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きものは崩さない方が良い?
 ついでがあって上野公園の一角で開催された着物イベントを覗いてみたが、目一杯根性入れて着物で装った来場者の一方で主催者側のスタッフはインスタントな装いが目立ち、凡庸でインパクトを欠いた企画も相まって、はっきり言って顰蹙ものだった。
 衿なし浴衣やセパレート着物、出気合い結びやリボン紛いの簡易帯など、インスタントな着物装いは快適さよりだらしなさばかりが目立ち、着物ならではの清楚さも意気も粋も感じられなかった。そこまで酷くはないものの、年齢や体型にそぐわない柄合わせや帯の幅と締め位置、結び方やお太鼓の厚さ、衣紋の抜き方など、半可通を超えて野暮の領域と言うしかない方々も散見された。
 サラシやタオルで寸胴に整形する‘正統派着付け’がいいとも思わないが、夢二風までセルをしどけなく着崩しては幸薄く見えてしまうし、加藤まさお風の女学生らしい銘仙も質素に過ぎよう。華宵風に華やぐのも一興だが、錦紗振袖では今時、動きがとれまい。個人的には蕗谷虹児風のアールデコな錦紗の装いがモダンで洗練されていると思うが、今時で言うなら斎藤上太郎風の凛とした艶やかさに通じるのかも知れない。
 着物は江戸中期の鈴木春信描く小股の切れ上がった町娘(合わせの浅さとO脚が決め手)や江戸末期の辰巳芸者の意気な男伊達で極まったもので、作り手側のクリエイションはテキスタイルに留まり、着る側のユーティリティ(着合わせ着こなし)が魅力の大半を占める。ストリートの若者のリミックスや着崩しを垣間見るにつけ、どこかに着物のユーティリティが通底するように感じられるのは私だけだろうか。


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 2016/09/30 09:12  この記事のURL  /  コメント(2)

工場発ブランドの成功条件
 ジャパンメイドの気運に乗ってか工場発ブランドが次々と登場しているが、残念ながら軌道に乗るものは極めて限られるのではないか。何故なら‘物づくり’の技を主張するだけで流通・消費と生産のオンライン関係を築けず、年間に渡って工場稼働率を維持するMDと流通の仕組みを欠いているからだ。
 ブランドを持たない工場はアパレルや商社から不定期随時な発注を受けるフリーランスな存在で安定継続したオンライン関係に無く、発注側は工場側の生産仕様開発や設備の組み替えなど前工程や生産効率、閑散期と繁忙期など考慮する訳も無いから、トヨタやデルのようなオンライン操業(いわゆる看板システム)は期待すべくもない。その壁を超えんとする工場発ブランドも多くは古典的な卸流通に依存しており、年に2〜4回の展示会での受注に対応するのみだから、工場の稼働率は安定せず流通経費や在庫の負担も嵩張る。これでは法外なプライスを付けない限り、利益は見込めない。一部の工場ブランドはECや直営店で販路を確保しつつあるが、MDや店舗運営のノウハウを欠いて非効率に留まり、工場稼働率の高位安定という究極目的には繋らないでいる。
 ECや店舗販売による流通を工場稼働率の高位安定に繋げるにはアイテム特科と生産仕様の規格化(前工程を圧縮出来る)に加えて生産工程と販売動向を繋ぐMDアーキテクチャーとVMD展開が不可欠だが、‘物づくり’に拘る方々にはそのノウハウが無く、恐らくは関心さえ無いのだろう。だが、それでは工場発ブランドは永遠に離陸しない。
 「工場稼働率の高位安定を第一義とするMD設計とVMD展開」の好例はかつてのメーカーズシャツ鎌倉に見る事が出来たが、シャツに限らずパンツやワンピース、ニットやカットソーでも同様な仕掛けが成り立つ。素材背景や加工技術に応じたMDアーキテクチャーと顧客のシーズンニーズが合致する必要があるが、アイテム軸か素材軸に特化すれば効率的なFMI(Factory Managed Inventry)が成立して工場稼働率の高位安定が実現出来る。ECとショールーム販売をオムニチャネルに組み合わせば運営効率と在庫効率はさらに高まるはずだ。
 販売と生産プロセスが一本の軸でオンラインに繋がるよう精緻なMDアーキテクチャーを組むノウハウが必要だが、‘物づくり’側と流通・販売側が隔てなく知恵を出し合えば画期的なFDOR(Factory Direct Omnichanel Retailer)事業が成り立つのではないか。‘ものづくり神話’の押しつけだけでは工場発ブランドは離陸しないと腹を括るべきだ。
 
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 2016/09/29 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

お店は小さい方が良い
 外資SPAに煽られてか、やたら大きなストアを志向する企業が散見されるが、果たして正解なのだろうか。確かに大きなストアは商業施設デベから出店条件で優遇されたり、品揃えの迫力やライフスタイル提案でも運営人件費でも有利に思えるが、オムニチャネル化が加速する今日ではマイナス面も多いのではないか。
 出店条件で優遇されるのはモール面からの奥行きスパンが深く、小型店には貸せない奥のスペースまで使ってもらえるからだが、上手くレイアウトして奥まで回遊させないと在庫置き場になってしまう。品揃えの迫力は同時に在庫負担でもあり、家賃や運営人件費が嵩む要因ともなる(どちらも在庫量に比例する)。オムニチャネルショッピングが広がる今日、品揃えのバラエティと在庫効率を両立するにはECによる補完が要であり、売場を大きくするよりECを組み合わせるショールーム販売の方が遥かに効率的だ
 保守坪数が広がれば確かに人時効率は高まるが、大きなストアに在庫を積み上げれば陳列整理と補充が人海戦術になって物流作業が肥大し、ECではAIで済むパーソナルなリコメンドや在庫照会も人手に依存する比率が高くなるから、却ってパーソナルなアドバイスやフィッティングに集中出来なくなる。スーパーマーケットのセルフ販売みたいになって顧客対応に踏み込めず、買上率も客単価も伸びない。ちなみに、化粧品の販売ではドラッグストア型のセルフ販売と着席対面型のコンサルティング販売では客単価は十倍も違う(ほぼ3,000円と30,000円)。
 顧客の顔が見える小さなお店にサンプル陳列してタブレットで品揃えを拡張し(主要商品はお持ち帰り用のストックも持つ)、店内作業に振り回されずパーソナルに接客するショールーム販売の方が買上率も客単価も格段に高く、家賃や人件費の負担も軽く在庫効率も格段に高くなる。お買い上げ品は店舗(他支店も可)でも自宅でもコンビニでもPPPでも受け取れる。ショールーム陳列でも持ち帰りストックを用意できるパッケージ商品(ランジェリーやレッグウェア、服飾雑貨や化粧品など)、お直しや設定設置が必要な商品(パンツやスーツ、家電や家具など)、急いで持ち帰らなくても良い商品では近々に主流となるだろう。
 大きなセルフ販売ストアと小さな対面販売ショップの優劣は、嘗てのEU市場における「セフォラ」対「マリオノー」の闘いで答えが出ている。ギョーカイのトレンドに煽られて不採算な大型ストアを増やす前に冷静に考えてみるべきではないか。
※「マリオノー」に関しては私の旧著「ファッションビジネスは顧客最適へ動く」(現実は動きませんでしたが)に詳しいので、ご興味ある方はご参照ください。
※ショールーム販売やコンサルティング販売のVMDとレイアウトについては11月16日に開催する『VMD&ストアプランゼミ』でビジュアルに解説します。


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 2016/09/28 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

歩留まり率と持ち越し率
 定価で全量を販売出来たら歩留まり率は100%だが、このギョーカイではそんな話は滅多に聞かない(逆臨界点商法なら可能だが)。定価で売り切れないとキックオフや値引きなど売価変更して売り切ろうとするから「値引きロス」が発生する。それでも期末まで売り切れないと「持ち越し在庫」が残ってしまう。
 持ち越したくなければ再度売価変更したりアウトレット部門に回して処分するから、値引きロスは雪だるま式に肥大してしまう。期中に値引きせず期末にまとめてバーゲンして売れ残りは何度かのファミリーセールで処分する、というやり方では期中値引きより格段に値引きロスが肥大するし(SPACメンバー統計では値引きロスで4ポイント強、在庫回転で26%もの格差が認められる)、持ち越し在庫が投入量の一割を上回るケースが多い。それを翌シーズンまで抱えてアウトレット店で処分するという古典的な方法では年々、持ち越し在庫が累積してキャッシュフローを圧迫する事になる。Jクルーの暗転など、持ち越し在庫の怖さを痛感させる‘事件’であった。
 アパレルでは『持ち越し在庫の価値はゼロ』が原則だから、値引きロスが嵩んでも期中に処分し切るのが鉄則で、翌期に持ち越さずアウトレットにもシーズン中に回してしまうべきだ。それでもアパレルチェーンで数%、アパレルメーカーでは10%強(今期はそんなものでは済まないが)が持ち越し在庫になると言われている。持ち越し在庫の換金価値は調達原価の半分以下だから(ものによってはパッキン幾らになってしまう)、シビアに減損評価替えせずに10%も持ち越しては決算利益が大きく粉飾されてしまう。アパレル企業の決算は在庫の中身が開示されない限り眉唾を付けたくなる。
「歩留まり率」とは期中の実売総額を投入定価総額で除した比率
すなわち、投入定価総額から値引きロスと期末残定価総額を差し引いたもので「換金率」とも言う。決算書上では前期からの持ち越し在庫が加わるが、当シーズン品の歩留まり率計算からは当然、除外する。
 アパレルチェーンの歩留まり率はローカルチェーンで80%前後、ナショナルチェーンで70%前後で、グローバルチェーンでは60%を割り込むケースも見られる。ちなみに、当社のSPAC研究会リテイラーメンバーの昨年度平均は78%、アパレルメンバー平均は71%だった。
 『利は元に在り』と言われるが、歩留まり率は調達原価率が高いほど高くなる傾向が顕著に見られる。ちなみに、原価率が30%以下のメンバー企業の歩留まり率が平均71%に留まるのに対し、35%以上のメンバー企業の平均は82%と格段に高い。素人の顧客でも‘お値打ち’には敏感なのだと肝に銘ずるべきだ。
 歩留まり率を改善するには1)販売計画段階の予算設定、2)商品計画段階のMD展開設計、3)調達段階の数量設定と納期管理、4)配分・補充・店間移動の運用、5)店頭在庫の再編集VMD運用、6)キックオフやマークダウンなどプライシング運用、と多段界の改善を連動する必要があり、政策的な判断や組織の組み替え、調達先の入れ替えが求められる場合もある。個々の技に固執すると全体の流れを狂わせる事もあるから、販売計画からMD展開設計、調達から販売まで在庫が平準してスムースに回転するよう(それは消化歩留まりのみならず作業量と運営コストに直結する)連続した流体制御の発想が必要だ。詳しくは11月10日に開催する『バイヤー/MD育成マーチャンダイジング技術革新ゼミ』で詳説したい。

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 2016/09/27 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

アパレル店数は半減する?
 アパレル店舗販売の低迷が極まってECへのシフトが加速する中、大手アパレル4社だけでも15〜16両年の退店計画は1600店を超え、ブランド/業態の休止廃止や退店は何処まで広がるのかと背筋が寒くなる。
 29日に開催するSPAC月例会『出店政策&出店条件総点検』に先駆けてのメンバーアンケートでは、今年度(8月末までの一年間)は98年以来18年振りに退店数が出店数を上回り、退店率は143%と史上最悪値を更新。この5年間でも総出店数4300店に対して退店数は3928店と91.3%に達した。
 同期間の株式公開アパレルチェーン14社の合計出店数2218店に対して退店数は1916店と86.4%に達するから、メンバー企業に限らず、この間の退店率は9割前後というのが業界の実情のようだ。株式公開14社の00〜10年の合計出店数5767店に対する同期間の退店数は3271店で退店率は56.7%だったから、近年の退店率上昇は劇的なペースと言わざるを得ない。
 それは米国アパレルチェーンとて大差ない。ギャップやアメリカンイーグルなど出退店数を発表している上位主要9社の直近5期間の総出店数2142店に対して総退店数は2081店で、退店率は97.2%と100%に迫る。EC売上を公表している上位主要7社計の15年度売上は店舗が7.26億ドル減少した一方でECは2.55億ドル増加しており、平均EC比率は1.4ポイント上昇して16.4%に達した。米国アパレルチェーンは経営効率の低い店舗を整理縮小してECへのシフトを急いでいるのだ。
 先日のブログ『衣料品は毎年、半分売れ残る!』で衣料品のオーバー供給が限界を超えている事を指摘したが、限界を超えているのはオーバーストアも同様だ。バーゲンやファミリーセールを駆使しても半分前後が売れ残って‘ユーズド品’としてアジア諸国に輸出されている現実を直視するなら、アパレル店舗は現状の半分になってもおかしくない。
 大手アパレルの退店ラッシュや外資SPAの撤退を千載一遇の好機と見て新業態を開発してまで後釜を狙うアパレルチェーンも目に付くが、便利なECへの流出が続いて店舗販売の水位はさらに下がると見るべきで、ラッキーカードのつもりがジョーカーを掴む結果となりかねない。アパレル店舗販売で残存者利益が期待出来るのは、水位低下が四半世紀も続いて底に近づき新規参入も途絶えて久しい百貨店のキャリア〜ミセスゾーンぐらいなもので、SCで残存者利益を期待しても夢幻に終わるのではないか。
 幾度も指摘して来たが、『どうして売れない店を増やすの?』と改めて問いたい。

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 2016/09/26 09:58  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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