| Main | 次へ
‘老人力’がアパレルを救う?
 シャツ屋さんからランドセル屋さんに転職された方のお話を伺ったが、ボーナスがヒト桁違ったそうだ。大量の期末残品に苦しむシャツ業界と一年近くも前倒しの受注生産でほぼ残品ゼロのランドセル業界の明暗を痛感させるエピソードだった。
 そのランドセル屋さんでは来年の新学期向け商品どころか再来年の新学期向け商品もすでに生産を終え、今は再々来年向け商品の見込み生産に入っているとか。注文の入り方は毎年安定しているので計画生産してもズレは小さく、職人のキャパがギリギリなので手が空いたら先の商品を生産するようにしているとか。アパレルギョーカイから見れば雲の上の高天原かと思うようなお話だった。
 少子化で毎年、新入学する子供の数はジリジリと減っているし、購入したら6年間は買い替えもほとんどないという安定縮小が続く特殊なマーケットだが、パパママに爺婆が加わった6ポケットで単価の上昇が続き、新入学小学生の減少と職人の高齢化・引退による国内生産のキャパ減少が釣り合って需給が均衡するというマジックが成り立っている。ここでポイントなのが‘国内生産’が大前提になっている事で、海外生産が当たり前で‘国内生産’など滅多にお目にかかれない(今や数量では3%を切る)というアパレルの世界とは価値基準の次元が違う。
 それが成り立っているのは商品選択の真の決定者が子供ではなく爺婆だという事に尽きる。デザインや色は子供が選択するのだろうが、ブランドの選定はお金を出す爺婆の意向が大きく左右しており、彼らの価値観が‘日本製’と決めつけているからだ。度外れた過剰供給がアパレル不振の最大要因なら‘メイド・イン・ジャパン’の喧しいキャンペーンも実効性が期待されるが、それには‘真の決定者’を変えなければなるまい。
 バブル期にプレゼント癖が付いた団塊世代も既に‘財力’で孫のご機嫌を取るご隠居となっているから、将を射んとすれば〜で彼らの価値観に訴えるのも一手と思われる。ブランド子供服にも波及している‘爺婆’の発言力がトゥイーンズ服やフレッシャースーツまで及べば、アパレルの苦境も多少は和らぐのではないか。‘老人’の頑迷な拘りも時として世のためになる事もあるのだろう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら

--end
 2017/11/30 11:20  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗販売の未来が見えて来た
 「ショールームストアとAI接客システム総研究」というテーマで開催するSPAC月例会が明日に迫る中、ECが席巻するアパレル業界の実情と国内外の様々な事例を検証したレポートがようやく完成した。その中からピンポイントで要点を挙げておこう。
1)ECと店舗販売の伸び率格差は25P近い
 メンバー企業の直近決算期平均EC比率はほぼ11%だが、二割を超える伸び率のECと前年割れの店舗販売との平均格差は24.6Pにも及ぶ。それはEC売上を公表しているEC比率10%以上のアパレルチェーン14社の平均も大差なく、格差は23.2Pにも及ぶ。
2)ECと店舗のカニバリはEC比率15%超で顕在化する
 『ECに売上が流出している』と実感する企業の平均EC比率は16%強、実感しない企業の平均EC比率は7%強と倍以上の差があり、EC比率が20%を超える企業は総て『ECに売上が流出している』と実感している。これは米国アパレル業界のデータともピッタリ一致する。
3)店舗とECの在庫を一元化するとカニバリが加速する
 6割近い企業が店舗向けとEC向けの在庫を‘データ’も‘物理的’にも一元化しておらず、その場合はEC比率が二桁に乗ってもカニバリの顕在化が遅れる。「在庫一元化」は両刃の剣で、一元化してEC比率を高めるとカニバリが加速して店舗販売を追い詰めるリスクが指摘される。
4)ショールームストアはもはや実践段階
 一部の先進企業での実験やEC企業のD2Cに限定されていた「ショールームストア」も青山商事の「デジタル・ラボ」など「EC活用品揃え拡張型」、丸井の「フィットスタジオ」など「EC活用サンプル陳列型」が軌道に乗り、‘販物分離’ゆえの圧倒的効率が実証されて実践段階に移りつつある。
5)AI接客システムも見えて来た
 SFチックなロボット接客はともかく、Amazonの「Echo Show」など音声認識AIとタッチパネル・ディスプレイを組み合わせたエントリーシステムは技術的にもコスト的にも実用段階に入り、数年を経ずして店頭販売にも定着すると見られる。
      ※       ※       ※       ※
 アパレル消費の衰退が止まらずカニバリ覚悟でECにのめり込む業界だが、追い詰められる一方だった店舗販売にもようやく未来が見えて来た。明日のSPACでは多数の事例とデータを駆使して店舗販売の未来を余す所無く明らかにしたい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら

--end
 2017/11/28 10:34  この記事のURL  /  コメント(0)

衣料消費復活の夢は‘幻’だった! 
 9月7日の当ブログ『ファッションは復活する!?』で6年振りのデザインと装飾の復活で衣料消費が底打ちするかも知れないと期待してみたが、秋商戦の結果を見る限り‘幻’に終わったようだ。
 全国百貨店売上総額はインバウンドの復活に押し上げられて8〜9月こそプラスに転じたものの、10月は免税売上高が87.3%も伸びて総売上の6%を占めても国内顧客売上が4.7%減少して98.2と再び前年を割った。中でも足を引っ張ったのが5.3%も減少した婦人服・洋品で、0.4%減に踏み止まった紳士服・洋品とは好対照をなし、衣料品全体では4.3%減少して総額前年比を1.5ポイントも引き下げた。衣料消費は未だ底打ちしていないのが現実なのだ。
 衣料品は前年(16年)も大きく落としているため前々年比で見ると、紳士服・洋品が8〜10月平均で93.4とヒト桁の落ち込みに踏み止まったのに対し、婦人服・洋品は同88.7と大きく落としており、その差は4.7ポイントも開いている。前々年からの減少額(年間)は紳士服・洋品の339.5億円に対して婦人服・洋品は1451.9億円と4.3倍近く、そこにこそ衣料不振の本質が潜んでいるように思われる。
 家計支出調査では紳士衣料の1.8倍弱の婦人衣料が百貨店では紳士衣料の三倍近い売場を占めて三倍強を売り上げており、婦人服が過大供給になっている事は間違いない。80年頃には1.7倍程度の差だったのが90年頃には2倍強になり90年代末には3倍にまで開いた経緯を振り返っても、消費の実勢を超えた拡大であった事が伺われる。
 それ以上に本質的な要因は『女性の労働力化による衣料消費の男性化』であった。女性(25〜55才)の就業率は02年の63.9%から16年には73.9%と14年で10ポイントも高まったが、これと並行して女性のファッション意識は大きく‘男性化’して行ったと見られる。ファッションを楽しむという‘嗜好品’から多くの男性と同様に生活の‘必需品’として捉えるようになり、ファッション性より機能性や着回しの手軽さを志向するようになったのではないか。就業率の上昇に伴ってスカート比率が低下しパンツが主流となって行った事もそんな変化を伺わせる(95年にパンツがスカートを逆転し01年以降、差が開いて17年では3.3倍に広がっている)。
 女性のファッションが‘嗜好品’から‘必需品’へと変質するに連れ、付加価値が剥げ落ちて単価が下落し、買い替えサイクルも伸びて購入数量も減少して行ったと見るべきではないか。少子高齢化と社会負担増が進んで女性が労働力化していく中、女性衣料消費の男性化が進むのは必然で、百貨店の婦人服売場も遠からず紳士服売場の倍程度に圧縮され、紳士服の三倍近くもある婦人服ブランドも整理淘汰されざるを得ない。ギョーカイはそんな現実を直視しているのだろうか。


◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら

--end
 2017/11/27 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

伊勢丹新宿本店の‘怪’
 日本一の売上を誇る伊勢丹新宿本店には外部からは??と訝られる‘怪’が幾つも白昼鬼行するが、中でも最大の‘怪異’と言うべきは地下二階の存在だろう。混雑と行列で歩くのも辛くなる地下一階の食品フロアからエスカレーターで地下二階へ降りると、そこは混雑とは無縁の別世界が広がる。
 地下が二層ある今日の百貨店なら食品を二層展開するのが需給の現実に見合っていると思うが、これまで「ファッションの伊勢丹」の面子にかけて「BPQC」や「イセタンガール」などファッション関連を試行錯誤し、2012年9月のリモデル以降はナチュラルコスメやヒーリング関連、サプリメントや健康食品、カフェやスパサービスを提供する「ビューティ・アポセカリー」のフロアになっている。そのコンセプト自体は先見性を評価したいが、食品フロアの下に化粧品という‘タブー’の組み合わせを配する合理性があるとは思えない。素直に食品フロアを二層(正確には1.3層強)にすればバラエティを拡充出来るし、顧客に苦痛を強いて来た混雑も多少は解消されるのではないか。それがどれほどの売上増をもたらすか、地下一階と地下二階の販売効率差を知る当事者には自明のはずだ。
 伊勢丹新宿本店の‘怪’はそれだけに止まらない。一階の化粧品売場は今時の都心百貨店としては異例に狭く、インバウンドで盛り上がる他百貨店に猛追され、化粧品売上日本一の座も阪急うめだ本店に奪われたと伝え聞く。2〜4Fの三フロアを婦人ファッションが占めるため、婦人雑貨、アクセサリー&ジュエリー、ハンドバッグまで1Fに犇めき、化粧品を拡げる余地がないのだ。
 販売効率や売上伸び率を考えればナチュラルコスメも加えて1Fの化粧品を拡大し、サプリメントやスパサービスは5Fか6Fに、12年11月のリモデルで1Fに在った婦人靴を2Fに上げたように婦人雑貨は婦人服フロアに組み込んでもよいのではないか。さすれば服ばかりが並んで抑揚を欠く2〜4FのVMDにもメリハリが付いて目線も通るようになる。
 見てくればかり気にする昔ながらのVMDも‘怪’のひとつで、消化仕入れのせいか販売の基本であるフェイシング管理も励行されず、最初から欠品だらけの陳列ゆえに接客中に煩雑にストック探しに走って顧客を待たせる悪しき慣習も改められる気配はない。せっかく社長も替わったのだから、様々の‘怪異’も改められると期待するのは初心に過ぎるだろうか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら

--end
 2017/11/22 11:41  この記事のURL  /  コメント(0)

次に来るアパレルの危機
 米国ではアパレル・服飾のEC比率が20%に迫ってデパートやアパレルチェーンの閉店が広がり、同分野のEC比率が11%を超えて伸び続ける我が国の業界も‘次は我が身’と身構えざるを得ないが、米国ではプロパー流通を脅かす、もうひとつの勢力が勢いを増している。「オフプライスストア」がそれで、米国アパレル・服飾売上の14%近くを占めるから、プロパー価格ベースでは30%に迫るのではないか。前門のEC、後門のオフプライス流通に挟撃されて細る一方なのが米国のアパレル・服飾店舗販売の実情なのだ。
‘集団自殺’と揶揄されるほど販売不振が極まる我が国アパレル業界も、そんな米国と較べればまだ平和なのかも知れない。何故なら、バーゲンしてもアウトレットに回してもファミリーセールを繰り返しても売れ残ってバッタ屋に放出される14億4400万点(総供給量の52.6%/16年)もの衣料品の大半が国内マーケットに還流せず、24万トンの‘中古衣料’や‘原料資材’となってアジア各国(マレーシアや韓国が多い)に輸出されているからだ。
 米国のように売れ残り在庫の多くがオフプライス業界に流れ国内の店頭やECに還流すればプロパー流通は一段と圧迫され、集団自殺どころか大量絶滅を招きかねない。‘中古衣料’輸出がガス抜きとなってアパレル流通は瀬戸際のバランスを保っているというのが実情ではないか。そんな‘ガス抜き’が働かなかった呉服業界など『流通在庫11年分、箪笥在庫100年分』と揶揄されるほど在庫が溜まり、小売販売額の11.5%(矢野経済)をリユース品が占めて新品販売を圧迫している。
 衣料品のリユースは急拡大していると言ってもB2C/C2C合わせて年間2.4億点(日本リユース業協会)ほどと購入数量で18.4%、金額では3〜4%と推計されるに過ぎないが、これがブランドの放出品(未使用新品で色・サイズも揃う‘packaway’)中心にB2Cの「オフプライスストア」で大量販売されるようになればプロパー流通の受けるダメージは想像に難くない。
 パッキン幾らトン幾らで輸出されて行く‘中古衣料’もきちんと仕分ければ数倍の流通価値に化けるし、再編集VMDと二次流通のスキルを組み合わせればTJXのような巨大企業(3812店舗/年商331.8億ドル/17年1月期)も成り立ってしまう。売れ残り在庫に苦しむアパレル業者にとってはキャッシュに換えてくれる救世主、その反面でプロパー流通を圧迫する悪魔と、両刃の剣を発揮するパワービジネスが我が国でも台頭するのは時間の問題なのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/11/21 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ