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AIを誘導して掘出物をゲット!
 夏休みシーズンに入ると「reyn spooner」のアロハやTシャツが着たくなって店頭やECサイトを物色するが、7月末のセール一色の中でも「reyn spooner」だけは定価販売されていた。実需期が真夏なのだからセール除外もやむを得ないとは思うが、周囲がクリアランスで再値下げする中、定価で買うのも何だかな〜と迷っていたら・・・・・
 「reyn spooner」は1962年、ハワイで創業されたアロハシャツのブランドで、独特のハリと掠れ感のある綿ポリ・リバースプリントの「スプーナークロス」で知られるが、今日ではTシャツなどアイテムを広げてハワイアン・ライフスタイルブランドに変貌している。日本市場にはハワイ縫製品に加えて近年は韓国縫製品が増えていたが、昨年から伊藤忠商事がマスターライセンシーになって、アロハシャツはハワイ縫製品のインポート、雑貨関連は国内ライセンス、と仕分けてリ・ブランディングを図っているようだ。
 日頃は‘クラシコイタリア’をベースにモードとプレップの間を彷徨う私も夏のバカンスシーズンになると「reyn spooner」のアロハやTシャツを出して旅行鞄に詰めるが、毎年、アロハかTシャツを一枚づつ買い足している。そんな習慣の中で今年、目をつけたのがハワイで縫製した「Trans Pacific 40’S」のリメイクアロハで、一点一点、柄取りが違うのも興味を惹いた。
 銀座松屋の催事で目にして気に入ったものの17,800円(税別)の定価販売だったので見送り、東急本店のポップアップでは30%オフになっていたものの「Trans Pacific 40’S」は見当たらず、忙しさにかまけて時間が過ぎるうち、何度か「Trans Pacific 40’S」を検索したせいか、幾つもレコメンドやリターゲティングが掲示されるようになった。その中に20%オフのショップがあったがSサイズ(日本サイズのLに相当)は品切れで諦め、「Trans Pacific 40’S Sサイズ」で検索するも、なかなかSサイズのレコメンドが返って来ず、今シーズンは諦めかと思っていた。ところが明日からリゾートへ行くという日になってお昼のサンドイッチをつまみながらネットサーフしていたら、名古屋の専門店が税別10,000円でレコメンドして来たではないか!しかもSサイズしか残っていないという。早速、注文して翌日午前中の配達指定をお願いしたら、ちゃんとお昼前に届いてリゾート行きの旅行鞄に入れる事が出来た。
 ドジな私にしては珍しくラッキー揃いで、ネット検索でレコメンドやリターゲティングを誘導して本命商品を見つけ出し、翌日配送指定で間に合わせた今風のお買い物だった。建前や‘忖度’に縛られ物理的な制約も大きい店頭販売に比べ、AIで狙い撃ちしてくるECサイトは上手く誘導すれば掘出物が見つかる。店舗販売ってホントにヤバくね!!


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 2017/07/31 09:26  この記事のURL  /  コメント(0)

店は生き残れるのか
 オムニチャネルが店舗小売業を救済する白馬の騎士かと見えたのも一時で、ECの拡大は店舗の存続を脅かす段階にさしかかっている。アパレル・服飾分野のEC比率が20%に迫ってリーマンショック時を上回る閉店・破綻ラッシュが広がる米国のパニックがもはや対岸の火事で済まなくなるのは時間の問題で、00年の規制緩和以降に水膨れしたオーバーストア分がクラッシュするのは避けられない。アパレルチェーンなどテナント小売業や商業施設デベはそんなカタルシス的大量絶滅が迫る情況を認識しているのだろうか。
 売上対比の営業経費率が50%近い百貨店インショップ、同36〜38%というSCや駅ビルのテナント店に対して、年商10億円を超えれば30%、100億円を超えれば24%、1000億円を超えれば18%を切るECのコスト優位性は圧倒的で、『売上高百万ドルを稼ぐのに店舗だと3.5人を要するがECだと0.9人で済む』とゴールドマン・サックスが試算しているほどだ。しかも、多店舗に在庫が分散する店舗販売に対して出荷拠点DCが集約されるECは格段に在庫効率が高く、機会ロスも値引きロスも抑制出来る。
 そんな圧倒的格差に加え、店舗小売業は管理会計スタンスのERPという前世紀の金食いシステムを抱えてオムニチャネルな在庫一元化も24時間オンラインな在庫引き当ても果たせないまま、ECサービス事業者やECプラットフォーマーにオムニチャネル在庫管理システムを丸投げせざるを得ない情況に追い込まれている。収益が悪化する中、自社のシステムをオムニチャネル対応させる巨額投資に踏み切れず、ECという軒先を借りて店舗販売という母屋の在庫管理まで依存してしまう小売業者も珍しくなくなるのではないか。
 アパレルチェーンの多くは『店舗を軸としたオムニチャネル化』という‘建前’を標榜しているものの、店舗の売上減少を埋めるべくECを拡大せざるを得ず、ECの拡大が店舗の売上を減少させるというカニバリを自覚しつつも目を瞑って突っ走っている情況だ。本音では、もはや店舗販売に見切りを付けているのかも知れない。各社のEC拡大競争が店舗販売の加速度的凋落を招く事は避けられず、米国並みの閉店・破綻ラッシュが目前に迫っている。

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 2017/07/27 11:49  この記事のURL  /  コメント(0)

ファッションシステムの呪い
 先週末金曜夕刻に開催した月例「販売データ交換会」の席上、紳士服系/カジュアルチェーン系双方から‘ビジカジ’を捉えきれない実情を嘆く声が聞かれた。‘ものづくり’に拘る作り手側と‘使い勝手’を求める使い手側の埋めがたい溝は‘ビジカジ’に限らずファッションギョーカイと消費者を隔てる‘呪い’みたいなものではないか。
 巷ではアパレルギョーカイの凋落を『殺された』とか『集団自殺』とか興味本位に揶揄する事が流行しているが、川上と川下のリスクの押し付け合いによる「未必の故意の集団相互殺人」、あるいは行政の補助金漬けによる「免罪符的自殺幇助」という面はあったにしても、根本は作り手側の‘ものづくり’への拘りや感性の優越意識が使い手側の『使い勝手のよいお値打ちな生活パーツを便利に入手したい』というごく真っ当な要求と乖離して自滅を招いた『集団自殺劇』に他ならない。ものづくりや流通の仕組みもともかく、ギョーカイがファッションメディアと連携して確立してきた‘ファッションシステム’そのものが消費者の離反を招いた根源だったのではないか。
 かつてファッションギョーカイとファッション雑誌が連携して確立したBC情報格差が付加価値を生む‘ファッションシステム’がSNS情報民主化の奔流の前に崩れ去る中、ギョーカイはネットメディアやSNSを駆使して新たな‘ファッションシステム’の構築に努めているが、情報が瞬時に拡散増幅されるネット空間は同時にBC情報格差が瞬時に解消される情報民主空間でもある。ブロガーを動員したアフィリエイトやステマで短期にブランディングする‘ステマシステム’、リコメンドやリターゲティングでパーソナルな罠に追い込む‘ターゲティングシステム’の効果は空恐ろしいほどだが、そのネタを‘ものづくり神話’などBC格差に求めては往時の‘ファッションシステム’と大差なくなってしまう。
 ‘ものづくり神話’などBC格差に依存していては『使い勝手のよいお値打ちな生活パーツを便利に入手したい』という消費者側とのギャップは埋められない。着まわし易さやイージーケアなどユーティリティ要求とコモディティ価格要求を強めるAU(After Uniqlo)時代の消費者に応えるには、BC格差を無理やり創造する前時代の‘ファッションシステム’ではなく、生活消費財に共通する使い手目線の‘ユーティリティシステム’に移行するべきだ。
 80年代までの‘ファッションシステム’から逸早く離脱して顧客目線の‘ユーティリティシステム’に移行した化粧品業界と‘ファッションシステム’に固執したアパレル業界のその後の明暗をどう見るか。若年世代へのトレンド訴求から大人世代へのアンチエイジング訴求に転じて成長した化粧品業界に学ぶ事は少なくないと思われる。

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 2017/07/26 10:02  この記事のURL  /  コメント(0)

ヤングブランドが不安定な理由
 当社では毎シーズン、4300余のファッションブランド(ウィメンズ/メンズ/キッズ/インナー/服飾雑貨/ジュエリーアクセサリー/コスメ)を位置付けた「ブランドツリー」を作成し、多店舗を展開している900近いブランドについては毎月の売上を検証してマーケットの変化を追っている。そんな検証を20年以上も続けていると、ブランドのライフサイクルやマーケティング戦略の成否、好不調のサイクルも見えて来る。
 ヤング向けブランドの好不調を見ていると、好調期間はせいぜい2〜3年で、その反動の不調期間は3年では済まず、そのまま凋落してしまうブランドも少なくない。かつての109系の好不調サイクルは3年だったが、今日の原宿系などでは好調期間が縮まって不調期間が長期化している。その一方、キャリアやミセス、コンテンポラリーやアダルトのブランドは好調期が倍以上長く、その反動も穏やかで長く人気を保つブランドが多い。その要因として考えられるのが以下の二点だ。
1)マーケットが薄く変動し易い
 世代人口が厚く年齢の幅もある大人層(団塊ジュニア以上)に比べて若年層は世代人口が薄く数年で通過してしまう短期市場のためマーケットが格段に小さく、トレンドや需給の変化で大きく変動してしまう。短期的にも長期的にも縮小が進んでいる事に加え、近年は「ジーユー」のような大型ブランドが参入して需給関係を一変させるようになり、中小ブランドの業績は大きく振り回されている。
2)流動性が高く顧客化しない
 大人層はトレンドより自分にあったテイストやフィットを重視するから一度ブランドを気に入ると固定客化する傾向が強いが、若年層は自分の好みが未確立でトレンドに流され易くブランド支持も熱しやすく冷めやすい。加えて就職や生計の独立などライフステージが数年で変化し若者を‘卒業’してしまうから、ブランドからも卒業してしまう。
 
 とは言え、若者に支持されて成長したブランドが長く人気を保つケースも決して少なくない。そんな長命ブランドに共通しているのは無理に若返りを志向せず、元々のテイストは保ちながらも顧客の成熟に伴ってフィットや素材感、販売環境などを大人シフトし顧客とともに成熟している事だ。若者ブランドがいつの間にか母娘ブランドに変貌しているなどその好例で、無理に若返りを図って顧客を失うより賢明な選択だったと言えるだろう。

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 2017/07/25 09:56  この記事のURL  /  コメント(0)

インバウンド消費と買い出し消費 
 一時の‘爆買いブーム’は去ったとは言え、再びの円安基調もあってインバウンド消費が復活している。15年頃の‘爆買いブーム’とは異り、『高級ブランド品から化粧品など手頃な消耗品へ』『東京都心から関西や北九州、リゾートへ』『モノからコトへ』と変化したとは言え、1〜6月の上半期で全国百貨店売上を4.3%下支えしている。
 先週の木金と開催した月例の『販売データ交換会』では都内主要百貨店や関西の有力百貨店、セレクト大手やカジュアルチェーン、ファッションビルやファッションECモールの担当者が一堂に会して最新の販売動向や売れ筋情報を発表し合ったが、幾つか興味深い傾向が伺えた。
 インバウンド消費については銀座や新宿の回復もともかく関西、とりわけ大阪市内百貨店の伸び率が五割増、六割増と半端無く、インバウンド売上比率も銀座両百貨店の水準(両店平均で6月は21%)にはまだ遠いものの、有力店は二桁に迫っている。東京の繁華街は一時ほど外国人で混雑しなくなったが、心斎橋筋あたりでは外国人観光客が溢れて日本語は掻き消されてしまう勢いだ。
 繁華街の出店情況に詳しいCBRE社によれば、高騰する都心路面店の家賃負担力も出店意欲も一番高いのはドラッグストアで、心斎橋筋でも急増しているそうだ。心斎橋筋に較べれば銀座界隈は高級ブランド店ばかりでドラッグストアが限られ、インバウンド消費の実態と乖離している感がある。格好付ける東京と実を取る大阪の違いなのだろうか。
 インバウンドもともかく、都心商業施設やECモールでのブランド別売上を見ると、地方や郊外の店舗が大きく減っているブランドが伸びているケースが目につく。地方や郊外で買う場がなくなってブランド難民化した顧客が都心店やECモールに流れているのだ。勢いに乗って店を増やしているブランドより店舗網が萎縮して顧客が集中するブランドの方が都心の商業施設やECモールでは売上が伸びるという、大量閉店時代ならではのアイロニーが悲しい。海外からのインバウンド消費もともかく地方や郊外からの‘買い出し消費’にも注目したいものだ。

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 2017/07/24 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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