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バーゲン日程が話題に上らない
 もう6月も半ばだと言うのにバーゲン日程が業界紙の話題に上らない。昨年あたりまではまだ前倒し派と後倒し派の論議も残っていたようだが、今春夏のかつてないほどの販売不振に形振り構っていられないというのが実情のようだ。
 ECではZOZOが6月3日からプレセールを始めているし、各ブランドとも同タイミングあるいは一週遅れでシークレットセール(結構オープンですが)に入っている。ファッションビルやSCは6月24日スタートが多いが、すでにセール状態のテナントも目立つ。百貨店は7月1日から二段階三段階でセールを始める組と7月13日あるいは15日からセールに入る組に別れるが、大手アパレルのファミリーセールは6月10日あたりから先行しているし、ECでも五月雨式にセールが始まっている。販売不振で在庫が積み上がった情況では後倒し派の建前も大義名分も何処かに吹っ飛び、面目だけ合わせてECやファミリーセール、シークレットセールで早々と処分を急ぐブランドが大半のようだ。
 産地擁護とか正価維持とか免罪符まがいの建前を振りかざしても、セール時期は所詮、需給が決める市場原理だ。魅力ある商品が供給不足で需要が吸収してしまえばセールにかける必要もないが、魅力も価値も怪しい商品が供給過剰で需要を上回れば値崩れしてセールが早まってしまうのは当然の理だ。売れずに値引きと残品が肥大すれば利幅を確保すべく原価率を切り下げ、それがまた商品の魅力を削いで値引きと残品がさらに肥大するという悪循環を繰り返して来たのだから、自業自得であって消費者を逆恨みしても仕方ない。
 誰も歓迎しない業界都合のセール後倒しなど画策しないで、顧客が喜ぶ原価率の高い‘お値打ち商品’を控え目に供給して正価販売率を高めるのが正道だと思う。業界都合で原価率を切り下げて来たツケは大きく、40〜50%以上という高原価率で台頭するFDORベンチャーが価値と価格の常識を変えて行くのは必然だ。高コスト化・非効率化した既成の流通システムもそれを前提としたMD展開もすべて間違っていたと懺悔して、オムニチャネル時代の流通プラットフォームをゼロベースで創造する決意が問われている。

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 2016/06/15 09:51  この記事のURL  /  コメント(0)

店舗販売はどうなるの?
 今朝の日経は今秋を目処にユニクロがEC受注品の全国(離島除く)翌日配送体制を整え、中国や米国、欧州でも同様な物流体制を順次整えて行くと報じていた。ファーストリテイリング社は現在5%強に留まるEC比率を3〜5年後には30%以上に高めるという方針を成長の生命線として全力で押し進めており、物流体制の整備と並行して商業施設のオムニチャネル営業規制を打破すべく既成事実を積み上げているのは承知の通りだ。ファーストリテイリング社に続いて店舗事業者が挙ってEC比率を20〜30%、果ては50%と高めて行くとすれば、店舗販売はいったいどうなるのだろうか。
 英国の15%(推)、中国の13.5%(推)、米国の7.3%からは遅れているとは言え我が国のEC比率も年々二桁成長を続けて全消費財で5%に迫り、衣料・服飾に関しては9%を超え、家電やアパレルのチェーンでは二桁EC比率はもはや当たり前で30%を超えるケースさえ見られる。モバイルショッピングのメジャー化とともにオムニチャネル化が急進しており、若い世代ではECを店舗が補完する情況になりつつある。
 少子高齢化で陰り行く我が国の消費のパイが拡大するはずもなく、EC以前からオーバーストア化して販売が低迷していた店舗からECに消費が流れる分、店舗販売は年々細らざるを得ない。EC比率が一桁の今日でも店舗販売のダメージは大きいのに、EC事業者に加えて店舗事業者まで主力をECに移して行くとすれば、店舗販売はいったいどうなるのだろうか。
 チェーン展開の店舗事業者はオムニチャネル化してECの比重を高めて行けば運営コストも在庫効率も改善されるが、ECに比して格段に割高な家賃収入を謳歌して来た商業施設デベや百貨店はテナントが逃げ出して経営に行き詰まるのではないかと危惧される。インバウンドの下駄も外れて売上の減少に直面する中もテナントのオムニチャネル販売を規制したり課金したりと時代に逆行する姿勢が目立つが、ジーユーやユニクロの挑発ですでに外堀は埋まりつつある。
 欧米のように商業施設のテナントに対するオムニチャネル販売規制がなくなれば情況は一気に進み、既得利権に固執する商業施設や百貨店は置き去りにされてしまう。それまでに自ら魅力的で競争力があるオムニチャネル・プラットフォームを確立出来るか否かが存亡を分ける事になるが、百貨店や大手商業施設デベのECサイトやオムニチャネル対応を見る限り、オムニチャネル化の奔流に高を括っているとしか思えない。このままでは90年代末期から00年代初期に大手百貨店や大手量販店の破綻が相次いだようなパニックが再現されかねないのではないか。

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 2016/06/14 09:59  この記事のURL  /  コメント(0)

販売員不足を解消する妙策
 今朝の日経MJ一面は『居心地イイネ』と題して、人手不足感が強い小売業や外食産業で様々に職場の魅力を高める試みを紹介していたが、様々と言っても社員食堂関連や動機付けイベントばかりで、給与とか休日とか勤務時間とか本質的な課題は何故だか柔らかにスルーしていた。そのおまけみたいに付けていた職種別の求人数と求人倍率のグラフが一番シリアスだったのではないか。
 厚生労働省調べによる4月の有効求人倍率は「接客・給仕」3.56、「介護サービス」2.69、「自動車運転」2.14、「商品販売」1.91、「清掃」1.71が人手不足上位5職種で、「一般事務」が0.28と最も供給過剰だった。「商品販売」は「清掃」以上に不人気な職業と受け取れるが、果たしてそうだろうか。
 有効求人倍率は単に企業の求人数を求職数で除しただけで、1.00を超えれば供給不足、割れば供給過剰を意味するに過ぎない。人気があって就業希望者が多く求人数が少なければ供給過剰となり、不人気で就業希望者が少なく求人数が多いと供給不足になるという需給関係だ。となれば、「販売職」の供給不足は‘不人気’と‘求人過多’の結果と推察される。
 ‘不人気’の要因は労働時間と休日の不利に加えて給与が低く昇進も限られるという現実に尽きるが、一方の‘求人過多’はオーバーストアと長過ぎる営業時間に起因しているのだから生産性の裏付けが無く、求職者が期待するような待遇は与えようがない。好かれるには夜遅くまで勤務しないで休日も取り易い勤務ローテーションを実現するのが大前提で、給与を高めるには効率的な営業生産性が不可欠だ。
 その両方を満たすには商業施設の営業時間を短縮して休館日を増やすしかない。さすれば不要に長い営業時間を店番させる交代人員も不要になるから‘求人過多’も霧散してしまう。その分、店舗運営のコストも下がるから販売員の給与水準も上げられる。販売員不足はそれを生じさせた元凶の解消によって一挙解決出来る人為的な‘幻’なのだ
※‘元凶’とは00年の大店立地法施行に伴う営業時間の全国的延刻を指す。

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 2016/06/13 13:59  この記事のURL  /  コメント(0)

3800ブランドを位置付けました
 3〜5月と何度も都心から郊外まで店頭を巡回してMDや客層、ネットで店舗展開立地や会社の体制、ECサイトの商品構成と運営体制など細かく確認して原案を固めたのが5月末。そこから外部のスペシャリストも加えて見直し、ようやく完成した「16SSブランドツリー」。レディス28ゾーン/383タイプ/2605ブランド、メンズ20ゾーン/209タイプ/1195ブランド、計3800ブランドを位置付けました。
 「ゾーン」は客層や出店立地、価格帯などから設定、「タイプ」はテイストやオリジン、調達体制や編集手法などから設定しており、毎シーズン、マーケットの変化を反映してゾーン/タイプの新設や改廃を行っています。ブランド/業態も新設や廃止、ポジション移動などが煩雑に発生しており、コーディネーターが店頭を実見して位置付けしたものをマーケッターがネットなどで再確認して精度を高めています。
 ブランドツリーの仕上げと前後して進めていたのが客層ボードの作成で、レディスはB全ボードに37タイプ、メンズは同26タイプを数百体のルック写真で構成し、客層とブランドを関連して位置付けられるよう体系的に組み立てています。ブランドツリーと客層ボードを正確に関連付け、毎月/毎シーズンのブランド別販売成績を色分けして組み込めば、立派な‘天気図’が出来上がります。高気圧(人気上昇)と低気圧(人気低落)が位置決めされ、風向きがはっきり見えてくるのです。
 この‘天気図’にタイプ別のスタイリングやアイテム、カラーや面の変化を重ねてディティール毎のライフサイクルを判定し、ギョーカイで言われる個々のトレンドや素材業界の開発傾向などを加えて来シーズンの有望スタイリング、有望MDを組み立てて行きます。そのビジュアルな完成形が「MDディレクション」で、17SS版は7月20日頃に完成する予定です。レディス10テーマ、メンズ6テーマのスタイリング、カラーパレット、素材構成をビジュアルに構成し、商品企画やMDへの落とし方を解説します。
 「16SS版ブランドツリー」は6月29日開催のSPAC月例会『有望マーケットポジションとパワーコンセプトを探る』でメンバー企業に配布して解説します。「17SS版MDディレクション」は7月下旬から契約企業へ巡回して解説します。ご興味のある方はお問い合わせ下さい。


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 2016/06/10 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

日本賛美とデザイン史の文脈
 アパレル業界はもちろんインバウンドに沸く(そろそろ終わりですが)流通業界からTVや雑誌などのマスメディアまで‘クールジャパン’‘ジャパンメイド’賛美一色で、オリンピックを控えてか(ホントに開催出来るの?)、はたまた安倍政権の国粋主義的啓蒙なのか、なんだか戦時中の『進め一億火の玉だ!』的雰囲気に目眩がする。
 政治的な時流はともかく、文明史的潮流としては大正デモクラシーから昭和モダンに急転して軍国主義に雪崩れ込んだ1930年代、あるいは急速な欧化政策の反動から日本美の再評価へと転じた1890年代にも重なって見える。前者では桂離宮や伊勢神宮に象徴される日本の伝統的建築美を再発見?したブルーノ・タウト、後者では日本美術を再評価したアーネスト・フェノロサが旗振り役を演じたが、今回も経済学者からブロガーまで優越的アウトサイダーたる欧米人達が総動員されている。
 その是非はともかく、‘伝統的日本美’と一括りにされるものも幾つかの対立的構図で見分ける必要がある。ブルーノ・タウト的?とされる視点に立てば、表面的装飾性と精神的構造性という対立構図が指摘されよう。それが職人技を駆使して装飾された東照宮への嫌悪と削ぎ落とされた構造美の桂離宮への賛美である事は言うまでもあるまい。それは仏教的な偶像崇拝と装飾性への嫌悪と神道的な清浄性と簡素な構造美への賛美という、仏教伝来以前への国粋的回帰という維新政権から通底する流れとも繋がる。
 もっとも、建築家としてのタウトはモダニストというより表現主義者であったから、桂離宮のマニエリスム的遊戯性にも惹かれていたという。そのあたりは井上章一の「つくられた桂離宮神話」を御一読頂けば興味が深まると思うが、ホント、この井上章一というおっさん自体がシニカルなマニエリスムそのものだと思う。
 明治維新が装飾的で俗性に染まった仏教文明の陰に追いやられていた古代からの神道や清浄簡素な伝統美を再評価したように、欧米の近代も中世来キリスト教に抑圧されて来たヘレニズム的享楽性や人間性を解放したが、前者は国粋的全体主義のプロパガンダに変質し、後者は資本主義下の勤労核家族に強いられた禁欲的道徳によって過渡的なルネサンスに終わった(河村錠一郎の「世紀末の美学」を是非、御一読頂きたい)。それがアールヌーボーであり大正ロマンであったのだろう。
 そんな文明史的系譜でアールデコから表現主義を経てモダニズムに転じた1920〜30年代の必然を読み取るなら、ポスト・モダニズムの表現主義から急速にモダニズムに回帰して行く極めて当時に近似した今日の我が国でザハ・ハディッド氏の新国立競技場案が排除されたのは時代の必然であったし、紆余曲折の果てに東京オリンピックの新エンブレムデザインが表現主義的な他案を排してミニマル・モジュールな野老朝雄案に決したのも同じ文脈によるものだろう。
 振り返って東京デザイナーたちの‘作品’や‘工芸品’を総覧すれば、多くは80年代‘東京クリエイション’の幻想を引き摺った表現主義的傾向を否めないが、三宅一生の構造主義的表現主義を継承する幾人かに加え、トーキョーストリートの‘ユーティリティ’をモダンに構築する若手も一部で台頭している。欧米のコレクションシーンでは装飾的なマニエリスムが氾濫する中、果たして東京デザイナーたちの中から時代の文脈を先取りする‘モダニズムの旗手’が躍り出るのだろうか。

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 2016/06/09 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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