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SPAってうざい? 
 今朝の繊研新聞は一面で『ノームコアにさようなら!』と見出して、ベーシック一辺倒に流れた二年間の反動から『デザイン性の強い、凝った商品が売れる』情況に変化し始めた事を特集していた。
 当社が毎月、集計しているブランド別販売成績でも昨秋からメンズ先行でデザインや加工に凝ったストリート系や東京DC系の台頭(復活)が著しいし、春の店頭ではレディスでもデザインや加工に凝ったアイテムが広がり始めている。16年秋冬の傾向もヴィンテージやリメイクを軸にデザインや加工に凝る傾向が強く、シンプルモダンな方向は影を潜めそうだ。
 そんなトレンドの反転でMDの組み方も一変せざるを得ない。デザインや加工に凝った分、コストは上がるし、カラー展開などMDの水増しも同一品の継続販売も難しくなるから、売上を確保するには型数を増やし企画サイクルを細分化するという‘非効率’な人海戦術に頼るしかなくなる。マーチャンダイジングの技やPDCAゲームに嵌ってSPAっぽいMDに流れて来たこのギョーカイは、これまで以上の困難に直面するのではないか。
 マーチャンダイザーだけではこの変化に対応出来ないし、アウトソーシングが進んで陣容が細った社内デザインチームの頑張りにも限界がある。よってSPA化し過ぎたアパレルメーカーやセレクトチェーンは開発力あるブランドなどとのコラボやセレクト仕入れを拡大するしかない。メジャーなSPAやSPA化し過ぎた大手セレクトチェーンが疎まれ、マイナーなセレクトショップやブランドに人気が移るのは必定だが、これまで効率を追求して開発力を毀損して来たメジャービジネスはいったいどうなるのだろうか。
 効率追求のSPAっぽいビジネスモデルが悉く壁に当たり、よく言えば人の手を掛けた、悪く言えば人海戦術に依存する‘非効率’なビジネスモデルに回帰せざるを得ないファッション市場の変質は、少子高齢化で翳り行く成熟文明の必然だと思う。表通りのデパートや大型SPAが外国人観光客で賑わう一方、地元の人は裏通りのセレクトショップに集うという欧州的な市場構造へ、日本市場も成熟の時代を迎えたという事なのだろう。
 ‘メイド・イン・ジャパン’を叫んでも産地は疲弊して久しく、商品開発にあたる人材の層も細り果てた今日、欧州的な市場構造への変化はグローバルなブランドの流入を加速する事に他ならない。ファッション市場の活性化はアウトとインのどちらにも開かれたオープン・プラットフォームであるべきだろう。

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 2016/02/29 11:31  この記事のURL  /  コメント(0)

アフィリエイトの功罪
 ECパッケージのecbeing社が23日に開催したカンファレンスに出かけて「ココマイスター」(株式会社ルアンジュ)の林佑磨社長の講演を聞いて来た。
 「ココマイスター」と聞けば、『欧州の高級レザーを使って日本の熟練職人が作るこだわりの革製品』というキャッチフレーズ以前に、アフィリエイトブログ拡散で短期に驚異的な知名度を確立したネット・プロモーションの成功事例というイメージが先行してしまう。事実、yahooで検索すれば膨大なブログが出て来てびっくりさせられる。あの「バルコス」が12万5,000ヒットに対して「ココマイスター」は90万9,000もヒットしたから相当なものだ。ちなみに、あの「オロビアンコ」は207万ヒット、「エルメス」は406万ヒットだった。
 それも正面から持ち上げるブログもあれば著名ブランドと一方的に比較して推奨するブログ、疑念を投げ掛けてからやっぱり素晴らしいと決着させる‘炎上’型ブログまで様々でついつい興味をそそられるが、使っているビジュアルやキーワードがどれも同じネタなところを見ると組織的なアフィリエイトなのだと解る。実際、同社はジャスダック上場のアフィリエイト広告会社ファンコミュニケーションズ主催の「A8.netプログラム総選挙2015」でファッション部門第一位に表彰されている。と言っても、これはアフィリエーターによる人気投票であって消費者によるものではないから誤解してはいけない。そんな仕掛けが先行して却ってブランドイメージにマイナスとならないか講演後に直接、林佑磨社長に聞いてみたが、『販促効果の方が遥かに大きい』という回答だった。
 商品は大半がヴィンテージ感覚のメンズ向け財布類で、高額なバッグ類は最近手掛け出したそうだ。手に取ってみた限りでは渋いハンドメイド仕上げでやや重め。中の設えは結構、機能的だが、縫いのピッチは硬めの皮革ゆえやや粗い。価格はベンチマークしている「GANZO」など国内著名ブランドと較べるとワンマークお手頃に設定されている。自社工場は持っておらず、外注している工場は開示していないが、自社ブランドで卸やECで売っているM工場が製造していると噂されている。アフィリエイトブログの氾濫には訝ってしまうが、品質に目立った欠点は無く財布類の価格も価値に見合っているから‘怪しい’とは言えない。趣味が合う顧客には適品なのだろう。
 09年にECから出発して既に直営店も6店を構え、初期のEC100%から店とECで半々を売って年商30億円を稼ぐまでになった今、今後の投資を店舗か販促か自社工場かという選択の岐路に立っている。これ以上のアフィリエイトは‘怪しい’というマイナスイメージに繋がりかねず、店舗に投資しては経費率が上がって収益性を圧迫してしまうから、ここはイメージが剥げ落ちないうちに自社工場に投資して‘本物’イメージを確固たるものにするのが正解だろう。

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 2016/02/26 11:34  この記事のURL  /  コメント(0)

郊外ウーマンは10着しか持たない
 以前に『メンズ業界の三遊間ゴロ』で‘ビジカジ’への業界の対応がズレている事を指摘したが、実はメンズよりレディスの方がその問題は大きいのではないかと思う。
 リーバイ・ストラウス社が86年に発売した「ドッカーズ」から発した‘ビジカジ’は米国社会に於ける「スーツ」(エグゼクティブ)、「オフイサー」(現場管理職)、「ワーカー」(労働者)という階級分化を背景としたもので、中間管理職たる「オフイサー」のビジネスウェアという性格が強かった。センタープレスのキレイ目チノパンツという‘オフイサースタイル’は90年代末期以降、加工デニムを軸とした‘セレブカジュアル’が席巻する中でセンタープレスのキレイ目コットンパンツやスラックスという「インコテックス」や「PT」などイタロファクトリーブランドに引き継がれ、‘オフイサースタイル’という枠を超えてエグゼクティブの‘ビジカジ’にまで波及して行ったが、非正規労働者が急増する近年の我が国では再び、その性格を変えつつある。
 我が国のビジネス社会では米国のような服装の階級分化には向かわず、むしろ階級に囚われないビジネスウエアのカジュアル化が進行しているが、正規雇用と非正規雇用では所得水準の格差もあって‘ビジカジ’の在り方が大きく隔たりつつあるようだ。メンズウエアでは紳士服チェーンなどのお陰で価格はともかく外見的な階級格差は目立たないが、レディスウエアでは格差がライフスタイルの違いとなってスタイリングを分けているように見える。
 所得が少なく雇用が不安定で住処と職場を行き来するだけでターミナルや都心に出る事が限られる生活をしているとTPOが集約され、何処に行くにも部屋着感覚のジャージアイテムにブルゾンなどを羽織って済ます着た切り雀に近付いて行く。郊外やローカルの非正規雇用女性の‘ビジカジ’がそんな‘アスレジャー’風着回しに流れているという見方は一面的かも知れないが、拡大が見込める有望‘ビジカジ’市場と前向きに捉えるべきだろう。
 そんな彼女達のスタイリングは‘ルーミー×ハンサム’あるいは‘スポーツ×マスキュリン’というメリハリのあるリミックスで成り立っており、極めて少数のアイテムでライフスタイルをカバーしている。そのうち『郊外ウーマンは10着しか持たない』というノウハウ本が出るのだろうか。


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 2016/02/24 09:24  この記事のURL  /  コメント(0)

ファッションシステム革命は無理!
 グローバルな直販体制を確立した一部のメジャーブランドはBCリアルタイムなファッションシステムへ本気で移行し始めたようだが、9月のショーと同時に秋冬物を売り出すというバーバリーに対して先日開催した秋冬ショーと同時に秋冬物を売り出したマイケルコースでは生産期間が前倒されてしまうなど、各社の方向は定まっていない。そんな混乱の中、卸流通やローカル流通に依存する大半のブランドは梯子を外されてしまうと真っ青になっているのではないか。
 シーズン半年前のランウェイショーを起点に情報を拡散し、展示会で受注を確定して計画生産する古典的なビジネスモデルが成り立たなくなれば、卸流通やローカル流通に依存する大多数のブランドは行き詰まってしまう。著名ブランドと言えども未だ国別のローカル流通に終始してグローバル一元の流通コントロールなどほど遠いのが実情だから、オムニチャネル対応はおろかBCリアルタイム型ファッションシステムに移行出来るブランドは極めて限られる。
 80年代までのローカル鎖国時代には国毎のライセンスビジネス、東西冷戦終結後に水平分業と階級分化が進行した90年代にはディフュージョンビジネス、今世紀に入ってはグローバル直営店ビジネスが戦略トレンドとなり、新興国市場が急拡大した09年以降は新興国での店舗展開が急進したが、15年に入っての新興国市場の冷え込みと越境ECの拡大でローカル流通体制が壁に当たり、ネット・デモクラシー時代のオムニチャネル環境に適応したグローバル一元流通体制の確立が急務となって来た。
 そんな進化論的視点に立てばバーバリーなどファッションシステム革命派は極めて例外で、大手ラグジュアリーグループでもケリング系のブランドなど未だローカルマーケティングを引き摺って流通体制の刷新は大きく遅れている。ましてや独立系のラグジュアリーブランドやファクトリーブランドなどグローバル一元流通体制にはほど遠く、ファッションシステムが崩壊すれば淘汰の波に飲み込まれてしまう。99.99%のグローバルブランドはBCリアルタイム体制への移行は不可能というのが現実ではないか。

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 2016/02/23 09:28  この記事のURL  /  コメント(0)

ファストファッションは終わった?
 ファッション商品は需給で価値が上下する‘市況商品’と捉えるべきで、市場への入荷量と需要で競り値が決まる生鮮食品と性質が酷似している。農家や漁師は日々の市況をネットで追いながらタイミングを見計らって出荷している。規格化されたF1種苗が定着している産地農家はハウスの温度を上下するなどして出荷タイミングを調整出来るが、魚群の動向に左右される漁師は日々、どうやって対応しているのだろうか。
 ‘ファストファッション’の原点は企画から市場投入までのリードタイムを最短化して供給不足のうちに売り切る事で、市場投入までに時間が掛かったり大量投入した在庫の販売消化に手間取ったりしては過剰供給の波に飲み込まれて在庫が滞貨し、ファストではなくなってしまう。供給不足のうちに消化してしまうには以下の三点が要となる。
1)需要の芽を早く掴んで商品企画を決定する
2)決定から市場投入までのリードタイムを最短化する
3)市場投入から消化完了までの販売期間を最短化する
 需要の芽を掴むタイミングが早すぎるとフライングのリスクが大きくなるし、遅過ぎては過剰供給の波に飲み込まれるリスクが大きくなる。‘売れ筋情報’が業界に広がるタイミングでは過剰供給リスクが大きくなるから、追加投入を止めたり値下げして早々に売り切る‘逆張り’判断が問われる。
 市場投入までのリードタイムはロットやコストと生産地に左右されるが、短くしたければ近くて副資材供給の背景が整った生産地の分業を抑えて小ロットに対応する工場に委託すれば良いが、当然ながらその分だけコスト高になる。
 消化完了までの販売期間を最短化するには投入量を抑制するべきで、ファストファッションを標榜するなら最大でも二週間分に抑えたい。速やかな消化を期すにはカラーやサイズなどを広げてMDを水増すのも禁物だ。逆に、継続販売を重視する定番品などは8週分を基本にSKUバランス補正の二次生産を加え、カラーやサイズを揃えて顧客を広げ陳列面のインパクトを訴求する真逆のMDを組む。
 そんな視点で見るなら、世に‘ファストファッション’と言われる大手チェーンのほとんどは既にこの原点を逸脱している。事業規模も生産ロットも大きくなって1)需要の芽が見える以前の見切り発車になり、2)大ロットゆえ流通素材が当て込めず遠隔地の多分業型大規模工場を使うしかなく、3)コストを抑えるべくの大ロットと販売消化期間のバランスが難しくなり、どの大手チェーンも結果的に年間4回転前後(12週で回転)という‘スローファッション’となっている。8回転とか称しているのは原価在庫で売上を除したマジックで、在庫回転の実態は売上原価を原価在庫で割らないと掴めない。
 ‘ファストファッション’と言われる大手チェーンの収益構造は2010年をピークにジリジリと悪化しており、大ロット調達で原価を切り詰めて値引きロスを埋める非効率な事業に堕した感がある。ギャップ社を除けばオムニチャネル化への対応が遅れて在庫効率も経費率も悪化が進み、もはや過去のビジネスモデルとなりつつあるところに、世界的なファッションのローカル回帰とファッションシステムのBCリアルタイム化(コピービジネスが成り立たなくなる)という逆風が迫る最悪の情況だ。
 ‘ファストファッション’はそもそもパリ(サンチエ)やソウル(東大門)など各国の現金問屋街で買い付けたり一晩か二晩で小ロットで作らせて持ち帰るローカルでマイナーなビジネスだった。それが大ロットなメジャービジネスになったのは、新興国が消費市場化しトレンドがグローバル共通化するという09年以降の特異な時流がもたらした‘一時の幻’だったのではないか。

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 2016/02/22 10:06  この記事のURL  /  コメント(1)

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小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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