動きによってできるすじ模様が特徴の「地塗り千すじ技法」など、伝統的な輪島塗の製法に輪島キリモトの独自の技法を応用した先進的な取り組みがある。そして今回のテラには、これらの薪地技法を応用した作品と沈金と蒔絵の作品が登場する。
発売元はビームコーポレーションで、基本セットはiPhone6/6s用で35000円。2月18日から同サイトで予約販売を始める。
輪島キリモト・桐本木工所とのコラボモデルの価格は未定だ。またアートディレクター・吉永卓氏のSwimmy Design Lab(スイミーデザインラボ)によるカジュアルアートとのコラボも予定している。
ケースの裏面をキャンバスに見立て、日本の伝統工芸をスマホケースという形でモダナイズする。まさにクールジャパンで世界に打って出て行く策の一つとして、期待したいところだ。
http://www.cotta-japan.com


 2016/01/16 21:00  この記事のURL  / 

NYへ行きたくなる映画2本

『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』
(C)2014 LIFE ITSELF, LLC ALL RIGHTS RESERVED. (C)IRIS APFEL FILM, LLC.

昨年から少し元気を取り戻してきた米国経済。ニューヨークの街もブルックリンの盛り上がりと共に、リサーチし甲斐のある都市の一つだ。トゥモローランドのショップもオープンしたことだし、今年は久しぶりに行ってみようかと思っているのだが、ちょうどそんな気持ちの背中を押してくれそうな映画を2本紹介したい。
一つは『ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります』。 




モーガン・フリーマンとダイアン・キートンの初共演という注目作なのだが、現実味があって少しだけユーモラスなヒューマンストーリーだ。夫婦の二人が40年住むのは、ブルックリンの西側、マンハッタンに渡るウィリアムバーグ橋と美しい景色が一望できるアパートメントの最上階なのだが、エレベータが無いことだけが欠点。モーガン演ずるアレックスは愛犬ドロシーとの散歩が日課なのだが、5階まで昇る階段が難儀で、本人だけでなく10歳のドロシーも昇りが苦手だ。
歳上の夫の今後を考え、心配したダイアン演ずるルースがエレベータのある住居へ引っ越そうとアレックスを説き伏せ、不動産エージェントをやっている姪のリリーの助けを借りて今の住まいを売ることに。そんな時、ドロシーが立ち上がれず、抱くと痛そうに鳴く。5番街の行きつけの動物病院へタクシーを走らせるが、マンハッタンへ渡る橋上でタンクローリーが道をふさいで大渋滞。しかもテロ事件の様相を呈してきた。獣医によるとドロシーはヘルニアを患っており、手術が必要と言われる。
翌朝、やる気満々のリリーはお客を連れて内覧開始。ルースは立ち会うが、気乗りのしないアレックスは早々に自分のアトリエへ逃げ込む。内覧会は、一風変わったニューヨーカーたちで大賑わい。そんな人々の家族関係や人間模様が観てとれて楽しめる。そして新居探しでも揉める夫婦。
さて、無事に売却できて新居に移れるのか。夫婦の時間の経過に佇む「家」という思い出が果たす役割とは。
2016年1月30日、シネスイッチ銀座、新宿シネマカリテ、109シネマズ二子玉川ほか全国順次ロードショー。

続いて、昨年公開された『Advanced Style そのファッションが人生』にも登場するファッショニスタ・マダム、アイリス・アプフェルを追ったドキュメンタリー映画『アイリス・アプフェル!94歳のニューヨーカー』がファッションの楽しさを純粋に教えてくれる。



アイリス・バレル・アプフェルは、美術館やホワイトハウスが所蔵するファブリックの修復に貢献。世界を旅するうちに、織物を集めては衣服に、工芸品を集めては宝飾品に変えるなど、その恐れを知らない独創的なスタイルを評価されるようになる。彼女はオートクチュールのトップスに教会の祭服のようなパンツを合わせ、民族的な宝飾品を身に着けたり、デザイナー服とフリーマーケットで見つけた服を組み合わせ、コーディネイトすることで、即席の芸術表現に変えてきた。2005年には、メトロポリタン美術館で彼女の所有するコスチューム・ジュエリーのコレクション展示『Rara Avis: Selections from the Iris Apfel Collection』を開催し、全米各地のミュージアムで展示が行われた。アイリスの魅力は一躍業界で話題となり、『ヴォーグ』のヨーロッパ版、『ハーパーズ バザー』、『デイズド&コンフューズド』などで特集を飾った。
94歳にして多くの有名デザイナーたちからリスペクトされ、今なおNYのカルチャーシーンに影響を与えるアイリス・アプフェル。「ルールはない。あっても破るだけ」などの格言の数々が心に響く。人目を気にするのではなく、ファッションを純粋に楽しむ自由で解放された自分へと導いてくれるかもしれない。
2016年3月5日より角川シネマ有楽町ほか全国ロードショー。
 2016/01/09 19:34  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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