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新ブランドの傾向と注目ブランド
 本日午後に開催する6月度SPAC研究会では『有望マーケットポジションとパワーコンセプトを探る』をテーマに、当社が25年に渡って毎シーズン制作している「ブランドツリー」(レディス/メンズ)の16SS版とそのゾーン/タイプ/ブランド別の直近販売成績を検証し、需給ギャップを判定して今後の有望ポジションを提示する。
 衣料消費の低迷を反映してか新ブランドは極めて限られ、廃止/休止されるブランドの方がはるかに多い。百貨店など大半は前世紀に開発されたブランドばかりで、駅ビルやファッションビルの新ブランドも多くは既存ブランドの複合や編集、雑貨や飲食の付加に留まり、MDの同質化もあって鮮度があるとは言い難い。限られた新ブランドはオムニチャネル化を反映してかECブランドの直販店、‘クール・ジャパン’を反映してかファクトリーブランドの直販店やドメスティックブランドのセレクト、ヤングのネオギャル系やジェンダーレス/ユニセックス系、アスレジャーなどスポーツコンセプト系、シャツやパンツなど単品コンセプト系が目立ったが、不振が深まる百貨店やSCではほぼ皆無だった。
 そんな中、SPACメンバーが注目するブランド/業態では13業態が挙げられたマッシュグループが3回連続して断トツの最多票を集め、業績V字回復のアダストリア、ファーストリテイリング、ユナイテッドアローズ、トウキョウベース、ストライプインターナショナル、トゥモローランド、サザビー、パルグループ、ウィゴーまでがベスト10だった。その一方、13年11月の調査まではベスト10にアーバンアウトフィッターズ、Jクルー、ギャップ、H&Mが入っていた外資SPAは14年10月の調査以来3回連続して皆無で、新たに上陸した業態にも票が入らず、トップショップやオールドネイビーの撤退もあって日本市場のローカル回帰を実感させた。一時は注目された郊外SCのファミリー業態も今回はまったく票が入らなかった。
 このような情勢やオムニチャネル化の急進にともなうFDORの台頭を受け、SPACではブランド/業態開発の根本的スタンスをマーケットインからプロダクトアウトへ転換するよう提言する。その要点は1)供給の逆臨界点に拠るブランド神話の創成、2)生産効率・流通効率至上の単品FDORだ。詳しくは会場でお話ししたい。

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 2016/06/29 09:19  この記事のURL  /  コメント(0)

単品ブランドの勧め
 ファッションブランドたるものコーディネイトを提案しなければならないと思い込む人が多いのか、世に溢れるブランドの大半はコーディネイトブランドで、今や単品ブランドの方が珍しい。ファッション化以前の60年代まではニット/カットやブラウス、パンツやスカート、ドレスやコートなど単品ブランドの方が大勢で、80年代までは百貨店に‘単品平場’というのが在って「○○ブラウス」とか「○○ドレス」といったアパレルメーカーも健在だった。そんな単品ブランド達が次々と消えて行ったのはDCブランドブーム、インポートブランドブームを経てバブルが崩壊した頃からだったと記憶している。
 業界の誰もがコーディネイトを志向する昨今だが、果たしてファッションブランドが皆、コーディネイトである必要があるのだろうか
 コーディネイトを訴求すればブランドイメージを訴求し易く客単価も売上も増えるという理屈だが、逆に見ればブランドイメージが拡散しがちで在庫が積み上がるリスクも大きい。毎シーズン数百も展開されるランウェイを見れば明らかだが、コレクションを構成するスタイリングとMDを組めるデザイナーは数十人に一人もいない。新米デザイナーのコレクションなど主力単品の完成度も疑わしく、ランウェイを構成する力量など到底、期待出来ない。
 スタイリング提案を着回しとMDに展開するだけでも人並みはずれた技量を要するのに、起点となるスタイリング自体が魅力的で、かつMD展開したアイテムがそこそこ消化する商品力まで期待するとなると、百人千人に一人の英才か天才にしか敵わぬ神業だ。そんな大穴を狙って在庫の山を作るより、得意アイテムに集中して手堅く稼ぐ方が賢明ではないか。
 コーディネイトにはもう一つ致命的な欠陥がある。それは多アイテム展開すればするほど物づくりの現場から離れてしまう事だ。かつての単品アパレルはアイテムに特化した工場と組んで年間の稼働率を確保し、ともにパターンや縫製仕様のブラッシュアップに励んでいた。当然、単品の完成度は高くなるが、コーディネイトブランドが主流になるに連れ単品ブランドの付加価値は削がれ、工場はスポット発注に振り回され稼働率も工賃も維持出来なくなっていった。その一方、欧州の単品工場は自らブランドを立ち上げて販路を開拓し、今日のファクトリーブランドに発展して行った。自らの技で稼働率を維持する単品MDを組める事が大前提であったに違いない。
 完成度と工場稼働率、生産効率と流通効率を考えればコーディネイトブランドより単品ブランドが優位である事は疑う余地もないが、コーディネイトブランドの箱やコーナーが並ぶ店舗流通では単品ブランドの販路は限られていた。それが近年のEC拡大とオムニチャネル化の中、パーソナルなレコメンドやキュレーション編集が高度化するに連れコーディネイトブランドである必要が薄れ、単品ブランドが再評価されだした。
 工場の技を活かし稼働率を高めるには単品ブランドの直販がベストで、ファクトリーブランドの今日的進化系であるFDOR(FactoryDirect OmniChannel Retailer)の主力となりつつある。そろそろコーディネイト至上という錯覚から醒めてもよいのではないか。

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 2016/06/28 09:15  この記事のURL  /  コメント(0)

悲報が重なった金曜日
 先週金曜日は大方の予想を裏切る「ブラックフライデー」となって真っ青になる関係者も多く、当日夕刻の「販売データ交換会」も緊急会議招集で百貨店全社が欠席となってしまった。頼みのインバウンドも失速して売上が落ち込む中、さらなる冷水に対策を急がざるを得ないのだろうが、泥縄な対策催事などで振り回される納入業者側は踏んだり蹴ったりになりかねない。
 皆が浮き足立つ中、さらなる悲報が届いた。三陽商会が業績の悪化から再び希望退職を募るという報道だった。
 昨春夏でバーバリー社とのライセンス契約が終了した後、「バーバリー」に替えて「マッキントッシュ ロンドン」、「バーバリーブラックレーベル」に替えて「ブラックレーベル・クレストブリッジ」、「バーバリーブルーレーベル」に替えて「ブルーレーベル・クレストブリッジ」を立ち上げ、必死の広告・販売活動を続けて来たが予算には届かず、16年1〜6月期の連結業績を下方修正するに至った。売上は従来予想から35億円引き下げて前年同期比39%減の335億円、営業損益も従来予想から33億円引き下げて前年同期の77億円の黒字から55億円の赤字に転落する。実に半期で132億円の大減益だから‘想定’の域を超え、再度の希望退職募集となったと推察される。希望退職はバーバリー社との契約継続を最終的に断念した2013年の230人募集(応募276人)に匹敵するもので、全社員1350名の18.5%に相当する250人を募集する。
 「バーバリー」後継ブランドの販売不振については「販売データ交換会」で各百貨店から毎月のように報告がありコートシーズンなど悲鳴に近い数字が挙げられていたから、こうなる事は業界関係者の誰もが薄々予感していたが、それだけに業界紙も取り上げる事を避けて来た。ストレートに書く事の多い私でさえ窮鳥を撃つ事が憚られ、控えめに苦戦を伝えて来期に期待すると濁すに留めて来た。
 公表されたから出してしまうが、各百貨店における後継ブランドの売上はいずれも「バーバリー」の4〜5掛けで、婦人服でもダメージが大きかったが占拠率の高かった百貨店紳士服では5%、紳士服プレタでは10%以上、部門売上を引き下げるほどだったと聞く。知名度の圧倒的格差に加えて「バーバリー」顧客との嗜好の差、長年のMD展開の経験値の差は大きく、前年は‘ロスト・バーバリー’の駆け込み需要も店舗によって二割前後も乗っていたから、これでも初年度としては大健闘した方だと見る。「マッキントッシュ ロンドン」については「バーバリー」ほど知名度がないのに割高な価格設定にした事、「ブラックレーベル・クレストブリッジ」については三原康裕のデザイン感覚が保守嗜好の強い「バーバリーブラックレーベル」顧客に受け入れられなかった事を指摘する業界関係者が多い。
 三陽商会は旧「バーバリー」中心に国内自社工場を残して来た例外的な大手アパレルであり、「百年コート」に象徴されるようにその縫製品質は極めて高い。かつて「アディダス」を失ったデサントのようにライセンスブランドに依存しなくてもやっていけたはずだが、あまりに「バーバリー」依存を引っ張り過ぎて自社ブランドの育成が遅れ、「バーバリー」後もライセンスの「マッキントッシュ」に替え、三原康裕に過度に期待するなど外部依存の戦略判断には疑問が残る。‘ジャパンメイド’‘ジャパンクオリティ’が再評価され三陽商会本来の開発力が期待される今、さらなるリストラで社内の開発力がこれ以上損なわれる事の無いよう祈りたい。

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 2016/06/27 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

服の価値とテキスタイルの価値
 洋服の価値はクリエイション半分、ユーティリティ半分だと思う。クリエイションとは創り手側が生む価値、ユーティリティとはコーディネイトや着こなし着崩しといった使い手側が生む価値だ。和服ではクリエイションのほとんどがテキスタイルだからクリエイション3割、ユーティリティ7割ぐらいのバランスだろうか。小袖と襦袢や半襟、帯や帯揚げの色柄合わせから帯の高さや多様な結び方、衣紋の抜き加減や合わせの深さなど、着こなし着崩しで粋や意気を競う様は正にストリートカルチャーだ。個人的には鈴木春信が描く小股の切れ上がった0脚スレンダーなユニセックススタイルがいっち秀逸だと思う。
 洋服のクリエイションはテキスタイルとアパレルデザインが半ばすると思うが、繊研新聞が毎年調査している服飾専門学校卒業予定者に対する「就職意識調査」の今年度結果に拠れば、「活躍したい業種」でアパレル関連が計1400票以上を集めたのにテキスタイル関連は60票に留まり、「希望する職種」でもアパレルデザイナーの540票に対してテキスタイルデザイナーは「その他」95票の何処かに埋もれる有様で、服飾専門学校生には『クリエイションにおいてアパレルデザインとテキスタイルデザインは対等』という認識はほとんどないようだ。テキスタイルデザイナーは多摩美、武蔵美、造形大など美大系が多いから服飾専門学校側も領域外と見ているのかも知れないが、テキスタイルのクリエイションを欠いてはアパレルのクリエイションは卓上のお遊戯に終わってしまう。学校側も学生側も認識を改めるべきだろう。
 テキスタイルの軽視は専門学校生や駆け出しデザイナーの‘試作品’にも顕著に見られる。先日、ヒカリエホールのJAFICのイベントで見た‘試作品’群もニットを除けばがっかりするものだった。デザインに注力しても素材が凡庸で、デザインと素材の意匠、物性、風合いが相乗していない。なんて平凡なテキスタイルを使っているのだろうと訝ってしまうが、聞けば日暮里のアウトレットや街の生地店で買っていると答える若者がほとんどだ。悪いが、それでは初めからクリエイションの半分は捨てている。デッドストック調やリメイク風ならともかく、クリエイティブであろうとするならテキスタイルも相応にクリエイティブでないと意図する効果は得られないし、意匠や風合いに凝った生地に出逢えば創作意欲も触発されるというものだ。
 ランウェイやアパレルの展示会に潜り込む服飾系の学生は多いが、テキスタイル展を覗く学生は限られる。ましてやプロのデザイナーのように産地の工場まで入り込む学生がどれほど居るのだろうか(プロのデザイナーも行かなくなったが)。そこまで行かなくても、開発力のあるテキスタイル・コンバーターの展示会に出入りして感性を磨き、多少のお手伝いを引き受けてシーズン末期の残端切れを下げ渡してもらえるようになれば、もっとクリエイティブな洋服が作れるかも知れない。おせっかいかも知れないが、私が服飾系の若者ならそうする。テキスタイル業界側ももっと積極的に学生や駆け出しのデザイナーに門戸を開き、テキスタイル・クリエイションの価値と醍醐味を伝える努力をするべきだ。

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 2016/06/24 09:30  この記事のURL  /  コメント(0)

郊外店の方が儲かる?
 日経の小さなコラムで青山理 青山商事社長の『厳しいと思われがちな郊外(ロードサイド)店の方が利益率が高い』という発言が紹介されていたが、テナント出店チェーンの経営者はこの小さなコラムを見落としてはいけない。何故なら、それは商業施設テナント店と較べてのリアルな実感だからだ。
 郊外ロードサイド店の全盛期はSC開発規制が緩和される以前の80年代だったが、郊外に大型商業施設が乱立する今日でも販売効率こそ落ちたものの一定の収益性を保っている。青山商事に限らずアオキHDのファッション事業も長きに渡って安定した収益を計上している。
 郊外ロードサイド店の何処が商業施設テナント店と較べて有利か。第一に挙げられるのが『営業の自由』で、営業時間や休店日は自店の都合で決められるし、ECへの送客はもちろんEC商品の店舗受け取りや店在庫からの発送も誰にも規制されず課金もされず自由に出来る。その分、メンテやセキュリティの負担は生じるが、営業の自由には代え難い。
 第二に挙げられるべきが『営業継続の保証』で、かつてのリースバック方式でも今日主流の定期借地方式でも、自分から退店しない限り20年前後(契約に拠って15〜30年)の営業継続が保証される。その替わり途中退店のペナルティはリースバック方式では残存保証金と敷金の全額放棄、定期借地方式では敷金の放棄と除却損や取り壊し費用の発生など極めて大きく、当初の業態で採算が取れなくなっても契約を継続出来るようFCなどで代替業態を用意したり、それも難しい場合は代替テナントをサブリースするなどの工夫が求められる。それでも4〜6年の定借期間終了で追い出され、巨額の除却損や現状回復費用でそれまでの利益が帳消しになるより遥かにましなのだ
 『郊外(ロードサイド)店の方が利益率が高い』という青山社長の発言の真意は実にここにある。出店は単年度の営業損益だけでなく初期投資から撤退の費用まで営業期間通算の投資収益率で考えないと企業の収益に寄与しない、という経営見識からの発言なのだ。
 勢いに乗って大量に出店したり販売不振や定借期間終了で大量に退店したりを繰り返すテナントチェーンの経営者は果たして青山社長のような投資見識をお持ちだろうか。年度の損益ではなく出店から退店までの通算損益と投資収益を計算すれば、商業施設への「定期借家契約出店」が如何に不利な投資であるか理解が及ぶのではないか。


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 2016/06/23 09:14  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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