前へ | Main | 次へ
久しぶりに上手いVMDを見た
 幼稚園のお遊戯みたいな似非VMDが蔓延して店がバラックみたいになって久しいが、その要因はPOSデータ依存の売場を見ない在庫運用と近年のEC偏重による店舗MDの退化だと推察される。かつてはAIも無くECに依存する事も無かったから売場だけが販売訴求の場で、MDを適確に表現し在庫状況に応じて編集運用する技がないと思うように販売消化が進まなかった。本部のMDやDBとてAI以前の単純なPOSに依存しきる訳にもいかず、定期的に売場を巡回し編集構築に立ち会って売場の動態を掴んでいた。
 そんな時代が遠い過去になって店のVMD運用スキルがすっかり退化した今日、バラックみたいな売場ばかりかと思っていたら、久しぶりにキラリとMDを表現している店に出会った。それは10月13日に開業する「高崎オーパ」の内覧会での事だった。
 「高崎オーパ」そのものは業種構成や客層対応などテナントミックスの緻密さを欠きBC級テナントも目立って褒められたものではなかったが、それだけに突出して見えたのかもしれない。その輝ける店とは「スナイデル」と「ジェラートピケ」、単品構成で両者よりMDが粗いだけVMDも崩れがちだが周囲の店よりは数段上の「ミラオーウェン」だった。
 すべてマッシュグループのブランドだが、これまで見てきた同グループの店より格段にレヴェルが高かった。売場の子達に聞けば本社のMDが来て組み上げていったとの事で、MDを組んだ本人でないとここまでは出来まいと思わせる仕上がりだった。ビジュアルマーチャンダイザーには悪いが、どうしても在る在庫から組むしか無く、上手く編集し切れないでお化粧で誤魔化すところが出てしまう。新設店舗ゆえMDをそのまま崩さずに表現できたのだろうが、やはり企画を組んだMD本人がVMDまで組み上げるのが理想なんだと再確認させられた。
 「ミラオーウェン」は色や素材のコントラストは洒落ていても単品合わせの定型ルックVMDを出ないが、「スナイデル」では素材コントラストを効かせたモノルックの色回転VMD、「ジェラートピケ」では異素材合わせのクロス・コンポーネンツVMDが多用されていた。他にも「ロペ」などジュン系のブランドも定型ルックVMD中心に上手く構築していたし、地元のナチュラル系セレクトショップ「チェスト・オブ・ドロワー」のアートなVMDも目を惹いた。
 10月18日に開催する「店舗運営効率化VMD革新ゼミ」ではジーユーやZARAからデザイナーブランドやラグジュアリーブランドまで、今秋冬の最新店頭も加えてお遊戯でない本当のVMDの技を詳説しよう。





◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/11 09:30  この記事のURL  /  コメント(0)

ECのアキレス腱は顧客データ
 手広くECのサポートを手掛けている某システム会社が悪質なハッキングに遭ってサーバーのデータがブロックされてしまい、取引しているブランドが四苦八苦していると聞いたが、データサーバーや物流施設のセキュリティ管理が甘いと思わぬリスクを抱える事になる。‘想定外’と言い訳しても一度、大事が起こってしまえば失うものは大きい。
 最近でもDCの火災がアスクルの業績に響いた事は広く知られているが、1923年(大正12年)9月1日11時58分32秒に発生した関東大震災が当時、ピークに達していた戦前の通信販売ブームを一瞬にして叩き潰した事は意外と知られていない。震災による広範な火災で通販各社は顧客名簿(今ならサーバーの顧客データ)の大半を焼失してしまい、業容の衰退を余儀なくされた。
 我が国の百貨店は未だEC比率が2%弱と伸び悩んでいるが、1910年代の三越では通販売上が総売上の20〜25%を占めていたそうだ(代引き郵便小包が主流だった)。それが震災後の1935年には1.1%まで急落したのだから、震災後の金融恐慌や世界恐慌が重なったとは言え、顧客名簿の焼失は壊滅的な打撃だったと推察される(満薗勇著「商店街はいま必要なのか」より)。
 もっとも1890年代からシアーズ・ローバックやモンゴメリー・ウォードに代表されるカタログ通販が小売の主流となっていた米国でもピークは1910年代で、T型フォードなど低価格で量産されるようになった乗用車が普及するにつれ加速度的に広がったチェーンストアによって1920年代後半には下火になって行ったから、大震災がなかったとしても通信販売は店舗小売業に押されて衰退したのかも知れない。ちなみに戦前ピークの1939年には百貨店は全国203店舗で小売総額の9.3%、東京市では18店舗で同32.3%を占める最大勢力に発展していた。
 百貨店の今の苦境が嘘のようだが、ECとていつ何時、どんな事情で暗転するやも知れない。北朝鮮ミサイルの電磁パルス攻撃など現実になればデータサーバーの被害は関東大震災並みになるだろう。幾重もの予備サーバーにデータをバックアップしておくのが賢明ではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/10 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

あの「しまむら」がEC進出?
 大手チェーンの中で唯一、ECに距離を置いてきた「しまむら」がついに来年からECを始めるそうだ。ECと言っても第一段階では店頭の‘客注システム’で取り寄せた商品を店舗で支払って受け取る方式で、第二段階でスマホやPCから予約出来るようにするが支払いと受取はやはり店舗に限定すると言う‘疑似EC’だ。ネットで発注も決済も完結して宅配するECはシステム構築の費用や運営経費が嵩むため検討段階としている。『ECを始める』とは言っても今時希有な及び腰だが、「しまむら」が今までECに手を出せなかったのには相応の理由がある。「しまむら」がECに躊躇してきた理由は以下の三点だったのではないか。
1)近隣ロードサイドの規格店舗をパート主体で運営して営業経費率が24.7%(17年2月期)と極めて低く、不動産費負担の重いテナントチェーンのようなECのコストメリットが見出せなかった。平均単価が900円弱と低いためBtoCの出荷コスト/宅配コストを吸収し難く、店舗販売より高コストになる可能性が高かった。
2)生産地で仕分けられたパッケージを店別に組み替えるクロスドッキングだけの「しまむら」のTC(トランスファーセンター)にはDCのようなピッキングヤードが存在せず、ECで受注した商品は顧客の指定するピックアップ店舗の在庫から引き当てるか近隣店舗の在庫を店間移動するしかないが、それでは店舗の消化管理精度が狂いかねない。売り切り御免の一蒔き投入ゆえ店在庫の奥行きもなく、ECの注文を想定して店在庫を積めば消化管理精度が維持出来なくなるリスクがあった。
3)経験則を積み上げた精緻なアルゴリズムによる「しまむら」の在庫コントロールシステムは支払い管理会計システムと一体化したERP型のはずで、24時間オンラインで受注を引き当てるECを始めるには膨大なシステム投資が避けられなかった。

 1)3)はともかく2)の事情は「ZARA」との共通性が指摘される。すべての商品をスペイン国内のPTC(プロセストランスファーセンター)で物流加工して仕分け、世界中の店舗に直送して一蒔きに徹する「ZARA」にはECに対応する消費地DCも在庫もピッキングヤードも存在せず、SMIで消化管理する店舗在庫をEC受注に引き当てる訳にもいかず、ECを始めるに当たっては各国各地域にEC専用のフルフィルセンターを設け、店舗在庫とは切り離して運用する方法を選択した(店舗受取は出来るが店舗在庫は引き当てない)。「ZARA」とは異なるCMIとは言え、TCでクロスドッキングして一蒔き投入に徹する「しまむら」にもピッキングヤードやストック在庫が存在せず、本格的にECを始めるなら「ZARA」のように店舗への在庫配分や物流と切り離したフルフィルセンターを各地域に設ける必要があった。
 『既存の物流体制とは切り離し店舗在庫は引き当てず、ベンダーから直接、店舗に納品させる‘客注品’取り寄せ方式でスタートする』そうだから、既存の物流体制の効率も在庫管理の精度も損なうリスクはないが、ベンダー側は「しまむら」のロット発注とは別に‘客注’向けの在庫を備蓄する必要が生じる。「しまむら」との取引は「完全買取」の現金払いゆえ廉価で良品を供給するサプライチェーンが成り立っており、ベンダーに在庫負担をさせるとなるとサプライチェーンの効率を損なうリスクがある。それを避けるべく『対象商品を絞る』としているから、ECの根幹である「品揃えの拡張」メリットはまったくなく、‘疑似EC’とは言っても‘客注品取り寄せサービス’のオンライン化でしかない。これでは『ECを始めます』ではなく『当分、ECはやりません』と宣言したようなものだ。
 元より「しまむら」にとってECを始めるメリットはSNSによる拡散効果に較べれば大きくない。むしろ周囲がECを拡大して顧客の購買慣習が一変する中、防衛的な色彩が強いのではないか。「しまむら」のスプレマシー・ポイントは全国二千余の生活圏に密着した下駄履き消費拠点であり、主婦層にとってはコンビニ以上のラスト・ワンマイル拠点に違いない。それを最大限に生かすのは『最大限の品揃え拡張』であって、限られた自社商品(どころか‘客注対象品’)の受け取り利便などという矮小な次元ではない筈だ。
 「しまむら」がやるべきECは自社コンテンツという狭い了見に囚われず世の全てのEC商品(物流や受け渡しの効率を考慮すれば「しまむら」の扱い領域品目)であるべきで、下駄履きアクセス(今風ならジャージ履きアクセスか)の「しまむら」で広範なEC商品を試して受け取れるなら、それで全ての蛇口を押さえることが出来る。限られた自社商品を売るより世の全てのEC商品の蛇口となるTBPPプラットフォーマーに化ける方がはるかに賢明だと思うが如何だろうか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/05 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

ライトオン赤字転落の構図
 南充浩さんが9月26日のブログで『ライトオンの赤字転落は好調時の不振在庫を持ち越した事が災いしたのでは』と指摘しておられたが、まったく同感で「Jクルー」との類似さえ指摘したくなる。
 ライトオンは11年8月期以降、好不調の波はあるものの年商800億円前後で足踏んで来たが、14年8月期に大きく落ち込んだ後、15年第3四半期〜16年8月期は好転し、16年の秋口以降は再び低迷を続けている。問題は17年8月期の赤字転落で、値引き処分した商品が当期の不振品だけなのか前期から持ち越した滞貨品が少なからず含まれるのかが問われる。
 決算書で見る限り09年8月期は4.52回だった在庫回転が11年8月期には3.46回に急落し、売上が落ち込んだ14年8月期には3.08回と一段と低下。売上が回復した15年〜16年も在庫回転は2.85回、2.64回と落ち続けたから、売上の伸び以上に在庫が積み上がった事が解る。不振品を処分した17年8月期も在庫回転は2.52回転とさらに低下しているから処分は完了しておらず、来期も持ち越し品の処分が業績の足を引っ張ると危惧される。
 この間の売上と在庫の動きを四半期毎に追って行くと、在庫コントロールの稚拙さが浮かび上がって来る。14年の不調期に冬物処分と夏物処分に躊躇して在庫が積み上がり、15年は売上と在庫のバランスを取ったが、16年第1四半期は売上が17.3%伸びたものの在庫は32.5%も積み上がり、第2四半期も15.4%の売上増に対して在庫は55.8%増、第3四半期は6.3%増に対して50.4%増、第4四半期も2.8%増に対して26.2%増と在庫コントロールが出来ず、不振在庫を処分し切れず大量に持ち越したと推察される。この状態は17年第1四半期まで続いたが、第2四半期、第4四半期と大量の値引き処分を行って在庫回転は2.39回まで戻している。
 17年度に値引き処分されたのは好調だった16年度の在庫が大半で、一部は14年度から持ち越した在庫も含まれていたかも知れない。南さんが店頭の処分品を見ての直感は正解だった訳だ。
 そんな話は我が国に限った事ではなく、米国Jクルー社の転落劇とも共通する。オバマ大統領夫妻の御用達ブランドとして頂点を極め14年1月期まで二桁営業利益率を誇ったJクルー社が15年1月期は一転して巨額の除却損を計上して売上対比22.7%、翌16年1月期は同55%もの赤字に転落したのも、巨額の暖簾代償却を含むとは言え好調期に積み上がった持ち越し在庫が大きかったとされる。
 好不調に拘らず売上と在庫のバランスをコントロールして不振在庫はシーズン末までに処分すべきで、該当期決算を化粧すべく翌期に持ち越す誘惑に負けてはならない。持ち越し在庫は期末の半値以下に減価するのはバッタ業界の常識だから期中に処分するしかないし、翌期に持ち越してはキャッシュフローを圧迫して二重に災いを拡げるだけだ。
 ライトオンが在庫コントロールの失敗を繰り返して不振在庫を持ち越す羽目になったのは、店頭販売から半年も前の発注が多かった事も起因している。同社が引き付けた発注を増やすとしているのは当然だが、NBや雑貨でVMI比率を高める事も必須ではないか。ジーンズメーカーがVMIに対応するサプライ体制を持っていないとしたら、ライトオンに限らずジーンズカジュアル店の先行きは暗い。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/04 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

誰の為に働くの?
 アパレルチェーン各社の決算書を見ると営業経費の大まかな内訳が記載されている。一番巨額なのが不動産費(支払い賃料や店舗絡みの償却)で、テナント出店チェーンの場合は売上対比で18〜21%も占める。次に大きいのが人件費で同16〜18%を占めるが、不動産費が肥大すると人件費が抑制される傾向が顕著に見られる。
 売上が落ちると値引きロスも肥大して粗利益率が低下し、売上の落ち込みほど家賃は下がらないから不動産費率が上昇してしまう。そこで圧縮がかかるのが人件費で、店長にはパート&バイト人時量の圧縮が指示され、それで吸収出来ないほど売上が苦しくなると社員の昇給ストップがかかる。そこまで行くのは赤字転落寸前になってからと思われるだろうが、上場企業の場合は赤字には遠くても利益計画を達成すべく広範な社員に昇給ストップをかける事がある。
 もちろん長期不振店舗では家賃や最低保証売上水準の切り下げ交渉も行われるが、定期借家契約下では大きな切り下げは難しく、退店に至るケースも多くなる。会社と会社の交渉になる家賃は下方硬直性が強く、会社が個人を評価する給与は上方硬直性が強い。結果、不動産費が人件費を圧迫する事になるのだ。
 テナント出店チェーンでは不動産費が人件費を圧迫する傾向を否めないが、テナントでもサブ核で出店するような大型店や独立店舗の大型店では不動産費率は5〜9%(減価償却費を含む)とテナントチェーンの半分以下で、その分、人件費に回せる余裕が大きくなるはずだが、利益計上などに回って必ずしも給与水準の向上に回るとは限らない。
 ちなみに国内ユニクロの前期決算では不動産費率は7.7%だったが人件費率は11.0%とテナントチェーンより却って低く、その分がお買い得な価格設定と12.8%という営業利益に回っている。人手不足が深刻化するアパレル販売だが、各社の来期予算計画を見ても労働分配率を高める気配は見られない。
 『誰の為に働くのか』考えさせられるが、商業施設デベに家賃を払うために働くのは辛いから、少しでも働く者の給与水準向上に繋がるよう、不動産費率を半減させるべく出店戦略(業態戦略でもある)を根底から再構築すべきではないか。関心を持たれた方はドンキやノードストロムの不動産費率を知って私の話を聞いて欲しい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/10/03 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

前へ | Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ