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日常から乖離する商業施設
 3月25日に新宿駅新南口に開業したルミネの「NEWoMan」はメンズ館かと錯覚させるネーミングの違和感もともかく、土一升金一升の超一等地にしては郊外やリゾートのライフスタイルや裏通りの宝探し感を訴求するような新業態や派生業態が目立ち、忙しいターミナル利用者が求める便宜性とは異次元の構成にギョーカイと消費者の乖離を感じた。
 3月31日に数寄屋橋阪急跡に開業した「東急プラザ銀座」は江戸切り子をモチーフにデザインされたガラス張りのモダン建築が秀逸で、6〜11F吹き抜けのキリコラウンジや屋上のキリコテラスなどパブリックスペースの大判振る舞いには圧倒されたが、主役は1〜2Fの欧米ブランドのフラッグシップストア、6〜7Fの「ファインドジャパンマーケット」、8〜9Fのロッテ免税店、10〜11Fの‘多国籍’レストラン街という外国人観光客向け施設で、3〜5Fのファッション関連は魅力的なショップが揃うとは言え‘場違い’という違和感を否めず、東急百貨店の「ヒンカリンカ」(初音ミク曲のモジリみたい?)など顧客が見えない売る側の自己主張‘作品’としか見えなかった。
 そんな中、ホンモノの‘作品’を世界のクリエーターからセレクトしてホンモノの衣装道楽顧客とコミュニケートする「コンセント パリ HPフランス」がキラキラ輝いて見えた。マーケットの主流は‘工業製品’としての衣料品とは言え、‘作品’と認めるしかないほどクリエイティブで完成度の高い楽しい衣料品や服飾品も世の中にはあるんだと再認識させられた。‘お土産物’が氾濫する「ファインドジャパンマーケット」の中にも「IKJI」や「sof」など‘工芸品’と評価したくなる衣料品や服飾品も散見された。
 ネットショッピングが拡大してオムニチャネル販売が必然となり、取り残された従来型店舗販売が苦戦する中、近年の商業施設はインバウンドかエンターテイメントを志向して国民の日常生活消費からはどんどん乖離している。今回の「NEWoMan」や「東急プラザ銀座」にせよ日本郵便の「KITTE」にせよ三井不動産の「EXPOCITY」にせよ、それぞれに非日常のエンターテイメントを競っているように見える。商業施設が非日常を志向すればするほど日常の消費はネットに流れるとすれば、遠からず商業施設はテーマパークやレジャーランドのような日常生活から乖離した存在になってしまうだろう。
 立地や顧客によってはインバウンドやエンターテイメントを志向する商業施設があっても良いが、ターミナル拠点や日常生活拠点の商業施設が顧客の便宜から浮き上がるのは如何なものかと思う。‘販物分離’が必然の空港型免税店はともかく、商業施設がECを取り込んだオムニチャネルな‘販物分離’サービス体制を導入しない不明にも失望せざるを得ない。‘顧客本位’がどんどん建前になっていくギョーカイの未来はITプラットフォーマーに蹂躙されるSFの世界となるのだろうか。 




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 2016/03/31 11:11  この記事のURL  /  コメント(1)

オムニチャネル戦略の選択を問う
 明日30日は「オムニチャネル戦略の選択」をテーマにSPAC月例研究会を開催するが、それに先立ってのパネラーさんたちとの事前打ち合わせとメンバーアンケートとのギャップには少々ショックを受けた。‘オムニチャネル’最先端を走る企業と未だ‘EC’段階で試行錯誤する企業の格差があまりにも大きかったからだ。
 ‘オムニチャネル’最先端企業は顧客と在庫の一元運用と社内の基幹管理システムとのリアルタイム連携を志向して社内にSEチームを抱え、ECモールやECサービス業者のプラットフォームを離脱し始める一方、未だ‘EC’段階の企業はECモールやECサービス業者のプラットフォームに依存したまま顧客と在庫の一元運用も果たせず、基幹管理システムとのリアルタイム連携も見通せないでいる。それは事業規模の大小と言うより組織の老化や柔軟性の欠如に起因するもので、前世紀にメインフレーム型の基幹システムを確立した古い企業の立ち後れが目立つ。
 オムニチャネルの闘いはリテイラー同士の販売戦からECモールやECサービス業者とプラットフォームの優劣を競う段階に移行し始めており、プラットフォーム化するSNSも巻き込んでリテイルビジネスとITビジネスが覇権を争う新局面が迫っている。そんな局面が見えている最先端企業はSEチームを増強して独自のプラットフォームを築き始めているが、未だ‘EC’段階に在る多くの企業はささげ業務を内製化しコーディング・スキルを磨くに留まる。
 それぞれの企業が業容や段階に応じて等身大の手を打って行く事を否定するものではないが、格差の広がりは加速度的で、EC売上対比の運営経費率にストレートに繋がっている。その格差は年々広がり、今回のメンバー回答では自社サイト主体のオムニチャネル先行企業とモール依存の企業の格差は売上対比で平均12ポイントにも達した(それでも上場専門店チェーン平均より17.8ポイントも低いが)。
 進化を強要する訳ではないが、進化に取り残されては搾取されるだけで収益性の目処が立たなくなる。乗せてもらう側から自分で運転する側、さらには乗せてあげる側へと進化する必然は店舗小売とて同様だったではないか。詳しくはSPAC研究会の会場で明らかにしたい。

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 2016/03/29 12:32  この記事のURL  /  コメント(0)

宴は終わり暴挙は止める
 先週木金と開催した『販売データ交換会』では都内百貨店各社から‘衣冷え’の深まりに加えてインバウンド特需の失速が報告され、ひとつの時代の終わりを実感させた。
 2月こそ春節や閏日効果で勢いを保ったものの食指が実用的な化粧品や日用雑貨に移り、3月に入っては高額ブランド品や宝飾品はついに前年を割り、‘爆買い’は潮が引くように勢いを失っている。銀座地区二百貨店(松屋、三越)の単純平均免税売上比率は8月の31%をピークに減速が続き、1月は26%、2月は25%と戻したものの3月は20日段階で18.5%と失速している。三越銀座店の8Fに開業した空港型免税店の売上も予算には遠いと聞く。
 インバウンド特需が実用品に移って高額ブランド品が失速する一方、今月末には銀座東急プラザにロッテ免税店が4400平米規模で開業し、東京、大阪、福岡と各社の空港型免税店開設計画が目白押しだから、潮が引く中での供給拡大で需給が崩れる事は必定だ。ましてや消費税しか免税にならない市中免税店など、これまでの‘特需’が続くはずもない。
 アベノミクスも三年目に入って勢いが削がれ、‘一億総活躍’と煽られても企業の景況感も設備投資も冷え込むばかりで、『保育園落ちた日本死ね!!!』と血を吐くように訴えても行政は冷たく東京都知事は保育所を作らず韓国人学校を招く非情を貫く。少子高齢化で斜陽の坂を下る老境の我が国を新興国のように疾走させようという無理が続くはずもなく、東京オリンピックだリニア新幹線だと体力を超えた巨額投資を続けては国民も財政も疲弊して1945年のような破綻の日を迎えてしまう。‘三大暴挙’のひとつである来春の消費増税が止められるなら、残りのふたつも早々に旗を降ろしてもよいのではないか。

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 2016/03/28 09:18  この記事のURL  /  コメント(0)

お客が見えていないのでは?
 ‘衣冷え’が深まる今春の店頭を見ていると、『この店の顧客って、こんな好みだったっけ?』と訝る打ち出しが目に付く店がチラホラある。売れ筋を追って同質化するボリュームゾーンも問題だが、店のアイデンティティを投げかける打ち出しが顧客の‘好み’から乖離しては顧客が混乱するし、2〜3シーズンもそんな事が続けば長年の顧客も愛想が尽きてしまうだろう。
 顧客の‘好み’とは長年かけて店と顧客がキャッチボールして来たコンセンサスであり、顧客が顧客で在り続ける‘お約束’のようなものだと思う。それはトレンドへの感度と伝統へのこだわりの折り合いだったり、見た目のシルエットが着心地を推察させる‘ユーティリティ’の一致だったり、価格と品質のバランスだったりするのだろうが、店の側が勝手に‘お約束’を変えるには相当の覚悟を要する。03年9月に伊勢丹新宿本店が「男の新館」を「メンズ館」に改称し、従来の顧客を切り捨てて大変貌し今日の圧倒的人気を築いたのは例外的‘事件’であったが、それだけの覚悟と戦略があって断行する大博打なのだ。そんな‘お約束’違えが覚悟も戦略もない成り行きや勘違い、果ては社内の組織力学に流された結果だとすれば、ガバナンスの鼎を問わざるを得ない。
 顧客の‘好み’から離反した打ち出しは、恐らく海外情報などに依存して業界をリードしようとしたスタンドプレイの弊害だと思うが、SNSが世界中に氾濫しBC交錯してトレンドが創られる今日、情報特権スノブを自認するファッションメディア関係者などの享けを狙っては顧客と乖離してしまう。顧客とのキャッチボールを基盤に成長したセレクトショップなどアパレル小売業が顧客ではなくギョーカイの側を向いて商品開発をしているとしたら、遠からず落日の運命は避けられないだろう。

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 2016/03/25 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

仁義なき侵略?
 今月末、銀座東急プラザに開業するロッテ免税店に続き、高島屋はサムスングループのホテル新羅、全日空商事と合弁で来春、新宿店の11階に同様な空港型免税店を開くそうだ。出資比率は高島屋60%、ホテル新羅20%、全日空商事20%で、三越銀座店8Fに開業したジャパンデューティーフリーファソラ社の三越伊勢丹出資比率が27.5%に留まるのと較べると高島屋の主導権が際立つ。新宿店の売場面積は2800平米、初年度売上予算は150億円、二号店は大阪を予定と発表されている。
 銀座東急プラザの8〜9Fに4420平米で開業するロッテ免税店の初年度予算は2000億ウォン(約200億円)で、17年度中に東京と大阪に新たな店舗を計画している。ロッテ免税店はスイスのデュフリー、米国のDFS(LVMH傘下)に続く第三位の免税店で、韓国内に加えてジャカルタの空港店と市内店、グアム空港店、14年9月開業の関西空港店(300平米)を展開している。
 空港型免税店は市内免税店が消費税しか免税にならない(TAX FREE)のに対して関税や酒税、たばこ税も免税になる(DUTY FREE)のが強みで、関税率の高い皮革製品や香水などは市内免税店よく格段に安くなる。開設には税関による免税店免許の取得が必要で、実績と政治力が不可欠と言われる。
 空港型免税店が市中に多店化すれば二つの影響が生じる。ひとつは、これまでTAX FREEでインバウンド特需に潤っていた市中小売業の売上が奪われる事。もうひとつは、各ブランドのジャパン社や代理店が個店帳合でコントロールして来たブランド品の流通が綻びかねない事だ。
 グローバルブランドの流通は‘グローバル’とは言っても国別に流通体制や価格が異なるローカルマーケティングのミックスで成り立っているが、国の際を超えて展開される空港型免税店チェーンに対しては本社の専門部門が一括して対応せざるを得ず、市中に多店化すればローカル体制の価格や個店帳合(テリトリー規制)が綻んでしまう。
 ローカル調達では本社調達の外資免税店チェーンに対抗出来ないから、外資チェーンの導入や合弁での運営が志向される事になる。外資チェーンと組まなかった三越銀座店の空港型免税店ではケリング系のブランドが中核を占めたが、銀座東急プラザのロッテ免税店にはLVMH系の著名ブランドが揃うかも知れない。高島屋が世界7位のホテル新羅と組むのなら、阪急阪神や大丸松坂屋はデュフリーやDFSと組むのだろうか。三越伊勢丹とて今後の出店では外資チェーンと組むやもしれない。
 そんな力ずくのバトルが広がれば、インバウンド特需で潤って来た市中免税店の売上は潮が引くように消えて行くだろうし、グローバルブランドの個店帳合流通は越境ECの急増も重なってジリジリと綻んでいくのではないか。外資免税店チェーンによるブランド本社調達は品番を仕分けたりエクスクルーシブ品番に限定したりとローカル流通への打撃を避ける配慮がなされるだろうが、越境ECの方は大小さまざまな業者が入り乱れての仁義なき乱戦にならざるを得ず、グローバルブランドのローカル流通体制は遠からず抜本からの再編が避けられなくなる。
 それは百貨店などローカルバイヤーの商慣習も抜本から崩し、個店帳合に囚われないグローバル&セントラルなエクスクルーシブ・バイイングを競う段階に移行せざるを得ない。それが出来ないならマイナーなローカルバイヤーに都落ちする運命が待っているだけだ。

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 2016/03/24 09:10  この記事のURL  /  コメント(0)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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