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巨大な宣伝装置と美術館の資金集めでウィンウィンの関係

(c)2016 MB Productions, LLC

2015年5月2日に開かれたNYメトロポリタン美術館(メット)のファッション・イベント「メットガラ」の裏側からその日までを追いかけたドキュメンタリー映画『メットガラ〜ドレスをまとった美術館(原題; THE FIRST MONDAY IN MAY)』が公開される。主催は『プラダを着た悪魔』のモデルとなった米国版『ヴォーグ』編集長のアナ・ウィンターと企画展示を担当するキュレーターのアンドリュー・ボルトン。芸術監督にはウォン・カーウァイを起用し、テーマは「China」。中国メディアの政治性を帯びた執拗なインタビューに辟易したり、値が張るポップスターのリアーナには、アナ本人から電話を入れて、やんわりとプッシュするなど生々しい舞台裏が明かされる。



招待されるのは、アカデミー賞の常連たちやミュージシャン、ビッグメゾンのデザイナーなど各界のセレブリティーばかり。ジョージ・クルーニー、レディー・ガガ、アン・ハサウェイ、マドンナ、ジャスティン・ビーバー、サラ・ジェシカ・パーカー、ビヨンセ、クロエ・セヴィニー、ジェニファー・ロペス、カニエ・ウエスト、ビル・カニンガムなど錚々たる面々。 



そもそもメットがファッション部門を持ち、膨大なドレスやコスチュームを保管している点もファッション界からすれば有り難いことだが、やはりそこには、「ファッションはアートなのか?」との問いかけが付きまとう。それに対してジョン・ガリアーノやカール・ラガーフェルドらの発言が面白い。またその資金集めの策としての意味を持つメットガラというイベントの本質も観る者に新たな知見と鬱屈とした感覚を与えることになるだろう。
まるで結婚式の席次を決めるように、いやもっと身近なのはショーのフロントロウの配置を決める時のようかもしれない。誰と誰は仲が悪いとか、どっちが格上とか。下々から皮肉たっぷりに仰ぎ見ることもできる作品でもある。それはある種、滑稽な姿かもしれない。
別の視点から言えば、ビッグメゾンが座席を何席も買い取り、自らのドレスを提供したセレブリティーを招待し、大きな宣伝効果を狙う。その巨大な宣伝装置をプラットフォームにして、メットの資金集めを行う。ウィンウィンのプラットフォームを作り上げて、マスコミが喧伝して効果抜群。この記事も一端を担っているのか。いや、ちっぽけ過ぎて担っているとは言えないな。
4月15日からBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国公開。

さて、本作とのコラボアイテムがアッシュペーフランスから発売される。「ジャマン・ピュエッシュ」のバッグ(75000円)、「ルパート・サンダーソン」のパンプス(82000円)、「セルジュ・トラバル」のリング(38000円)、「イオッセリアーニ」のネックレス(45000円)など8ブランドから1アイテムずつ登場する。店頭でのコラボイベントも開催される予定だ。

ジャマン・ピュエッシュ、ルパート・サンダーソン
セルジュ・トラバル、イオッセリアーニ



 2017/03/01 00:01  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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