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レベルアップする非日常体験


旅は非日常体験を得られ、インスパイアされるモノ・コトとの出会いや心身のリフレッシュに役立つ。しかし、その非日常体験のレベルは人により違い、体験レベルに合わせた感動が必要になる。成熟化した消費者にとっては最早、見た事もない景色やハイレベルな「おもてなし」が必須ということだろう。
さて筆者のレベルは常人並みか、それ以下だと思うが、少しばかり食い意地が、いや、かなり食い意地が張っているせいか、晩御飯とアルコールのマリアージュにはうるさいかもしれない。
そこで最近訪れた二つの宿の話。



ひとつは、福島ハイテクプラザでの講演の前夜泊った「信夫温泉のんびり館」。駐車場にクルマを停めて、吊り橋を渡ると宿がある。このアプローチは、導入部としては可笑しみがある。温泉はツルツルで枡酒を愉しめる気持ち良い露天もあるのだが、何よりも夕食の創作会席メニューが素晴らしかった。まず食べたことの無い食材と味付けの組み合わせで、新しい味覚体験。「南瓜のビシソワーズ」「フグ皮柚子下ろし」「ずわい柚子」「海老ずんだ和え」「ほやの牛蒡味噌」と本田耕二総料理長の腕前が凄い。料理に合うのは、やはり日本酒。福島の地酒「飛露喜」と山形プレミアム級の酒「十四代」にあともう1種類を頼める「自慢の銘酒・利き酒セット」が嬉しい。そして女将の気さくな接遇も愉快だった。



もう一つは、伊豆大川にある「御宿・風月無辺」。こちらも駐車場にクルマを停めて、小さなケーブルカーで受付棟へ。チェックインを済ませると今度は自動運転のゴルフカートのようなビークルに乗り込み、離れの宿へと導く。まだ新しい建屋の為、室内も綺麗で快適だ。ベランダに露天風呂が付いており、遠く伊豆大島が望める。




こちらも夕食の懐石コースが素晴らしかった。まずは金目鯛の握り、そして刺身の「地魚の盛り合わせ」もレベルが高い。「伊勢海老・和風ブイヤベース」は日本酒でも白ワインでもいける。「活鮑の踊り焼き」も付いてコスパの良さを感じさせる。食事部屋からも遠く相模湾を眺められた。料理のタイミングやスタッフとの会話にもホスピタリティーを感じる。マニュアルでなく、接客の極意、人としての会話を心掛けている様子が窺えた。
共通して言えるのは、まずはアプローチでワクワク感を高め、落胆させない風呂と料理。そして人間味あるホスピタリティー。これでリピート間違いなしだ。
翻って我が業界に当てはめるなら、店への導入部としての驚きのディスプレイ、満足感と良い意味での意外性のある品揃え、そして人間味ある接客。異業種からも学ぶべき点は、色々ある。さあ、また旅に出よう。

 2016/11/01 21:30  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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