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グローバルからローカルへ
 政治の世界ではグローバル化の反動から自国ファーストのナショナリズムが台頭しているが、アパレル市場でも行き過ぎたグローバル化の反動かローカル回帰が目立っている。加工デニムの復活やゆるナチュラルなユーティリティスタイルの氾濫など、その典型だと思う。
 当社が毎シーズン、作製している客層マップは上下が世代、左右がローカル〜グローバルという構図になっており、レディスでは37タイプ、メンズでは26タイプに分類して各タイプに相当するブランドの販売数字と照合しているが、16年春夏期は13〜15SSに進行したキレイ目モードなグローバルトレンドから加工ナチュラルなローカルトレンドへのシフト、グローバルトレンドを小キレイに焼き直すナショナルタイプ群(百貨店NBなどのコンサバ系)の衰退が目立った。
 17SSを占うには商社や有力テキスタイラーの展示会も参考になるが、グローバルトレンドに依存する大手商社の素材が陳腐化して見える一方、ローカルトレンドを上手くキャッチした専門商社の素材に鮮度が感じられた。SPACメンバー企業の商社評価アンケートを見ても、12〜15年のグローバルトレンドサイクルをリードした大手商社が後退してローカルトレンドに強い専門商社が上昇している。ほぼ6シーズンごとにローカルトレンドとグローバルトレンドの潮目が変わって来た経験則から言っても、18SSまではローカルトレンドがリードする公算が高い。
 深刻な‘衣冷え’に直面するギョーカイは先行開発のリスクを避けて欧米コレクションの結果を見てからの後出し企画にシフトしようとしているが、果たしてそこに泥鰌はいるのだろうか。顧客のライフスタイルと乖離したグローバルトレンドに期待するより、自らの顧客を見据えたローカルトレンドを真摯に捉えるべきではないか。


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 2016/07/25 11:05  この記事のURL  /  コメント(0)

キレイに仕上がりました
 5月末から集中して製作していた17SSの『MDディレクション』が完成しました。レディスはカジュアル/OL/キャリアそれぞれに春/初夏/盛夏のスタイリングテーマを設定してMDストーリーを組みました。その最後の仕上げが各テーマの素材構成ボードなんです。今シーズンもリアルにキレイに仕上がりました(ご苦労様です)。創造力を刺激するインパクトを見て触って確かめて下さい。


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 2016/07/22 10:12  この記事のURL  /  コメント(0)

言い値で完売の逆臨界商法
 昨日の日経MJのコラム「ライフスタイル」は『客殺到、3店が臨時休業』と見出し、高級ランドセルブームで鞄工房山本のネット在庫が一時間で瞬間蒸発し、実店舗に顧客が殺到して臨時休業に追い込まれた事を報じていた。これほどの騒ぎは例外としても、毎年のようにランドセル受注の解禁日?になると土屋鞄などに‘ラン活’顧客が殺到するのが季節行事になったかの感がある。小学校新入生が毎年、減少する中も親に祖父母も加わって‘ラン活’が過熱する情況は何を意味するのだろか。
 世には物が溢れてセールが日常化する中、何で高級ランドセルだけが‘言い値’で完売してしまうのか。その秘密が「逆臨界ビジネスモデル」(私の造語です)なのだ。
 定価で売れるか値引きしないと売れないか、即完売してしまうか時間を要するかは、すべて需給で決まる。需要より供給が多いと値崩れし消化も手間取る一方、需要を供給が満たせないと‘言い値’で完売してしまう。旬の生鮮食品などを思って頂けば容易に理解されよう。だから農家や漁師は日々、市場の入荷量と競り値を見て育成を早めたり遅らせたり、捕る魚種を変えたりするのだ。
 衣料品や服飾品は類似品が氾濫していつも値引きしている印象があるが、作っても売れない、海外産地とのコスト競争に勝てない、といった情況が長年続くと工場の廃業や倒産、職人の離職が進み、ついには作りたくても僅かしか作れないところまで衰退してしまう。つまり供給が需要を満たせなくなってしまうのだ。これが‘供給の逆臨界点’で、ここまで来ると『生産量が販売量を決める売り手市場』が成立する。国内生産高級ランドセル市場の完売現象は‘供給の逆臨界点’到達ゆえに生じているのだ。
 そんな旨い話は滅多に無いと思われるかも知れないが、慢性的供給過剰の業界でも探せばチャンスは少なからず転がっている、そんな逆臨界情況を探して画期的ビジネスモデルを仕掛けた実例が、恐らくランドセル業界の情況にヒントを得たと思われる「ココマイスター」の高級ビジネスバッグ、久しく大手三社の寡占状態が膠着した国産時計業界の隙間を付いた「Knot」の機械式腕時計ではないか。
 「ココマイスター」の高級ビジネスバッグなど明らかにラグジュアリーマーケットを意識したもので、国産としては!!というプライス(〜税込50万円)が堂々と付けられている。「Knot」の機械式腕時計AT-38は逆に、こんなに安くていいの?と思わされるほど控え目なプライス(税抜45,000円)が付けられている。どちらも‘言い値’が通って生産量が販売量という売り手市場が成立している事には変わりない。
 同質化と値崩れに悪戦苦闘しているギョーカイの方々は、こんな「逆臨界ビジネスモデル」を是非とも参考にすべきと思うが如何だろうか。

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 2016/07/21 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

なんで送料まで取られるの?
 近頃はよろずEC頼みで、店頭に出掛けるのは衣料品や靴をフィットや素材感を確かめて買う場合に限られて来た。パンツやジャケットなどお直しが必要な場合は仕上がり次第、宅配するよう依頼する事になるが、そこで送料がうん百円と言われては??と腰が引けてしまう。
 アマゾンはプライム会員になっているから何でもタダで当日か翌日には届くし、他のECサイトも5000円か10000円を超えれば無料になるから、わざわざ交通費を使って店まで出掛けて何万円も買っているのに『送料を頂きます』と言われても何様なの?と思ってしまう。まあ相手は高い家賃を払って人間様が接客するのだから、AIが対応して郊外のDCから宅配して来るECとは比べ物にならないコストがかかっているのだと納得しようとするのだが、やはり腹に入らないものがあり、なるべくECで済ませようと思ってしまう自分がいる。
 店まで出向いても気に入る商品が見つからないかも知れないし、気に入っても自分のサイズや欲しい数量の在庫が在るとは限らないから、事前にネットで調べて目安を付け、ECサイトで近隣店舗の在庫を確認してから出掛けるのが今時は当たり前になっている。そんなウェブルーミングが習慣になると、ECサイトで店舗在庫を確認出来ないブランドからは足が遠のいてしまう。百貨店など、まったく在庫検索が出来ないから目的買いが難しく、よほど買物気分が盛り上がらない限り出掛けなくなった。百貨店の客数減はインバウンド客の減少だけが原因ではないのだ。オムニチャネル化の本質はこんなところからも見えて来る。
 ECの利便が競われる中、わざわざ店まで出向いて下さるお客様は特別に大切なのだから、せめてECと同程度には便宜を図るべきではないか。『なんで送料まで取られるの?』という反応はオムニチャネル時代の必然だと思う。

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 2016/07/20 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

業務サイクルのマジック
 月曜の日経朝刊のコラム「経営の視点」では、しまむらの業績回復要因を『現場の実情に対応した運用ルールの見直し』として、1)毎月20日締めのバイヤー評価を四半期毎に変更、2)販売計画は月次から週次へ変更、を例示していた。この変更で20日前後の売価変更や投入の集中に伴う売場作業が軽減されて残業が減り、新商品投入が毎週に分散されて売場の鮮度が高まって値引きも減少し、ルート便トラックの積載量が平準化して臨時便などの必要もなくなったそうだ。
 こんなことで1300店超(16年2月期末でしまむら1325店、グループ全店2015店)の大規模チェーンの業績が急回復するものだろうかと訝る方も少なくないと思うが、実はこれは決定的な業務改革なのだ。
 小売チェーンの実務組織は、店舗と物流は日々〜週サイクル、営業本部とDB(ディストリビューター)は週サイクルで動いているが、商品調達部は追加調達や売価変更は営業本部やDBに週サイクルで対応しても、商品開発・調達業務は月〜シーズンサイクルで動いており、店舗/物流/営業/DB/商品調達の業務サイクルの歯車をどう噛み合わせるかで全社の業務効率は天と地ぐらいの差が生じる。
 店舗作業や物流作業は平準化するほど効率化するから、月サイクルより週サイクル、週サイクルより日サイクルと短サイクル化する事が求められる。ゆえに販売動向に対応するEOS補充は日々、営業対応の人的判断による売価変更や店間移動は週サイクルで運用されるべきだが、商品調達部の評価が月サイクルだと売価変更や投入が締め日前後に集中して店舗作業や物流作業も集中してしまう。この弊害を解消したのが今回のしまむらの業務改革だったと推察される。
 商品調達部門の業務は週サイクルの営業対応業務と月〜シーズンサイクルの開発対応業務が並行するから、それぞれに向いた歯車を噛み合わせるよう業務を分担する事が望まれる。しまむらはカテゴリーで細分化されたバイヤー&DB(しまむらではコントローラーと称する)ペア制を採用しているが、両者の業務サイクルの割り切りが徹底していなかったのかも知れない。営業対応は週サイクル、開発調達とその評価はシーズンサイクルと割り切ったのだろう。
 店舗における売上/投入/在庫は週次月次で平準化するほど、消化回転が速やかになって売価変更を抑制出来るし、店舗作業も物流作業も効率化する。逆に売上や投入が集中して山谷の差が激しいほど消化の効率も運営の効率も悪化する。ZARAとH&M、しまむらとユニクロの運営効率の格差もここに多くが起因している(どちらも前者が優位)。また、在庫コントロールのサイクルを短くし(月より週)、店間移動や売価変更の単位を細分化(品番よりSKU)するほど、消化回転が高まりロスも圧縮される。これらはSPACメンバー企業で証明された‘法則’なのだ。
 セクション間の業務サイクルの噛み合わせと作業量の平準化いう極めて基本的なマネジメントだが、その改善効果は予想以上に大きい。日々のジタバタの中で放置されたままになっている‘基本’を見直してはどうか。

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 2016/07/19 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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