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館で見るデジャヴを取り除くには

「レイビームス」のオリジナル「RBS」では、ギミックの効いた商品も

先日、大手セレクトショップと駅ビルの幹部数人で飲む機会があった。
話題はやはりリーシングや店、館のコンセプトの在り方など仕事の話ばかり。
あるセレクト幹部は、「このところSCのプレビューでデジャヴ(既視感)を味わう事が多い」と言う。同じような店舗構成と同じような顔ぶれで、「おめでとうございます」と他店の幹部に挨拶している。「あれっ、これ最近もあったような・・・」と。
館の同質化が言われ始めたのは2000年代の前半、大手から中堅までのセレクトショップが駅近のディベロッパーに顔を揃えて出店するようになってからだ。最初のうちは「関西初」だとか「西日本初」と銘打っていれば済んだが、そのうち同じ業態は飽和状態に。
次第に館の要請は、「新業態でお願いします」と変化してきた。目と鼻の先に「新業態」を出しては、「オーバーストア」だと嘆きながら、あちらは100平米、こちらは旗艦店なので300平米と競い合うかのように出店していった。
基本的に人口は増えないから陳腐化する館からはテナントが抜けていき、歯抜け状態に。テナント側も新店効果で増収するものの、既存店は厳しい数字が並ぶという日常に慣れてしまった。
そこへもってきて08年のリーマンショック。消費の停滞が顕著になり、併せてグローバルSPAの上陸と拡大が進むことになる。そして前述のデジャヴのように、H&M、ZARA、ユニクロそしてクロスカンパニー、アダストリアに加えて、セレクトショップ大手のボリューム業態の横並びへと繋がっていく訳だ。
また00年代半ばから極端に進んだOEM、ODMの広がりで、セレクトショップ同士の商品の同質化も進んだ。ネームを取ってしまうと、ほぼ同じというものが店頭に並ぶことになった。併せて円安と中国の労働コストの高まりを受けて、商社OEMの行き詰まり感も高まっている。すでにコストプッシュは限界に来ており、チャイナプラスワンの効き目もインパクトは大きくない。
やれ「エフォートレス」だ、「ノームコア」だとデザインを削ぎ落としたシンプルなリアルクローズに振れていたことも、低価格商品との差別化キーワードが見出せない状況を創り出してきた側面もある。
だが、ここへ来て「デザイン性を重視」して見直す機運が高まってきた。16SSのプレスプレビューを見ていても、オリジナル商品とは思えないデザイン的なアプローチを行なうセレクトショップが随分出てきた。ディレクター曰く「デザインしていかなきゃ、セレクトの意味がないですものね」。嬉しい限りのひと言である。
ここ数年のクリエーター不遇の時代が終わり、来年にはデザインコンシャスなマーケットが創造され、ファッション、そして服を楽しむ時代へと業界全体が舵を切っていく事を願いたい。
接客や店のアトモスフェールも大切な要素だが、何よりも他に無い魅力的な商品と品揃えで他店との違いを競い、デジャヴからの脱却を果たしてほしいものだ。


素材のオリジナリティーで見せる「イエナ」

 2015/12/27 13:16  この記事のURL  / 

テロとプレインピープル


東京・丸の内仲通りを歩いていて、ふと目に留まったディスプレーがあった。ビギグループのワン・ビー・ワンが展開する「PLAIN PEOPLE(プレインピープル)」の路面店だ。正面左右のメインディスプレーには、コピー用紙にワープロの普通のフォントで打ち出されたメッセージやワードが、上からクリップとワイヤーでぶら下げられていた。
「PEACE」「PAIX」「PACE」「FRIEDEN」。英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語の「平和」の文字が飛び込んできた。その他に平和を求める文章も。
スタッフに尋ねるとバイヤーや担当責任者が考案して、全店で行っているものという。
パリで起こった衝撃的な無差別テロ事件から今日で1ヶ月を迎えた。
この事件をはじめとして、世界各地で起こるテロや戦争の惨禍を目の前にして、何ができるのか。その一つの答えでもあるだろう。



来年1月のパリ・メンズコレクシクョン、レディスプレコレクション、そして合同展。キッズの合同展やインテリアライフスタイルの巨大な見本市「メゾン・エ・オブジェ」も控えている。既に大手セレクトショップの2社がパリへの出張禁止を打ち出し、外せないバイヤーのみに限定することを決めている。
現地に住む友人たちの話では、今だ、夜のレストランに客足が戻らず、観光客の大幅な減少により、右岸の百貨店は、6掛けとも半減とも言われているそうだ。
各種の大型見本市は、従来の手荷物検査に加えてボディーチェックも行なうと発表し、テロへの警戒を強めているが、そのチェックポイントの手前が一番危険なのではないだろうか。チェック体制が強化されればされるほど、ショー会場前や見本市会場入口の人だかりが膨らむことになる。経験者には容易に想像つくことだが、ただでさえ入場に手間取るのに、それが更にひどくなることが予想されるのだ。その虚を突いたテロが起こらないか心配でならない。
さて、前述したVPに話を戻すが、お金を掛けなくとも伝わるプレゼンテーションがあるのだという事を示してくれたプレインピープルのディスプレー。現場の心意気と想いに共感の拍手を送りたい。大切なのは、「何を伝えたいか」なのだ。
 2015/12/13 13:23  この記事のURL  / 

単館系の優良な映画タイトルまでカバーできるかが鍵

パケットビデオJ、NTTドコモと主要コンテンツホルダー経営陣の面々

NTTドコモのグループ会社、パケットビデオ・ジャパンは2015年12月1日から、コンテンツホルダー直営映像配信サービス「bonobo(ボノボ)」を本格展開し始めた。
このサービスは、コンテンツホルダー(いわゆる配給会社)が所有している映画をボノボのサイトを通じて、ダイレクトに販売するもので、ダウンロード版やDVDの購入も可能だ。したがってコンテンツホルダーに価格決定権があり、配給元が価格を自由に決めることになるという。
12月1日からの参加コンテンツホルダーは、アスミック・エース、ギャガ、日活、テレビ朝日、日本テレビ放送網、フジテレビジョン、東映アニメーション、バンダイビジュアルなどで、従来から参加していた松竹、東宝、東映、KADOKAWA、ウォルト・ディズニー・ジャパン、TBSテレビなどと合わせ、34社2500タイトルとなった。ファントム・フィルム、ポニーキャニオン、プロダクション・アイジーやマイシアターD.D.内の11社も加わっており、ラインナップもそれなりに充実してきたと言えそうだ。
しかし、巷にはもっと沢山の小さな配給会社があり、単館系の良質な作品を供給している。こういった中小の配給会社までカバーしない限り、本当に魅力的なプロバイダーにはなれないだろう。単館系を担っているところの多くは、数人で運営しているところも多く、DVD販売やコンテンツのデジタル供給にまで手が回らないところもあるだろう。こうした点にも配慮し、提供しやすいシステムの構築やエントリーしやすいハードルにまで優遇するなどして、レアな作品群を数多く集める努力が求められる。
上質な作品をたくさん集めて、地方都市に住む人たちにもこれらの作品を届け、ひいては情報過疎の解消や映画文化の向上に資する立場での運営を望みたい。新しいプラットフォームには、こうした社会貢献の側面をきちんとわきまえて役割を発揮してほしいと考える。
12月12〜24日には187館、2062スクリーンでシネアドを展開する予定だそうだ。
今後のラインナップ展開に期待したい。


事業概要を説明する吉田一成パケットビデオJ代表取締役CEO(左)と挨拶する吉澤和弘NTTドコモ代表取締役副社長(右)
 2015/12/08 01:22  この記事のURL  / 

密かに業界を脅かす一人SPA?

写真はすべてデザインフェスタ

久しぶりにデザインフェスタを訪れた。相変わらずの熱気と盛況ぶりに驚かされたが、まるで一人SPAの祭典と言っても過言ではない。この点は後述するとして、気になっていたのが、このところのハンドメイドマーケットの盛り上がりと、その流通を一気に変えるCtoCスマホアプリの登場だ。
そんなマーケットを牽引しているアプリ「minne(ミンネ)」を運営するGMOペパボが今年5月、3番手の「tetote(テトテ)」を運営するOCアイランドを子会社化した。この買収により、両サービスを合わせて作家数14.6万人、作品数197万点となり、国内マーケットにおいて、ナンバー1のポジションになるという。また今後は、両サービスを継続し、合同での大規模なハンドメイドイベント開催を予定しているそうだ。
同社によれば、ハンドメイドにあたる手芸や編み物、趣味工芸などの国内クラフト市場規模は、2013年時点で8673億円と算定し、同市場拡大を推し進める流通形態としての個人間取引の場をインターネット上で提供するCtoCハンドメイドマーケットの市場規模は698億円と推計している。


ミンネの前は人だかりでいっぱい

さて、話はデザインフェスタに戻して、このミンネ自体もデザインフェスタに大きなブースで出店しており、人だかりができていた。ミンネとテトテによる大規模な合同イベントとデザインフェスタが、必ずしもがっぷりよつで競合する訳ではないが、一部コンテンツでの競合関係になることは間違いない。一方で、デザインフェスタにはダンスやパフォーマー、イラストやアート、音楽など幅広いジャンルが参加しており、その裾野の広さが強みとなっている。デザイン性のあるアパレル分野は、手軽にできないという点からCレベルでの立ち上げが難しいせいか、多くを見かけることができない。この点は、課題でもあるようだ。



もう一方で、前述した一人SPAの問題。何の事かとお思いの方も多いだろう。それは、B2Bを生業としているものとして、少し臆してしまいそうになる言葉だった。出店者の口々から漏れる「卸はしません」という、忌み嫌ったように発出される言葉だ。言わば中抜きを「正義」と捉えているかのような錯覚にも陥る。流通や問屋、あるいは小売さえも通さなければ、どれだけ安く生産者から消費者に渡るのか。その点をしかと見抜いて、ITやリアルイベントを通して販売する一人SPAを具現化させているように見える。もちろん、それが主流になるという話では無い。だが、先に記したようにネットを介して行われるCtoC取引が700億円にのぼり、それ以外のリアルイベントを加えると、どれだけの規模になるのか。そして、どこまで拡大していくのかという事なのだ。これにリユース・リサイクル市場が加わることで、さらに「ファッション業界」の市場をさらっていく事になる。かつて専門店市場においては掛け率60〜65%が普通だった。だが、今は下手をすると50%を切りかねない状況だ。勢い上代原価率も下がって、真の意味でのコストパフォーマンスは悪化の一途をたどっている。
情報の分野においても、マスコミに頼らない「情報」の発信がブロガーをはじめとして個人レベルで中抜きを始めている。そう、ITが間違いなく中抜きを促進し、生産者と消費者を直接結びつけ、新たな価値創造、すなわちコストパフォーマンスの高いトレードを実現する時代になったと言える。
その中で「業界人」は何を提供し、どんな「素敵」を届けることができるのか。漫然と今を続けていても、未来はない。


 2015/12/01 09:50  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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