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11%に迫る衣料・服飾EC比率
 経済産業省が4月24日に発表した平成28年度の「電子商取引に関する市場調査」報告書に拠れば、2016年の我が国B2C電子商取引は前年から9.9%増加して15兆円の大台に乗り、そのうち物品販売は10.6%増加して8兆43億円、EC比率は5.43%に達したそうだ。衣料・服飾雑貨のECは10.5%伸びて1兆5300億円と物販最大の19.1%を占め、EC比率は10.9%と11%に迫った!
 EC比率が最も高いのは10.9%伸びた事務用品・文具の33.6%で、9.0%伸びた家電・PCの29.9%、12.0%伸びた書籍・映像ソフトの24.5%、11.4%伸びた家具・生活雑貨の18.7%が続く。衣料・服飾雑貨の10.9%は化粧品・医薬品の5.0%(12.1%増)、食料・飲料の2.3%(10.2%増)よりは高いが前記3カテゴリーには遠く及ばず、米国の19%とも開きがある。毎年10%伸び続けても米国並みの水準に達するには6年かかる計算だがトレンド的には2〜3年の時差しかなく、米国で起こっているパニック的な店舗販売の凋落は目前に迫っている。
 EC比率が33.6%に達した事務用品・文具、29.9%に達した家電・PC、24.5%に達した書籍・映像ソフトなどの分野では一部の突出した企業を除いて店舗販売は総崩れだから、店舗販売が雪崩的に崩壊するEC比率の‘臨界点’は分野総体で20%弱、個別ブランド/業態でも25%前後にあると推察される。
 EC急成長が続いて万々歳みたいな‘空気’だが、衣料・服飾雑貨の流通が事務用品・文具、家電・PC、書籍・映像ソフトみたいになって店舗が雪崩打つように閉店して行けば、ブランドを実体験する場が限られて顧客が広がらなくなり、縮小スパイラルに陥るリスクは否めない。
「ロコンド」みたいに何点も取り寄せて試しまくれるECばかりなら不便をかこちはしないだろうが、フツーのECだと『取引お断り』になってしまう。以前に提案した「TBPP」が普及すればともかく、店舗がなくなってしまえば自由に試せる機会は限られてしまう。幾らECを伸ばしても店舗がなくなれば実体験の場もなくなり、縮小スパイラルが避けられない。そろそろ頭を冷やして考え直すべき時ではないか。

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 2017/04/28 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

EC比率の限界は?
 店舗販売の凋落が加速する中、ギョーカイは挙ってEC拡大に走っているが、その行く末はどうなるのだろうか。ECに圧迫される店舗小売業が‘救世主’と頼ったオムニチャネルも米国では店舗販売の凋落を止められず、EC比率を高めただけ店舗販売が減少して閉店ラッシュを招くというジレンマに陥っている。
 EC比率を29%に伸ばしたニーマンマーカスは既存店売上が95.9に落ちて全社売上も97.1と水面下に沈んで赤字に転落し、オムニチャネルの言い出しっぺであるメイシーズは既存店売上も全社売上も二期連続して前年を割って大量閉店に追い込まれている。EC比率を22.2%に伸ばしたノードストロムも既存店売上がマイナスに転じ、収益率が急激に低下している(いずれも最新の16年度決算)。ECを拡大して来たギャップやアバクロにしても、ブランド人気が低迷する中ではECが伸びただけ店舗販売が減少するというジレンマに苦しんでいる。
 オムニチャネルは店舗とECを一元化して顧客に利便を、企業に販売チャンスと在庫効率/経営効率改善のメリットをもたらすが、メジャーなブランドにとっては売上のパイ拡大を約束するものではない。EC比率が一定段階まで達すれば、ECに売上が流れただけ店舗販売が減少するようになり、オムニチャネル効果は剥げ落ちてしまう。数百億円以上の売上規模なら、その臨界点は20%を超えたあたりにあるのかも知れない。百億円未満のブランドでも30%、40%となれば店舗売上が急落するケースも見られるから、EC拡大には限界があると見るべきだ。
 ECは流通システムのひとつであり、店舗販売より効率的ではあっても、O2Oな送客効果は得られても、売上のパイそのものを増幅するマジックではない。コンテンツたるMDの魅力を高め、店舗での実体験で顧客を拡げない限り、ブランド総体のマーケットは広がらないのだ。
 ECに注力するあまり店舗販売が疎かにされれば、オムニチャネルの御利益は剥げ落ちてしまう。残念ながら、このギョーカイはオムニチャネルの本質を理解していない。オーバーストアの集団自殺の次はオーバーECによる集団自殺となるのだろうか。

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 2017/04/27 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

イリュージョンとソリューション
 経営もマーケティングもイリュージョン(幻影の発信)とソリューション(実務的解決)のバランスが肝要だと思うが、このギョーカイはイリュージョンに流れがちで、皆が思い込んで一方に走っている時に警鐘を鳴らしても聞いてはもらえない。一時は『皆で渡れば大丈夫』であっても、ビジネスの成否は需給で決まるから、オーバー供給になってしまえば『皆で渡れば皆殺し』という結末が待っている。
 卑近なところでは‘売れ筋の追っかけ’もそうだが、大きな時代のうねりでは‘定期借家契約によるSC出店’も、幾度もオーバーストアが危ぶまれ『売れない店をどうして出店するの?』と警鐘を鳴らしても、熱くなって競走馬みたいに前しか見えなくなっていると誰も警鐘に耳を傾けはしなかった。その結末が不振店の続出と退店ラッシュ、巨額のペナルティや除却損の負担という悲劇だが、確かな売上予測に基づいて冷静に選別すれば、ほぼ避けられた事態だったのではないか。
 出店政策は極端から極端に走る事が多く、『バスに乗り遅れるな』とダボハゼ的に飛びつくかと思えば、一度逆風になると‘超優良物件’さえ猫又に敬遠してしまう。今回のメンバーアンケートで断トツ第1位に評価された「イオンモール長久手」にしても、テナント募集段階が氷河期的販売不振と店舗リストラの最中だったため大手が軒並み敬遠してしまい、ローカルチェーンが目立つ構成となってしまったが、開業後の大成功を見て今更悔しがっても手遅れだ。
 SPACメンバーには主要な開業・増床物件は子細に検証した売上予測をほぼ1年前に提供しており、慎重に吟味するなら失敗は避けられるはずだが、出店物件の結果成績を集計する段階では『売れない』『止めとけ』と明示した物件にも少なからぬメンバーが出店して散々な結果を報告して来るから、何かが擦れ違っている。
 経営陣と店舗開発スタッフの意思疎通に問題があったり、出店判断段階の販売業績が影響していると推察されるが、その時の‘空気’が個々の物件の冷静な判断を阻害しているのではないか。人が動かす組織だから‘感情’や‘空気’が意思決定を左右するのは仕方ないが、イリュージョン(空気感)とソリューション(科学的実践的検証)は明確に区別すべきだ。
 さて今のギョーカイの‘空気’は『EC拡大に遅れるな!』一辺倒という感があるが、その一方で出店や店舗運営への経営陣の関心は希薄になっている。ECを拡大すれば売上は伸びるし在庫効率も経費構造も改善されるから良いことずくめに思えるが、一線を越えればオムニチャネル効果を相殺して店舗販売が落ち込み、売上総体が縮小スパイラルに転じてしまう。
 ファッションEC比率が20%に迫る米国で起こっている大量閉店ラッシュを対岸の火事と見てはいけない。「オムニチャネル」が心地よいイリュージョンだった良き日はとっくに終わり、今やシリアスなソリューションが問われている。オーバーストアと同様、オーバーECも‘集団自殺’のトリガーを引きかねないのだ。

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 2017/04/26 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

オーバーストアとオーバーECの罠
 今週金曜28日に開催するSPAC月例会は「開設予定注目商業施設総点検」をテーマに、今秋から来春にかけて開業・増床する注目商業施設の売上を予測するとともに、過去3年間に開業した主要商業施設の現状を出店したメンバー企業の報告を軸に検証したが、『ここまで来たか!』と絶句する悲惨な実態が露わになった。
 集計34施設中、好調施設はAプラス評価の「イオンモール長久手」のみで、A評価も何とか堅調というBプラス評価も今回は見当たらず、B評価が6施設、Bマイナス評価が16施設、C〜D評価が11施設と惨憺たるものだった。昨春調査ではA〜Aマイナスが6施設、Bプラスが2施設、Bが11施設、Bマイナスが12施設、C〜Dは8施設だったから、売上の落ち込みは極めて急激だ。
 エンターテイメント施設や飲食集積で集客は出来ても物販店の売上には繋がらず、館は何とか予算に届いてもファッションテナントは大半が予算未達という傾向が年々強まっており、今回はららぽーとの新設施設に顕著に現れた。ちなみに当社の評価はAA、Aプラス、A、Aマイナス、Bプラス、B、Bマイナス、C、Dの9ランクで、ファッションテナントの平均坪効率で厳密に位置付けている。
 出店の成功率は昨年の20.5%(5店に1店)から2.9%に急落。C評価以下の失敗率は昨年の51.3%から79.4%に跳ね上がった。この34施設にメンバー企業が出店した448店中、既に退店したか退店を決定、退店を検討中の店舗は2割を超え、開店から2年以上が経過した14施設に限れば3割に迫る。
 12〜14年は出店の失敗率は三分の一程度だったのが昨年は二分の一に悪化し、今年はほぼ五分の四が失敗という惨憺たる状況になった。ロシアンルーレットだって‘失敗率’は六分の一なのだから、三分の一だって自殺行為で、五分の四など‘集団自殺’と言うしかない。結果が出たのは直近だが、出店したのは1〜3年前で、出店を決めたのはさらに半年〜一年前だったはずだから、悲劇のトリガーはかなり前に引かれていた。
 その頃から『売れない店をどうして出店するの?』と度々警告していたのに、メンバー企業でさえ聞く耳を持たなかったのだから、他は推して知るべしだろう。『皆で渡れば大丈夫』じゃなくて『皆で渡れば皆殺し』というのが結末だった。
 こんな状況を招いたのはオーバーストアをものともしない‘集団自殺的’商業施設開発はもちろん、衣料・服飾分野の急激なECシフトが大きく影響している。我が国のファッションEC比率も11%に迫り(経産省4月24日発表)、19%に達してアパレルチェーンや百貨店の大量閉店や経営破綻が加速度的に広がる米国の二の舞は時間の問題と思われる。
 ブランド/業態単位に見るなら、売上規模やMDの特性にも拠るが、EC拡大が実店舗の閉店ラッシュを招いて売上総体が縮小スパイラルに転ずる‘臨界点’は25%前後に在るのではないか。近々、日米の実例を検証して報告しよう。EC比率を30%、40%に上げて行こうという勇ましい掛け声が見落としている‘罠’にそろそろ気付くべきだ。
 オーバーストアの罠もオーバーECの罠も勢いに乗っている時は見えはしない。競走馬のように前しか見えなくなっているからだ。オーバーECがオーバーストアのような‘集団自殺’を招かない事を祈りたい。

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 2017/04/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

閉店・撤退はどこまで広がるの!
 ギャップジャパンは渋谷・公園通りの「ギャップ」渋谷店を5月7日をもって閉店する。上陸翌年の96年11月から旗艦店的役割を果たしてきた主力店の閉店は業界のみならず一般消費者にもショックだったのではないか。「オールドネイビー」全53店の撤退が業界に衝撃を与え、販売不振が続く「ギャップ」にも閉店が広がるのではと危惧されていた矢先だけに関係者の動揺は否めない。
 そもそも「オールドネイビー」が12年の上陸からわずか4年で撤退に追い込まれたのには、95年に上陸して多店化していた「ギャップ」の価格政策が大きく災いしたという見方がある。
 「ギャップ」は米国の二倍近い価格政策を採り、煩雑かつ大幅な値引き訴求で消化を図って来たため、消費者も『ちょっと待てば安くなる』『正価で買うのは馬鹿らしい』という購買感覚が身に付いていた。そんな反省からか「オールドネイビー」は米国価格からの積み上げを最小限に抑えたが、消費者は「ギャップ」と同じような値引き訴求を期待してしまい、販売効率が低位に留まったこともあって利幅の薄い「オールドネイビー」は採算の目処が立たなくなり、撤退に追い込まれてしまった。先輩が付けた購買慣習が後輩を圧し潰してしまった訳で、「ギャップ」の価格政策が悔やまれる。
 アパレルチェーンの販売不振は世界的なもので、過剰供給と同質化がもたらす値崩れが価格不信を拡げていたところに、ECの急拡大が引導を渡して雪崩的な閉店ラッシュが始まった。ECの急拡大は消費の移動のみならず、売れ足の速いECへの優先配分で不振店にますます売れ筋が回らなくなって閉店を加速してしまう。アパレル市場総体が低迷しているのに闇雲にECを拡大すれば下位店舗の閉店ラッシュを招くのは必定だ。我が国でもそれを裏付ける兆候が急激に広がっており、米国並みの閉店ラッシュが迫っている。
 ギャップジャパンは17年1月期末までに「オールドネイビー」の53店を含む75店を撤退して280億円の減収を見込んでいたが、今期に入っても閉店が続くようだと歯止めが見えなくなる。本日現在で「ギャップ」161店、「バナナリパブリック」49店が存在するが、このうち何店が閉店する事になるのだろうか。
 外資チェーンの閉店や撤退はギャップ社に留まらない。アパレルはローカルなものであって世界中で普遍的に売れるブランドなど存在しない。アウェイなマーケットでは運営コストもロスも肥大するから本国より採算は厳しく、販売効率が低位に留まれば閉店や撤退が取沙汰される事になる。日本国内店舗の採算もともかく本国の経営状態や方針転換で突然の撤退も有り得るから、商業施設デベならずとも固唾をのんで見守る情況だ。

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 2017/04/24 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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