| Main | 次へ
近未来の店舗販売
 日経MJやShoppingTribeでユニクロSFユニオンスクエア店のAI仕掛けが紹介されている。顧客登録に導くキャラクター作成マシン「UMOJI」(SNSプリクラみたいなもんです)はご愛嬌だが、色違いや後ろ姿が見られるミラー型モニターの「メモリーミラー」、商品のバーコードをスキャンして在庫の確認や欠品のECサイト発注(店舗欠品お詫びの5$クーポンが付く)などが出来るタブレット型接客端末はAI接客が定着した近未来?(半年か一年先)の店頭販売を予見させる。
 ユニクロが米国店舗でこんなAI装備実験を進めるのは近いうちに日本を含む世界中の店舗に実装する計画なのだろうが、日本から始めないのはECへの売上流出を恐れる商業施設デベの過剰反応を面倒がっての故だろう。テナントのオムニチャネルアクションに商業施設デベが一切、規制も課金もしない米国だから先行実験に取り組めるのだと思う。こんなところにも進化に取り残されるギョーカイ事情が見え隠れする。
 AI自動接客のエントリーは牛丼屋や立ち食い蕎麦屋の券売機だが、最近はAIが高度化してメニューやトッピングの選択、多様な支払方法の選択など結構不自由無く使えるから、遠からず可愛い声で音声対応するロボット型に進化するのかも知れない(技術的には容易だが視聴覚障害者対応もお忘れなく)。未だバイト君がマニュアル通りにオウム返しするファストフーズ系の注文カウンターなど前世紀の遺物みたいなものだ。ましてや『何をお探しでしょうか』などと声かけて来るのに在庫探しも手間取るようなアナログ販売員がいつまでも多数、必要だとは到底、考えられない。同じく前世紀の遺物となるのも時間の問題なのではないか。
 恐らくは商品選択・レコメンドから在庫検索・引き当てまで前半分の販売プロセスと最後の支払いプロセスはAI化(モバイル決済)され、フィッティングだけがヒューマンタッチな領域として残るのではないか。ならば、フィッティングスキルとそれに対応するお直しプロセスが重要な差別化要件になるが、果たしてスキルやスピードで優位に立てる販売員や企業がどれほど在るのだろうか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/31 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

下手な接客はうざい?
 衣料品の店舗売上が低迷する中もECだけは伸びているというのは幾ら何でも??と思うし、経済産業省の15年度EC統計でも物品小売総体のEC比率が5%にも届かないのに衣料・服飾関連は9%に達したというのも内心、ひっかかるものがあった。
 衣料・服飾関連のECが伸びていると言ってもECと店頭で価格が違う訳でもないし(あっても一時的)、店頭でのショッピングに余程の抵抗や不満があるのかもという疑念を捨て切れなかったが、最近、それが杞憂でない事が解って来た。実は多くの消費者が『店頭での接客がうざい』『あれこれ接客されるのが面倒』『ネットなら干渉されずにマイペースで買物出来る』と感じているらしいのだ。
 ギョーカイは『AI頼みのECと差別化するのはヒューマンタッチな接客だ、おもてなしだ』と頑なに信じ込んでいるようだが、それを‘うざい’と感じる消費者も少なくない。EC慣れした消費者はプライベートに介入される事無くAI的にレコメンドされたり在庫を検索したり商品説明やレビューを見たいのであり、『何をお探しですか』とか『サイズを探しましょうか』とか付き纏われたくないのかも知れない。ましてや‘おもてなし’を楽しむほど暇な人は限られよう。店は時間消費の観光施設ではないのだから。
 そんなAI時代の接客は、AIでやり取りした挙げ句に解決出来ない課題をAI以上にスキルフルなプロフェッショナルが解決してくれるという‘救済’なのではあるまいか。アップルストアでの接客、とりわけジーニアスバーでのテクニカルサービスにそれを実感する。多くの顧客が求めているのは適確で素早いテクニカルサービスであって、プライバシーに擦り寄って来る‘おもてなし’ではないと思う。
 店頭でも商品選択やレコメンド、在庫検索やレビュー確認、購買履歴と採寸履歴の確認などAIで素早く対応出来る事はシステムに任せ、販売員はユーティリティやTPOのアドバイス、フィッティングのスキルに注力すべきだ。スキルが怪しいのに笑顔で擦り寄って来られてもうざいだけかも知れない。
 わざわざ出かける店舗の方がECより不便という情況を一刻も早く解決しないと店舗販売の地盤沈下は止まらない。オムニチャネル戦略の本質は『顧客にとっての店舗とECの利便一元化』であり、店舗販売の不便を‘おもてなし’‘ヒューマンタッチな接客’で誤摩化したままでは次に来る恐ろしい局面に店舗小売業は圧し潰されてしまう。数百億円以上の規模ではECと店舗販売のコストは倍も違うし在庫効率の格差はそれ以上だから、『店舗とECの利便一元化』の次に『店舗よりECは安い』という局面が来るのは時間の問題なのではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/30 10:23  この記事のURL  /  コメント(0)

無在庫ビジネスの要
 シャツ/スーツの「ラ・ファブリック」、シャツの「KEI」、シューズの「キビラ」など、近年台頭しているFDORビジネスの多くがパーソナルオーダー型である事が注目される。
 ひとりひとりのサイズ要求に応えて一品生産する手間は極めて非効率に思えるが、ネットとCAD/CAMが中小の縫製工場まで普及した今日では想像されるほど手間ではないようだ。加えて、パーソナルオーダービジネスには大きな利点がある。それは‘無在庫販売’が成立する事だ。
 もちろん素材のストックは必要だが、トレンド変化が緩慢なメンズのシャツ/スーツ素材、種類が限られるシューズ用の皮革素材などでは素材ストックのリスクは限定出来るし、何より製品在庫に較べれば3分の一程度の資金負担に抑えられる。店舗販売主体(ECは3割強)ではあるがFDORの草分けとなった「メーカーズシャツ鎌倉」も、素材ストックをウィークリーに製品化してSKU単位の販売動向に即応しているから、B2B型オーダー生産システムと見る事も出来る。補給用のサイズ在庫を持たずウィークリーのSKU生産で販売動向に即応する同社のシステムは、店頭品揃え在庫分を除けば理論上は一週間で在庫が回転して行く。
 無在庫販売が成り立っているのはこれらFDORビジネスだけではない。大半を委託/消化取引に依存する百貨店は在庫負担無く売上(歩率手数料)を得ているし、ブランドの在庫をDCに預かってEC受注に引き当てるZOZOTOWNのようなECモールビジネスでも無在庫販売が成立している。ECモールビジネスは百貨店の‘立地’を‘サイト’に‘売場’を‘DC’に置き換えたネット時代のデパートなのだ。チェーンストア業界の基軸流通システムたるVMIにしてもフェイス在庫分はともかく補給分は無在庫販売で、ウォルマートのカテゴリーキャプテン制などその究極の完成形だ。
 何も在庫を買い取って抱えないと商売が成り立たない訳ではない。メーカーやベンダーにせよリテイラーにせよ、誰が在庫を抱えるにしても在庫は回転し続ける限り負担とはならない。B2Bの補給システムもB2Cの注文(販売)と誤差なく連動する限りは健全で効率的たり得る。無在庫販売の要はPBBC(生産〜流通/小売〜消費者)を誤差無く時差を最短化して一貫するシステム精度に在るのではないか。近年のAIやネットインフラ、CAD/CAMの加速度的な革新は嘗ては成り立たなかったマジックを実現してしまう。グローバルSPAやナショナルSPAなどPBBCの誤差と時差が肥大した古典的な流通システムが継続出来るとは到底、考えられない。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/29 08:53  この記事のURL  /  コメント(0)

IKEAは不便!
 イケア・ジャパンがようやく来秋から本気でECを始めるそうだ。なにせ今時、ECを否定して来店持ち帰りに拘って来たゆえ、ネットには数多のエセIKEAサイト(実質は購買代行業者)が乱立して混乱を招いて来た。それが災いしてか、06年4月に再々上陸して10年も経つのに日本売上は780億円(15年8月期)に留まり、同期間に3014億円も売上を伸ばしたニトリと較べれば伸び悩みを否めない。
 その要因となったのが店頭販売への固執で、スウェーデンのコーペラション思想に基づく顧客の労働分担というセルフサービス神話が背景にあったと思われる。イケアは顧客がストックラックからピックアップして持ち帰り自分で組み立てるという労働分担によって安く提供出来るというロジックで成長して来たが、オムニチャネル消費が広がって加速度的に便利になる今日、そのあまりに重い労働分担が顧客を遠ざけている事にようやく気が付いたのだろう
 すでに他国では11年からEコマースを始めて現在、13カ国に15の顧客向けDCを設置して『店舗販売比率は95%』と公表しており、カナダでは1000坪サイズのショールームストアによるストアピックアップ型Eコマースの実験も始め、日本でも15年10月から熊本でショールームストアのテスト運用を始めている。15年6月9日にはイケア本社がEコマースの積極拡大によるマルチチャネル戦略(なぜか‘オムニチャネル’とは言っていない)を発表して戦略転換に踏み切っているから、日本でのEコマース開始も時間の問題だったが、来秋(17年秋)からとは随分とのんびりした話だ。
 流通業界では『顧客が労働を分担する分、割安に売れる』という‘セルフサービス神話’が未だ健在で、スーパーマーケットから量販SPAまで顧客の労働分担が定着しているが、オムニチャネルなショッピング利便が競われる今日、もはや‘神話’となった感がある。店舗はECに較べての‘不便’や‘労働負担’をどうすれば解消出来るかが問われており、EC同様なAI活用のパーソナルリコメンドや在庫検索、受け取り利便など本質的な‘オムニチャネル化’(ECと店舗が一元一体の利便を顧客に提供する体制)が急がれる
 ‘おもてなし接客’がECとの差別化武器だなんてアナクロな幻想に囚われていては顧客の離反は止まらない。もはやオムニチャネル化は店舗販売存続の必須条件となったと腹を括るべきだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/26 09:32  この記事のURL  /  コメント(0)

定価で買っている人は三分の一?
 定価販売比率の嵩上げを狙ったバーゲン時期後倒しも深刻な‘衣冷え’による不振在庫の山に潰され、バーゲン時期論争以前より実質セール時期は早まってしまったが、‘衣冷え’というマーケットの反乱を招いた責任はすべて業界に在る。百貨店流通でもSPA流通でもこの四半世紀で運営コストと値引きロスが肥大して業界の調達原価率が10ポイント前後も切り下げられ、その分、消費者の感じる‘お値打ち感’も目減りして購入意欲の減退を招いたからだ
 そんな現実を実証するのが業界の‘歩留まり率’(総て定価で売れた場合に比較しての結果売上比率)で、好調ブランドなら80%以上だが業界の平均は75%程度で、多店舗展開のグローバルSPAでは60%を割るケースも見られる。業界平均の75%というのは、定価で半分売れて残りを平均五割引で売り切った場合で、最終残在庫の処理まで含めば現実に近いのではないか。
 SPACコンベンションでまとめた米国アパレルチェーン上位25社の15年度合計売上は683億ドルで、非公開のフォーエバー21とH&M、インディテックスを加えれば760億ドルほどになる。これに対してTJXとロス・ストアーズのオフプライスストア2社だけで429億ドル(アパレル・服飾だけでも306億ドル)に昇るから、その他のオフプライスビジネスを加えれば米国アパレル流通のオフプライス比率はほぼ三分の一にもなる。米国アパレルチェーンの平均歩留まり率が75%だとしても(そんなに高い訳がないが)正価販売比率は二分の一だから、オフプライス流通も含めた米国アパレル市場の正価販売比率は三分の一という事になる。
 これにはデパート業界やディスカウントストア業界の数字は入っていないが、それらを加えても大きくは変わらないだろう。これがアパレル流通の現実であり、我が国も大差ないものと推察される。こんな歩留まり率で利益を確保出来るよう原価率を切り詰めた商品に‘お値打ち感’など期待すべくもなく、‘衣冷え’は深まるばかりだ。既存秩序に浸って来たギョーカイが根底から流通の仕組みを‘革命’しない限り春は来ない
 古典的な百貨店流通に加えてSPA流通まで行き詰まる中、今日のSPACサマーコンベンションでは日米ファッション流通のギャップやECビジネスとの格差を検証し、FDORなど画期的に低コスト/低ロスで‘お値打ち品’を供給出来るポストSPAのビジネスモデルを提唱したい。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/08/25 09:16  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ