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技術と機械の進歩を横目にアンティークの負い目あり


個人的な趣味でアンティークウオッチをいくつか持っている。古くは1910年代のホーロー文字盤の「オメガ」や「ロレックス」の40年代末の手巻き式、国産でも伊勢湾台風の被害で無くなってしまった「リコー」の手巻きなど、また自動巻きも70年代の「ブライトリング」クロノマチックや「チュードル」の80年仏海軍公式サブマリーナなど欧州の蚤の市で見つけてきたものをコレクションしてきた。しかし、古いものは何でもそうだが手が掛かる。オーバーホールするだけでも数万円はするし、それを3年程度で繰り返さなければならない。そういう意味では、最新の腕時計だと、その辺りの気分が相当に軽くなる。
さて、クオーツや電波ソーラーなどの技術で定評のあるシチズン時計から、機械式のウオッチブランド「CLUB LA MER(クラブ・ラ・メール)」が約20 年ぶりに復活する。20〜30 代の若い世代に向けたエントリー機械式時計ブランドとして、印象的なブルーを使い、クラシカルなデザインとこだわりの品質を備えた8モデルが11 月11 日に発売される。
フランス語で「海」を意味するラ・メールという名のブランド、クラブ・ラ・メールは、1984 年に誕生したシチズンのウオッチブランドで、当時のトレンドだったトラッドなデザインをアイデンティティーに約10 年間にわたり商品を展開してきた。そして来月、約20 年ぶりに新しさと伝統をまとい再デビューすることとなった。
ブランドコンセプトは「手の届く機械式時計」。機械式時計は一般的に高価格のイメージがある中、自動巻きの魅力を多くの人に知ってもらいたいという思いから、丁寧に仕上げられた文字板やケースに加え、信頼性の高い日本製ムーブメントを搭載しながらも、手の届きやすい2〜3万円台の価格帯でコレクションを構成し、発売することとなった。
設立当時のブランドアイデンティティーであるトラッドなデザインを核としつつも、ラ・メールという名前の通り、海を想起させるブルーの差し色や、実用性を考慮したシンプルモダンなエッセンスを採り入れている。時計の魅力であるムーブメントの繊細な動きを楽しむことが出来るよう前面オープンハートや裏蓋スケルトンモデルも登場し、若い世代に、時計本来の面白さや魅力を訴求していくという。
確かに自分も若ければ、こういったエントリーモデルに惹かれる事だろう。一方で手が掛かっても捨て難い魅力があるのが、アンティークの世界。エコノミー(経済的)ではないが、長く使えることはエコロジーに繋がると多少の負い目を感じつつ言い訳のように言ってみたり。しかし、そういう意味でも今回のクラブ・ラ・メールについて思うのは、長く使える高品質なケースや仕上げを、この価格帯で作ってしまえる技術力の進歩を感じざるを得ない逸品だったということだ。


 2016/10/28 19:11  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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