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ユニクロ創業祭のマジック?
 「ユニクロ」の売上月指数を検証していて?というマジックに気がついた。「創業祭」が5月と11月、年に二回もあるが、5月は「誕生祭」、11月は「創業祭」と銘打たれている。これには収益を左右する浅からぬ仕掛けがあるようだ。
 ファーストリテイリングの前身たる小郡商事が宇部で創業したのは1949年の3月、「ユニクロ」一号店が広島に誕生したのが1984年の6月2日だから5月末の「誕生祭」は解るが、11月は1998年の「ユニクロ」原宿店の開店(ここからブレイクが始まった)、はたまた2005年11月の持株会社化を言うのだろうか? まあ創業なんて‘神話’は事業者の都合でどうにも書き換えられるものだから詮索しても仕方がないが、「ユニクロ」の二回の「創業祭」は営業サイクル上、絶妙な時期に設定されている。
 衣料品の売上は一般に12〜1月、3月、7月にピークがあるが、とりわけ12〜1月の山が高い。「ユニクロ」はフリースやウルトラライトダウン、ヒートテックなど防寒衣料が強いこともあって冬期(11〜1月)に年間の36%前後が集中するが、11月をピークに12月、1月と売上が急低下していくという珍しいパターンになっている。かつては11月より12月が高く1月のシェアももっと高かったから、売上ピークの時期を動かすだけの仕掛けがあったはずだ。それが11月の「創業祭」なのだ。
 08年頃までは11月の「創業祭」は今日ほど大々的には行われておらず12月がピークだったが、年々「創業祭」が大仕掛けになって11月の売上が押し上げられ、16年から4日間が7日間に拡大されて11月が12月を逆転するに至った。「創業祭」が無ければ4ポイント程度12月にずれ込み、その分、1月バーゲンの山も高くなってしまうはずだ。「創業祭」で多少、値引き販売しても期末バーゲンでの大幅値引きを圧縮できれば、通期の値引きロスはかなり圧縮できるのではないか。5月の売上も月末の「誕生祭」で大きく押し上げられており、6月〜7月の期末バーゲンの値引きを圧縮する効果が大きいと推察される。
 一般に売上のピーク月集中度が高いほど期末の値引きも嵩み、月々の売上が平準化するほど期末の値引きも少なくなる。「ユニクロ」はシーズンでも月でも売上の山谷の大きい‘好ましからざる’パターンで、‘売り切りご御免のひと蒔き’に徹して極端に売上を平準化させた「ZARA」に比べれば値引きロスは格段に大きくなってしまう。それゆえ「ユニクロ」は各アイテムの売上ピーク直前週にキックオフ(終われば価格を元に戻す短期の小幅値引き)を仕掛けて消化を伸ばし期末の大幅値引きを避けるプライス政策を採っているが、年に二回の「創業祭」も期末値引き抑制効果が大きいと思われる。年に二回!の「創業祭」は「ユニクロ」の営業政策の要を果たしている訳だ。
 年間の売上/在庫/値引きの予算設定は収益を決する営業政策の要で、投入の頻度と在庫の奥行き、期中のキックオフや値引きの仕掛け方で歩留まり率も大きく左右される。「ユニクロ」と「ZARA」は両極だが、「ジーユー」が丁度、両者のいいとこ取りを狙って中間的なパターンを模索しているのが興味深い。11月9日に開催する『バイヤー/MD/DB育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』では各社のMD手法/DB手法と売上月指数や歩留まり率の関係を明らかにしよう。

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 2017/10/30 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

パンストとスカートとMD展開
 10月26日に開催したSPAC月例会「来年度MD展開計画総点検」ではカテゴリー別の家計消費支出からタイプ/ブランド別の売上月指数や月度アイテム構成まで子細に検証して来年度のMD展開政策を提言したが、そのレポートから興味深い傾向をピックアップしてみた。
 衣料消費支出(総務省家計調査、今年度は1〜8月から年計換算、以下同)は今世紀に入っても縮小が止まらず00年比で63.4%まで落ち込んでいるが、その中でも最も落ち込んだアイテムが婦人スカートで00年比31.4%まで落ち込んでいる。スカートの凋落と深く関係しているのがストッキング(うち98%がパンティストッキング)で、スカート以上に落ち込んでいる。
 パンティストッキングの生産数は89年ピークの10.84億点が99年には4.77億点に半減し、05年には2.70億点、10年には1.20億点と釣瓶落としに減少して13年には1.00億点と大底を打ったが、実にピークの11分の一近くまで落ち込んでいる。アパレル不振と言ってもこんなに落ち込んだカテゴリーはないし、呉服の落ち込みさえ同期間では6分の一まで行かない。スカート支出も90年比では6分の一以下まで落ち込んでいるから、スカートとパンティストッキングの凋落は密接に関係しているようだ。
 その要因を考える上で参考になるのが世代別のパンスト比率とスカート比率で、「アツギ株式会社」による15年の調査に拠れば20代は全世代平均よりパンスト着用率が10ポイント以上高く、「脚をきれいに見せたいから」が理由の第一位だったとか。当社の調査でもブランドのボトム売上に占めるスカート比率は「ワーキングガール」(ほぼ20代OL)が45.0%と突出し、トランスキャリア(ほぼ30代)の30.5%、「ミセス」の27.1%を大きく引き離している。
 『脚をきれいに見せたくて』スカートを履く20代に対して30代以上は機能性を重視してパンツ比率が高まる傾向が伺えるが、90年から今日に至る推移にもスカートからパンツへの転換が見て取れる。家計婦人衣料消費支出に占めるスカート比率は90年の13.8%から13年には4.4%まで落ち込み、代わってパンツが6.4%から17.4%へと3倍近く拡大している。トレンドのフェミニン回帰で17年は5.2%までスカートが戻しているものの、パンツシフトという長期的な趨勢は動かない。
 そんなパンツシフトをもたらした最大の要因は女性の就業率向上と少子高齢化で、女性就業率(15〜54才)は90年の57.7%から16年は67.8%まで上昇する一方、女性人口に占める20代比率は90年の13.2%から2015年には9.3%まで減少している。専業主婦のスカート比率が勤労女性より高くなる事は地域特性にも現れており、大都市としては専業主婦率が異例に高い名古屋市の婦人ボトム支出に占めるスカート比率(総務省「家計調査」15年度)は31.9%と全国平均より7.4ポイントも高い。
 来期のMD展開計画を立案するにあたって、トレンドもともかく世代やライフスタイルによるアイテム構成、とりわけ月々のアイテム構成予算を検証する意義は小さくない。月々の売上と在庫の抑揚の組み方次第で消化回転の改善と値引きロスの抑制も図れる。ユニクロやジーユー、ZARAの月々の売上の流れを検証するとそれぞれのMD展開と営業政策の根幹も見えて来る。

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 2017/10/26 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

急冷化でMD展開が一変?
 先々週末の14日(土)から急冷却して例年より5度も低い11月下旬並みの寒気が続いているが、これが暖冬に慣れたアパレル業界のMD展開カレンダーを混乱させている。
 例年なら10月中〜下旬は梳毛や綿混の秋物売り切りから紡毛や中綿の冬物実売へというサイクルのはずだが、急な寒気で通常は11月中旬から展開するパステルカラーの起毛梅春物が一気に‘狂い咲き’して売場がフワッと明るくなった。もとより梅春物の先出しを計画していて逸早く投入できた店頭ばかりではないから、従来型の季節進行でMDを組んでいた多くの店頭は一気に陳腐化してしまった。
 台風一過の今週は例年並みの気温に戻っても、その先にも寒気が張り出すサイクルが予測されており、一旦梅春気分になったシーズン感覚が元に戻るとは思えない。取りあえずは寒気に合わせてパステルカラーや起毛の梅春商品を在る限り全出しして拡張陳列を仕掛け暗色の冬物を圧縮するしかないが(シーズン強制シフト)、梅春商品を先行して手当てしていなかった店はどうしようもないし、手当て出来た店にしても気温が戻ったからと言って冬物体制に戻すわけにもいかず、販売期間が吹っ飛んだ冬物在庫は行き場を失ってしまう。一ヶ月も早い寒気の到来は関東以北の現象だから関西以西に商品を移動するのが常識的な判断だろうが、それでも相応の滞貨と値引きロスは免れないだろう。
 10月17日までの百貨店や大手アパレルの売上推移を見る限り、紳士服では防寒アウターの先買い需要による押し上げ効果が顕著に見られるものの、婦人服は9月から横這いで押し上げ効果は弱い。株価が連騰して高額消費が回復する中、アパレル販売の回復に水を差す‘花冷え’を招くのか、はたまた防寒アウターや明るい梅春物の先行需要が販売を押し上げるのか、取りあえずは後者だと思うが、先食いされた11月下旬からの年末商戦に不安が残る。
 バブル期まで12月商戦を華やかに盛り上げた「梅春期」もデフレの四半世紀のうちに冬物売れ筋の二次投入に予算を取られてすっかり衰退してしまったが、アベノミクスの14年頃から復活が始まり、‘フワモコ’トレンドや昨年の寒冬で一気に前倒し投入されるようになった。今シーズンは「梅春積極組」と「冬物引っ張り組」の明暗を決定的に分ける分岐点になるのではないか。

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 2017/10/24 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

目の前しか見えていない
 今のギョーカイはECやAIに夢中だが、ちょっと前まではSC出店や駅ビル出店を競っていたのを忘れたわけではあるまい。過剰供給とオーバーストアにECへの売上流出が加わって店舗販売の水位はジリジリと下がっており、闇雲にEC依存を高めれば損益ラインを割り込む店舗が広がって退店ラッシュの加速が避けられない。
 「品揃えの狭さ」「情報の限定」「労働の負担」「時間の負担」というECに較べての店舗の負い目を補う本物のオムニチャネル体制を確立しない限り、イニシャルコストもランニングコストもECより格段に嵩む店舗はどんどん‘負の資産’に転じて企業の収益力を奪ってしまう。普通借家契約だった前世紀ならともかく、定期借家契約店舗が大半(テナント出店のほぼ97%)を占める今日では店舗の資産価値は‘二束三文’で、退店のペナルティを徴収されれば持ち出しになりかねず、赤字店舗は早々に処分するしかない。
 店舗の撤収は想像以上の出血を伴う。退店には店舗施設の減損処理と現状復帰費用はもちろん、定期借家契約で期間満了以前に撤退する場合は「敷金の全額没収」「残存期間の最低保証家賃全額徴収」など‘泣きっ面に蜂’の容赦ないペナルティが課せられるケースもある。駅ビルやファッションビルで6割弱、郊外SCでは9割以上で課せられる期間内退店のペナルティを甘く見ては行けない。ラルフローレンは17年4月にニューヨーク五番街の旗艦店を閉店するのに3億7000万ドル(412億円)を要したが、そのうち300億円超が13年に締結した15年間の定期借家契約の残存期間家賃ペナルティだったと推計される。
 闇雲なEC拡大が店舗を追い詰めて企業総体の収益力を損なうという最悪のシナリオが杞憂でない事は米国のアパレルチェーンやデパートチェーンの事例が次々と証明しているのに、我らギョーカイは未だEC拡大の薔薇色の夢から醒めないのか、それともカニバリ覚悟でリスクを先送りしているのだろうか。店舗網を持たないEC事業者はともかく、既に店舗網を布陣してしまったチェーン事業者は店舗の負資産化という財務リスクを抱えている事を努々忘れてはなるまい。
 07〜08年、13〜14年の出店ラッシュの時も『どうして売れない店を増やすの?』(資産価値もないのに!)と幾度も警鐘をならしたがギョーカイは耳を貸さず昨年来の退店ラッシュという結末を招いたが、闇雲なEC拡大はそれ以上に悲劇的な結末を招くかも知れない。時々のトレンドに右往左往して目の前しか見ないミーハーな体質が経営の根幹を脅かしかねないのだ。
 店舗販売の負い目を補ってECに負けない顧客利便と運営効率を実現するには何を為すべきか、11月9日開催の『バイヤー/MD/DB育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』、11月16日開催の『ブランディングVMD/ショールームストア開発ストアプランゼミ』、11月29日開催のSPAC月例会『ショールームストアとAI接客システム総研究』で私の話を聞いて欲しい。

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 2017/10/23 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

イケア失速の構図に学べ
 ニトリの急成長とイケアの失速が対比されるが、イケアは何故、失速したのだろうか。ECへの出遅れが指摘されるが、より根源的な問題が潜むのではないか。
 イケア・ジャパンの売上は2014年8月期の771.6億円までは5.9%増と堅調だったが、15年は前期に立川店と仙台店の二店を開業したにもかかわらず1.2%増の780.8億円に留まり、16年8月期は767.6億円と減少に転じている。収益性も13年8月期の営業利益率12.0%がピークで、14年8月期以降は釣瓶落としに低下して15年8月期は1.2%まで落ち込んだ。06年4月に再々上陸してから10年も経つのに800億円を前に足踏み、この間に3238億円も売上を伸ばしたニトリとは大差がついてしまった。
 その背景としてECへの出遅れが指摘されるが、ニトリとて前年から33%も伸ばしたとは言え226億円とEC比率は4.4%に過ぎず、経済産業省EC統計における雑貨・家具・インテリア分野のEC比率18.66%と比べれば出遅れを否めないし、顧客登録さえ支障をきたすなど旧式なECフロントには少なからぬ籠落ち要因が残る。イケア・ジャパンに至っては今春からようやくECに参入したばかりで店在庫から出荷する初歩的な体制に留まり、EC対応のフルフィルが整うには相応の期間を要すると思われる。
 今まで長きに渡ってECを否定して来店持ち帰りに拘り、数多のエセIKEAサイト(実質は購買代行業者)が乱立する状況を放置して来たツケは致命的で、未だAmazonにも楽天にもヤフーにも購買代行業者のIKEA商品が氾濫する中、『本家「IKEA」のECサイトです』と言っても混乱は当分収まらないだろう。イケア本社も遅ればせながら15年6月にマルチチャネル戦略を発表して戦略転換に踏み切っているが、遅きに失した感は否めない。日本市場ではすでに手遅れではないか。 
 イケアがECを否定してきた要因は店頭販売への固執で、コーペラション(協働)思想に基づく顧客の労働分担というセルフサービス神話が背景にあった。イケアは『顧客が店内物流も持ち帰り物流も製品組み立て労働も負担するから安く提供出来る』というロジックで成長して来たが、オムニチャネル消費の利便が加速度的に高まる今日、その重い労働負担が顧客を遠ざけるようになったのではないか。
 流通業界では『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という‘セルフサービス神話’が未だ健在で顧客に労働分担を強いる事が当然とされるが、オムニチャネルな利便が競われる今日、もはや‘神話’でしかない。店舗はECに較べての「品揃えの狭さ」「情報の限定」「労働の負担」「時間の負担」が疎まれて顧客の離反が加速しており、その解消こそが真の‘オムニチャネル化’(ECと店舗が一元一体の利便を顧客に提供する体制)だと会得して全力で変貌しない限り、遠からず小売の歴史に埋もれてしまう。ちょうど一世紀前、急台頭するチェーンストアの利便に圧されてカタログ通販が釣瓶落としに衰退していったように・・・・・

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 2017/10/19 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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