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大きなトレードショーが敬遠される理由


2018年春夏シーズンのパリメンズ(6月23〜25日)を回り、率直に感じたのが、大きなトレードショーが困難な時期を迎えているということだ。
グラフと表は、メンズ春夏シーズンに開かれた主要3展示会の出展者数とその合計のこの4年間の推移だ。総出展者数が明らかに減少していることが分かる。一方で、ロンドンの「ジャケットリワイヤード」のメンバーが17-18年秋冬シーズンに立ち上げた「レジデントショールーム」がバスチーユ・デザインセンターで開かれ、2回目となる今回は45ブランドが出展し、うち18が日本ブランドで「マスターピース」や「FDMTL」がカプセルから移って参加していた。
また3展の中で唯一、出展者を増やしているのが、「マン」だ。共通して言えるのは、前回までのマン(会場がエスパス・モンゴルフィエールでナチュラル感があった)もレジデントも、比較的コジーな空間とアットホームな雰囲気で、スペースもさほど大きくなく、サクッと見て回れる規模感だという事だ。
総じて言えることは、巨大化した展示会場で来場者の徒労感とブランドの見落としが広がっているという事だ。それに加えて、テロ事件以降の出張日程の短縮化や出張者数の削減で、回り切れなくなりつつあり、既存取引先優先で回り、新規を見つける点でトレードショーが後回しになっているような気がする。またその徒労感との対比で、小規模なショールームでのゆったりとしたオーダーを望むバイヤーも増えている。
そして、高くなり過ぎたトレードショーの出展料の影響も大きい。小さな新規ブランドにとっての過大な投資額が重荷になっており、バイヤーからすれば、面白い若手や新規ブランドが見つけにくくなっているという側面もあるからだ。最近になって「トラノイ」が「トラノイ・コレクティブ」という若手のコーナーを作ってはいるが、インパクトを与えるほどのスペースではない。
もう一つの大きな流れは、圧倒的にSPAやバリューチェーンが跋扈して、品揃え専門店販路を根こそぎ奪っていることも忘れてはならない。卸型アパレルの売り先が間違いなく減っているのだ。決して無くなる訳ではないが、確実に減少していることも、トレードショーの活気を失わせている一因と言える。
こうした中で、トレードショーが復活する可能性はあるのか? 筆者は以下の2点を挙げたい。ひとつは、もう一度本来のトレードビジネス支援という目的に沿って、組み立て直すことだ。小さなブランドたちをインキュベートする役割とバイヤーとのビジネスマッチングの場としての位置付けを再度明確化し、新たに立ち上がるブランドたちに初期投資額が少なく出展できるシステムを考えるべきだ。しかも出展者、来場者ともにコンフォタブルで新しい何か「サムシング・ニュー」を見つけられるヒントの数々を提示することも肝要である。もう一つは、ECなど変化する流通システムに対するブランド、バイヤー双方へのサポートとITを駆使したファッションテックをシステムに組み込んだトレードショーへと進化することだと思う。
シュリンクする中で、「卸型ビジネスモデルは終わった」との声も聞こえるが、他人とは違うものを身に着けたいという気持ちは、そう簡単には無くならない。またこれから先進国化する国々では、そのマーケットの拡大がまだまだ見込まれるはずだ。ブランドもトレードショーも、そこを目指して取り組みを始めるべきではなかろうか。




 2017/07/20 00:27  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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