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IT業界みたく人が動いている
 最近、周辺のアパレル企業から転職する人が急増して、ちょっと驚いている。昨年ぐらいまではEC担当者中心の動きだったのが、今や商品系や営業系の部課長、事業部長クラスまで毎月のように誰かが転職の挨拶に来たり挨拶状を送って来たりする。いったい何が起こっているのかと胸騒ぎがするが、それが今のアパレルギョーカイの現実なのだろう。
 ギョーカイ丸ごと『殺された』とか『集団自殺だ』とか喧伝されるほど行き詰まる中、勢いのあるのはZOZOやロコンドなどECプラットフォーマーばかりで、元気に店を増やす企業は一握りに限られる。表面上は安泰を装っている企業も内実は相当に苦しいようで、社員の給料を何年も抑えたり内々にリストラしたりしているから、意識高い系や目先の効く若手幹部は行き詰まりが表面化して転職が難しくなる前に勢いのある企業に転職を急ぐという構図になっている。
 ITやECの業界では伸び盛りの企業に人材が集中する傾向が顕著で、勢いが陰ると優秀な人材から引き抜かれてしまうから、むりやり新規事業を立ち上げたり報酬を引き上げて対抗し採算が圧迫されるケースが少なくない。ECが拡大してIT関係の人材がギョーカイに増えてくる中、店舗系や商品系など在来職との給与格差も目立っており、IT系人材ならずとも伸び盛りのEC企業や例外的に元気なファッション企業への転職が急増しているという事のようだ。
 幹部の転職どころか会社や事業を丸ごと売ったり買ったりも少なからず表面化しているが、水面下ではその何倍も交渉が進んでいる。もはやプリンシプルを欠きネットやITのリテラシーに遅れた経営陣が指揮する企業の先行きは相当に怪しく、内部で日々実態を見ている幹部が見切りをつけてしまうのもやむを得ないだろう。実際、業績悪化が表面化してしまえば転職の条件も悪化してしまうから、逃げ出す人が目立ち始めると会社の中が浮き足立ってしまう。そんな‘草刈り場’になる企業が続出しているのが今のギョーカイの現実ではないか。

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 2017/08/23 08:59  この記事のURL  /  コメント(0)

リテラシー格差の時限爆弾
 アマゾンプライムのサービスが広がる中、何で未だに成り立っているのか不思議な商売が幾つも指摘される。プライム会員がFireTVstickを手にすれば、借りたり返却するのに足を運び逐一料金を取られるレンタルビデオ/CDや毎月、高額な料金を取られるケーブルTVなど成り立つはずもないが、陰っているとは言え今でも結構な商売になっている。スマホにしても、料金が大手キャリアの三分の一以下で済む低価格スマホと格安SIMカードでも通信品質に差はないが(大手キャリアの通信回線を使っている)、これまで使って来た大手キャリアのメアドが使えなくなるなど僅かなデメリットで躊躇する人が未だ多い。
 合理的に考えればレンタルビデオ/CDも大手キャリアの高額料金スマホも即、絶滅してもおかしくないが何故か事態はゆっくりと進み、明日にも絶滅するという情況には見えない。訝っていると、『リテラシー格差の解消には時間がかかるからだ』と某関係者から指摘された。それは企業レヴェルにも言えることで、ERPから独立した低コストなオープン・プラットフォームサービスが広がりつつあるのに、未だ前世紀のERP連携POSシステムをオムニチャネル対応させる億単位数十億単位(大手百貨店など数百億の単位になる)の投資に四苦八苦している企業も少なくない。
 振り返って見れば、私だってiPhoneを手にしてから一通り使いこなせるようになるのに数年を要したし、未だ次々と登場するアプリやサービスに手を焼き、ネット・リテラシーに秀でた若者に教わる事が多い。スマホ片手に目にも留まらぬ早業で入力して(早晩Siriに移行する?)SNSの海を泳ぎ、あたりまえにモバイル・ショッピングするスマホ世代のリテラシーとキーボード入力に慣れたパソコン世代のリテラシーには埋め難い格差があると推察される。
 そんなリテラシーの格差がIT革新による新サービスの普及にブレーキをかけているという指摘はなるほどと思えるが、IoTとオープン・プラットフォーム化が急進する今後、アナログなキーボードリテラシー、クローズなCMIリテラシーに留まる経営陣が指揮する企業の経営判断は相当にヤバいかも知れない。当人達は時代の変化に遅れていないと思っていても、リテラシーの格差は確実に判断を狂わせる
 ゆっくりとカウントダウンが進むかに見えても突然、爆発してしまうのが時限爆弾で、企業経営における判断の誤りは数年先の破滅を‘予約’してしまう。リテラシーの革新について行けない経営陣は今や企業に取って最大のリスクとなったのではないか。

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 2017/08/22 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

離陸するショールームストア
 オムニチャネル時代の店舗販売は、商物一体の不合理という店舗販売の呪縛を解いて商物分離のショールーム販売へと一変すると幾度も指摘して来たが、ようやく本格的な拡大局面に転ずるようだ。
 先行する米国のウォービーパーカーやボノボスに続いて我が国でもオーマイグラスやKnotなどEC発のショールームストア(実店舗機能を兼ねる)が広がり、オーダーシャツ/スーツではショールームストアやポップアップストアとECを連携するニュービジネスが氾濫している。そんな中、8月18日の繊研新聞が『オーダーシャツEC「オリジナルステッチ」の米オリジナル社が自社の受注・生産・配送のプラットフォームを他社も利用出来るようオープン化し大手三社の計1000店舗以上に提供する』と報じていたのはちょっとした衝撃だった。大手三社とは紳士服チェーンだと推察されるが、ならばシャツの流通は一変する事になる。
 同日の日経は『丸井が靴に加えて衣料品も試着品だけで在庫を持たないショールーム売場「体験ストア」を本格展開する』と報じていたが、丸井は15年9月から婦人靴PBのポップアップストアで無在庫販売の運用実験を積み、17年2月には錦糸町店の婦人靴PB売場全体を「体験ストア」化して運用ノウハウを詰めていた。PB「らくちんシューズ」では40才以上の顧客の65%が利用し、端サイズの47%が「体験ストア」で購入されるなど手応えを得て今回、「らくちん」シリーズのパンツも加えて本格展開する運びとなったようだ。来春までに10店舗超に拡げ、順調なら紳士のシャツやスラックスにも拡げる事を検討している。
 丸井の「体験ストア」では顧客はお試しの上、店頭のタブレットあるいは自分のスマホやパソコンから発注し、最短2日で指定する場所に届く仕組みで、靴は送料無料、アパレルも3000円以上から無料になる。ECサイトからは各店舗の在庫も確認出来るし(引き当ては1時間毎)、店受取も選択出来て、店で試した上でキャンセルも出来る。自宅でも行き来とも送料無料で8日間お試し出来るなど、オムニチャネル対応は百貨店はもちろん小売業総体でも突出している。
 未だショールーミングを恐れてタブレットの持ち込みも規制する百貨店や駅ビルが多い中、丸井のネットリテラシーは一世代も二世代も先行している。アマゾンのフルフィルメントサービスやペイメントサービス、ロコンドのBOSSからロコチョクDへと広がるオムニチャネル・ロジスティクスサービス、今回のオリジナル社のオーダーシャツ・プラットフォームなど、ライバルにも提供するオープン・プラットフォームが流通を一変させて行く今後、ネットやIoTのリテラシーに遅れ旧弊に固執する経営層は企業に取って大きなリスクとなりそうだ。

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 2017/08/21 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

手頃で安心のコモディティ
 事情があって田舎町のビジネスホテルと地方大都市のシティホテルに続いて泊まる羽目になったが、両者の違いが印象に残った。田舎町のビジネスホテルは全国展開のチェーンホテルで、朝食付きで一泊6000円ほど、地方大都市のシティホテルは朝食付きで2万円弱と、3倍強の料金差があったが、泊まってみた印象は前者の方がはるかに快適だった。
 どちらも駅前で利便は似たようなものだが、前者はローカル線の鄙びた駅前、後者は賑わう地方大都市のターミナル駅前。部屋の広さやバスタブの大きさは後者が優っていたが部屋の清潔感は圧倒的に前者が優っていたし、チェックインのスムースさもスタッフの対応も前者に軍配があがる。
 前者のフロントスタッフは制服のポロシャツを着た如何にも田舎のパートのお姉さんたちで黒服の管理職が立ち会わないシステムだっが、チェックインの手順はシンプルでミスがなく、ひとりひとりに温冷の希望を聞いてタオルのおしぼりを渡してくれた。暑い盛りで汗びっしょりになって到着するゲストには何よりのサービスだったに違いない。
 後者のフロントスタッフはスッチー風のスーツにシルクのスカーフを首に結んだ如何にも高学歴な整った顔立ちの若いお嬢さんたちで言葉遣いも丁寧で気も回してくれ、黒服の管理職も幾人か立ち会っていたが、何せチェックインの手順がシンプルでなく並んで待たされた挙句、部屋を開けたらゴミが散乱して寝具も乱れたままの未清掃で、フロントに戻って部屋を替えてもらう羽目になった。並んでいる間にキャンディは配ってくれたが、熱暑の中を到着したゲストにおしぼりは出てこなかった。ようやく部屋に入ったら、清掃はされていたがTVのリモコンやスイッチ類に手脂がギラリ。一瞬、怯んでしまった。
 優先すべきサービスの認識の相違なのだろうが、都市部で泊まるだけなら一に利便と安全、二に清潔と安らぎ、三が手頃で美味しい食事、四、五がなくて六に豪華さで、スッチー紛いのお嬢さんも黒服の管理職も不要だ。豪華さを求めるなら外資系のラグジュアリーホテルに敵うわけもなく、今更なシティホテルは選ばない。
 ホテルも外資などラグジュアリー系、標準化された全国チェーンのビジネス系、おしゃれなブティック系、格段に広くて眺望も食事も美味いリゾート系と性格がはっきりしていく中、昔ながらのシティホテルは割高で使い勝手の悪い‘終わコン’に成り果てた感がある。我らギョーカイならシティホテルは居場所を失っていく百貨店と百貨店ブランドみたいなもの、田舎町駅前のビジネスホテルは手頃で安心感のある「ユニクロ」みたいなもの、ということになるのだろうか。
 手頃で安心のコモディティこそ今日の生活者が希求する‘今NB’に違いない。「ユニクロ」もあり難いものに思えてくる貴重な体験だった。

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 2017/08/17 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

現場のスキルが‘神話’を築く
 岡山まで行ったついでに広島まで足を伸ばして4月14日に開業した「エディオン蔦屋家電」と4月28日に開業した「広島LECT」を一巡してきた。前者は家電のエディオンがCCCと連携して家電に書籍や文具、カフェを複合した時間消費型の実験的新業態、後者は量販店のイズミが主体となって「youme食品館」、書籍軸のライフスタイル業態「広島T-SITE」、ホームセンターの「カインズ」を核に専門店群を揃えた時間消費型CSCで、どちらも既存業態とは次元を画した試みが注目を集めているが、「広島LECT」に絞って印象を伝えたい。
 「広島LECT」は89年の海と島の博覧会会場跡地を再開発したもので、港湾部に接して住宅地域からは乖離し、最寄り駅からも1km以上離れて歩ける距離でなく、北側は高速道路を挟んだ6車線道路、東側は複数の河川に阻まれて歩行や自転車での来客は限られるから、自家用車やアルパークからのシャトルバスに依存する事になる。アクセス的には車軸だが、西は1.3kmの至近にアルパーク、東は5km強に広島中心商業やゆめタウン広島が迫ってCSC的な商勢圏に留まり、3万9000平米という店舗面積規模も食品スーパーとホームセンターが核店舗という構成も極めてCSC的だ。如何に「広島T-SITE」が魅力的で集客できるとしても、相当に難しい商業施設であることは間違いない。
 前面を平面駐車場とした細長いパワーセンター的建築レイアウトで、地下と3〜4Fを駐車場とし1〜2Fを店舗に使っている。外見はベイシア本社にも通ずるモダン・バウハウス的に洗練された連続グリッドデザインで、代官山T-SITEや二子玉川ライズを手がけたアール・アイ・エーが基本設計を担当。建築デザイン的にはウッディなCCCよりモダンなカインズの色合いが濃く、イズミの印象はまったくない。
 内装や照明、品揃えや棚割りの完成度も「カインズ」が格段に高く、カテゴリー別に照明と内装色を変えて反射色温度でストーリーを創るという‘神業’を見せていた反面、「youme食品館」は内装や照明も凡庸でレイアウトや編集にも新鮮味がなく、VMD手法もインパクトを欠いていた。運営主体にしては力の入れ方が今ひとつで、売上も苦しそうだった。‘時間消費型CSC’という「LECT」の性格を考えれば「youme食品館」の売上は50億円は必要だが、現状では40億円にも届かないだろう。
 「広島T-SITE」は内装デザインや照明、書籍を軸とした編集手法はこれまでのT-SITEの延長だが、代官山や枚方というより湘南を大型化した感じで、「湘南T-SITE」同様、客数不足もあって迫力を欠いていた。「湘南T-SITE」も「広島T-SITE」も商圏規模はCSC的で客数には自ずから限界があるが、それならそれでカテゴリーの幅を広げ品揃えと催事運用の密度を上げ、来店頻度と滞在時間、客単価を稼ぐMDと運営に徹すれば改善の余地が大きい。
 CCCの打ち上げた「T-SITE」コンセプトはそれなりのインパクトがあるが、品揃えや編集技法、テナントやポップアップの入れ込み方や運営手法はまだまだ途上で、現場がスキルを積み上げて完成度を高めていく必要がある。どんなコンセプトも結局は現場のスキルの積み上げが障壁を突き崩し‘神話’を築いていくのだと再認識させられた視察だった。




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 2017/08/16 10:07  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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