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週休三日制の裏表
 NHKのニュース番組で週休三日制の拡大を取り上げていたが、IT企業や流通大手を例に挙げて『休みが増える事はいい事だ!』と両手で持ち上げるだけの報道に違和感を感じざるを得なかった。なぜなら週休三日制は働く側だけでなく使う側からのニーズでもあるからだ。
 世の中には週休三日制どころか週休四日制だって存在する。タクシー運転手のような長時間勤務の場合、日の丸自動車の「年休233日制」など休日の方が多くなる勤務シフトもあり得る。流通業の場合でも00年の大店立地法施行以来、営業時間が延長されて10〜12時間営業の商業施設が主流となって従来の8時間勤務ではシフトが組み難くなり、週間や月間では所定労働時間に納めても1日の勤務時間を4〜12時間とする変則勤務(変形労働時間制)が必至となった。その‘結果’が週休三日制なのだという見方も出来るからだ。
 もちろん、販売職の不人気もあって雇用が逼迫する中、勤務地域を限定したり休日を増やしたり‘ワーク&ライフバランス’を訴求して採用を円滑化しようという企業側の思惑もあり、働く側も自分流の‘ワーク&ライフバランス’を求めて変形労働時間制を受容するという背景もあり、週休三日制が広がっているというわけだ。
 週休三日制はそんな労使の利害が一致して広がっている現象なのだと理解すべきだが、さて貴社では労使協定による「変形労働時間制」は導入済みですか?それとも正社員がなし崩しに残業を強いられているのでしょうか。
 ちなみに、SPACのリテイラーメンバーでは営業時間が長い郊外SC中心に四分の一近い企業が「変形労働時間制」を導入。アパレルメンバーの平均残業時間は月間7.9時間、リテイラーメンバーも同14.8時間と、『店舗販売は残業が多い』という一時のイメージからは随分と改善されており、営業職はもちろんキツい事務職より遥かに残業は少ないようだ。
 販売職の生産性は営業時間が短く商品単価が高いほど高くなり、営業時間が長く商品単価が低いほど低くなる。ちなみに郊外SC平均の店舗人時生産性は駅ビルの74%、百貨店の68%に留まる。それが販売職の給与水準に響いている事は言うまでもなく、長時間営業の郊外SCが販売職に不人気なのも当然だ。
 店舗で働く者にとってもテナント企業にとってもSCの長時間営業は負担が重く、24時間何時でも何処でもショッピング出来るECが拡大して受取利便も高まる今日、もはや長時間営業に固執する必要もメリットも薄れたのではないか。

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 2017/06/30 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

オムニチャネルへの三段階の関門
 ECの脅威に対抗すべく小売業が打ち上げたオムニチャネル戦略も心地の良い‘お伽噺’の段階はとっくに過ぎ、力技で顧客利便を競う白兵戦の段階にはいっているが、ECを際限なく拡大すればよいというものでもない。そこには各段階で幾つもの‘罠’が潜んでいるからだ。
 最初の関門はEC比率5%前後、つぎの関門は10%前後、そして胸突き八丁の分かれ目は20%前後にありそうだ。
 オムニチャネル戦略の最初の要は「顧客の受取利便」で、ECが当たり前になって欧米並みに‘返品自由’がジョーシキになれば「お試し利便」が加わるが、それにはEC専業者には適わぬ「店出荷」「店受け取り」が武器になる。EC比率が5%程度までは店舗運営の片手間でも対応出来るが、それを超えてしまえば店舗運営を妨げてしまうから専用の出荷作業所と出荷要員、売れ筋については別途の在庫も必要になる。イトーヨーカ堂がネットスーパーの利用拡大に伴って店舗の陳列棚からのピッキングが煩雑になり、EC専用にピッキングする‘ダークストア’を設置したのはその好例で、EC比率が15%を超えても体制を取り切れなかったメイシーズが行き詰まったのも必然だった。
 次の関門は10%前後にあり、店舗用在庫とEC用在庫のデータ一元化から物理的な一元化(DCの統一)へと進めば、売れ足の速いECへ在庫が流れて下位の店舗に売れ筋が回らなくなり、販売不振が加速して閉店が広がり始める。これを放置したままECを拡大すれば店舗網を毀損し、オムニチャネルな利便を提供する拠点が縮小して行く。AI仕掛けの傾斜配分に歯止めをかけて下位の店舗にも最低限、売れ筋を供給する下駄を履かせないと店舗網の萎縮が止まらなくなる。
 最後の関門は20%前後にあり、これを超えてECを拡大すればカニバリが深刻化して採算割れする店舗が急増し、ECと店舗販売をトータルした売上もやがて減少に転ずる。米国のデパート業界やSPA業界で現実になり、我が国でも幾つか実例が見られ始めているが、そのリスクを認識している経営者は限られるようで、『EC比率を30%、40%に拡大する!』といった勇ましい声も未だ聞かれる。
 この臨界点を超えるなら店舗をショールーム化していく決断が必要で、店舗への商品供給を絞ってテザリングとECを組み合わせ、店舗を「受取」と「お試し」の拠点に切り替えて行く事になる。そんな決意もないままECを増やすがままにすれば、店舗の品揃えと売上が萎縮して下位の店舗から閉店が広がり、オムニチャネル利便の拠点たる店舗網を毀損してEC専業者への優位を失ってしまう。EC拡大とオムニチャネル化には三段階の関門がある事を努々、忘れるべきではあるまい。

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 2017/06/29 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

買い取らないのに欠品御法度はないよね!
 百貨店のお偉方の発言で何時もながら腰が引けるのが『お客様満足のため欠品防止に務めている』という定型句で、無邪気を通り越して「未必の故意の優越的地位濫用」と言わざるを得ない。
 買い取りならともかく委託取引や消化取引で「欠品防止」を強いては納入業者は販売消化に見合わない在庫を抱えざるを得ず、『シーズン末まで欠品を防止』とまで言われては『死ねと言うのか!』と筵旗があがってしまう。現実に、百貨店取引主体のシャツ業界などシーズン末までのサイズ在庫確保を強いられ続けた挙げ句、ほとんどの業者が経営に行き詰まってしまった。そんな窮地を脱出すべくSCや駅ビルの直営店に活路を見出したり、売れる色柄・サイズだけ週サイクルで補正生産して売り切り御免に徹するシャツ屋さんしか、もはや生き残ってはいない。
 百貨店はサプライチェーンの現実を見ようとせず自らの都合を押し付けた挙げ句、非効率な流通を強いて割高な価格にしてしまい、顧客を離反させ納入業者の経営を傾かせて自らの足元まで崩してしまった。一部の百貨店は自主MDに活路を見出そうとしたが、長年の委託取引や消化取引でバイイングも在庫コントロールも売場の編集運用もスキルが劣化して採算の目処が立つ運営が出来ず、どこも行き詰まっているのが現実だ。‘一流企業’と持ち上げられても長年にわたって実戦を離れていた付けはあまりに大きく、お公家化した平氏の辛酸を舐めている。
 一部の合理的な百貨店経営者はそんな実態を喝破して逸早く自主MDに見切りをつけ、テナントを拡大して不動産業にシフトし、運営人員を削減し組織をスリム化して経費率を切り下げ、自主MDに固執して経費率が肥大した百貨店との格差を広げた。そんな百貨店業界と似たようなジレンマに陥りつつあるのが、今や飛ぶ鳥落とす勢いのECモール事業者だと言ったらピンとは来ないでしょうね。
 どこのECモールも在庫を預かっての手数料商売だから‘消化仕入れ’の百貨店と実態は変わらず、欠品防止を求めてブランド側の店舗やサイトと在庫を奪い合い、ブランド側とてクーポンやタイムセールを乱発し低価格の専用商品に走って経費率を押し上げている。ECが無限に伸びるものなら破綻はないかも知れないが、ブランド単位に見れば明らかに限界点が見え始めている。日米ともに店舗とECがカニバリに陥る‘臨界点’は20%前後にあるようだし、低コストなアフィリエイト型プラットフォーマーが高手数料率のフルフィル型プラットフォーマーの牙城を切り崩すのか、はたまた手数料が上乗せされるだけなのか、ECとて不透明感が増している。

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 2017/06/28 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

顧客も現場も見えなくなったのか!
 バーゲン後倒しのゴリ押しもアパレル氷河期の前に潰えたかと思っていたら、ルミネと三越伊勢丹だけはまだ固執している。三越伊勢丹は7月12日から、ルミネは昨年より二週間も遅らせて7月28日からだそうだが、他の駅ビル・ファッションビルは7月1日から、他の百貨店もラグジュアリー系の指針となるギンザシックスも6月30日から、郊外・近郊SCは6月23日から、ECやファミリーセールはさらに先行、という現実の中でいったい何を考えているのだろうか。
 他でバーゲンになる夏物を一旦引き揚げてプロパーの秋物や晩夏物を投入し、後倒しバーゲン前夜にプロパー品を引き揚げて再び夏物バーゲン品を運び込むという二重三重の労働、書き入れ時にバーゲン玉を2〜4週も倉庫で寝かさせるという不合理は「優越的地位」なくしては到底強いれるものではないし、顧客にお預けを強いるのも‘顧客ファースト’とは言い難い。
 三越伊勢丹は社長更迭というクーデター劇を経て「顧客と現場を見据えた経営」に変るものと期待されていただけに、前社長が固執したバーゲン後倒しを継承した事は後継経営陣の刷新意志を疑わせるものだ。
 さらに始末が悪いのがセレクト業界に定着した「顧客差別多段階バーゲン」で、昨年12月19日の『差別されちゃいました』、同27日の『顧客は‘管理される羊’なのか』と二度に渡って警鐘を鳴らしたにも拘らず、今夏バーゲンも何ら反省無く継続する神経には驚く他は無い。
 三越伊勢丹にせよ大手セレクトにせよ、実務運営の非効率な仕組みや旧式化したスキルを刷新しないまま、見栄えのよいクリエイションやIT、ECやベンチャー事業に流れ、顧客と現場から乖離した経営感覚が組織を疲弊させ顧客を離反させて収益力を蝕んでいる。現場は『天空の星ばかり見て地上の星が見えていない』と嘆いて沈滞し、消費者は『買わない』という消極的な意思表示しか出来ない。それがギョーカイを殺している本当の構図なのではないか。

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 2017/06/27 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗運営が退化している!
 6月29日に開催するSPAC月例会『店舗運営再構築』へ向けてのメンバーアンケート集計がまとまったが、すっかり定着していると思っていた店舗運営の基本が等閑にされている実情には落胆せざるを得なかった。
 店舗へのビジュアルな陳列指示を行っていない企業が三分の一を超え、店舗への投入時間を規制していない企業が四割を超え、棚卸を年に一回か半期に一回しか行っていない企業も四割を超えていた。RFIDタグの導入も始まっているが利用は棚卸しに偏って入荷検品には及んでいない。
 毎日、店頭のフェイシング管理を励行している企業は三分の一強、バックヤードの棚管理を励行している企業は二割にも届かず、バックヤードへの出入りを管理している企業は一社しかなかった。6割近い企業がバックヤードに「売場に出し切れない品番やSKU」「売場から引いた不振の品番やSKU」を積んでおり、VMD以前の死蔵状態に在る。これでは在庫が滞貨したりロスが肥大したり何処かに消えても致し方あるまい。
 パッキンの縦積みを禁止していない企業も半数に近く、方法を定めて禁止している企業は四分の一にも遠かった。
 これらは実態の片鱗でありSPAC当日は様々な角度から検証して具体的な改善策を提ずるが、ECへと草木も靡いて経営陣の関心も店舗運営から遠のき、ギョーカイで働く人々の店舗運営に対する情熱も商品に対する愛情も薄れているのかと悲しくなった。
 アパレルを殺している本当の元凶は、店舗運営や商品への情熱と現場感覚を失って数字と幻想で空回りするスマートな?経営陣なのではと思えてくるが、私の思い込みだろうか・・・・

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 2017/06/26 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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