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ZARAが一人勝ち
 繊研新聞は毎年5月に全国の服飾専門学校学生を対象に行っている「ファッション意識調査」(回答1505人、うち女性79.5%)で「好きなブランド」「よく買うブランド」どちらも「ZARA」が初めて一位になったと報じていたが、『さもありなん』というのが私の実感だ。なぜなら、販売不振で大規模リストラを発表したギャップ社を筆頭に、ユニクロ(ファーストリテイリング社)は度重なる値上げによる客離れに苦しみ、H&Mも既存店の前年割れが続くというグローバルSPA総崩れの中、ZARA(インディテックス社)だけが快調に業績を伸ばしているからだ。
 グローバルSPA上位4社の直近決算期における売上前年比(現地通貨ベース)はギャップ社の98、国内ユニクロの109、H&M社の111に対してインディテックス社は115と抜きん出、既存店売上でもギャップ社96.0、H&M社99.0(推計)、国内ユニクロ106.2、インディテックス社108.5と同様な格差が見られる。営業利益もギャップ社が26.8%減、H&M社が5.3%増に対してインディテックス社は国内ユニクロと並んで15%増、営業利益率はギャップ社の9.6%、国内ユニクロの10.3%、H&M社の14.9%に対してインディテックス社は17.6%と抜けて高い。直近3〜5月単純平均の既存店売上前年比もギャップ社の93.7、H&M社の94.0(推計)、国内ユニクロの102.3に対してZARAは109.5(日本国内推計)と突出している。
 ZARA一人勝ちの理由は根源的な要因と近年の戦略的要因の両面が指摘される。根源的要因とは『ZARAはファストファッションではなくコレクションブランドだ』という一面の事実だ。ZARAのMDは欧州主要メゾンの素材開発と並行するテキスタイルの先行調達とその自社内染色整理によるトレンド対応を基本に週サイクル(デリバリーは週2回)で新鮮企画を投入するもので、デザインと面はファストでもテキスタイルは先行開発の‘コレクション’なのだ。ゆえにZARAの店頭はH&Mのような乱雑なVMDにならずテキスタイルと色柄のストーリーが通底する。
 近年の戦略的要因とはインディテックス社独自のグローバル直流ロジスティクス体制(本社DCを調達と出荷の双方向物流ハブとし世界各消費地にDCを持たない)をECの急拡大に対応してローカル交流ロジスティクス体制(世界の各消費地にECと店舗に補給するDCを置く)に切り替えた事で、欧州ではほぼ完了して日本でも昨年、DCを設けている。生産地DC軸直流ロジスティクス体制を採るユニクロはこの戦略転換が遅れ、ようやく今秋から第一弾の有明DCが稼働するという段階だ。
 この戦略転換が奏功してインディテックス社の既存店売上が上向いた一方でH&M社は伸び悩み、両者の商品回転と営業利益率の格差も開いた。ユニクロこそインディテックスを追って戦略転換を急ぎEC比率も5%台半ば(グローバルでは6%台半ば)に上昇しているが、13年からECを始めて日本では今春立ち上げたばかりのH&M社などまだ数字になっていない。
 経済が新興国主導から先進国主導に回帰する今日、ファストファッションの時代は過ぎ去り、コレクションMDとオムニチャネルへの対応次第でグローバルSPAの業績にも格差が開きつつある。その両面の勝ち組としてZARA(インディテックス社)が突出して来たと見るべきだろう。



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 2016/06/22 09:52  この記事のURL  /  コメント(0)

二重課金は無理!
 ブランド(テナント)側のオムニチャネル販売が加速する中、それを規制するのか容認するのか課金するのか、駅ビルやSC、百貨店など館側の対応が問われている。
 ブランド側のオムニチャネル販売にはECサイトやHP、SNSから店舗へ送客するウェブルーミング、店舗からECサイトへ送客するショールーミングがあるが、SNSの氾濫やネットマーケティングの進化、モバイルショッピングのメジャー化やID決済の普及で両方向とも加速度的に広がっている。ショールーミングが先行したがオムニチャネル化でウェブルーミングが凌駕し、ID決済の普及でショールーミングが押し戻すといった日進月歩の情況で、顧客のオムニチャネル利便という‘錦旗’に抗って館側が損得を主張する段階ではなくなった
 誰もがスマホを持つ今日ではブランド側のオムニチャネル販売を規制すれば利便を損なって顧客を遠ざけるだけだから、館側も積極的に支援協力するスタンスに変わらざるを得ない。結局はブランド側のEC送客に対して課金するか否か、するならどう課金するかという課題に絞られる。ここで出て来るのが‘二重課金’の問題だ。
 そもそも顧客が自分のスマホからECへアクセスするのは規制も課金も不可能だから、ブランド側が売場に備えた端末からECへ送客する場合に対象は限られる。オムニチャネル販売は双方向的で顧客利便至上だから欧米の商業施設デベのように規制も課金もしなければ問題は無いが、どうしても課金するという場合、ECモールからもリアルの館からも二重に課金されてはブランド側は採算が取れないから端末の持ち込みを止めてしまう。それでは顧客に不便を強いる事になり、顧客は館から遠ざかってしまう。
 ZOZOなどフルフィル型の人気ファッションモールの新規課金率は35%に高騰しており、楽天など総合モールは課金率は低くても自分で集客するマーケティングコストやフルフィルコストが必要でトータルコストは大差ない。それに社内コストを加えればリアルの館に近い経費率になるから、二重に課金されてはまったく商売にならない。ブランドの自社運営サイトに送客を限定して課金するにしても、売上規模にも拠るがモールサイトより6〜7ポイント低いだけだから、アフィリエイト程度の課金率でないと採算が取れない。
 唯一採算が見込めるのは館側がZOZOに匹敵するフルフィル型のファッションモールを確立してブランド店頭からの送客売上に課金する方式だが、ZOZO並みの魅力と効率を実現するのは一朝一夕には難しいし、1000億円を超える扱い高ゆえ16%弱と推察されるフルフィルコストには遠く及ぶまい。ZOZO並みに課金しないと館ECモールの採算は厳しいが、それでは18%前後とされる店頭売上に対する館の課金率に倍してしまう。ブランド側とすれば店頭売上に対する課金率を上回る課金率では館ECへの送客を避けて顧客のスマホに任せるから、館のECモールは成立しない。
 EC送客売上も店頭売上も同一の課金率にするのが着地点と考えられるが、館のフルフィル型ECモールが18%程度の課金率で採算が取れるとは到底思えない。ならば商業施設デベや百貨店はオムニチャネル販売から脱落し、欧米の商業施設のようにブランドに任せて容認するしかなくなる。課金率10%までのアフィリエイト型キュレーションモールが現実的な帰結ではないか。


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 2016/06/21 09:50  この記事のURL  /  コメント(0)

直買い付け品には気をつけよう
 欧米の展示会シーズンが始まると買い付けや視察に行っていた往時を思い出す。そんな玄人としてのバイイングの記憶と消費者としてのショッピング体験がクロスする事が偶さか在る。
 百貨店のインポート平場などで‘直買い付け品’というのが目に留まる事があるが、イタリー物やフランス物にしてはお値頃感があるので、つい手を出してしまい、結構な割合で後悔する。インポーター物に較べればお買い得と錯覚しがちだが、手頃感と裏腹の難点が隠れている事があるのだ。
 グローバルな知名度がある欧米ブランドはジャパン社や独占契約したインポーターがディストリビューション(流通管理)を担うが、グローバル展開する体制や知名度のないローカルブランドは合同展やショールームでのスポット買い付けに依存する事が多い。百貨店やセレクトショップの‘直買い付け品’は、そのスポット買い付けに拠るものと推察される。
 スポット買い付けには、はっきりメリットとデメリットがある。メリットはジャパン社も独占ディストリビューターも流通を仕切っていないから自由に価格を設定出来るしテリトリーも制限されない事で、店間移動も売価変更も自在だから消化も図り易い。デメリットも相応に在り、知名度がないから価格が通り難く、品質や仕様に難点があっても責任を転嫁する相手が存在しない(インポーター物なら即、転嫁出来るが小売店の‘責任’って何なの?)。
 欧米ブランドを買い付けるには『責務と権利の一致』というルールが在り、品番毎の発注量や年間の取引額が権利にスライドする。スポット買い付けもそのルールの外に在る訳ではなく、一定量以上を発注しないと‘指定アソート’(色・サイズの数量構成)を守ってもらえない。指定アソート臨界は超えても‘別注ロット’(ミニマム生産ロット)に達しないとジャパンフィットに仕様を変えてもらえないから、身幅で合わせると異様に袖丈や着丈が長くなったりする。最低取引額の約束と引き換えに独占販売権を確保しているインポーター物ならたいがいジャパンフィットに別注されているが、小売店の‘直買い付け品’の多くはジャパンフィットになっていない。
 加えて、インポーター物にはシビアな品質検査を要求する百貨店も自社バイヤーの‘直買い付け品’には自主管理で済ませるケースがあるのか、ボタンが取れたり色落ちしたり生地が割けたりのトラブルも結構多い。『直買い付け品には気をつけよう』とアドバイスする所以である。

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 2016/06/20 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

近未来の幻想
 202X年、衣料・服飾品の店頭販売は1)「販売労働者最低賃金法」の施行、2)リサイクル流通の一般化、で限定されたものになり、ファッション店が溢れていた2010年代とは隔世の感がある。販売労働者に適法な賃金が払えず商品がリサイクルに回らないでゴミになってしまうファストファッションなど低価格品店は、あれほど多数あったのに今やほぼ消滅してしまった。店頭に並ぶのは販売労働者に高給が払え商品のリサイクル流通性が高いブランド商品や工場直のファクトリー銘柄品ばかりだが、「販売労働者最低賃金法」に抵触しないECでは低価格品もまだ流通しているらしい。
 とは言え、少子高齢化が進行して経済が萎縮し続ける日本では『作り手のはっきりした良品を長く使おう』『無駄とゴミに繋がる使い捨ては止めよう』という消費スタイルが定着し、小学校の道徳の時間でも『よいものを大切に使いましょう』と教育されているので、ECで安物を買う人もずいぶん減っているそうだ。外資のファストファッション店や怪しげなODMに依存する売れ筋追いの店は悉く撤退し、郊外SCの多くは空き家だらけになって行き詰まり、廃墟になったり公共施設や介護関係に転用されたり、往時の繁栄が嘘のようだ。替わって増えたのが工場銘柄店とリフォーム店で、工場や職人の銘の入った逸品を幾度も直して使い続ける人が多くなった。
 海の向こうでもファストファッションのチェーンやトレンドを追ったメゾンが次々に潰れ、パリやミラノ、NYのランウェイも開催されなくなって久しい(合同展示会は盛んです)。クリエイターは皆、産地の工場に入り込んで職人とのコラボ銘柄品の開発に没頭し、ネットで作品をオークション販売して食いつないでいるそうだ・・・・・・

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 2016/06/17 10:03  この記事のURL  /  コメント(0)

ブランドは顧客とともに
 このほど完成した当社の「16SSブランドツリー」(レディス/メンズ計3800ブランド収録)を一覧するとファッションブランドのライフサイクルが見て取れる。新ブランドは投入数が限られる上に3〜4年で消えて行くものも多く、どのゾーンでも前世紀から続くブランドが大半で新陳代謝は極めて限られる。そんな情況になる要因をどう見ればよいのだろうか。
 最大の要因は少子高齢化と経済の停滞によるファッション消費の衰退で、新ブランドの離陸率が極めて低い事だろう。近年は店舗投資も嵩み不動産費や在庫の負担も大きくなっているから、アパレル企業の収益力低下もあって巨額の開発投資が水の泡と消えるリスクを負担し切れなくなっている。ゆえに、新ブランドと言っても既存ブランドの複合や編集、雑貨や飲食の付加といった‘派生ブランド’が主流になり、顧客の付いた既存ブランドの延命に注力する事になる。
 既存ブランドの‘延命’で問われるのが『顧客とともに歳を取るか、若い顧客を取り込むか』の選択だ。長く続いているブランドでは‘若返り’が必定とされるようだが、下手にMDを若返らせては既存顧客の離反を招きかねないし、顧客とともに歳を重ねてはいずれ尻窄みになってしまう。難しい選択だが、長く続いて収益も保っているブランドに共通するのは『顧客とともに歳を取る』という選択で、80年代の若者向けDCブランドが30数年を経てシニアブランドに成熟して続いている例も少なくない。
 新規顧客の開拓コストは既存顧客の維持コストより桁違いに嵩み、長く続く顧客のブランド・ロイヤルティは想像以上に強いから、下手に若向けに振って既存顧客の離反を招くリスクは極めて大きい。それでも30年以上も続けば顧客の多くはお洒落に熱意を失う高齢(そうならない方もいるが)に達してしまうから、そうなる前に何らかの‘若返り’を図る必要がある。ブランド本体を若返らせるのはリスクが大きいから若向けのセカンドラインなどを投入する事になるが、選択枝は二つに分かれる。
 ひとつは既存ブランドとは別の販路や売場で新たな顧客を開拓する選択、ひとつは既存ブランドと同じ売場で既存顧客の関連客を取り込む選択で、前者では‘半世代’若い新規客を狙うが、後者では‘一世代’若い子世代を取り込む親子(母娘)訴求の成功例が多い。
 ブランド年齢がそこまでは至らない間はリスクを冒して若返るより『顧客とともに歳を取る』選択が正解で、顧客の年齢上昇とともにデリケートにパターンやフィットに手を加えTPOの変化に対応すべきだ。ブランド名を挙げる事は憚られるが、一時、人気を博したブランドが潮が引くように凋落したケースは皆、顧客とともに歳を取らず同じ年頃の入れ替わり客を追って飽きられた結果と思われる。50年に渡って業界の盛衰を見て来た識者の‘知見’と受け取ってもらいたい。

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 2016/06/16 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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