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とんでもプライスに絶句!
 残暑もどうにか収まって秋物を物色するシーズンになったが、やや円高に戻ったとは言えラグジュアリーブランドの価格は誰が買うのかと訝るほど‘とんでもプライス’で、かつてはなんとか買えたファクトリーブランドもジリジリと高騰し、少ない稼ぎの大半を税金と社会保険料(目一杯徴収されて来たのに年金は未だ支給停止)、妻子の浪費に割かれてお小遣いが限られる身には到底手が届かない。百貨店で売られる国内ブランドの製造原価は25%以下、欧米ブランドのFOB原価はせいぜい20%までと知るギョーカイ通とすれば、なおさら腰が引けてしまう。
 シークレットセールや期末バーゲンは3〜5割引でもファミリーセールとなれば7〜9値引も珍しくないし、プロパー時期でも百貨店の社員割引は15%程度と渋いがアパレルでは3〜5割引が主流で、中には原価(6〜7割引)で社員販売する企業も見られる。そんな中で10%程度のポイント割引で購入するのは溝に金を捨てるような被害者意識を否めず、どうしてもアウトレットやセール狙いになってしまう。
 アウトレットも多店舗を展開する米国ブランドでは専用企画商品が大半を占めてお値打ち感は疑わしいが、欧州ラグジュアリーブランドでは専用企画商品は限られる。その分、前シーズンや前々シーズンの持ち越し品になって鮮度には?が付くが、定番商品なら気にならない。狙いは当シーズンのB品だが、放出量は極めて限られる。高級ブランドのアウトレット店は接客もプロパー店と大差ないから、頼んでおくと親切に入荷を連絡してくれる。
 アパレル流通総体のプロパー販売比率は米国では三分の一と言われ、プロパー流通よりオフプライス流通の方が大きいぐらいだ。バーゲンしてもファミリーセールを繰り返しても半分が売れ残るという実情を見れば、日本の方が酷いかも知れない。流通のロスとコストが肥大して価格が価値感から大きく乖離した今日、プロパー価格で購入するのは被害者意識が付きまとう。そこまで来ればガラガラポンと流通体系をリセットするしかないだろう

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 2016/09/23 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

衣料品は毎年、半分売れ残る!
 オーバーストアが叫ばれて久しいが、衣料品のオーバー供給はそれどころではない。90年には11.96億点だった衣料品(アパレル外衣)の総供給点数(総輸入点数と総国内生産点数の合計)は年々増えて直近の15年には27.85億点と2.33倍にも増加したが、総務庁の家計調査から推計される国内総消費点数は11.55億点から13.62億点に微増しただけで、総消費点数を総供給点数で除した推定消化率は90年は96.5%だったのが15年は48.9%と、とうとう50%を割ってしまった。
 もちろん、コンマ以下(0.15%)だがアパレル製品の輸出もあるし統計上の誤差もあるだろうが、総供給点数が2.33倍になったのに総消費点数が18%しか伸びなかったのだから、バーゲンしてもアウトレットに回してもファミリーセールを連発しても処理し切れない在庫が半分近くも発生しているのは間違いないだろう。それが年々、溜まっていくとしたらデッドストック商品だけで十二分に国内需要を賄えるはずで、もはや新たにアパレル製品を生産して供給する意味があるのかと問いたくなる。前シーズン商品と明らかに差別化できる今シーズン商品がいったいどれほど在るというのだろうか。
 最終的に売れ残った商品は焼却処分されたり捨値で業者に売却された後、中古衣料として海外に輸出されたり裁断・仕分けされて原材料にリサイクルされる。かろうじて行き先を推察させるのが中古衣料の輸出総量で、90〜94年は4.5万トン程度だったのが15年には24.6万トンと5.5倍にも増えているから、売れ残り在庫の多くはトン単位でアジア諸国に流れているものと推察される。ちなみに13年の統計だが最大の輸出先は半分近くを占めるマレーシアで、二位の韓国から10位の台湾まですべてアジア圏で合計95%を占める。
 子供服などユーズドで十分というママたちはもはや少数派ではないし、ネットフリマ市場の急成長を見ると背筋が寒くなる。台頭しているアパレルレンタルサービスも実態は余剰在庫を背景としたレンタル+オフプライスのリボルビング販売システムに他ならない。ここまで供給過剰になってデッドストックやユーズドが溢れるとオフプライス流通やC2Cがプロパー流通のB2Cを一段と追い詰めてしまう。ならば新品なんか作らず売らず、デッドストックやユーズドのB2Cに活路を見出すのも一案ではないか。米国のファッションビジネスでは、もはやオフプライス流通がプロパー流通を凌駕しているのが現実だ。
 変化の先行きは過去からの流れを知らないと読みようが無い。目の前の現実に右往左往するばかりでなく、「温故知新」で先行きを見通す見識を養うべきだ。先見の明は「ビジネスモデル変遷検証&近未来予測 経営リーダー育成ゼミ」で学んで欲しい。

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 2016/09/21 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

バーニーズ六本木はのっぺらぼうだった
 バーニーズNY六本木店を取材した折りに?と感じ、撮って来た写真を検証しても他の方がネットに上げた写真を見ても、やはり?と思ったので、ちょっと触れておきましょう。
 バーニーズNY六本木店は米国の設計スタッフがマンハッタンの旗艦店と同一のコンセプトに基づいて細かい素材まで拘って費用もたっぷり注ぎ込んだストアなのですが、いまいち光と空気が澱んで締まらず、個々の商品も立体感を欠いて見えるのです。どうしてなのかと検証してみると、ダウンライトによる空間照明と個々の陳列面の照明に照度も色温度も輝度もまったく差が無く、個々の陳列ラックやディスプレイをフォーカスするスポット照明も壁面上部のウォールウォッシャーもありません。費用をかけた高級店や高感度店なら絶対に外さない照明の大原則を無視しているため、こんな締まらないのっぺらぼうな空間になってしまったと思われますが、NY最先端のバーニーズ本社のプロがどうしてこんな初歩的なミスを犯したのでしょうか。
 恐らく意図して設計したのでしょうが、建築にもアートにもそんなトレンドは聞きませんから、バーニーズNY独特の美意識?なのかも知れません。柔らかい光とシャープな光、クールな素材とウォームな素材のコントラストで凛とした締まった空間を表現するのが時代のトレンドだと理解する私は共感できませんが、みなさんは如何でしょうか。
 ちなみにMDの方も従来よりセレクト比率を格段に高めて(95%とコメント)著名ブランド、人気ブランドを集めているとは言え、セレクトした商品をまったくリミックスしないでブランド毎にラックを並べるという米国式の大味な手法は面白さを欠き、ストリート感のあるリミックスに親しんだ我々には陳腐にしか見えません。ブランドの展開も個店帳合に縛られて色々と規制があるようで、米国「バーニーズNY」のセントラルバイイングの傘からも外れているという中途半端さは苦しいものがあります。
 久方振りの新店ですから応援はしたいのですが、何だか90年代で時間が止まっているみたいなバーニーズNY六本木店の空間には鮮度も高級感も感じられませんでした。御本家の設計に異議を唱え難い関係は理解出来ますが、日本側もトーキョーマーケットの感度を対等に主張しないと成功は覚束ないでしょう。
 だいぶ先になりますが、11月16日に開催する『VMD&ストアプランゼミ』ではストアデザインのトレンドや照明設計から最新のVMD技法まで多数のビジュアル資料で詳しく解説する予定です。



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 2016/09/20 09:40  この記事のURL  /  コメント(0)

今月のSPACは出店条件総点検!
 今月のSPAC月例会は9月29日(木)13時30分から原宿東郷記念館で開催します。毎年9月は「出店政策&出店条件総点検」と銘打って、メンバーの過去一年間の出退店情況とその要因、立地/施設タイプ別の出店条件の変化を検証するとともに、来春以降に開業する主要商業施設の立地と競合、構成を検証して売上を予測し、メンバーの出店判断に役立てて頂いています。
 毎年11月には年間の売上月指数とアイテム構成比など、3月にはECモールの出店条件や自社サイトの運営コストなど、4月には近年開業商業施設の直近成績総点検と商業施設デベの評価ランキングなど、5月には調達手法別の原価率や消化歩留まりなど、6月には多店舗/多サイト間の在庫運用とロジスティクスなど、ファッションビジネスを運営する上で必要な実務指標の検証を年間で一周するように組み立て運営しています。また不定期ですか、有望ブランド/業態と開発手法、アウトレットモール出店とアウトレット店運営なども取り上げています。
 SPACは参画メンバーのアンケート回答を軸に市場データを検証して指標や方向を提示する運営方法ゆえに、新世代のメンバーが加わり続けないと指標の精度が維持出来ません。業界には様々な時代の変化があって世代交代が進んでおり、アパレルメーカーやSPAチェーン、セレクト大手、百貨店や商業施設デベに加えて近年はECアパレルやECモール事業者、EC支援事業者の方々も次々に参画しておられますが、新手の店舗販売事業者の参画が増えないと指標の精度が保てず正確な方向性を提示出来なくなってしまいます。
 SPACは88年2月に設立された我が国業界唯一(恐らく世界でも唯一)の実務情報交流型経営研究会で、この9月例会で344回を迎えます。この間、マーケットはもちろん調達やMD、出店や店舗運営、VMDとロジスティクスなど環境変化と技術革新、戦略革新をローカルあるいはグローバルに検証して業界の方向を適確に提示して来ました。この機能を継続発展させるべく、店舗販売からECまで広くアパレル・服飾事業者の参画を呼びかけるものです。SPAC研究会の詳細と研究テーマ実績、参画メンバーなどは当社HPをご参照下さい。



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 2016/09/16 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

ゴールデン40’S&50’S
 昨日の朝刊に高島屋の自主編集売場「シーズンスタイルラボ」の広告が載っていた。『40代から、きれいになる時代。新しい売場で証明します。』という気負わないキャッチコピーも好感が持てた。大手流通業や商業施設デベの広告は時代錯誤の大仰なコピーや顧客に向けているのかギョーカイに向けているのか訝られるコピーに腰が引ける事も多いから、「シーズンスタイルラボ」の柔らかく実直なコピーは対象世代顧客の共感を呼んだのではないか。
 子育てが一段落し生涯所得カーブの高原(40〜50代)にさしかかって多少の余裕も出る40代はバブル期(90年前後)に20代を過ごした「Hanako世代」でもあり、今時はレアになったプチリッチ志向が顕著だ。とりあえず「ゴールデン40’S」マーケットとでも名付けておこう。男性なら高級ウォッチやファクトリーブランドが欲しくなる世代だが、女性にはもう少しデリケートなアプローチが必要だ。プチリッチ志向とは言っても今時の生活実態は厳しいから、百貨店やファッション誌に氾濫するとんでもプライスのブランド商品には手が出ない。百貨店NBプライスからちょっぴり背伸びした程度の「シーズンスタイルラボ」は40’S達にとって手の届く贅沢なのではないか。
 生涯所得カーブの高原は50代まで続くが、団塊ジュニア層が拡げる40’Sに較べると世代人口が少なくブームにはなりにくい。とは言えこちらも80年前後に女子大生時代を過ごした「JJ世代」で、インポートブランドブームに火をつけた元祖リッチ志向世代だ。彼女達が好んだファッションは「ニュートラ」だったが、今時は街角はおろか服飾美術館でも滅多にお目にかかれない。と思っていたら最近、自由が丘や帝塚山あたりでちらほら見かけるようになった。着ているのは女子大生ならぬ「ゴールデン50’S」のマダム達だが、成熟した分、エレガントになって目を惹く魅力がある。
 往時の「ハマカラーブラウス+ミニスカート」といった女子大生ニュートラからは格段に大人っぽい「プリント/ジャカードの膝丈ワンピース+羽織もの(カーディガンやショートジャケット)」といった爽やかなマダムスタイルで、元祖ニュートラコーディネーターだった私としては「アメリカンエレガンス」と名付けて16SS版から客層マップの一角に加えさせて頂いた。ブランドで言えばアンレクレやパサデココ、お手軽なところではドゥ・クラッセも近いかも知れませんね。
 ギョーカイの方々も「アメリカンエレガンス」に限らず、消費意欲もお洒落心も盛んな「ゴールデン50’S」マダム達のニューウェイブを見逃してはいけませんよ!



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 2016/09/15 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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