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欠陥は成長チャンス?
 毎年この時期、流通担当のファンドマネージャーやアナリストが集まって私のレクチャーを聞くセミナーが開かれる。六本木ヒルズのセキュリティゲートを通った高層階の一室で開かれるセミナーでの発言は幾つも規制事項や守秘事項があって神経を使うが、それさえ守れば突っ込んだ指摘も可能だ。そんなセミナーが終わった後、幾人かの聴講者に囲まれて質問を受けるお茶会が催される。その席で出た質問に回答する中、企業の欠陥は成長チャンスでもあると会得した。
 世には時代ズレした化石然とした企業が山ほどあるが、だからと言って先が無いとも限らない。むしろ元気いっぱいの会社があれよあれよと言う間もなく失速してしまう事もある。多くの欠陥を抱える企業がそれでも成長したり収益を上げていたりするのだから、それらの欠陥を改善すれば成長力も収益力も格段に伸びるという裏腹な見方も出来よう。
 その席で槍玉に挙げられたのはファーストリテイリング、しまむら、良品計画だったが、三社とも私から見れば大きな欠陥を抱えたまま暴走しているように見える(それでも好業績なのはマネジメント精度が高いからなのだろう)。だからと言って先行きが暗いかと言うとまったく逆で、重大な欠陥を抱えていても好業績なのだから、改善すればもっと化けるという期待の方が大きい。
 ファーストリテイリングは総花的なグローバル展開に固執して直流から交流への物流転換とオムニチャネル対応が遅れ、運営コストと在庫ロスの肥大が収益を圧迫して値上げに追い込まれ、それが顧客の離反を招いて一時、業績が翳った。その指摘を真摯に受け止め改善を急いでいるが、オムニチャネルな交流物流と店舗運営のデジタルショールーム化をどこまで一体に捉えているか読み切れないところが残る。加えて11月12月に極端に売上が集中する偏ったMD体質も改善の余地が大きい。だからこそ、ファーストリテイリングがそれを実現した時の業績向上は画期的なものになると期待されるのだ。
 しまむらはコンビニに迫る近隣絨毯爆撃店舗網を布陣し、コンビニに近似したエリア別ルート便物流体制(一晩一便だが)によるSKU単位の店間移動消化システムで今時、脅威の消化率を維持するエクセレントな衣料チェーンだが、オムニチャネルはおろかECもまったく手掛けていない。だからこそ、しまむらがオムニチャネルなオープンプラットフォームECに乗り出し全店舗にPPPコーナーを設ければ飛躍的な業績向上が期待されるし、都市部での店舗網拡充も進む。英国のSMチェーン、セインズベリーがARGOSのデジタルショールームストアを全店舗に導入してオープンPPP拠点化を狙うのと戦略的には極めて近い。
 企業の欠陥は事業資産の偏った使い方がもたらすもので、戦略視点を変えて活用すれば恐ろしいほど化ける可能性がある。欠陥の指摘を批判と受け取らず、化けるチャンスを示唆したものと前向きに受け取って欲しい。

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 2016/10/24 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

あんまり外し過ぎてませんか!
 半月ほど前になるが、ららぽーと湘南平塚のお披露目に並んだアパレルストアの打ち出しはどれも凡庸で、何処が去年と違うのかと訝られた。中でも酷かったのが「ユニクロ」だったが、他にも??と目を剥くほど外していたのは皆、似たような海外トレンドに基づく先行開発のSPAばかり。グローバルSPAはともかく日本のマーケットに特化した国内SPAまで一緒になって外していたのは、海外トレンド離れとローカル回帰、使い勝手と機能性要求という国内衣料消費との乖離が指摘される。
 これほどの大外しが生じてしまう要因は以下の2点。1)企画決定時期が前シーズンの結果を反映出来ないほど早く、前々年感覚+海外先行情報で走ってしまう。2)海外先行情報は欧米テキスタイル業界の開発動向と欧米市場のユーティリティをベースとするため、ストリートが先行する日本市場のユーティリティとは大きく乖離してしまう。
 国内市場のトレンドがグローバルなモード方向に動くサイクルなら乖離は小さいが、ローカルなユーティリティを志向するサイクルでは極端な乖離が生じてしまう。15SSからローカルシフトに転ずる中、16AWはローカルなユーティリティが極大化するサイクルで、外しが目立ってしまうのだ。
 こんな大外しを避けるには1)国内スタイリング動向を子細に追って客層別のユーティリティトレンドを掴む、のが基本だが、それに基づいて企画決定出来るのは前シーズン末になってしまう。それで間に合わないというなら、2)素材構成(先染め物は色も)だけ決めて後染め色や表面整理加工、デザインは後から詰める、という手もある。先行開発素材から自社工場で染色整理してファストにデザイン企画する「ZARA」の手法はその究極と言ってよいだろう。
 もっと安直な泥縄手法としては、グローバルなファストSPAの常套手段である3)企画は同じでも国や地域のユーティリティトレンドに合わせてスタイリング提案を組み替える、という手が在る。実際、「H&M」や「フォーエバー21」は日本向けに関東と関西でもスタイリングを組み替えている。地域毎にスタイリストと契約しているのだろう。
 『ファッションはローカルなもの』と再認識し、海外トレンドに過度に依存せず、国内の顧客層が志向するスタイリングとユーティリティを子細に追って行くSNS的マーケティング感覚を研ぎ澄ますべきではないか。当社が毎月、客層別に追っているスタイリング変化と結果のブランド別販売数字は「SPACレポート」で子細に掴む事が出来る。シーズンを通して流れを検証し来シーズンの客層別スタイリングを予測するのが当社の「MDディレクション」なのです。


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 2016/10/21 09:11  この記事のURL  /  コメント(0)

広がるショールームVMD
 世の中、加速度的にオムニチャネル化が進んでいるのに、大半の店舗小売業者や商業施設の発想はフリーズしたままだ。商業施設の新設やリモデルを見ても、ファッション関連は不要に在庫を積み上げて売場を広げるばかりで、パソコンや白物家電、家具や接客型化粧品など販物分離のショールームVMDが進むのと比べれば百年一日、進化が止まっている感を否めない。
 今時、家電や家具ではショールームVMDは当たり前で、手軽に持ち帰れて設置も設定も不要な小物を除けば店頭にはサンプルしか陳列されていない。持ち帰り品を除けば店舗後方にも在庫は積まれておらず、オムニチャネル対応なDCや顧客の近隣店舗から運ばれて設置・設定されるのが一般的だ(遠隔地顧客には提携した地元商店が設置・設定する)。それは接客型化粧品店や専門的接客を要する薬品も同様で、実際の商品は顧客が触れないが見えるカウンター後方の棚に整理整頓されて並んでいる。
 高額ブランド雑貨も似たようなショールーム陳列で店頭にはサンプルしか並んでおらず、顧客に提供する商品は後方ストックから出して恭しく包装して手渡される。ランジェリーやホーズリーなど他人の手垢を避けたい商品やパッケージ商品も陳列サンプルと顧客に提供する商品を分ける事が望まれる。タオルなども他人の手垢を避けたい商品だが、なぜかどこでもオープン陳列なのは訝られる。
 これらのケースではショールーム陳列しても持ち帰り用の在庫はカウンターの後方やストック室に積まれるが、顧客が触らないから高頻度な整理は不要だし迷い子も発生しない。ピッキングし易いよう整理して床から天井まで棚入れ出来るから、売場陳列の何分の一かのスペースで済む(家賃も何分の一)。問題は売れる度にストックからピッキングする必要が有る事で、一々ストック室に販売員が消えては接客効率も保守効率も落ちるから、化粧品や薬品、ブランド雑貨や靴などはカウンター越しの見えるストック棚からピッキングする方式が望ましい。
 こんなショールームVMDはシャツやニット、パンツなど衣料品でも効率的な運用が可能だが、なぜか手がける店は滅多に見られない。未だオープン陳列のセルフサービス神話に囚われているのだろうが、対面接客販売の方が遥かに効率的だ。化粧品専門店が近年、ドラッグストア的なオープン陳列から対面カウンター接客へ回帰している潮流も注目すべきではないか(客単価が十倍になる!)。 
 そんな販売プロセスと運営効率からVMDとストアプランの技術革新を提ずるのが11月16日(水)に開催する『店舗運営効率化 VMD&ストアプランゼミ』で、陳列やレイアウト、什器システムや照明の基本から最新のショールーム陳列やアート陳列まで多数のビジュアルを駆使して解説します。

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 2016/10/20 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

コレクショントレンドの終焉
 今週号のWWDジャパン「EDITOR’S VIEW」は『日本のリアルクローズマーケットは海外コレクションを参考にするケースが減り、むしろストリートスナップや前シーズンの人気アイテムを参考に企画する傾向が強まっている』とする一方、『今シーズンのミラノはクラフトマンシップを軸にタイムレスな価値を訴求している』と欧州でもトレンド離れが進んでいる事を報じていた。
 今シーズンのランウェイでも昔のアーカイブを継ぎ接ぎしたり様々な付加ディティールを駆使して‘目新しい’トレンドが競われているが、高価なブランドでは目立つデザインほど売り難く、トレンドを控え目に取り入れた定番デザインが飯の種となる。目立つデザイン物や柄物はワンシーズンしか着られないから高いブランドでは買わず、上手にコピーされたファストファッションで済ます顧客が多いのだろう。ならばランウェイを沸かせるトレンドデザインはファストファッション事業者のために無償で提供されているという事になる。これじゃやってらんないと欧米ランウェイブランドも‘ノームコア’に走り出したのが4シーズンほど前だっただろうか。
 以前にも書いたように『スタイリングの価値は作り手側の‘クリエイション’と使い手側の‘ユーティリティ’の合作』で、作り込み過ぎると着こなしや着回しが難しくなって‘ユーティリティ’が損なわれ売り難くなる事を欧米のファッションギョーカイも痛感したゆえ、使い手側に歩み寄ったのが‘ノームコア’だ。すなわち‘ノームコア’とは『使い手側の‘ユーティリティ’余地を拡げるよう作り手側が‘クリエイション’の作り込みを控える半完成品志向』と提議してもよいかも知れない。
 SNSが広がってBC間の情報格差を付加価値訴求する伝統的な‘ファッションシステム’が崩壊し、もとよりローカル性の強いファッションがストリート主導で分散して行く中、グローバルなコレクショントレンドが相対的に地位を失って行くのは必然で、「EDITOR’S VIEW」が指摘するような動きが広がっているのだろう。
 加えて少子高齢化にアベクロミクスも圧し潰されデフレ節約志向が再び強まる我が国では、生活者が衣料品に求めるのは華やかなモードやトレンドではなく『時間とお金を節約する使い勝手と機能性』に他ならず、コレクショントレンドもものづくり神話も神通力を失いつつある。そんな消費者の要求に圧されてかウォッシャブルとかパッカブルとか吸汗撥水とか高機能な合繊混素材が急台頭し、本来なら6シーズン続くはずの加工ナチュラル系トレンドが4シーズンで追いやられてしまったのには正直、驚かされた。衣料品に関する消費トレンドは、もはやギョーカイ側から使い手側にアドバンテージが移ったと腹を括るべきであろう。
※客層タイプ別(ウィメンズ36タイプ/メンズ26タイプ)のスタイリング嗜好をビジュアルに分類配置した『客層マップ』、それと対照して3800ブランドを位置付けた『ブランドツリー』、それに基づいてタイプ/ブランド別の販売動向を検証した『ブランド販売成績マップ』、それらに基づいて来シーズンのスタイリングを予測する『シーズンMDディレクション』という当社の一連の‘ユーティリティ’マーケティングにご注目頂きたい。これらは毎月の『SPACレポート』を軸にシーズン毎のセミナーなどで提供されます。詳しくは当社HPをご参照下さい。


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 2016/10/19 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

バイヤー/MD業務の分業
 バイヤー/マーチャンダイザーの業務は1)価値を創造する開発・調達業務、2)価値を実現する在庫運用・消化促進業務、の二面からなる。1)開発・調達業務では取り組むメーカー(別注など)や商社(OEM/ODM)、工場(自社開発)の開発力を活用して如何に付加価値を高めるか、2)在庫運用・消化促進業務では初期配分〜補給/店間移動のDBと売価変更を駆使して如何に消化歩留まりを高めるかが問われる。
 事業規模の拡大とともにバイヤー/マーチャンダイザーの業務も分業されて行くが、カテゴリー分業と機能分業の優先順判断が業績を大きく左右する。
 カテゴリー分業は素材別(ニット&カットソーと布帛)、さらにアイテム別と細分化される。機能分業も調達とDB、さらに開発と調達に細分化される。カテゴリー分業の弊害はカテゴリー間のテイストやカラー、品質やデリバリーのズレ、素材や調達先の分散など幾らでもあり、コーディネイトを妨げて客単価やブランディングの足を引っ張るばかりかコストや歩留まりにも響く。機能分業の弊害は職責の分散ぐらいで、データさえオンラインで共有すれば実害はほとんどないし、評価基準さえ明確にすれば弊害は避けられる。
 調達とDBの分業も肝を外すと弊害が大きくなる。調達とDBは分業しても分権せず、しまむらのように分担を一致させて責任を連帯するのが鉄則だ。DBが調達から分権してカテゴリーを細分化するとPOSに依存して数字だけで動くようになり、個店の品揃えバランスを崩し売場の陳列と乖離してしまう。それがまた在庫の偏在とロスを拡げるのだから始末が悪い。イトーヨーカドー衣料部門の釣瓶落としの凋落に見るまでもなく、「見えないDB」の弊害は致命的な結果をもたらしかねないのだ。
 販売が低迷し在庫が回らなくなる要因は商品やMDの善し悪しだけではない。不適切な分業・分権がもたらす業務の混乱や精度の低下がどれほど災いしているか、ちょっと引いて鳥瞰してみるべきではないか。
※11月10日に開催する『バイヤー/MD育成 最新マーチャンダイジング技術革新ゼミ』では予算構築から商品開発・調達やDBの最新技術まできめ細かく解説する予定です。

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 2016/10/18 09:27  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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