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ZARAの秘密?を公開
 昨日のWWDジャパン5月22日号は5月初めに開催されたINDITEX社の説明会に招待されて取材した内容を身開き2ページにまとめていたが、衆知の情報に加え、これまでベールに隠されて想像の域を出なかった「ZARA」の‘秘密’も一部、明らかにされた。
 衆知の情報としては以下の四点が知られていた。
1)欧州のコレクションブランドとほぼ同時並行の先行オリジナル素材開発に基づく付加価値の創造と自社染色整理工場による短サイクルなトレンド対応加工。
2)デザイナーからパタンナーまで社内デザインチームによる二週間での商品企画とスクリーニングを経て、生産して全世界店舗へ届くまで二週間という、素材備蓄が可能とするファストな開発体制。
3)約60%を占める欧州圏生産品は自社工場で裁断して付属も揃えて縫製工場に渡し、完成品を回収して自社工場で縫製検品と手作業のプレス仕上げを行って品質と完成度を追求。
4)総ての商品は世界の工場からスペイン国内のDCに集めて検品と物流加工を施し、そこから世界の全店舗に毎週二回、直送する、消費地にDCを置かず一蒔きに徹する完全直流型物流体制。

 今回、新たに明らかにされたのは以下の2点。
1)一部のアジア生産カジュアル商品を除いて、初期生産ロットは一型あたり“数千枚”に抑制され、全世界の「ZARA」2200余店からの発注によって“一蒔き”で蒔き切られ、補給在庫は残されない。
2)社内ネットに上げられる毎週二回の投入リスト(恐らくは消費者向けEC並みにビジュアルなささげ情報を掲示)に各店舗が数入れ発注して本部とのコミュニケーションを経て配分が決定されるSMIシステムを堅持しており、各店舗の達成責任を公正に評価するカバナンスが成り立っている。
 これは私の推測だが、13年来、欧州中心に布陣された多数のローカルDCはEC専用のフルフィルメントセンターであって店舗への補給もEC在庫と店舗在庫の融通も行わず、店舗の発注に基づく達成責任を明確に分離している。ファーストリテイリング社が立ち上げた有明プロジェクトがECと店舗のオムニチャネルな在庫引き当てを軸とするCMIな直流・交流並行型DBであるのに対し、INDITEX社はEC向けの交流物流と店舗向けの直流物流を明確に分離してSMIなDBガバナンスを堅持している。
 『経営とは“個人”の権限と成果を公正に評価するカバナンスである』というプリンシプルに立つ欧州企業と全体最適な中央集権ガバナンスに立つアジア的企業の根源的な相違ではなかろうか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2017/05/23 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

CMIかSMIかVMIか?
 怪しい略号を並べて煙に巻く訳ではないが、‘MI’はManaged Inventryの略、‘C’はCentral、‘S’はStore、‘V’はVendorの略で、要は誰が配分・補給の数入れをしているのか、という根源的な問いかけをしているのだ。
 店舗販売が低迷する中、傾斜配分すれば不振店がさらに落ち込み、頼みのECに力を入れれば傾斜配分が極まって下位店舗を一段と追い詰めてしまう。店舗とEC、好調店と不振店、自社サイトとモールサイトの狭間でDB(Distributor)が頭を抱える実情は想像に難くないが、DBにすべての配分・補給責務を問うのも偏った方法ではないか。Distributionには本部のDBやバイヤーが一方通行に配分・補給するCMIだけでなく、店舗やエリアの意向で修正したり数入れ発注させるSMI、販売と生産を直結すべく納入業者に数入れを任せるVMIという方法もある
 我が国アパレルチェーンの大半はCMIで、店舗はお仕着せの品揃えを販売するだけという一方通行になりがちだが、これでは店舗に達成責任を問い難く、創意や意欲を引き出すのも難しい。欧米のチェーンもPOSベースの似たようなCMIだと思われるかも知れないが、それはメインフレームに情報が集中していた前世紀のお話で、クラウドベースのネットワークで動く今日では‘個店’や‘個人’のスキルと成果を問う双方向型に変わっている。
 おそらく一番早かったのはウォルマートの「カテゴリーキャップテン制」で、90年代の衛星通信時代から各カテゴリーのベンダーが各地の‘Broker’も使って数入れを代行し、それを全米数千店舗のカテゴリー担当店員がハンディ端末で確認し陳列フェイス量と照合して訂正数量を打ち込むという、VMIとSMIを実現していた。そんな事を蒸し返すのは、INDITEXのDBガバナンスがSMIに徹しているからだ。
 ZARAなどINDITEX各業態では本部の投入ラインナップを週2回社内サイトに上げて各店舗が数量発注するシステムで、販売消化の責任と成果を問うDBカバナンスを確立している。それゆえプロパー販売期間中は店間移動せず、EC向けローカルDC(フルフィルメントセンター)の在庫と店舗在庫の融通もしていない
 我が国では店舗向け配分・補給も店舗とECの在庫融通もCMIな全体最適が優先され、‘個店’や‘個人’の権限と責任が極めて曖昧で、個人の権限と責任に立脚する欧米企業とは根本的にガバナンスが異なる。『欧米が正しい』と言うのではなく、『本部と店舗の双方向なコミュニケーションと責任分担なくしては店舗販売の活性化は望めない』と言いたいのだ。
 ECへと草木もなびく風潮下で店舗販売が衰退する今日、SMIに象徴されるDBのみならず、本部と店舗のすべてのコミュニケーションを見直し、店舗の創意と意欲を引き出すガバナンスの確立が急がれる。25日(木)に開催するSPAC研究会『消化歩留まり最大化へのMD&DB総研究』では根底からの‘革命’を提じたい。

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 2017/05/22 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗は‘都市鉱山’なんだけど
 ギョーカイは挙ってECに夢中だが、需給には必ず限界があり、供給過多になれば売上が伸び悩み在庫も滞貨してくる。EC/店舗一体のオムニチャネル化?が進んだせいか供給過剰の煽りは店舗を追い詰め、世界中で閉店ラッシュの嵐が吹き荒れている。
 凋落の一途に見える店舗だが、うまく運用すれば売上も利益もザクザクと掘り当てることが出来る‘都市鉱山’に例えたい。その方法はデジタル/アナログ両方向だ。
1)店舗本位のオムニチャネル運用
 タブレット接客で品揃えを拡張して在庫を検索し、店舗に取り寄せて試着販売、あるいはECで販売する。前者ではルート便によるテザリングなど当日あるいは翌日到着が要であり、私の知る限り青山商事が最も先行している。後者では独立店舗・テナント店舗を問わず店舗への売上計上が要で、曖昧にしたままでは進まない。オムニチャネルの要は品揃えの拡張と在庫検索、取り寄せ・お試し・受け取りなど顧客利便、売上の店舗計上と販売員の協力・習熟、の三点セットと心得たい。
2)店舗運営の手順とスキルの再確立
 皆がECを向く中、店舗運営は退化し非効率化しているが、運営手順とスキルを再確立すれば飛躍的な改善も可能だ。在庫を出前/元番地/ストック/DCのどこに置いてどう運用するか、テイスト/ルック/アイテム/カラー/サイズの分類配置と階梯誘導をどう編集運用するか、開店から閉店まで月曜から日曜までの業務行程をどう組み立てるか、で売上も在庫回転も人員効率もびっくりするほど改善できる。当たり前のことを当たり前に遂行する業務体系と運用スキルを欠いては店舗販売の衰退は止められない。当たり前の業務体系と運用スキルを知らない、あるいは失って久しいチェーンが少なくないのではないか。
『売れない』『不採算だから閉める』と言う前に店舗運営の実態を精査・直視すべきだ。店頭からストックまで店舗を一周して小一時間もヒアリングすれば何処に問題があるか確実に掴める。店舗クリニックに呼んでいただければ改善への手順を明確に提示できるのだが・・・・

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 2017/05/19 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)

初年度売上は予算比34%だった!
 日本空港ビルディングは5月12日、昨年の1月27日に三越銀座店の8階に開業した本土では初の空港型市中免税店「Japan Duty Free GINZA」(3300平米)の初年度売上は51億円と当初予算(150億円/坪当たり1500万円)の34%に留まって18億円の営業損失となった、と公表した。
 計画が発表された14年7月頃はインバウンド売上も急上昇しており『その手があったか!』とライバル百貨店に地団駄を踏ませ、その後の相次ぐ空港型市中免税店導入の口火を切ったパイオニアだったが、開業直後から予想外の販売不振に苦しみ、予算比3〜4掛けという噂が流布していた。確かに何時覗いても人影も疎らで厳しそうに見えたが、噂はピッタリ当たっていたという訳だ。
 一足遅れて3月31日に東急プラザ銀座の8〜9階に開業した「ロッテ免税店銀座」(4420平米)も似たような情況でTAX-FREEコーナーを除けば閑散としているが、こちらの初年度売上はまだ公表されていない。当初売上目標は2000億ウォン(約200億円)だったから、坪当り1494万円とハードルの高さは似たようなものだ。
 唯一、好調なスタートが伝えられるのが4月27日、高島屋が新宿店の11Fに全日空商事、ホテル新羅との合弁で開業した「高島屋免税店SHILLA&ANA」(2800平米)で、JR新宿駅と「バスタ新宿」によるアクセスに加えて観光バス専用駐車場と11Fまでの専用エレベーターを備え、高級ブランドを抑えて化粧品やドラッグなど日用品に主軸を置き、ドラッグストアの「マツモトキヨシ」や家電の「ラオックス」を導入してTAX-FREEを強化するなど、変貌するインバウンド消費の現実に対応している。
 「高島屋免税店SHILLA&ANA」とて売上予算を80億円と計画段階より引き下げているが、それでも坪当たり943万円とハードルは高い。三越銀座店の17年3月期の坪効率731万円に対して「Japan Duty Free GINZA」の実績坪効率は510万円と七掛けだから、高島屋新宿店の17年2月期の坪効率435万円に対して「高島屋免税店SHILLA&ANA」の坪効率予算が943万円と2.17倍も高いのは無理がありそうだ。

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 2017/05/18 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

高級ブランドの後方は箱が山積み
 皆さんが高級ブランドのお店でバッグを購入されたとしましょう。販売員さんは白い手袋で恭しく扱った商品を引っ込めて『新しいものをお持ちします』と一端、後方に消えますよね。店頭に陳列してあるのは皆、サンプル商品で、お客様にお渡しするのは手垢がついていない新品というのが‘お約束’なんだそうです(元より一点ものは現品渡しになります)。
 これって典型的な‘ショールーム陳列’で、ヨドバシやビッグなど家電量販店の大型商品は皆、ショールーム陳列ですから、‘現品’だけになると陳列品処分のお値引きをしてくれます。高級ブランドの陳列品はお値引きしてくれませんが、社員販売やファミリーセールに回るのだと伺った事があります。
 それはさておき、家電量販店や大型家具店ではお買い上げ品は物流センターから宅配されるので、大昔のように繁華街店舗の後方に大量のストックを積み上げるなんて不合理な事はもうやっていませんが、高級ブランドのお店では未だ一等地の後方にストックを積み上げているようです。坪家賃が20〜30万円もする一等地で売場面積の二割近い後方スペースを取っている要因は、精算や包装のスペースに加えて大量の‘箱’を積み上げているからなのです。
 お客様にお渡しする『新しいもの』は当然ながら裸で棚に積み上げられたり段ボールに詰め込まれたりしている筈は無く(中価格ブランドは公然とやってますが)、それぞれに合った豪華な包装箱に恭しく入れられています。その容量たるや中身の倍以上で、これが後方スペースを肥大させる要因となっているのです。
 合理的に考えれば、不織布の袋に包んだりケーキ屋さんのように折り畳み式の包装箱を組み立てて商品を入れ、ショッピングバッグに入れてお渡しすれば済むのでしょうが、高級ブランドともなれば、そんな訳にもまいりません。高級感あるしっかりとした包装箱に入れて恭しくお手渡ししないと‘お値段’に見合わないのでしょう。
 それでもヨドバシやビックのように物流センターから宅配すれば一等地の後方スペースに積み上げなくても済みますから、その分、売場を拡げたり家賃を節約したり効率化出来ます。オムニチャネル時代のショールーム販売として合理的な必然と思われますが、さて何処のブランドが踏み切るのでしょうか。
 高級ブランドの世界には19世紀的に恭しい‘不思議’や‘不合理’が満ち溢れ、それが法外なお値段の一因にもなっていますが、何せ部内者として働いた事がないのでアニュアルレポートと店頭の運用、業界の伝聞から推察するしかありません。部内しか知り得ない‘七不思議噺’をご存知の方が居られましたら、是非ともお聞かせ願いたいものです(当社メールフォーム)。

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 2017/05/17 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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