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上から目線も限度を超える
 2012年夏期以来のバーゲン後倒しも氷河期的販売不振の前に自然淘汰されたと思っていたら、まだ固執する商業施設があるようで、ほとんど実情無視の大本営的特攻になってきた。
 衣料品業界は需要量の倍も供給してバーゲンしてもアウトレットに回してもファミリーセールを乱発しても半分が売れ残る状況なのだから、オーバー供給とオーバーストアを皆で止めない限り、バーゲンは前倒しされる事があっても後倒しは不可能。商業施設が強権を発動して無理やり後ろ倒しすれば、山猫セールやシークレットセール、ECセールが先行して自分の首を絞めるだけだ。
 どんなに寡占的優越的地位に在る企業でもマーケット全体の‘需給の論理’に逆らうのは不可能で愚かと言うしかないが、可哀想なのは、その陰で振り回されるテナントや納入業者だ。
 後倒しを主張する側から聞こえて来るのは『プロパー販売強化』『繊維産地擁護』とまったくの消費者不在で‘錦の御旗’が見えないが、そんな企業に限って『従業員の労働軽減』などという綺麗事を打ち出してくる。バーゲン時期を後倒せば、テナントや納入業者は他館でセールが始まる商品を一旦引き揚げて先物や繋ぎ企画商品を搬入し、後発バーゲン前夜に先物を引き揚げてセール商品を再び運び込むという二重の作業を強いられる。強力な労働組合に守られた館側の従業員はさっさと引き揚げても、テナントや納入業者の従業員は深夜までの労働を強いられる。
 『従業員の労働軽減』と『バーゲン後倒し』は両立しない。それとも、館の言う‘従業員’にはテナントや納入業者の従業員は含まれないのだろうか。だとすれば‘上から目線’も限度を超えている。このギョーカイの経営層には創始者が「四民平等」を謳った義塾の出身者が多いが、いったい何を学んで来たのだろうか。

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 2017/03/31 10:02  この記事のURL  /  コメント(0)

百貨店はECで絶滅するの?
 ECに圧されて大量閉店や身売りが広がる米国のデパート業界だが、我が国の百貨店はどうなるのだろうか。オムニチャネルを標榜してECを拡大して来た米国のデパートさえ総崩れなのだから、EC比率が1%程度に留まる我が国百貨店の命運は風前の灯と言うしかない。
 米国デパートの17年1月期のEC比率はニーマンマーカスで29.0%(前期は26.3%)、ノードストロムで22.2%(前期は20.1%)、メイシーズはEC比率を公表していないが15%以上といわれる。それでもアマゾンなどECに圧されて三社とも既存店売上が減少し減益決算が続く窮状で(メイシーズとニーマンは全社売上も減少、ニーマンは赤字転落)、各社ともデパート事業の先は暗いと見て不採算店の閉鎖とOPS事業の拡大を急いでいる。
 米国デパートに較べれば我が国百貨店のEC比率は格段に低位に留まったままオムニチャネル対応も抜本的に遅れており、追い着く見込みも無い。同じ背景からOPSへの進出も難しく、不採算店の閉鎖と資産売却、人員整理の果てに細って行くか、SC型の運営に切り替え人員整理して生き残るしか選択肢が見えない。
 米国デパートは曲がりなりにもセントラルバイイング&DB体制を確立しており、買い取った商品を店間移動・売価変更して売り切る仕組みが定着しているが(化粧品や宝飾品、靴の一部は我が国同様なコンセ)、我が国の百貨店は個店単位の消化仕入れに留まってセントラルバイイング&DB体制を確立出来ず、自在な店間移動や売価変更はもちろん、ECサイトに載せる‘ささげ’も‘商品登録’も適わず、通販フルフィルメントも持たない。ゆえにECもキュレーションやアフィリエイトに留まってダイレクトな事業展開に至らず、1%前後に低迷したままなのだ。
 その一方、ファッションECモールもブランド事業者のECも急速な拡大を続けて衣料・服飾のEC流通シェアは10%の大台に乗り、速くて安価で確実な宅配インフラに乗って米国並みの流通シェア(ほぼ18%)へ近付いて行くのは時間の問題だ。米国で現実となったように、臨界シェア(恐らく12〜13%)に達すれば雪崩的なECシフトが起こって店舗販売は壊滅的な打撃を受ける。そうなれば我が国の百貨店は地方店や郊外店はもちろん旗艦店まで売上の急落に直面する。
 そんなカタルシス的自然淘汰が刻々と迫る中、もはや面子も雇用も構ってはいられない。徹底したリストラで不動産事業化するか、全社火の玉となってオムニチャネルな巨大ショールームストアへ変貌するか、二者択一の刻が迫る。
 そんな中、‘希望の星’と見えたのが阪急百貨店の新しいECサイ(ビューティ/メンズ)で、ビジュアルと構成がZOZO並みに便利で洗練されていて、商品ページに「店舗受取」選択まで付いて来る。伊勢丹の不便なサイトを見て百貨店のECは駄目だと思い込んでいたが、仕入れ先の理解を得て‘ささげ’して便利なプラットフォーム(マガシークがサポートしている)に載っければ、買い取らなくても壁は越えられるのかも(ZOZOだって在庫を預かっているだけ!)。
 「店舗受取」で売場に送客し宅配で商圏の際を超え、タブレット接客で品揃えの物理的制約を超えれば、「巨大ショールームストア」に変身するのも夢ではない。販売力さえあれば‘預かり’でも商品は確保出来るのだから、よく出来たECフロントとフルフィルに載って「本店」の知名度と販売力を活かせば壁は超えられるのかも知れない。阪急百貨店の‘結果’を見たいものだ。

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 2017/03/30 10:34  この記事のURL  /  コメント(0)

コンビニからTBPPへ
 ECが拡大する中、コンビニ受け取りも増えているが、コンビニの限られたレジ裏スペースやバイト君の作業量を考えれば‘限界’が近づいているのではないか。
 細々とした商品の精算やレンジ操作に様々な料金の支払いや荷物の配送委託が挟まるだけでレジ待ち列が出来てしまう現状を見る限り、通販商品の受け取りが急増すればパンクは目に見えている。レジ裏や後方のストックスペースにも限界があるし、いちいち後方へ荷物探しに抜けてはレジがストップしてしまう。ましてや今後、急速に広がると見られる「TBPP」(Try Buy Pickup Point 中身を確認したり試着してから購入や返品が出来る受け取り拠点で私の造語)はもっとスペースと人手を要するから、いずれECのラストワンマイル拠点サービスはコンビニの枠を超えてしまう。オムニチャネルサービスの多様化と取扱量の拡大に返品率の上昇が加わればコンビニのパンクは避けられず、遠からず「TBPP」専門店が独立したビジネスになると思われる。
 「TBPP」は顧客利便のみならず、ECなど通販事業者にとっても多大なメリットが期待される。カタログ通販の購買慣習がECに受け継がれた欧州では返品率が極めて高く、アパレルで三割、靴では四割を超えるケースもある。サイズや色柄を複数送らせて選択する消費者が多いためで、日本でも『お客様都合の返品可』を謳うとアパレルで10%、靴では30%を超える例が見られる。
 返品率もともかく、問題は返品された商品の再販売が可能かどうかで、顧客に返品作業を任せては再販可能状態を確保するのが難しい。試着してから買う「TBPP」ならマニュアルに基づいて専門スタッフが返品作業をするから、ほぼ100%再販可能な状態で戻って来る。通販業者にとっては手数料を支払っても割が合うのだ。消費者にしても、面倒な再梱包や返品手続きをしなくても済むし、ファッションECモールの直営「TBPP」などでは専門スタッフのフィッティングアドバイスやお直しサービスも受けられる。そんな‘付加価値’をコンビニに求めるのはスペース的にも人員的にもスキル的にも無理があり過ぎる。
 「TBPP」専門店には幾つかのアプローチが考えられる。最もストレートなのはアマゾンやスタートトゥデイがショールーム兼「TBPP」として直営するもの、あるいはコンビニのパンクで困る宅配会社が自ら設けるもので、ヤマト運輸はSCなど商業施設内に多店化している「宅急便サービスカウンター」を機能拡張すればよい。家電の設置・設定・修理まで代行する部隊を抱えているのだから、衣料品や靴のフィッティングや修理加工まで手掛けてもまったく不思議は無い。スペースに余裕があるロードサイドでは紳士服店やジーンズカジュアル店はもちろん、ブックストアやCDレンタル店なども挙って進出するだろう。
 消費者にも通販業者にも宅配業社にも三方よしのビジネスだから、全国の「TBPP」拠点は遠からず万を超え、コンビニとは別途のオムニチャネルサービス拠点として消費生活に定着するに違いない。コンビニに匹敵する広がりが期待されるとなればビジネスチャンスもコンビニに迫るのではないか。

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 2017/03/29 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

返品率はどこまで上がるの?
 『返品率はモラルの問題ではなく購買慣習で、‘慣習’が変れば返品率も変わって行く』と以前のブログで指摘したが、「返品自由」を謳うサイトでガンガン買って試着してどしどし返品していたら注文を拒絶されてしまったという体験談をSNSで目にした。その人は返品率こそ過半を超えていたが相当額を購入していたそうで、悪意とは見えなかった。
 アパレル通販の返品率は欧米では20%(靴は30%)前後と言われるが、我が国ではTVショッピングは欧州並みでもカタログ通販で10%前後、ECでは3〜5%と低率に収まって来た。その要因は『日本の消費者は遠慮がちで返品を躊躇する人が多いから』とされて来たが、多くのEC事業者が顧客都合による返品を拒否して来た事が本当の要因だ。
 SPACメンバー自社サイトの返品率(返品可サイトの平均)は2013年の2.6%から14年が3.1%、15年が3.6%、16年が4.6%とジリジリ上昇して来たが、17年は上げ止まった。この間、最大返品率も10%を超えず、返品を容認しても最大10%までに収まると期待する根拠となっていたが、果たしてそうだろうか。
 日本でも『21日間返品・サイズ交換・送料無料』を謳って急成長している靴のEC「ロコンド.jp」では初期の20%弱から16年2月期は39.0%と返品率が上昇したから、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが認知されて売上が伸びるほど返品率も高まって行くというアイロニーが指摘される(17年2月期の第三四半期まででは衣料品やバッグが増えたせいか32.8%とやや抑制されている)。さすがにアパレルでは靴ほどの返品率にはならないと思うが、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが一般化すれば靴に迫る日が来るかも知れない。
 返品率はモラルの問題ではなく時代の購買慣習だから、サイズ選択に限らず、『いっぱい取り寄せて散々試着して選ぼう』と積極的に利用する顧客が一般化して行けば、返品率は20%30%どころか50%になっても不思議はない。店舗で何着も試着して選ぶ事を考えれば、顧客に悪意は認められない。
 『オムニチャネル化が進めば、店舗にEC同様な利便、ECに店舗同様なサービスが求められるようになる』と幾度も指摘して来たが、『試着して選ぶ』という店舗同様なサービスがECに求められるのは必然かも知れない。「ロコンド」は『買ってから選ぶ』と謳うが、『買ってから選んで返品』すれば‘返品’だが、『選んで買って残りは返す』なら‘返品’ではなく店舗販売同様な選択に過ぎないのではないか。
 この話がピンと来ないのは、『試してから買う』という‘通販商品お試し受け取り所’(Try Buy Pickup Point)が我が国にはまだ存在しないからだろう。返品が‘常識’になる近い将来、この「TBPP」が普及していないとEC事業者は再販不能な返品商品で経営が圧迫されてしまう。明日はこの「TBPP」を説明しよう。

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 2017/03/28 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗販売は何処へ行く
 衣料・服飾関連のEC流通シェアが15年で17.6%(同年の我が国は9.04%)に達したと推計される米国ではオムニチャネルに出遅れた百貨店やアパレルチェーンの大量閉店や経営破綻が雪崩打つように広がって‘大量絶滅’の様相を呈しているが、今週30日(木曜)の午後に開催するSPAC3月例会「最新オムニチャネル戦略総研究 店舗・EC一体の顧客最適を求めて」の検証と提言は一時代を画するものになるかも知れない。
 オムニチャネル関連ではAI絡みのハイテクばかりが注目されるが、本質的な命題は『ECがメジャー化する中で店舗販売はどうなるのか』に尽きる。衣料・服飾関連のEC流通シェアが二桁に乗る中、店舗販売にはEC並みの利便が、ECには店舗販売並みのサービスが求められるのは必然で、店舗におけるEC並みの在庫検索やパーソナルなAI対応、EC商品のお試しや受け取り・返品はもちろん、ECにも店舗並みの自在なお試しと返品が求められるようになる。
 今の所、『買ってから選ぶ』を謳うロコンドなどを例外として返品率は最大10%に収まっているが、カタログ通販時代からの購買慣習を引き継ぐ欧州では20〜30%の返品が一般的で、ECが店舗販売と並ぶ主要な購買手段となれば日本でも大差ない返品率となるのは時間の問題と思われる。返品率もともかく経営的には返品のコンディションが再販売可能かどうかが重要で、今回のメンバーアンケートでは平均13%が‘再販売不能’と回答されていた。
 ECと店舗が一体で等しい便宜とサービスが求められる今後、システム的には対応出来てもオペレーションの煩雑さと運用コスト、人事考課の軋轢で行き詰まるリスクは想像に難くない。‘オムニチャネル’の言い出しっぺの一人であるメイシーズの蹉跌はそんな事情を象徴するものだ。今回のメンバーアンケートでも、店舗スタッフの投稿に起因する売上にインセンティブを付与しているのは三社だけだった。
 オムニチャネル化で先行する企業さえ対応が難しいのに、ラッダイトに拒絶して来た多くの百貨店や商業施設が置き去られるのは火を見るよりも明らかで、‘大量絶滅による自然淘汰’という米国で始まっている悲劇的な結末が予測される。
 メンバー企業の詳細なアンケートに日米欧の最新状況を加えて検証し、EC・店舗販売の両面から具体的な対応を提言する今回のSPACはある意味‘衝撃的’かも知れない。知らなければ‘茹で蛙’を決め込めるが、知ってしまえば必死に走らざるを得ない。どちらもお好みだが、生き残るには知って走るしかあるまい。明日、明後日と、このブログでレポートの断片を紹介して行きたい。

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 2017/03/27 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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