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W/R比率の裏腹
 流通の効率を図る指標に「W/R比率」というのがある。Wとはホールセール(B2B)売上、Rとはリテイル(B2C)売上を言い、業界のホールセール売上総額をリテイル売上総額で除した係数が小さいほど中間流通が少ない効率的な流通とされるが、このギョーカイの四半世の変化を見る限り、果たして‘効率的’になったと言えるのだろうか。
 実はファッション業界は最も‘効率化’された数少ない業界とされるのだ。90年の織物・衣服・身の回り品流通のW/R比率は2.54と中間流通が小売の2.5倍もあったのが00年には1.84と圧縮され、15年には0.81と1.00を割り込んでしまった。OEM/ODMの一般化に加えて00年の規制改革(定期借家契約導入)でテナント小売業の差し入れ保証金負担が激減して商品開発に潤沢な資金を回せるようになり、‘誰でもSPA’時代となってギョーカイのSPA化が加速度的に進み、1.00を割り込むという中間流通外しが実現してしまった。
 では、衣料品流通はそれで効率的になったのだろうか。バーゲンしてもファミリーセールを乱発してもアウトレットに回しても、なお半分が売れ残り、そのロスとコストを穴埋めすべく原価率が切り詰められ、お値打ち感を損なって益々、売れなくなるという悪循環を極めているではないか。
 こんな結果を招いたのは、衣料品生産の海外移転とロット発注というSPA事業者への在庫リスク一極集中であり、発注者が利益もリスクも抱え込んでしまう(受注者側は手数料収入もリスクも限られる)水平分業の弊害と言って良いだろう(10月26日の「水平分業と垂直分業」)。
 これまで幾度も「問屋無用論」が叫ばれてきたが、その理想を実現したSPA流通がもたらしたものは決して効率的な流通ではなかった。流通を効率化するのは発注者へ利益とリスクが一極集中するバッチな水平分業ではなく、販売と生産をオンライン連動するIOT垂直統合、はたまた流通の各段階がそれぞれにリスクを分担する垂直分業ではなかったか。衣料品業界の最盛期だった70年代の方が消化率も原価率もお値打ち感も今より遥かに高く、消費者も業界も今より格段に高感度だった、と言ったら皆さんは納得できるだろうか。少なくとも数値や品質で比較する限りは正真正銘な事実なのだが・・・・・
 破綻に瀕する衣料品業界を再生する突破口は供給数量の削減と『垂直分業への回帰』である事は間違いないが、その主導権を握るのはSPAでもアパレルでもなくリスク先行開発型のテキスタイルコンバーターに他ならない。韓国のファスト・テキスタイラーが今日もなおメジャープレイヤーとして多くのマンションメーカーやブティックSPAを支えている状況を見るにつけ、我が国衣料品業界の四半世紀が進化だったのか退化だったのか根底から考えさせられる。

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 2016/10/31 09:51  この記事のURL  /  コメント(0)

リミックスの極意
 輪湖もなみさんのブログで『男子っぽいスタイリングには女子を2割ほど、女子っぽいスタイリングには男子を2割ほど混ぜると自然に決まる。男子100%、女子100%だと宝塚になっちゃうでしょ!』とアドバイスしていたが、言い得て妙だと思う。FBのプロとしては、そんなソフトな言い回しはちょっと出来かねるが、さすがワールドに16年も勤務した「ミランダかあちゃん」だと納得してしまう。リミックス・スタイリングの匙加減が料理の塩加減と同じなのは言うまでもない。『お善哉に塩昆布』はスタイリングにも通じる鉄則なのだろう。
 リミックス・スタイリングの組み方はピザのオーダーに似ている。基本となる‘こなし’を決めるのが‘クラスト’すなわちパイ生地で、スタイリングでは‘ベーステイスト’と呼んでいる。どんなトレンドを取り入れても、その人らしい‘こなし’を欠いては服に着られてしまうから、‘こなし’を決める‘ベーステイスト’が一番要になる。‘ナチュラル’や‘ワーク’、‘エレガンス’や‘モード’‘プレップ’などがそれだが、若向きでは‘ストリートワーク’とか‘ストリートモード’なども広がっている。
 次が全体のイメージを決める‘味付け’で、ピザでは‘チーズ’、スタイリングではトレンドやコンセプトが相当する。‘60’Sコスモドール’とか‘70’Sボヘミアン’とか‘90’Sスケーター’とか‘カントリーワーカー’などがその一例だ。
 その上にトッピングされるのがピザでは‘アンチョビ’や‘ベーコン’‘トマト’や‘マッシュルーム’で、スタイリングでは‘マスキュリン’や‘フェミニン’、‘ボーイッシュ’や‘ガーリッシュ’が来る事が多いが、‘ロマンティック’と‘サイバー’、‘ロック’と‘フェティッシュ’など対極するファクターを配する場合もある。ピザではハーフ&ハーフでもスタイリングは半々ではまとまらず、どちらかに偏った方が決まる。『男子8割女子2割、女子8割男子2割』という最初のお話に戻るわけだが、シャープなコントラストを狙うなら8対2より7対3とか6対4、デリケートなコントラストを狙うなら9対1もありだろう。
 ピザではさらにタイムやローズマリー、バジルや黒コショウをスパイスするが、スタイリングでも柄アイテムや帽子/スカーフ/バッグ/ベルト/シューズ/レッグウエアなど服飾小物を加えてスパイスを効かせる。
 直近の「SPACレポート」店頭スタイリング報告から二体をチョイスしてリミックス図を書いてみたので、ご参考まで・・・・・
 一般に、コンサバな方、高齢な方ほどハーモニックなリミックスを好み、アドバンスな方、若い方ほどコントラストの効いたリミックスを好む。関東の方はあっさりまとまったリミックスを好むが関西の方はコテコテと重ねたリミックスを好む。関西でも神戸は関東風にシックな好みだが、関東でもストリートは関西に負けないぐらいコテコテ好みだったりする。どれも一般論で、同地区でもストリートが違えば微妙に好みが異なるが、ワインづくりにおけるテロワールとミクロクリマみたいなものだろうか。

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 2016/10/28 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

ブラックフライデーはご冗談!
 米国では感謝祭の祝日(11月の第4木曜日)明けの金曜日から「ブラックフライデー」という年末商戦に突入するが、近年はECも加わって過熱し、メーシーズなど感謝祭当日の夜から店を開けて(米国では日曜、祝日は店が閉まる)セールに入る小売業者も少なくない。
 「ブラックフライデー」の翌月曜にはオンラインストアが一斉にセールに走る「サイバーマンデー」が控えているから、店舗小売業者としては数日でもアドバンテージが欲しいところだが、現実にはアマゾンなどEC大手も「ブラックフライデー」からセールに入る。昨年の「ブラックマンデー」商戦ではアマゾンがEC総売上の35.7%も占めたとか。そんな「ブラックフライデー」を日本でも仕掛けようと、先行するギャップや日本トイザらスなど米国企業に加えてイオンが参戦するそうだ。
 ギョーカイでは利益確保や産地擁護?のため期末バーゲンを後ろ倒すという試みが深刻な販売不振で頓挫したばかりだが、「ブラックフライデー」という極端な前倒しが仕掛けられるというのも考えものだ。11月の第4金曜日といえば今年は25日になるが、ここからプロパー最盛期のクリスマス商戦が始まるという書き入れ時にセールを仕掛ける小売業者が出て来れば値崩れが早くなり、周囲の小売業者は利益を圧迫される。その分、当初の原価率を切り下げて割高な価格を設定せざるを得ないから、ギョーカイ全体としては余計に顧客を遠ざける事になりかねない。
 「ブラックフライデー」に反対したくても、オンライン世界には戸を立てられないから、米国からカナダ、英国へと広がって韓国やシンガポールにも波及している。韓国など日本に流れた中国人観光客を取り戻そうと今年は九月末から国家を挙げて仕掛けたほどだ。バーゲン時期論争の時も指摘したが、インバウンド客を奪い合って東アジアのバーゲン時期はどんどん早まっているし、越境ECが急拡大するご時世では鎖国的なローカルスケジュールは成り立たない。
 という訳で、「ブラックフライデー」については流通を一段と非効率化する行き過ぎとして反旗を掲げたいが、オンライン時代のグローバル化にはクール・ジャパンも逆らえない。バーゲン時期後倒しから一転、韓国やシンガポールとバーゲン時期前倒しを競う事になるのだろうか。窮地に追い込まれたギョーカイには泣きっ面に蜂だが、アマゾンあたりが本気で仕掛ければ一気に広がってしまう。ローカル日本のローカルなギョーカイ村には次々とカタルシスが押し寄せる運命なのだろう。

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 2016/10/27 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

水平分業と垂直分業
 衣料品のものづくりはファクトリーブランドを除けば「水平分業」が主流で、SPAでは零細なキャリー商売から巨大ロットのグローバルSPAまで皆「水平分業」で作られている。実は我が国で「水平分業」が主流となったのは衣料品の生産が海外に移転した90年代以降で、80年代の過渡期を挟んで70年代までは「垂直分業」が大勢だった。
 「水平分業」と「垂直分業」って何が違うの?と思われるだろう。他にも「垂直統合」ってのがあるが、「水平統合」ってのは存在しない。
 今日の「水平分業」は‘水平’という言い方とは裏腹に、製品の発注者が随時に下請け業者を探して生産を委託する方式で、最終リスクも利益も発注者に集中する。リスクも利益も発注者に集中するのは「垂直統合」も同様だが、発注者と元請け、下請けの関係が継続的である点が大きな相違だ。
 「水平分業」はコストやロット、納期が折り合う生産者を探して随時に発注するフリーランスな関係で、仕様や品質の擦り合わせに難点があるが、その時々のニーズに機動的に対応できるメリットがある。「垂直統合」は発注者から元請け、下請け、果ては孫請けまで長期に継続する封建的主従関係(双務的で一部、流動的でもあるが)で、仕様開発のチームワークや品質の擦り合わせ精度は突出するものの、身軽な機動性は望み難い。
 一般にIT/家電は「水平分業」、自動車/航空機は「垂直統合」とされるが、「水平分業」でもアップル社と台湾のフォックスコン(鴻海科技)のような継続的共同開発関係もあれば、裾野が広い航空機製造では部分的に「水平分業」を取り入れるケースも見られる。「水平分業」一辺倒に見られがちな衣料品や服飾品でも高額なブランド商品は「垂直統合」が大勢で、ラグジュアリーな革製品や宝飾品・時計では製品はもちろん主要部品まで自社生産する「垂直完結」が競われている。全産業分野で見れば、「水平分業」は低価格・低スペック品の大量生産に特化した流動的生産委託方式なのかも知れない。
 さて70年代まで我が国繊維〜アパレル業界で主流であった「垂直分業」とは、糸/テキスタイル/製品/小売のそれぞれが各段階でリスクを負って完結する分業関係で、今日のようにアパレルメーカーやSPAが発注者となって川上が下請けとなる一方通行ではなかった。今日でも合繊メーカーは独立した主導権を発揮しているが、テキスタイル段階の多くは受注生産に流れ、縫製段階は完全に下請け化している。
 当時の「垂直分業」が成り立ったのは、今日のような供給過剰でなく低価格要求も激しくなかったことに加え、国内完結の「垂直分業」ゆえ高スペックな商品開発がファストに回って高付加価値が高回転していたことが指摘されよう。マンション・テキスタイラーとかマンション・メーカーとかはそんな時代が生んだ高収益モデルだったのだ。
 さて今日の衣料品業界で「垂直分業」が成り立つかだが、開発力あるテキスタイル・コンバーターなら十分成り立つし、韓国ではファスト・テキスタイスラーが今日もメジャープレイヤーの地位を保っている。製品分野でもファクトリーブランドはその代表で、下請けを脱して独自の製品を開発〜流通させる体制さえあればグローバルに化けることも可能だ。欧米ラグジュアリーブランドなんて元は皆、ファクトリーブランドだったのだから。
 今日ではEC軸のFDOR事業も容易に成り立つし、SNSとクラウドファンディングを軸とした低コストなブランディング手法も定型化されつつある。『突破口は製造事業者の下請け意識払拭に在る』と言い切ってもよいのではないか。

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 2016/10/26 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

すべての元凶は作り過ぎ!!
 衣料消費の絶不調を説明するのに上っ面の外野視点からシリアスな内野視点まで幾らでも並べ挙げる事が出来ようが、究極の回答は「作り過ぎ」「供給過剰」に尽きる。
 9月21日のこのブログで『衣料品は毎年、半分が売れ残る』として、四半世紀で供給量が2.33倍になったのに消費量は18%しか伸びず、最終消化率が96.5%から48.9%に激落したと指摘し、10月13日には『きものギョーカイの二の舞か』として、市場規模が6分の一以下に萎縮して流通在庫が10年分以上、たんす在庫が100年分以上も積み上がってしまったきものギョーカイと大差ない狂気に近づいている、と警鐘を鳴らしたが、これらはすべて事実なのだ。
 すべての元凶は需給の現実を正視しない過剰供給に在るのは明らかだが、ギョーカイは何故に無謀な過剰供給を続けてしまうのだろうか。
 90年代、00年代、10年代で多少は状況が違うが、基本的な構図は共通している。すなわち、生産コストを圧縮すべく国内⇒中国⇒南アジアと生産地を移転して量産規模が大きくなる一方、国内市場の競合激化と過剰供給で販売規模は逆に縮小方向に向かい、そのギャップが加速度的に開いていったのに、コスト上昇を恐れて量産規模を絞り込む事が出来なかったのだ。
 一般論だが、国内工場が数人〜数十人規模の熟練多能工によるセミ・セル生産方式で数十枚〜数百枚の小ロットに対応するのに対し、中国の工場では数百人規模の半熟練単能工による分業生産方式で数千枚〜数万枚の中ロットに対応、南アジアの大規模工場では数千人規模の非熟練単能工による細分化された分業生産方式で数十万枚〜数百万枚の大ロットに対応する。コストを下げるために生産地を移転しては生産ロットの桁が跳ね上がってしまうが、販売規模はせいぜい数パーセント〜数十%かしか伸びず、残ると解っていても大量発注しているのが現実なのだ。
 そのギャップをファミリーセールやアウトレットで埋め、それでも残れば二次流通業者(いわゆるバッタ屋さんです)に売り飛ばせばよいと考えてしまうのは、消費者が知ったら怒ってしまうほど調達原価率が切り詰められているからだ。百貨店アパレルで24〜25%、駅ビルやSCのSPAで27〜35%、タイムセールなどを乱発するSPAでは18%程度という実情は、それだけで価格に見合わない品質を推察させるが、それがまた販売不振を深めているのは間違いないだろう。
 問題の解決法は明確だ。実際の販売規模に即して量産規模を絞り込むべきなのだ。南アジア⇒中国⇒国内と逆行すれば量産ロットの桁が落ち、リードタイムも物流期間も短くなってリスクが小さくなる。その分、コストは上がるが、歩留まり率が高まれば同一価格でも粗利益率は維持出来る。中国沿海部や国内の熟練した工場なら小ロットのQR生産も可能だから、歩留まり率はさらに高くなる。
 もっと徹底して歩留まり率を高めたければアイテム毎に工場を定めて生産仕様を標準化し、デルやトヨタのような販売進行と連動するオンライン生産で需給ギャップをゼロに近づけて行けばよい。さすれば歩留まり率は限りなく100%に近づいて行くから、値入れ率=粗利益率というマジックが成立する。絵空事とお思いかも知れないがデルやトヨタでは現実で、メーカーズシャツ鎌倉やZARAでも近似した仕掛けが成り立っている。
 崖っ縁に追い詰められたからこそ、身を捨てるような発想の転換が可能になる。より少なく高コストに作って、完全消化に近い歩留まりで粗利益を確保する。世にゴミを垂れ流し利益も捨て流してしまう愚かな癖はもう止めようではないか。

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 2016/10/25 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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