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ストック室を見ればすべてが解る!
 新業態のお披露目や百貨店のリニューアルでは美しく整えられた陳列やディスプレイを一巡した後、売場の方にやんわりお願いして後方のストックヤードを見せてもらう事にしている。売場はデコレーターやVMDerの手を入れて取りあえず繕っても、ストックヤードには一切お化粧しない物流プロセスが露呈しているからだ。
 最初にお見せするのが量販型アパレルチェーンで最も一般的な物流・検品・保管・品出しをすべてパッキンのまま通す方式で、国内大手SPAからグローバルなスポーツブランドまで大半がこれ。畳み皺防止とかまったく無縁の殺伐とした‘物流作業’で、コストは安いが品質管理は粗く、人使いも荒くなる。横田増生さんの「ユニクロ潜入一年」に書かれている通りだ。
 これと対極的なのが外資高級ブランドに多い物流・検品・保管・品出しをハンガーで通す方式で、「ZARA」は本国の自社物流センターで仕分けて各店舗に直送して来る。写真はストックヤードから店内に運び込んで各ラックに陳列するところだが、カテゴリー別にセット済みなのが見て取れる。面白いのは棚もの単品や細々とした服飾雑貨が食品スーパーやコンビニのようなボックスカートに分類されて運び込まれている事で、「ユニクロ」や「GU」のバックヤードとは繊細さの次元が違う。商品だけでなく労働の品質も違うと見るのは穿ち過ぎだろうか。
10月18日(水)に開催する『店舗運営効率化VMD革新ゼミ』では、売場だけでなくバックヤードや物流プロセスまで踏み込んで在庫と作業を圧縮し消化を促進するVMD手法を体系的に解説したい。


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 2017/09/21 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

AI接客システムのお知恵拝借
 販売不振と人手不足が深刻化するファッション販売だが、未だ人海戦術に依存する域を出ていない。このままでは店を閉めるか外国人販売員に頼るかしかなくなりそうだが、画期的AI化という突破口はないものだろうか。それは音声認識のAIロボットとかSFチックなギミックではなく、売場で即活用出来るリアルなシステムであるべきだ。
 先行して人手不足が深刻化したフードサービス業界ではタッチパネル式自動券売機やオーダーエントリーシステムが定着して外国人労働者が大半を占めても運営出来るようになり、びっくりするほどの速度で外国人依存が進んでいる。同様に人手不足と人件費の高騰に圧迫されたコールセンター業界では選択誘導エントリーシステムが定着し、AI化も始まっている。
 物販店でもスーパーマーケットでは近年、セルフレジが急速に広がり、近接通信決済のプロトコルが標準化されれば、店頭の一等地を大きく占拠してコストと時間ばかり食うレジカウンターそのものが無くなるのも時間の問題だ。ひとり店舗小売業とりわけファッション販売だけが取り残されようとしているのではないか。
 ファッション店での接客はコールセンター同様、インバウンド(受け)とアウトバウンド(掛け)からなるが、インバウンドを適確に誘導すれば‘声かけ’というアウトバウンドの擦れ違いは避けられる。コールセンターのエントリーシステム的なプロセスをタッチパネル式券売機的なサイネージやタブレットでスマートに誘導し、ニーズを明確にしてから最適な販売員を呼び出すのが合理的ではないか。EC画面同様なプロセスで商品を選択したりRFIDタグを近づければスタイリング提案はもちろん、ECと店舗の在庫や購入客のレビューも表示し、顧客カードやスマホから近接通信でコンタクトすればパーソナルなレコメンドが返ってくる。GUが港北ノースポートモールに開業した「ファッションデジタルストア」はそんな近未来(多分、半年か1年)を垣間見せてくれる。
 AI接客システムはオムニチャネル販売には不可欠で、技術的にも採算的にも無理なく実用化出来る段階まで来ているが、さて誰が用意してくれるのだろうか。フードサービス向けオーダーエントリーシステムやタッチパネル式自動券売機の業者、はたまたPOSレジの業者なのだろうか。是非ともお知恵を拝借したいものだ。

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 2017/09/20 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

GUの「デジタルストア」は必見ですよ!
 港北ノースポートモールにオープンした「GU」の「ファッションデジタルストア」はRFID仕掛けのプレゼンシステムも必見だけど、‘ユニクロのお手軽版’と‘ファストファッション’との間で揺れ動いてきた「GU」のポジションのピントが合焦したMDと‘等身大’のVMDにも注目したい。私が直感した「GUファッションデジタルストア」の見所は以下の二点だ。
1)近接通信技術を使った商品プレゼンテーション
 「オシャレナビ・ミラー」はマジックミラーのRFIDセンサーがかざした商品を検知してコーディネイトのバリエーションやEC購入客のレビューを表示する。「オシャレナビ・カート」はショッピングカート上のタブレットがRFIDタグや売場のビーコンに反応してECサイトのコーディネイトや在庫情報(ECと店舗)、購入客のレビューなどを表示する。
 「オシャレナビ・ミラー」は切り替えに時間を要して使い勝手は今ひとつだが、「オシャレナビ・カート」の方はサクサクと反応して極めて実用的だ。どちらも商品を特定してECサイトの情報を表示するもので、顧客を特定してレコメンドするAI接客機能や要望を選択して販売員を呼び出すエントリー機能は持たない。
2)顧客目線のVMDがナイス・ポジションに合焦
 標準店に四倍する820坪のスペースを方眼状にアドレス管理してカテゴリーを配し、「ユニクロ」の大型店のように露骨にフェイシング量で水増さず多重露出にも頼らず、棚割りを工夫した近接‘元番地’同士のアイテムをクロスさせてコーディネイトを訴求するなど、飛躍し過ぎない顧客目線のVMDが解りやすく親しみを感じさせる。
 色数を絞った素材軸のMDもVMD手法も「ZARA」をベンチマークしているが、店舗ビジュアルマーチャンダイザーのセンスとスキルを加えたスタイリングは若々しく顧客目線で、「ユニクロ」の廉価版を脱して独自のファッションストアを志向する「GU」のナイスポジションにピントが合ったと評価したい。
 ついでながら、「GU」デジタルファッションストアの画期的注目点はレイアウトに在る。それは25日(月)のブログで明らかにしよう。







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 2017/09/19 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

本部仕入れか店仕入れか
 ドラッグコスメやバラエティ雑貨の「プラザ」を運営するスタイリングライフ・ホールディングス プラザスタイルカンパニー(長い!)は、これまで店舗に任せていた仕入れ権限を順次、本部に集約し、過剰在庫を圧縮して仕入れを効率化するそうだ。小型の「ミニプラ」を含んで85店を直営しているが、基幹の10店舗を含む7割の店舗で店責任者が仕入れを決めており、66年の1号店開業以来、店舗仕入れ体制で来たと言うから驚きだ。
 2ダースまではともかく、それを超えて多店化すれば本部集中仕入れ・DB体制(CMI)のチェーンストアへ体制を切り替えて調達のマス・メリットを追求し、品揃えや売場運用を標準化した上でDB(配分・補給・店間移動)運用するのが小売業界のジョーシキだが、「プラザ」は敢えて?店仕入れ体制(SMI)に拘って来たのだろう。マス・メリットを追求するにはCMIが不可欠だが、個店の特性に対応し各店舗の創意工夫を引き出して成果を問うにはSMIも効果的で、遊べるバラエティ書店の「ヴィレッジヴァンガード」など379店も直営しながら(他にFCが10店舗)未だ店長裁量の各店仕入れだと聞いている。確かに各店長の個性が発揮されて面白い品揃えが出来ているが、その分、不良在庫の滞貨も避け難く、17年5月期の在庫回転は年間1.27回に留まる。「プラザ」がCMIへ転換するのも過剰在庫問題が大きいようで、SMIの大きな欠点と言えよう。
 CMIへ転換する企業の一方、SMIを上手く活用して成長している企業も少なくない。VMIとSMIを組み合わせて5354の店舗網(17年第一四半期末)に商品を供給するウォルマートは一方の究極だが、毎週二回、社内サイトに載せた商品リストからカントリーマネージャーのコントロール下で各店長が選択・発注する「ZARA」のSMIも個店の対応力と達成意欲を引き出して成果を上げている。TOKYO BASEは発注や仕入先の選定はおろか販売スタッフの人事権や損益管理まで踏み込む‘SMIを超えた擬似支配人制’で、人間力を引き出す究極のカバナンスが成長エンジンとなっている。
 CMIは多店舗運営の骨格だが、何処かに個店の対応力と達成意欲を引き出すSMIを組み込む必要がある。カテゴリーが化粧品からプチプラ雑貨まで多岐に渡って調達・補給の背景が多様な「プラザ」ではVMIも必須だから、試行錯誤を経てCMIとVMIとSMIの最適なバランスを見出して行くべきだろう。

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 2017/09/15 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店の編集平場は復活するの?
 高島屋は9月20日から婦人用スーツを一ヶ所に集めた自主編集平場「スーツクローゼット」を新宿店と横浜店に開設するそうだ。30〜40代のワーキングウーマンを対象に、大手アパレルの11ブランドと高島屋がデザイナーとコラボしたオリジナルを揃え、オーダーメイドにも対応する。自主編集と言っても大手アパレルのブランド商品は元売場から切り出した消化仕入れで、ブランド別のラックで展開される。
 高島屋はハイクオリティブランドのセレクト編集平場「サロンルシック セレクト」をレディス5店舗、メンズ4店舗、ミドル〜マチュアを対象とした単品編集平場「シーズンスタイルラボ」を7店舗で展開するなど、ブランド売場偏重を是正すべく単品平場の構築を進めているが、今回の「スーツクローゼット」もその一環に位置付けられよう。
 百貨店各社は『自主MD強化による専門店化か定期借家テナント導入による商業施設デベ化か』という二者択一の間を試行錯誤して来たようにも見えるが、収益性を見れば商業施設デベ化に振って経費率を圧縮した大丸松坂屋や阪急阪神百貨店が専門店化へ向かって経費率が肥大した三越伊勢丹を引き離すという結果に見える。事はそれほど単純ではないから、各社とも個店ベースの採算改善を狙って両方向を使い分けているのが現実だ。高島屋とてユニクロやニトリを導入する一方で自主編集の単品平場を拡充するという二正面作戦を進めている。
 さて「自主売場」と言っても、1)消化仕入れ商品を自前社員で販売する「自主運営売場」、2)買取商品も含めて自前社員で運営する「自主仕入れ運営売場」、3)オリジナル開発商品を軸に買取のブランド商品も加えて自前社員で運営する「セレクトSPA売場」や「SPA売場」(オリジナル商品のみ)に分けられるだろう。高島屋は1)主体に一部2)に踏み込むというスタンスだが、三越伊勢丹は一部3)まで踏み込むチャレンジが採算性を圧迫したとされる。
 細切れで販売人件費負担の重いブランド別売場より大きく括った統一環境平場での自主運営の方が販売人件費負担が格段に軽く、「自主運営売場」は百貨店による集合販売代行という性格が強い。在庫リスクのない消化仕入れのまま販売人件費の節約分が百貨店の収益に回るのだから、手軽で収益改善効果も確実だ。「自主仕入れ運営売場」は買い取っても在庫ロスの負担が大きく消化仕入れより採算が悪化するケースがほとんどだから、大概は挫折してしまう。粗利益と運営経費を計算すれば誰でも解るから、無謀な挑戦に近い。
 ならば仕入れより値入れが格段に厚い「SPA売場」や「セレクトSPA売場」まで踏み込むというのは解らないでもないが、ロットが小さいと開発コスト負担が重く割高になってしまうし、少数の店舗で大ロット調達すれば売れ残りは必定だ。ゆえに大手アパレル依存の開発になって在庫負担から立ち消えになるケースが多かった。三越伊勢丹の場合はデザインチームと契約して工場直の開発に踏み込んだのだから在庫を負担させる先もなく、行き詰まるのは必定だった。
 セントラルバイイングと多店舗ディストリビューションの仕組みもスキルも持たない我が国の百貨店が出来るのは「自主運営売場」までで、それ以上の踏み込みは外部とのリスク分担なくしては困難だ。ブランド偏重に陥って同質化し買い難くなった売場をテイスト/アイテム軸で再構築して単品平場を復活させ、大きく括った統一環境平場の自主運営で収益性を高める事が優先されるべきではないか。その次のステップはセントラルバイイングと多店舗ディストリビューション、とりわけ再編集と店間移動のスキルを磨いてからにすべきであろう。

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 2017/09/14 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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