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SNS的キュレーションストア
 「ビームスジャパン」が4月28日に新宿、「H BEAUTY&YOUTH」が翌29日、青山にオープンしたが、方や新宿発のジャパンカルチャー発信、方や青山発のインターナショナルフュージョンという違いはあっても、大手セレクト両社がほぼ同時にキュレーション型の大型コンセプトストアを世に問うた事は極めて興味深い。大手セレクトは近年、売上のスケールを追って平板なSPAに流れセレクト本来の尖った提案力を失いつつ在ったが、調達コストの高騰で価値と価格の折り合いが破綻するに及んでキュレーション型セレクトストアという原点回帰的な回答に至ったと思われる。
 原点回帰と言ってもセレクト発祥の90年代とはマーケットも競争環境も一変しており、グローバル化/ボーダレス化/オムニチャネル化/SNS化が著しい。国内外のブランドはもちろん新品とデッドストックやユーズド、工業製品と工芸品や‘作品’が交錯し、B(業界)とC(ユーザー)、M(男)とF(女)の際も崩れ、SNSがBとCの情報格差を突き崩してファッションシステムを揺るがし、越境ECがブランドのローカル・マーケティングを脅かし、ウェブでは望むと望まざるに関わらず瞬時パーソナルにレコメンドされる今日、かつてのセレクトショップは編集陳列の物理的な限界を超えるオムニチャネルなSNS的キュレーションストアに進化変態せざるを得ない。
 両店が‘物理的な限界’を超えるキュレーションストアと言い得るほどオムニチャネルなAIを装備しているとは見えないが、コンセプチュアルでボーダレスな品揃えをスタッフと顧客のリレーションでパーソナルにレコメンドする「ヒューマンリレーション型キュレーションストア」と位置付けて良いだろう。
 オムニチャネルなAIキュレーションには遠いとは言え、SPA化して存在意義を問われるに至った大手セレクトがSNS的キュレーションストアという回答を具現化した記念碑的コンセプトストアとして歴史に残るに違いない。


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 2016/04/29 17:30  この記事のURL  /  コメント(0)

コーペティションとコーペラション
 休日に家に居ると黒猫さんや佐川さん、日本郵便・・・と次々に通販商品が届いて忙しないし、平日は帰宅すると不在票が入っていて急いで再配達をお願いする事も度々だ。受け取る方もともかく配達する方の手間は想像がつくが(横田増生氏の「仁義なき宅配」はリアルでしたよ!)、不在がちなお宅が多いと再配達も大変だろうと思う。都市の住宅地ならともかく郊外の団地や過疎地では負担が大きく、各社がばらばらに宅配しないで地域毎にまとめて分担すれば格段に効率化できるのにと思っていたら、今朝の日経は多摩ニュータウンでヤマトが佐川急便と日本郵便の荷物もまとめて届けるサービスを始めると報じていた。
 これは多摩ニュータウンでの住民向け生活支援サービスの一環で、団地に生活支援サービス拠点の「ネコサポ」を開設して買物代行や家事支援のサービスを提供する。買物代行はウェブサイトや電話、拠点のカウンターで注文を受けて近隣の生協「コープみらい」で一括購入して各家庭まで宅配するもので、今後は近隣のホームセンターやドラッグストアにも拡げるそうだ。
 この取り組みは二つの示唆を含んでいる。ひとつは競争する宅配業者が地域毎にまとめて分担するという‘コーペティション’であり、オムニチャネル時代のオープン・プラットフォーム戦略を象徴するものだ。もうひとつは地域の生活支援サービスを地域に拠点を持つ業者が集約しておこなう‘コーペラション’で、宅配業者のみならずオムニチャネルの奔流に晒される地域の商業施設が積極的に担うべきだと思う。
 商業施設はオーバーストアとECの拡大に圧されて‘物を売る場’から様々に楽しむ‘時間消費の場’へと志向しているが、そこには古典的な囲い込みのクローズド思考が通底している。地域顧客の期待に応えて永く繁栄して行くには排他的なクローズド思考を排し、顧客利便を最大化すべくEC業者や宅配業者はもちろん競争関係にある業者も含めて様々なサービスを集約して提供するオープン思考が不可欠だ。‘コーペティション’と‘コーペラション’こそ商業施設の未来を開く突破口なのではないか。

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 2016/04/28 09:53  この記事のURL  /  コメント(0)

ECの返品率はどこまで上がるの?
 毎年三月末のSPAC研究会はECと店舗を連携するオムニチャネル戦略をテーマに開催して来たが、そのコアな部分のブレイクスルーもともかく、ディティールでも幾つか気になる変化があった。そのひとつが返品率の増加で、前年の3.6%から4.6%と1.0ポイント上昇した。
 アパレル通販の返品率は欧米では20%(靴は30%)前後と言われるが、我が国では刻々と買い気を煽るTVショッピングは欧州並みでもカタログ通販で10%前後、ECでは3%前後と低率に収まって来た。その要因は欧米消費者に較べて日本の消費者は遠慮がちで返品を躊躇する人が多いからとされて来たが、その認識は間違っていると思う。大手カタログ通販業者こそ返品に寛容だが、多くのアパレルEC業者は顧客都合による返品を拒否して来たからだ。
 SPACメンバー自社サイトの平均返品率は2013年の2.6%から14年が3.1%、15年が3.6%、16年が4.6%とジリジリ上昇して来たが、この間に返品を容認するサイトの比率も57.5%から80.1%に拡大しており、平均返品率の上昇はそれを反映したものと推察される。事実、この間の最大返品率は8〜10%から動いておらず、返品を容認すれば最大10%まで上昇すると見るべきだ。
 それでも欧米に較べればまだ半分ではないかと思われるかも知れないが、『30日間返品サイズ交換・送料無料』を謳って急成長している靴のEC「ロコンド」では初期の20%弱から25%、30%と返品率が上昇しているから、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが認知されて売上が伸びるほど返品率も高まって行くというアイロニーが指摘される。さすがにアパレルでは靴ほどの返品率にはならないと思うが、『返品無料で買ってから選ぶ』という購買スタイルが一般化すれば15%に迫る日が来るかも知れない。
 返品率はモラルの問題ではなく購買スタイルの‘常識’に準じているだけで、‘常識’が変れば返品率も変わって行く。顧客利便を競いながら返品率を抑制するには店舗と連動して試着の機会を増やすなどオムニチャネルな運用が不可欠だが、決定打は全身の3D採寸データをID化して業界で統一運用する事だと思う。アマゾンID決済みたいに自分のサイズデータIDをワンクリックで入れれば最適サイズがリコメンドされ、ECサイト側には個人データが残らないという運用が実現すれば、アパレルも靴も返品率が抑えられ、売り手も買い手もウインウインになるのではないか。

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 2016/04/27 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

3D瞬間採寸サロンでID登録! 
 スーツカンパニーの方から2月26日から導入した‘カスタムオーダー’(実質パターンオーダー)について伺ったが、「バーチャルフィッティング・アバターシステム」という3D仕掛けの仮想試着システムはともかく、撮影や採寸、生地選びなどで二時間以上がかかるので一日数人の予約制にしていると聞いて驚いた。
 件の仮想試着システムは頭部の3D写真を仮想アバターボディに組み込んで試着イメージを360度から確認出来るというものだが、あくまで見た目のイメージであって自動採寸してくれるものではなく、採寸はスタッフが昔ながらの手作業で行うそうだ。それに時間を要するので予約制にしていると聞き、‘クリティカル・パス’という古い工程管理用語を思い出した。
 ‘クリティカル・パス’とは業務を遂行する上で所要時間を最長にしてしまう特定のプロセスを指すもので、そこを解消しないと他をどう効率化しても総所要時間は短縮出来ない。オーダー接客の‘クリティカル・パス’は採寸作業であって、仮想試着で選択プロセスを効率化しても接客時間総体の短縮は望めないのではないか。この場合の突破口となるのは3D自動採寸であって3D仮想試着システムではないと思う。
 3D自動採寸はスペースビジョン社のボディスキャナーなら一瞬(2.0秒)で済むがボディラインがストレートに出るウェアの着用が前提で、売場での採寸には抵抗があるかも知れない。ならば居心地の良い「3D瞬間採寸サロン」(業界負担で無料/主要商業施設内に置く)で一度採寸してID登録すれば、どこの店舗でもECサイトでもIDだけでサイズ選択が済むようギョーカイが結託すればよかろう。プライバシーが心配されるなら暗号化して通信するカード情報のようなシステムも考えられるし、サイズ選択など用が終われば売り手にデータが残らないようにする事も出来る。オーダーのみならず一般の既製服からヌード採寸が必須の矯正下着や靴まで使い出があって返品も減せるから、誰かが旗を振れば短期に実現するかもしれない。
 それはともかく、スーツカンパニーのカスタムオーダーは高品質ブランド生地がお手頃価格で選べ、様々なこだわりオプションが追加料金なしで楽しめるという優れものだから、初回は注文に二時間かけて届くまで30日待てる方には良い選択だと思う。

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 2016/04/26 09:05  この記事のURL  /  コメント(0)

粉飾の構図
 ‘粉飾決算’と聞けば司直の摘発を招く企業犯罪と大げさに受け取る人も居られようが、一応適法でも経営の実態を著しく誤解させたり、意図して違法スレスレの粉飾を繰り返す企業も珍しくない。大なり小なり決算に‘粉飾’は付き物なのだ。架空売上や循環取引といった悪質な確信犯は別として、一般の企業が日常的に行っているのが以下の四項であろう。
1)子会社/関連会社との取引における利益の供与または収奪
2)投資やのれん代の償却、店舗の撤退などに伴う除却損の前倒しまたは後倒し
3)期末在庫の評価替えや納品の前倒しまたは後倒し
4)経費の圧縮や仕入れ支払いの値引きなど強制的な予算達成
 1)は製造業の親会社と販売子会社、本国の本社と海外子会社、核テナント親会社と商業施設子会社などで一般的に見られるもので、国内では摘発される事は珍しいが海外の税務当局が摘発して国際裁判になる事もある。許容範囲と言うには経営の実態と決算が乖離し過ぎ、株主利益も損なう問題行為だ。
 2)は税法上、許容される範囲で計上を恣意的に前後するもので、現業が儲かっている期に償却や除却を集中し儲からない期には圧縮するという極めて常套的な会計判断だが、経営の実態を見え難くする事には変わりないし、公平な納税義務という点でも問題がある。
 3)も税法上は指摘される事は少ないが、最も効果的に経営実態を粉飾出来る会計処理だ。通常は期末在庫の簿価を実勢価値に従って評価替えするが、仕入原価を簿価のまま計上したり来期販売用商品を前倒し投入すれば利益を水増し出来る。売上が低迷しているのに利益を維持している決算など、不自然に在庫が積み上がっていれば要注意だ。悪質なのは不振在庫を評価替えも計上もせず何期も持ち越すケースで、経営実態は決定的に粉飾される。商社や納入業者に在庫を抱かせれば隠蔽出来るが、やがては吐き出さざる得なくなる。
 4)は‘予算主義’と言うべきもので、売上や粗利が予算を割っても仕入れ代金や経費を強制的に抑えて利益予算に着地させるという一般的に横行する手法だ。税法上はともかく労働基準法や下請法に抵触しかねず、社内や取引先が疲弊して萎縮のスパイラルに陥りガバナンスも崩れてしまうから、一期限りの緊急退避処置に留めるべきだ。
        ※        ※        ※        ※
 こうして見ると上場企業の決算と言えども‘粉飾’を疑ってかかるしかなく、非上場企業ともなれば恣意的に‘粉飾’されているものと達観するしかない。長年に渡って国内外アパレル/流通企業の決算を見て来た研究者の偽らざる実感だ。

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 2016/04/25 10:03  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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