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手垢が付いた商品を売るの?
 在庫効率を考えても運営効率を考えても顧客と販売員の労働負担を考えても、売場に在庫を積み上げるセルフサービス方式は百害あって一利なく、遠からずオムニチャネルなショールーム販売に代わっていくと繰り返し提じてきたが、カテゴリーによっては別の理由からもショールーム販売への移行が急がれる。
 設置・設定が必要な大型家電や家具ではショールーム販売はすでに定着し、修理加工が必要な眼鏡や紳士服、パンツなども急速にショールーム販売へ移行していくと考えられるが、ランジェリーやタオルなど他人の手垢が厭われるカテゴリーでショールーム販売への移行が見られないのは不可解だ。店頭までブラジャーやショーツを剥き出しに陳列するチェーン店の無神経さは如何なものかと思うし、他人の手垢が付いたタオルをオープン陳列で販売するブランドが品質を謳うのも嘘っぽく感じられる。
 VMDとはカッコよく見せるだけでなく、購買プロセスを適切に誘導して買う側と売る側の労働を最小化し、商品の特性に最適の陳列で商品価値を高めるものだと思う。肌に直接触れる商品が無神経にオープン陳列されているのは論外で、多数買いが一般的なタオルが各色2〜3枚づつ積まれているのも中途半端だと思う。
 ストッキングなどのパッケージ商品では棚割陳列の側にサンプルがハンギングされていたりするが、ランジェリーやタオルではサンプルを美しくショールーム陳列し、お買い上げのお客様にはカウンター後方の‘新品’をお渡しするべきではないか。
 近年の化粧品業界におけるドラッグストア型オープン陳列のセルフ販売からカウンターを挟んだ対面販売(商品はカウンター後方の棚にストック)への回帰を参考にして欲しい。顧客エンゲージメントが高まって客単価が何倍も跳ね上がるのだから、物流作業負担の大きいセルフ販売などやってられないのは当然だろう。


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 2016/11/22 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

OLのスカート比率はなぜ高い?
 などと風俗研究みたいな追求は不得意だが、主要ブランドのアイテム売上構成から世代別のスカート比率を算出して傾向を見る事は出来る。毎年11月のSPAC月例会は『来期MD計画総点検』をテーマに様々な業態やブランドの売上月指数やアイテム構成比を検証して来期MD予算の構築を提じているが、今回も膨大なデータの検証が終わって明確な傾向が出た。
 その中で興味深いのがスカート比率(パンツとスカートの合計に占める売上比率)で、OLが52.2%と最も高く唯一、過半を超え、ミッシー40.2%、ミセス27.1%と世代が上がるに連れパンツ比率が高まって行く。フェミニンなセックスアピール重視から生活機能重視へと女性のスタイリングも年齢とともに変化して行くのだろうか。
 13〜14年のようなトレンドによる揺り戻しもあるが、社会生活の機能要求が年々高まる中、パンツ比率が高まってスカート比率が低下する傾向が続いており、01年には婦人衣料家計支出の9.3%を占めていたスカートが15年には5.3%に低下する一方、パンツは12.5%から16.7%に上昇している。
 ワンピース比率(全アイテム中の売上比率)もOLは12.6%と高いが、ミッシーは17.7%とさらに高く、ミセスは4.0%と最も低い。ワンピースもスカートの一種と見て合計した売上比率を見ると、もっとも高いのがミッシーの24.5%でOLが21.9%で続き、ミセスは8.1%と最も低い。意外に思われるかも知れないが、ヤングカジュアルはスカート比率(パンツとスカートの合計に占める売上比率)が43.2%とOLに続く一方、ワンピース比率は5.2%とミセスに次いで低い。
 これらは販売金額から算出したものだが、アウターが月度やシーズンで大きく変動するのに対し、スカートやパンツ、ワンピースといったボトムは変化が小さく通年アイテム化している。トレンドに左右されると言っても客層毎のスタイリング嗜好は大きく変わるものではなく、フィットやディティールは変ってもアイテム構成比は極端には変らない。
 客数の拡大が望み難い今日、販売/仕入れ予算編成もスタイリング設計も変化より安定継続が要で、下手に崩すとMDストーリーが途切れて顧客が離れてしまう。トレンドへの対応も必要だが、顧客エンゲージメント最優先のMDストーリーが求められるのではないか。
 今週金曜(25日)に開催するSPAC月例会では月指数とアイテム構成を様々な角度から検証して効率的なMD、顧客を離さないMDを探る一方、通年化している定型ルックから「ダブルライナー」「マルチライナー」の可能性を提唱したい。

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 2016/11/21 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

‘価格崩壊’と‘業界崩壊’
 昨夕、当社で開催した月例「販売情報交換会」(婦人服部会)では、ようやくの冷え込みで防寒アウターが活発に動いて一気に売上が回復し、カジュアルチェーンやセレクトSPAの面々は一様に明るかった一方、百貨店の顔色は冴えなかった。前者の二桁増に対して後者は水面の攻防という大差があったのだ。
 各社の報告を聞いていると、前者やECモールが冷え込みに乗じて20〜30%のキックオフやクーポンを仕掛けたのに対し、百貨店側はプロパーのまま顧客が買ってくれるのをただ待っているだけという‘大差’が浮かび上がった。似たようなアイテムの売価もカジュアルチェーンは百貨店NBのほぼ3〜4分の一で、セレクトSPAのオリジナルもカジュアルチェーンに近づいて百貨店NBの半額程度になっている。
 法外な歩率が乗った百貨店NBの原価率は20〜25%とカジュアルチェーンやセレクトSPAより10ポイント前後も低く‘お値打ち感’が希薄なのに加え、少しでも利幅を確保しようと期中の値引きやキックオフが行われず、期末バーゲンさえ需給の実態を無視して後ろ倒しするという殿様商売だから、顧客が離反するのは必然だ。百貨店アパレルの社員割引が半額前後だという現実も価格の法外さを痛感させるから、顧客がいつまでも素直に騙され続けてくれると考える方が無理があろう。
 百貨店アパレルにしても、かつては百貨店の期末バーゲンにファミリーセールを加えれば期末残品を一割程度に抑える事が出来たのが、昨今の‘衣冷え’下ではファミリーセールを乱発しても期末残品が二割を超えてしまうと聞く。それでは経営が破綻してしまうから、カジュアルチェーンやセレクトSPAのように需給に応じて柔軟に期中値引きやキックオフを仕掛けて在庫を消化していくべきだが、百貨店側は頑なに拒否している。
 こんな現実無視が続けば百貨店アパレルの大半が行き詰まるのは時間の問題で、地方店や郊外店の閉店ラッシュや衣料品売場の縮小も加わって百貨店アパレル業界は破綻に瀕している。もはや百貨店流通は破綻して‘価格’が崩壊しているのに百貨店はその現実に顔を背けたままだ。このままでは数年を経ずして百貨店アパレル業界は崩壊し百貨店の大半も破綻してしまう。茹で蛙も沸騰点に達したというのに、座して死を待つつもりなのだろうか。

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 2016/11/18 10:03  この記事のURL  /  コメント(0)

無神経なハンガー使いは止めよう!
 VMDクリニックやプレス内覧会の機会にお店を詳細に見ていると??と疑問に思う事がある。それは無神経なハンガー使いで、ギョーカイのプロがこんなハンガー使ってて良いのかと考えさせられる。以下はその典型的な例だ。
問題点1)肩幅が今時のフィットや客層と合っていない。
 今時のフィットはボトムは緩くても肩はコンパクトで、OL層では37cm、ミセスでも40cm程度だが、中には80年代の残滓かと思わせる42cmほどもあるハンガーを使っている店があってLサイズ店かと見紛う。服の肩はコンパクトなのにハンガーが突き出ていると買い気も削がれよう。
問題点2)ドロップが客層と合っていない。 
 テーラリングではコンケーブショルダーとナチュラルショルダーがあるが(いかり肩となで肩?)、モードなあるいはマスキュリンなブランドだとコンケーブなドロップ、ソフトラあるいはフェミニンなブランドだとナチュラルなドロップが適している。にも拘らずドロップが合わないハンガーを使っているお店を見かける事がある。
問題点3)素材を傷めるハンガーを使っている。
 とんでもない事だが、現実には99%の店が露骨に素材を傷めるハンガーを使っている。それはスカートやパンツを摘むクリップ式ハンガーで、ベロアやコーデュロイなどはもろに跡形が付いてしまう。クライアントにはスプリング式に換えるよう指摘してきたが、業務用では販売するメーカーが限られるようだ。一般向けにはドイツの「MAWAハンガー」のラインナップがあり、価格もお手頃で業務用にも耐えられる。
問題点4)重すぎて服の質量が分からない。
 上質なハンガーも良いけれど、重すぎては服の質量が分からなくなる。手に取ってみて意外な重さを感じると買い気も削がれるのではないか。上質なウッドなどは部分使いに留めて軽量に収めるべきだろう。

 お店を開いて何年も経つうちにはブランドの商品政策が変わってハンガーの肩幅やドロップが合わなくなる事もある。経験則だが、店歴が6年を超えるとそんなズレが目立ってくる。6年前と比べればLEDも格段の進化を遂げており、コストも下がっている。店歴が6年を超えたらハンガーと照明を見直すようルールを定めておくべきだろう。



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 2016/11/16 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

素人さんを舐めたらあかんぜよ!
 流通のコストとロスを価格に転嫁して原価率を切り下げて来たギョーカイの論理と厳しい生活の中で価値と価格のバランスをシビアに問う消費者の距離が限界まで開いて‘絆’が損なわれ、終に現実となったアパレル氷河時代。その責を誰に問うかはともかく、現実問題として消費者の信頼を取り戻すべく、限られたコストをどう商品開発に振り向けるべきだろうか。
 かつてギョーカイの最終消化率(バーゲンとファミリーセールの後)が100%近く、アパレルメーカーから小売店への卸掛け率が70%前後(しかも買取)だった70年代の小売上代対比生産原価率は45%前後だったと記憶しているが、百貨店が歩率を嵩上げ海外への生産移転が進んだ00年頃には百貨店ブランドで25%、SPAで38%前後まで切り下げられ、オーバーストアと過剰供給でギョーカイの最終消化率が50%を割るに至った今日では百貨店ブランドでさらに3〜4ポイント、SPAでも5〜10ポイント切り下げられたと推計される。
 そんな原価率ではワールド元幹部の北村禎宏氏が『紳士スーツの場合、一昔前は上代の15%が生地代だったのが今や5%程度に下がっている』と指摘するように素材コストが切り詰められてしまう。手縫いやセル生産の少量生産ならともかく量産品では縫製仕様に極端な差はなく工賃はロットにスライドするから、同じロットなら素材に皺寄せされるからだ。
 一般に製造原価に占める素材コスト(付属/副資材を除く)は三分の一程度と聞くから、北村氏の言う『上代の15%が生地代だった』というのは70年代の記憶と思われる。今日の百貨店紳士スーツの原価率を21〜22%と見るなら生地代は7%強ぐらいになるから、5%は大袈裟としても近いものがあるのかも知れない。カジュアルSPAなら原価率30%と見て生地代は10%程度(後加工商品では2〜3ポイント下がる)になるはずだが、店頭で『素材を落として利幅を稼いでいる』と一見して解るケースなら5〜6%もあり得るだろう。
 一般の消費者から見れば『ロックミシンが粗い』とか『縫い目が蛇行している』とか『裏地や当て布が省かれている』ぐらい露骨でない限り縫製品質の差は解らないが、『素材がごわごわしている』とか『表面がピリングしてる』とか『洗ったらクタってしまった』など素材品質の差はわりにストレートに解ってしまう。素材コストを切り詰めては商品の価値感を露骨に損なうと認識すべきではないか。
 上代の10%以上を素材(付属/副資材を除く)に割けば多くの顧客に‘お買い得感’が伝わるが、原価率を抑えているブランドでは3ポイント程度、原価率を上乗せする必要がある。顧客がバリューを感じて消化率が高まれば20〜30%も発生している値引きロスが半減するかも知れないし、そこまでは行かなくても上乗せた3%の‘倍返し’ぐらいは見込めるのではないか。素人さんも見えないようで直感的に商品の価値と売り手の誠意を見透かしている。ゆめゆめ素人さんを舐めたらあかんぜよ。

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 2016/11/15 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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