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枚方Tサイトとギョーカイのセンス
 昨日は早起きして大阪の仕事の前に枚方のT-SITEを覗かせてもらったが、「半径2km」と割り切った足下MDの徹底度はともかく、大きく空けたガラス壁からの外光をウッド・ブラインドの反射で補正したり、EV背面をガラス張りにして背後の壁面に描いたアートを透けてみせるなど『さすが増田CEOの感性はハイレヴェル』と唸らせるものがあった。
 「半径2km」のコンセプトを徹底するには足下生活者の最寄りニーズを押さえて来店頻度を稼ぎ、‘時間’を消費させて客単価を重ねてもらうというMDが肝要だから、書籍とAVメディアの「TSUTAYA」を軸に食品(B1の生鮮三品と北野エース、1Fのベーカリー)とカフェやレストランなど飲食サービスを主力とするのは当然で、最後まで詰め切れなかった4F(暮らしと美容)だけが浮いて見えた。コスメと美容サービス+サプリ/ドラッグに徹っするべきで、アパレルはサロン販売のセレクトショップに絞り、雑貨は季節催事運用に割り切るべきだろう。「半径2km」の足下型商業施設としては過剰品質に思えるほど外観も各フロアのインテリアや照明も「代官山T-SITE」並みの高質感を実現しており、4Fだけがその点でも違和感があった。
 建築的にはモダニズムの先端を意識しながらもインテリアではナチュラルな高質感やゆったりした空気感を表現するT-SITEと較べれば、ファッションギョーカイの建築的センスには疑問を感じてしまう。
 ギョーカイのクリエイティブ?な方々は昔からコンクリート打ちっ放しに蛍光灯というシュールモダンなストアデザインがお好みのようで、近年のナチュラルなライフスタイルブランドでさえ床も天井もモルタルというインテリアが少なくない。さすがに照明は蛍光灯ではなくLEDになってはいるが、ナチュラルな商品とクールな空気感のギャップには違和感を否めない。建築やアートの世界では素材と光の干渉や空気感を意図するのはジョーシキだし、光のレイヤーを重ねるほど陰影が深まり複雑なニュアンスも仕掛けられる。そんなジョーシキでこのギョーカイの感性を俯瞰すると???と思わされる事が多い。
 モルタルの床や天井は照明の光を蒼く偏光して反射するから、4000〜5000kの蛍光灯では屍体置き場のようなシュールモダンな空気感が生じる。それを意図しているなら良いのだが、ナチュラルなライフスタイルやナチュラル素材アイテムを売るブランドがモルタルの内装に3000kのLEDを配してもモルタルに反射して4000k以上に蒼くなり、空気感も堅くなってしまう。
 ナチュラルでゆったりした空気感を表現したいならモルタルの内装は部分的に留めて自然木を多用し、3000k前後のLED照明のレイヤーを重ねて肌触りのよい空気感を表現したい。写真撮影の設定で言えば、絞り優先でシャッター速度を遅めにして気持ち露出アンダーな柔らかい空気感を表現するという事でしょう。
 このギョーカイの方ってホントにクリエイティブなんでしょうか・・・・







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 2016/07/29 10:13  この記事のURL  /  コメント(0)

アプルーバル・セカンド
 自動車業界ではドイツの高級車メーカーを筆頭に二次流通管理が進み、それが中古車価格を下支えして下取り評価を押し上げ、ひいては新車の値引き巾を圧縮する効果が発揮されている。
 中古車と言えば信頼性を疑ってかかる感覚が未だ残っているが、それら高級車メーカーの認定中古車(アプルーバルカーとかサーティファイドカーと称する)は履歴が明らかで整備が確かで保証も付いているから安心して買える。二次流通管理がしっかりしているブランドほど値下がりが少なく買い替えが容易で、信頼性もブランド価値も高く保てる。
 そんな高級車メーカーと較べると、二次流通をコメ兵やヤフオクに任せっ放しのラグジュアリーブランド業界なんて無責任と言うか怪し過ぎると言うか、本気でブランド価値を守ろうとしているようには見えない。大枚かけてランウェイを演出し派手なパーティーでパリピをもてなすのがブランディングだと本気で思っているとしたら、まともなビジネスマンではない。そんな暇や金があるのなら、一部の宝飾/時計メーカーが実践して来たように製造番号刻印による絶対単品で流通と品質を管理し、グローバルにメンテ拠点を配してアフターサービスを徹底すべきではないか。どんなに派手なイベントで憧れを煽っても、売りっ放しではブランド価値は保てませんよ!
 「偽物の見分け方」なんてマニュアルが存在する事自体がブランド側の手抜きであり、新品はもちろんユーズド品も、正規販売店だけでなく二次流通業者も、誰もがQRコード?をスキャンしてブランドの品質管理サイトで刻印された製造番号を照合すれば瞬時に正贋を判定出来るようにするべきだ。何とか協会とか作ってイベントに金かけるのに、そんな統一管理機関を作ろうという話はとんと聞いた事がない。やはり価値観が違う世界なのだろう。
 真摯にブランド価値を守りたいなら、二次流通をコメ兵やヤフオクに任せっ放しにしないで、ブランド自らが買い入れて修理し品質保証した‘アプルーバル・セカンド’を直営のユーズド店やユーズドサイトで二次流通させるべきではないか。そこまで品質に自信がないのなら、あるいはそこまでの体制を確立出来ないのなら、‘ラグジュアリー’という旗を下ろすべきかも知れない。

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 2016/07/28 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

薄利多売と交叉比率
 昔から商売成功の秘訣は‘薄利多売’と言われるが、『厚利では少量しか売れないが薄利だと大量に売れる』という表面的な意味の他に『薄利でも多回転すれば巨利が得られる』という経営の神髄を語ったものと受け止められる。これが所謂「交叉比率」の概念だ。
 「交叉比率」は商品資本の期間生産性を現す指標で、一般に「実現粗利益率×年間の商品回転数」で算出する。‘薄利多売’とは『利幅が薄くても在庫が高回転すれば莫大な利益が得られるから、薄利なお値打ち価格にして高回転を狙え』という教訓なのだろう。八百屋は利幅は薄いが毎日のように回転するから、廃棄損を差し引いた利幅を10%と見ても×180回転(2日で一回転)で交叉比率は1800%にもなる。なんと元手が一年で18倍になる計算だ(もちろん、家賃や人件費などの運営経費がかかるが)。ちなみに食品スーパーやコンビニの交叉比率は1000%を超える。
 これが年間2+2シーズンのコレクションブランドになると実現粗利益率60%弱×2回転前後で交叉比率は120%にも届かないし、セレクト大手のユナイテッドアローズも50.8%×3.0回転で交叉比率は150%強に留まり、ファストなはずのH&Mも57.0%×3.5回転で交叉比率はようやく200%に届くに過ぎない。これがODM型のカジュアルチェーンになると45%×12回転で交叉比率は500%台に跳ね上がるし、原始的なキャリー型ファストSPAなら食品スーパー並みに1000%の大台に乗せる事も可能だ。これが‘薄利多売’で、高付加価値な自社開発の一方で高回転なODM調達商法も存在する。
 ちなみに上場アパレル専門店の平均交叉比率は年々、商品回転が低下して劣化しており、09年度の238.8%(粗利益率50.6%×4.72回転)から15年度は187.7%(粗利益率51.4%×3.65回転)と八掛け以下に落ちている。
 交叉比率を確実に高める方法は、1)毎週など投入頻度を高め、2)在庫の奥行きを持たず補給もせず売り切り御免に徹し、3)SKU単位に自動店間移動で振り替え、4)一定期間(最大4週)経過して残っている在庫は処分店舗に移動して値引きして売り切る。これは消化歩留まりと在庫回転のどちらも高める定石で、結果として交叉比率を最大化できる。「ZARA×しまむら+α」といったMD&DBプロセスと言ってよいだろう。


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 2016/07/27 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

セール時期論争は終わった
 ルミネと三越伊勢丹が期末バーゲン時期を後倒そうと旗を揚げたのは確か12年の夏からだったと思うが、それから5シーズン目となった16年の夏バーゲンは関係者の思惑を他所に‘需給の論理’が論争に答えを出してしまった。
 期末バーゲン後倒しの旗が揚げられたのは20年も続いた衣料消費の衰退がようやく底を打って回復の兆しが見え始めた時期で、久方ぶりの上昇期待の中で出て来たのが『もっとプロパーで長く売って利益を増やそう』という期末バーゲン後倒し論だった。
 そんな上昇期待も14年4月の消費増税で吹っ飛び、15年秋口からの景気の腰折れを受けて衣料消費は11月から急激に冷え込み、‘衣冷え’が言われるほど販売不振が極まった。冬の期末バーゲンではアパレル各社は大量の在庫を抱えて‘後倒し派’の解禁日を待てなくなり、ECサイトやファミリーセールが先行して実質、年末年始スタートという元の時期に戻ってしまった。
 16年の春夏期は景気の翳りや社会保険料負担の増加も加わって‘衣冷え’がさらに深まり、3〜5月が記録的な販売不振となって在庫が積み上がり、某大手アパレルが5月中からファミリーセールに踏み切ったのを契機に、多くのアパレルがEC先行で6月早々から大っぴらにプレセールやシークレットセールに突入し、6月11日には他大手アパレルのファミリーセールも始まった。
 後倒し派はもはや言い出しっぺの三越伊勢丹とルミネだけになり、三越伊勢丹は7月13日、ルミネは14日からスタートした。大半の百貨店は7月1日スタートだったから大手アパレルはこの間、一物二価を回避すべく三越伊勢丹から他百貨店でセールになる商品を総て引き揚げ、端境企画商品だけで凌ぐという綱渡りを強いられた。アパレル業界の不振在庫の積み上がりは三越伊勢丹やルミネの後倒しセールなど待てる情況ではなく、7月1日から始まる他百貨店のセールも待てないほど追い詰められていたのが実情で、ファミリーセールは6月11日、公式にもZOZOが全面セールを開始した6月24日に前倒されたと総括されよう。
 『産地擁護』とか屁理屈を掲げて顧客に背を向けたセール時期後倒しに‘錦の御旗’が在るはずもなく、衣料消費が再び冷え込んで不振在庫が積み上がるに及び、セール時期は論争前どころか実質、それ以上に前倒される結果となった。
 セール時期は所詮、需給が決めるもので業界や特定の館が恣意的に操作出来るものではない。突出して有力な百貨店や駅ビルが業界をリードした往時はともかく、アパレル業界がコスト負担が重く先細る既存流通を見限って伸び頭のECに注力する今日、有力な百貨店や駅ビルのご無体につき合う余力も意志も無くなったと受け止めるべきだ。来期はZOZOかアマゾンがセール時期を決めるのだろう。

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 2016/07/26 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

館の二重課金は成り立たない
 本日発行のWWDジャパン7月25日号は「オムニ・コマース特集」で、そのしんがり(35P)に1ページで『館はテナントのECに課金出来るか』と銘打って寄稿しています。
 アパレル業界ECのリアルコストを図表で現して『館の二重課金は成り立たない』と論証し、課金も規制も行うべきでないとする一方、どうしても課金するなら館自らフルフィル型モールを運営して店頭売上と同率(駅ビル/SCで17.5%程度)に課金するか、手軽なキュレーション型モールでアフィリエイト課金(数%)するかの選択となる、としています。
 フルフィル型モールが17.5%の課金率で成り立つには1000億円以上の取り扱い量が必要ですから『ハードルは高い』と論じ、キュレーション型モールによるアフィリエイト課金が現実的なのではと結論しています。
 どう課金するか以前に、館側が規制か容認か課金か曖昧にしたまま消極的に規制する現状が顧客を遠ざけている事が問題で、早急に仕組みを確立してはっきりすべきだと締めくくっています。パルコの泉水常務執行役が言うように、この機会に固定家賃制に戻すべきなのかも知れませんね。
※WWDジャパンを購読されていない方は当社HPでも私の論文はご覧になれますが、「オムニ・コマース特集」は上出来ですからキオスクで購入して全体を読む事をお勧めします。


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 2016/07/25 13:48  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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