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芸術家二人の人生から見える友情の複雑さ 映画『セザンヌと過ごした時間』

(c) 2016 - G FILMS - PATHE - ORANGE STUDIO - FRANCE 2 CINEMA - UMEDIA - ALTER FILMS

かつて暮らしたパリのアパルトモンは結構便利なところで、3つほどのメトロの駅が使えた。そのひとつに10番線のエミール・ゾラ駅があった。アベニュー・エミール・ゾラに面しているため、その駅名になったようだが、お恥ずかしいことに、この時初めて、小説家のエミール・ゾラを知った。皮肉なことに、生前名誉に恵まれたゾラと、生前認められず没後誰もが知る画家となったポール・セザンヌが幼馴染みで、その二人の間に在った葛藤が映画『セザンヌと過ごした時間』の焦点だ。



1852年南仏エクサンプロヴァンス。イタリア人で貧しい母子家庭のゾラがいじめられているところを裕福な銀行家の息子セザンヌが、助けて二人の友情がスタートする。パリに出て以降、小説家として成功を収めるゾラは、少年時代に支えてもらった恩もあり、セザンヌを物心両面で支える。ゾラの小説『居酒屋』『ナナ』のベストセラーの後、『制作』の発表が転機となる。そのモチーフがセザンヌを思わせ、セザンヌを酷く傷つけることとなる。二人の間に徐々に亀裂が生まれ、パリと南仏の距離のように離れていくことになる。
印象派が台頭する時期でもあり、画壇では認められず、くすぶっていた新たな潮流が勃興する時期だけに勢いのある若き天才たちの鼓動が垣間見え、有名な印象派の面々の登場も楽しめる作品だ。



セザンヌ役は、『イヴ・サンローラン』でピエール・ベルジェ役を演じたギョーム・カリエンヌが、ゾラ役は近年監督もこなすギョーム・カネが務めた。監督は、『シェフと素顔と、おいしい時間』などのダニエル・トンプソン。
以前エクサンプロヴァンスのセザンヌのアトリエを訪ねたことがあるが、映画のシーンでも見事に再現されていた。そして何よりもあの美しい「サント・ビクトワール山」の風景こそが、セザンヌの激しい気性を癒してくれる友だったのかもしれない。
9月2日よりBunkamuraル・シネマほか全国順次公開。


 2017/07/09 03:07  この記事のURL  / 


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名前:久保 雅裕
Masahiro KUBO

アナログフィルター『ジュルナル・クボッチ』編集長

ファッションジャーナリスト・ファッションビジネスコンサルタント。繊研新聞社に22年間在籍。『senken h』を立ち上げ、アッシュ編集室長・パリ支局長を務めるとともに、子供服団体の事務局長、IFF・プラグインなど展示会事業も担当し、2012年に退社。

大手セレクトショップのマーケティングディレクターを経て、2013年からウェブメディア『Journal Cubocci』を運営。共同通信やFashionsnap.comなどにも執筆・寄稿している。杉野服飾大学特任准教授の傍ら、コンサルティングや講演活動を行っている。また別会社で、パリに出展するブランドのサポートや日本ブランドの合同ポップアップストアなども実施し、日本のクリエーター支援をライフワークとして活動している。
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