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生産は先進国に回帰する?
 独アディダス社はドイツ南部アンスバッハに新設する「スピードファクトリー」で17年からロボットによる靴の生産を始めるそうだ。同社は93年に国内生産から撤退してアジアでの外注生産に転じており、四半世紀ぶりの国内回帰となる。
 背景はアジアの経済発展による生産コストの高騰と先進国市場における需給ギャップで、先進国でのロボット生産でコストを削減し消費地のニーズにタイムリーに応えるためと推察される。アディダス社は先進国でのロボット生産は部分的なものでアジアの下請工場に直ちに替わるものではないとしているが米国でもロボット生産を計画しており、大量生産のベーシックラインはアジアでの労働集約的計画生産、中少量生産のデザインラインは消費地での機動的ロボット生産、と使い分けるものと推察される。ナイキにも同様な動きが見られるから、グローバルなスポーツブランドに共通する戦略転換なのだろう。
 靴に限らず、台湾のフォックスコン(シャープを買収した世界最大のEMSホンハイ)もロボットの大量導入で生産性の飛躍的向上を計画しているし、日本の島精機も独自技術のホールガーメントニット自動生産システムで国内回帰を目論んでいる。アパレル生産が空洞化し果てたとは言え我が国の織機や編み機、縫製ミシンなど繊維機械産業は輸出産業として健在で、労働集約産業と言われて低賃金国へ移転が進んだアパレル生産も技術革新による高速自動生産で国内回帰が可能だと気焔を揚げている。
 世界の製造業は東西冷戦が終結した90年以降、旧社会主義圏を取り込んでグローバル水平分業が急進し、日本の繊維産業に限らず先進国の労働集約産業は悉く空洞化したが、近年の新興国賃金の高騰とIoTなど技術革新の急進で労働集約産業も先進国回帰が可能となる一方、遠く離れた新興国での計画生産と先進国消費地での販売消化とのギャップが経営を圧迫するに及び、生産の先進国回帰が一気に進み始めたと言う訳だ。
 とは言え我が国のアパレル製造業は長年の業績萎縮で資金も乏しく、大規模な設備投資に踏み切れる事業者は限られる。生産の海外移転とともに輸出で業績を伸ばして来た繊維機械産業が本気で国内製造事業者への啓蒙と与信に踏み切るのか、行政の後押しも含めて動向が注視される。

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 2016/05/31 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

フラッシュセールサイトは行き詰まる!
 アパログで平山幸江さんが『泡と消えつつあるフラッシュセールビジネスの行方』とレポートしていたが、私は必然の結末だと思う。なぜなら、かつてアウトレットストアのビジネスも一定規模で行き詰まり、オフプライスストアへと変貌した者が勝ち残ったという歴史が在ったからだ。
 平山さんに拠ると08年から急成長したフラッシュセールビジネスの大半が行き詰まって売却されたり事業整理を強いられているそうだが、その要因を1)米国景気の回復で魅力的な処分在庫の調達が難しくなった、2)TJマックスや百貨店のアウトレット業態に顧客(恐らくは調達先も)を奪われた、と指摘しておられるが、その両者は表裏一体の‘タイトロープ’だったに違いない。
 アウトレットビジネスの成否は販売よりも調達に在り、魅力的で大幅な値引き訴求が可能な商材が安定的に調達出来るか否かが成否を分ける。ブランドビジネス側としては処分品が安定的に発生しては商売にならないから、生産量を絞ったりプロパー販売率を高めたりして処分に回る量を極小化しようと努力する。そんな努力に消費景気の浮揚が加われば処分品の供給が細るのは必然で、フラッシュセールサイトの多くは急拡大した規模に見合う処分品の供給が得られなくなって壁に当たったと思われる。
 その一方、多数の店舗を抱えて処分品だけでは品揃えを回せる訳がない大手オフプライスストア(TJマックスはその筆頭)、プロパー店舗を上回る処分店(‘ラック’などと呼ばれる)を展開して自社の処分品だけで回せるはずもない百貨店は専用開発商品の調達体制を確立しており、ブランド業界と結託して計画的に処分品?を品揃えしている。でないと多数のアウトレット店舗を維持運営出来るはずがないのは業界のジョーシキだったが、フラッシュセールサイトのベンチャー経営者はそんなジョーシキを知らなかったか、目の前の売れ行きに目が眩んで先々のリスクが見えなくなったのだろう。
 もっとも、招待を建前に期間限定で早い者勝ちのバーゲンハンディングを煽るフラッシュセールサイトが計画調達の疑似処分品を安定供給しては早い者勝ちを煽る仕掛けが成り立たず、どっちへ行っても行き詰まったと思われる。結局はリーマンショック後の消費冷却で供給過剰となったブランド業界の混乱が生んだ一時の徒花だったのだろう。ならば中国人好みに堕落した欧米メゾンブランドやファストファッションも大同小異な運命を辿るのかも知れない。


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 2016/05/30 10:11  この記事のURL  /  コメント(0)

やっぱ棚ぼたでしたね!
 国内消費が低迷する中、降って湧いたような‘爆買い’に前のめる百貨店などギョーカイの熱狂ぶりに、香港や韓国の満ち引きの経緯を知るだけに『訪日外国人消費は水物だから‘棚ぼた’と見なければいけない』と幾度も兆候データを添えて警告して来たが、とうとう引き潮の刻が来てしまった。
 百貨店協会が発表した4月の訪日外国人(免税)売上は前年比9.3%減と3年3ヶ月ぶりにマイナスに転じた。インバウンド消費の先行指標たる銀座地区百貨店の売上も急速に陰って松屋も三越も館売上総額まで大幅に前年を割り込み(松屋銀座店93.0、三越銀座店93.7)、5月前半段階の両店平均インバウンド比率はピークの15年8月の31%から21%まで落ち込んでいる。業界注目のうちに開業した空港型免税店両店(三越8FのJDFと銀座東急のロッテ)も閑散として、予算を大きく下回っていると伝え聞く。
 化粧品などの日用品(「消耗品」)はまだ伸びているがブランド雑貨など高額品(「一般物品」)は既に3月から前年を割り込んで4月は77.5まで落ちており、高級ブランドの売上は耳を疑うほど極端に落ち込んでいる。中国などアジアからの訪日観光客が団体旅行から個人旅行に転じ買物から観光へ支出が移る中、‘爆買い’は潮が引くように細って行くと腹をくくるしかない。
 インバウンド消費自体がアジアではほぼ3〜4年サイクルで人気国が移って行く経緯(香港⇒韓国⇒日本⇒?)がある事に加え、最大の買い手である中国人観光客が買物から観光へ、海外購入から国内購入や越境ECへと転じて行くのは避けられず、‘束の間の棚ぼた’だったと割り切るのが賢明だ。

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 2016/05/27 11:02  この記事のURL  /  コメント(0)

コンテンツよりプラットフォーム
 ユニーが「アピタ」や「ピアゴ」などのネーミングで展開しているGMSのうち東海地区以外の店舗の閉鎖を検討しているそうだ。GMS?はイオンリテールもイトーヨーカドーも長年に渡って苦戦が続いているが、ローカル地盤の「アピタ」や「イズミ」はまだ健闘して来たという印象(現実の既存店売上前年比は大差ない)があった。 
 ナショナルなGMSよりローカルなGMSの方が健闘しているのは、1)食品や日用雑貨など足下狙いの‘最寄り品’比率が高く、2)食料品中心に地産地消なローカル対応がきめ細かく、3)ファッション衣料など広域を狙う‘買い回り品’比率が低い、ゆえに足下占拠率も販売効率も消化回転も相対的に高いと推察される。逆に言えば、ナショナルなGMSは分不相応に広域を狙ったファッション衣料などの比率が高く、効率の低い大型の売場を抱えて採算性が極めて低い。
 ユニーは「アピタ」、イズミは「ゆめタウン」のネーミングでGMS核の商業施設を布陣しているが、徳島や高松など大型の「ゆめタウン」を除けば何れも足下型のCSCで、衣料・服飾などの自前売場はコンパクトに抑えてテナント専門店のバラエティを重視している。それに較べれば「イオンモール」のイオンスタイルストアは衣料・服飾などの自前売場が未だ巨大でテナント専門店のバラエティを損なっているし、「アリオ」のイトーヨーカドーは一部自前ユニットを専門店化してモールに組み込んでいるとは言え衣料・服飾売場はまだ健在で、グループの大型専門店を合わせればテナント専門店のバラエティが成り立たないほど大面積を占めている。
 ユニーやイズミに較べてイオンリテールやイトーヨーカドーの衣料・服飾売場が未だ大きいのは「自ら開発・調達するコンテンツ」に固執しているからで、ユニーやイズミは「足下型CSC」という流通プラットフォームの魅力を第一義に重視し自前調達のコンテンツにはさほど拘っていないという違いがあるのではなかろか。だとすれば、規模こそナショナルなGMSが勝っていても生存戦略ではローカルGMSの方が勝っている、という事になる。
 前世紀にカタログ通販で成功した大手通販企業が最先端のフルフィル体制を確立しながらECへの対応が遅れ、後発のECベンチャーにマーケットを奪われて業績が悪化したが、その主要因は自前のコンテンツに拘って必勝のフルフィル体制を活かせなかったというオープン・プラットフォーム戦略の欠如に在ったと総括される。ファッションECモールの覇者「スタートトゥデイ」にしても、自前コンテンツへの拘りを捨ててZOZOTOWNというオープン・プラットフォームビジネスに転じた事が驚異の成功をもたらした。
 ECと店舗がオムニチャネルに交錯して顧客利便と運営効率が競われる今日、自前コンテンツに固執してはプラットフォーム間競争から脱落してしまう。GMSの改革もそんな角度から見れば容易に答えが見えて来るのではないか。私は、GMSの生き残り策は近隣商圏のオムニチャネル利便にローカル対応するコーペラティブ(地域共生)型流通プラットフォームだと考えている。
※「GMS」ってギョーカイ用語も結構、怪しくて、発祥地の米国では19世紀のカタログ総合通販から店舗小売業に転じたシアーズやワードなど『自社開発商品による非食品総合小売業』と定義されるはずのものが、日本では『食品スーパーを核に衣や住まで問屋依存で品揃えを拡張した日用品総合小売業』に化けて久しいが、試行錯誤ばかりで一向に進化しないのは日米共通している。そんなGMSの歴史の中、欧米では70年代に‘カタログショールームストア’の大ブームが在った事を改革のヒントにして欲しい。いまなら『注文・受け取り・返品・支払い・設置設定・宅配ご用聞きラスト・ワンマイル利便のオムニチャネル・オープンプラットフォーム総合拠点』と定義されるのだろう。

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 2016/05/26 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

SPAからFDORへ
 かつては効率的な流通システムとして注目されたSPA(店舗型ブランド直販事業)もオーバーストアや運営コストとロスの肥大によって必ずしもお買い得な流通システムではなくなり、中には極端な低コスト調達の‘紛い物’を二重価格で上手に売りつけたり極端な値引き販売でファストな消化を図る乱暴なビジネスモデルも横行するに至り、価値と価格に対するマーケットの信頼が失われて値崩れが常態化し、事業に関わる人々の生活まで危うくなって来たのが昨今の現実だ。
 かつては80%以上だった歩留まり率(当初価格投入総額に対する実現売上総額の比率)も多くの企業で70〜75%に下がり、グローバルSPAの中には値引き販売が常態化して60%前後と推計される企業さえ在る。利益を確保するにはその分、調達原価率を切り下げざるを得ず、年々、原価率が切り下げられて‘お買い得感’と‘価格信頼感’が損なわれて行った。
 かつては33〜35%だった百貨店流通SPAの原価率が23〜25%に切り下げられ、00年当時は35〜38%だった駅ビル/SC流通SPAの原価率も29〜33%に切り下げられ、中には20%を切る原価率で値引き販売を常態化する業者まで闊歩し、‘低価格SPAの覇者’とまで言われたユニクロさえ高コストな海外展開に偏って低コストなECの拡大が遅れ値上げを繰り返して顧客を失望させるに及び、もはや小手先のMDや編集的な業態開発では壁を超えられないところまで来てしまった。
 その一方、高コストで在庫が偏在する店舗販売を最小限に抑え低コストで在庫回転も速いECを軸に工場直の流通体制を確立して画期的に‘価値ある物’を顧客に提供せんとするオムニチャネル直販ベンチャー(「FDOR」FactoryDirect OmniChannel Retailerは私の造語です)が次々に台頭し、少なからぬスタートアップ企業が急速に売上を伸ばす今、ファッション関連の流通システムは抜本から革命の刻を迎えている。
 そんなSPA業界がマーケットの支持を回復するには‘商物一体’という店舗販売の呪縛を脱しOEM/ODMの誘惑を断って工場直調達に徹しFDORへと変態するしかないが、どう訴えても業界の反応は鈍い。このままではブランド廃止や大量退店が広がって業界は断末魔を迎え、多くの関係者が路頭に迷う事になる。ならばFDORベンチャーの台頭という現実を突きつけて覚醒を強いるしかないだろう。

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 2016/05/25 09:21  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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