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振り幅広げる東京コレクション/AFWT

ハレ/グローバルワーク/ユナイテッドトウキョウ(AFWT2018SSサイトより)/バナナチップス

「アマゾンファッションウイーク東京(AFWT)2018SS」が終わった。デザイナーズコレクションとしての東京コレクションから性格付けを大きく変化させてきたことにより、ある種、ファッションのお祭りのような位置付けになってきたようだ。デザイナーの表現の場だけでなく、リアルショップブランド、子供服、海外国招致、海外進出組のPRなど、その利用価値は多様化しているといえる。そんな視点から今回のAFWTを見てみた。

アダストリアは今季、「ハレ」に加えて「グローバルワーク」も参加させた。更にトウキョウベースの「ユナイテッドトウキョウ」も加わって、リアルショップブランドが増えた。
子供服分野からの参加もあった。「ロニィ」などモデル・ストリートダンス系ブランドも別会社で運営するカンテサンスから「バナナチップス」が参加した。私の記憶にある限り、正式に東京コレクションに参加した子供服は初めてなのではなかろうか?
海外からの参加も喧しい。従来から企画されてきた「アジアンファッション・ミーツ・トーキョー」の括りでタイ、フィリピン、そして「ファッション香港」もジョイントショーを開いたが、更に「バンクーバーファッションウイーク」のオーガナイズで2本のジョイントショーも行われ、9ブランドがランウェイショーを飾った。


タイ/フィリピン/香港/バンクーバー

そして最も注目を浴びたのが「アットトーキョー」の企画だ。「トーガ」「サカイ/アンダーカバー」は、それぞれロンドン、パリコレクションに参加しており、東京でやる必然性は無いのだが、アマゾンという巨大なECプラットフォームの説得力もあったのか、画期的な試みとなった。もっともそれぞれ海外コレクションに参加している立場から「東京コレクションに参加したのではない」との話もあるらしい。やる側の立場は様々だが、盛り上がりに欠けると言われていた東京コレクションが俄かに活気付いたようにも思える。こうした形であれば海外コレクション組も参加する意味を感じるというなら、一層の事、「コムデギャルソン」「イッセイミヤケ」「ヨウジヤマモト」を招致してもらいたいものだ。無理か?(^^;)

但し気掛かりなのは、「ディスカバード」「ドレスドアンドレスド」「ミキオサカベ」など以外、中核を成してきたブランドの存在が無くなった。「ファセッタズム」「ビューティフルピープル」などは海外へと軸足を移し、「ヤストシエズミ」は時期を早めて8月にランウェイショーを行った。それはそれで良い事なのだが、次がなかなか見えてこない。

もちろん「アキコアオキ」「リョウタムラカミ」「ケイスケヨシダ」「ティボー」「ミューラル」「ヨウヘイオオノ」といった若手世代の成長も著しいが、商売ベースで安定感のある中堅が欲しいものだ。ランウェイをやるにはカネがかかる。それを踏まえても投資対効果が望めるなら、挑戦してほしい。もちろん、展示会ベースで着実に伸ばしているブランドもあるし、その方が向いているブランドもある。派手さは無いが、触ってじっくり見てもらった方が良いブランドもある。一方で分かりやすく、キャッチーなブランドなら一気にブレイクできるプラットフォームがランウェイなのかもしれない。

そんな事を思いながら、相変わらず「先生、ガールズコレクションなら知ってま〜す!」などとファッション系学生に言われて、「まだまだ拡散が足りんな」と気を引き締めるのであった。


上段・アキコアオキ/リョウタムラカミ/ケイスケヨシダ
下段・ティボー/ミューラル/ヨウヘイオオノ
 2017/10/22 16:19  この記事のURL  / 

世界で伍して戦うには、ニュートラルな姿勢が必要


随分以前から知っているような気分にさせる不思議な人がいる。有松鳴海絞り「SUZUSAN(スズサン)」の村瀬弘行さんだ。デュッセルドルフに住む美術学校出身の彼は、いつもひょうひょうとしていて自然体。人をリラックスさせる不思議な力を持っている。ある意味ニュートラルなのだろう。だから、いつの間にかスズサンを有松から出た世界ブランドに育ててしまった。
最初の出会いはパリのインテリア・ライフスタイル大型見本市「メゾン・エ・オブジェ」だったと思う。絞りの照明器具とストールで多くの来場者の関心を集めていた。その後「トラノイ」に出展すると瞬く間にファッション流通にも販売先を広げ、現在はニットウェアも始めている。
村瀬さんは、絞り職人の家に生まれ、一時はアートを志して、英国に留学。その後、学費に苦労する中、無償で学べるドイツへ渡り、デュッセルドルフの美術アカデミーで学んだ。当初は家業の絞りにあまり関心も無かったそうだが、職人が減っていく現状を見て、この技術を伝承していくには、世界のラグジュアリーブランドに伍して売っていかねばと2008年にデュッセルドルフでブランドを立ち上げた。
そんなスズサンが初めて日本でのショールームを開くという。2018年春夏シーズンのテーマは「Garden」。昨年ローンチしたホーム&リビングコレクションでは、ペルーのベビーアルパカを手織りした素材を使いクッション、スローケットを様々な絞り技法で染め上げた。
またデュッセルドルフでは、70年代以降ドイツの新しい音楽を模索し牽引してきた背景があり、「Neu!(ノイ!)」「Hauschka(ハウシュカ)」などのミュージシャンを生み出してきたが、彼の周りで活動するミュージシャンの協力を得て、彼らの音楽を流しながらコレクションを紹介するそうだ。
会期は10月16〜21日、会場はベルサール渋谷ファーストの裏手にある(プレイス)・バイ・メソッド(東京都渋谷区東1-3-1 #14)。
 2017/10/07 12:21  この記事のURL  / 

PARIS フォーラム・デ・アール今昔物語


94年からパリ詣でを繰り返しているが、まだ「コレット」も「メルシー」も「ブロークンアーム」も無かった時代、ここフォーラム・デ・アールのショッピングセンターにあったエスパス・クレアトゥール(クリエーターズスペース)には4〜5軒の新進クリエーターばかりを集めたセレクトショップが集積していた。このSCはメトロのシャトレ=レアール駅とRER郊外線の駅上にあり、地下2層とグランドフロアの3層で成り立っていたが、このエスパスは、地下の一部、全体の15%くらいを占めていた気がする。出張の合間を縫ってリサーチ時々ショッピング的にチェックして回った記憶がある。あの「ズリーベット」なんかも入っていて、エスニック、ストリート、モード、ドレスまで幅広いデザイナーを集めたショップばかり。デザイナーが代わり番こで店番をし、自主ショップとしてやっている店もあった。その後2000年代半ばくらいに次々と閉店し、大型のSPAテナントに変わっていった。
そして昨年のリニューアルオープンで多くのテナントはさほど変わらない顔ぶれだが、1階の南側路面に大型のセレクトショップ、「レクセプション」がオープンした。この9月のファッションウイークには、ラフォーレ原宿のポップアップも実施していたが、このネタはアパレルウェブ本体の記事をご覧いただきたい。
こうしたクリエーターを入れるテナントがもっと欲しいところだ。



さて、SCにも山型、三角形の発想が不可欠だと私は思う。山の頂部分をあのエスパスが担っていたから、陳腐化を免れていたと。それが無くなり、郊外のSCと変わらない金太郎飴のようなリーシングになった途端、陳腐化が始まり、やがて台形とみなされ、魅力半減となる。これは国内地方SCにも言える事だ。何も尖ったブランドやモードを入れるべきなどとは言わない。大手では扱わないブランドを品揃えした地元の専門店でも、或いは地場産業の新業態でも良い。他のSCにはない独自の魅力を山型のトンガリとして2割くらい導入する事で、チャレンジしている姿が伝わる筈だ。そんな事を考えさせられながら、レアール界隈を歩いていた。

 2017/09/30 07:06  この記事のURL  / 

ソレイユをJTBグループに移管した理由


いつもは記者会見に出席する立場だったが、今回初めて、説明する側に立った。貴重な経験だった。それは、5回に渡って細々と続けてきた合同展「SOLEIL TOKYO(ソレイユトーキョー)」をJTBコミュニケーションデザイン(JCD)に譲り、更なる発展を期しての会見だった。詳細は読売新聞産経ニュースなど一般メディア、WWDファッションスナップなど専門メディアにも数多く取り上げられたので、ご覧いただきたい。
そもそもソレイユトーキョーを「何故始めたのか」についてだ。国内外の合同展・トレードショーを長らく取材し、また繊研新聞社時代には、IFF、プラグインの2つのトレードショーの立ち上げに参画してきた経験から、この厳しい現況の下、出展者、来場者双方の不満が存在することを痛切に感じていた。もちろん100%の展示会など在り得ない訳で、どこかを削れば、どこかに歪が起こり、あっちを立てれば、こっちが立たなくなるのは世の常。しかし、どこかに比重を移すことで、新しい仕組みやスタイルの合同展になるなら、多少のマイナスがあっても、プラスの新しい価値が加わることで、新たな地平が見えるのでは。そう思って思い切って始めてみたのだ。それが2015年10月の事。お陰様で、「小さいながらもキラリと光る展示会になったのでは」と自負している。
この事業はカシュ・カシュが行っているもので、私自身は独立と同時に加わったのだが、もともと輸入ビジネスを30年前から行ってきており、特にこの10年は、日本から海外へ進出するブランドのサポートを展示会と輸出の両面から支援してきた実績があった。バイヤー、出展者、オーガナイザー(実は子供服のトレードショー「プレイタイム東京」も立上げている)の3者の立場を経験して、3者にとって理想的な展示会を目指すために、新しいタイプの展示会に辿り着いたところだった。またカシュ・カシュの事業として、パリの展示会に30回以上の出展経験を積み、そこで感じた問題点を改善しつつ、小さなブランドも海外へ出ていく可能性が見い出せるような座組みを考案した次第だ。
しかし、所詮は個人事業レベル。慣れないパワポを駆使して、素人仕事に毛が生えたような手作り展示会でもあった。それでも多くの古くからの知り合いが助けてくれて、出展者にアドバイスをくれたり、展示会を紹介してくれたりと盛り立てていただいた。この場をお借りして、支えてくださった皆様に御礼を申し上げたい。
そして、安い出展投資で負担感が少なく、気軽に参加できる仕組みをもっと多くのブランドに享受してもらうためには、プロフェッショナルな企業にお願いすべきと決断した。更には、「海外に出ていくことが、市場拡大にとって不可欠である」と『ファッションスナップ』や『アパレルウェブ』の記事で書いてきたこともあり、これも小さなブランドが投資額が少なくても参加できる仕組みを早急に作らねばと考えていた。そして、そこに共感してくれる企業であることも重要な点であった。
こうしてカシュ・カシュからJCDにこの事業を移管することとなった。
実はこのシステム、旅費をかけずに出展できるという点で地方の日本ブランドだけでなく、海外ブランドにとっても有効なものなのだ。
9月22日(金)14:30から、東京・渋谷の文化ファッションインキュベーションで開く「出展者向け説明会」で色々とお話したいと思う。興味のある方は、ご参加いただければ幸いだ。
 2017/09/18 21:20  この記事のURL  / 

ビームス・設楽社長の温かい選択について


今月からUSENが提供するスマホアプリ「SMART USEN」の中で『ジュルナルクボッチのファッショントークサロン』という番組をスタートさせた。なかなか肉声を聞くことのできない業界著名人の方々の素顔や生い立ちなど、その人のキャラクターを浮き彫りにするようなトーク番組を目指している。アシスタントには、とても気持ちよくサポートしてくれるプロのキャスター、石田紗英子さんに入っていただいているので、武骨な男二人の会話も柔らかく和やかになり有り難い。
さて、あちこちで評判になっているようだが(真相は不明だが・・・)、第1回のゲストには、ビームスの設楽洋社長にお越しいただいた。話上手なので、48分もの長きにわたり、休憩無しのノンストップで録音され、ほぼ私のエンディングのつまらない解説のみカットで、まるまるお聞きいただける。是非、設楽さんの人柄が出ている肉声をお聞きいただきたい。
さて、その中で出た話を一つ。設楽さんの初孫が生まれた日に、その足でグーグルとの打ち合わせがあり、そこで出た話がAIの話だったそうだ。その時、思ったことを設楽さんは、こう語っている。



「極論すると正しい選択をするには、AIが社長になった方が良いくらいの時代になっちゃうかもしれない。あらゆるものが予測できて。ただ、正しい選択と、温かい選択は違うと思ったんですね。それで自分がやっていることは、きっと温かい選択をして、アートとか、カルチャーとか。文明は飯の種になるけど、文化は飯の種にならないんですよ。そうして正しい選択が、会社が儲かることとなると、今やっていることの不採算な文化だとかいうのは止めちゃった方が儲かると。でも、それだけじゃつまらない。無駄なものの中に、なんか価値があるんじゃないかっていうこのバランスを、次の時代どうやってやっていくか」と述べた上で、社内用語として通じる「温かい選択」の話として、社員から上がってくるプロジェクトを次々とやらせていくことに例えていた。
ファッションこそ、この無駄に見えるが人間の感性や感動に訴える「温かい選択」が必要なのだと実感を持って伝わってくる話だった。
同番組のインフォメーションの中で、手前味噌ではあるが、来週から始まる合同展「ソレイユトーキョー」を紹介させてもらった。小さなブランドが少額の投資で参加でき、ブランド側の担当者が全く居ない空間なので、来場者側もゆったりと自分のペースで見て回れるコンフォタブルな状況を作り出したいと思った。本気でモノに向き合って、消費者に感動を届けられるかどうかを見極める時間を提供できるのではとの発想からのスタートだった。気が付けば5回目となり、一定の成果は出せたのだと思う。またパリへの合同出展にもトライし始めたところだ。しかし、まだまだ道半ば。次へのステップに向けて新たな取り組みにチャレンジしていきたいと決意を新たにしている。そう、業界の誰もが時として「温かい選択=可能性を少しでも感じたらチャレンジしてみる」をできるように。

 2017/08/21 15:52  この記事のURL  / 

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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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