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サスティナビリティーとパタゴニア


「サスティナビリティー」について、弊誌『Fashion力』の昨年8月号で取り上げたことがある。純粋に環境や科学的視点からのサスティナビリティーと文化・文明的側面からの視点の2面性から捉える試みだった。その後もサスティナブルという視点は、言葉に表さないでも誌面の底部に流れる継続的テーマとして位置づけてきたつもりだ。その後も「ファッションテックが業界の持続可能性を高めてくれるツールとなるか」といった視座や今月末発行の次号は、「CtoCハンドメードマーケット」に着目して、大量生産大量消費との対比で捉えてみた。
さてファッション企業でも、この視点に立って、なおかつファッションとしてのポジションを確立できている企業はそれほど多くはない。アウトドア・アパレルのパタゴニア(本社:米国カリフォルニア州ベンチュラ、日本支社:神奈川県横浜市)はその数少ない代表例と言えるだろう。3月末に東京・表参道で同社がこの春発売するウィメンズ・スイムウェアの中で最もズレにくい機能的なビキニ「ナノグリップ」 の「ウィメンズ・ナノグリップ・トライアングル・トップ」に関するローンチイベントを開いた。



イベントには同社のアンバサダーでプロサーファーの武知実波さんが登壇し、トークショーが行われた。武知さんは徳島大学院生で現役のプロサーファー、2020年東京五輪の強化指定選手でもある。彼女の口からは「トレーサビリティーなどを含め、考える機会にしてもらえたら嬉しい」としっかりとした意思が語られた。
2016年に登場した「ナノグリップ」は、革新的なマイクロファイバーを使った裏地により、濡れると素肌に密着し、激しいスポーツでもぴったりとフィットし、ズレにくい水着としてサーファーやビーチバレー選手などから高い支持を得ているそうだ。
今回の新製品は更にコンパクトなバストにも対応し、面積の小さい生地ながらも高い密着度を備えている。調節可能なクロスバックのストラップにより、優れたフィット感を実現し、素材にはリサイクル・ポリエステルとリサイクル・ナイロンを使用。縫製はフェアトレードUSAの認証済み工場で行われている。ついにスイムウェア全製品がフェアトレード・サーティファイドとなったそうだ。



これら製造される各ウェアに対し、労働者が生活水準の改善のために使うことのできる賞与をパタゴニアが労働者に直接支払い、それらはプライベート・ヘルスケアや託児所などの社会的、経済的、環境的な地域事業のために使用、あるいは労働者にボーナスとして支給されるそうだ。またフェアトレード・サーティファイド製品の売上の一部が直接、その製品を縫製した人たちの手に渡る仕組みで、2014 年の10 製品から284 製品にまで増えた。このプログラムは拡大しつづけ、現在までに7000人以上の労働者がフェアトレードの恩恵を受けているという。
ナノグリップの価格はトップが8964〜9720円、ボトムが7884〜8316円。
全国のパタゴニアの直営店、通信販売、オンラインショップ、正規取扱店(一部を除く)で販売されている。
特に注目してほしいのは、フェアトレード・サーティファイドのプログラムを紹介したビデオ映像『フェアトレード:最初の一歩』だ。このビデオを学生たちにも授業で是非見せたいと心に留めた。


 2017/04/08 16:42  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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