前へ | Main | 次へ
偽装二重価格に鉄槌
 平山幸江さんの一昨日のブログは『アメリカ小売業界に広がる‘架空価格’集団訴訟と・・・・』
と題して、ニーマンマーカスやノードストロムなど大手小売業からマイケルコースやケートスペードなどブランドビジネスまで広がる集団訴訟を報じていたが、小売業側は無罪を立証するより和解に持ち込むケースが多いため『お金を取りやすい』訴訟ターゲットになっているそうだ。
 日本式に言えば「偽装二重価格」「有利誤認」「不当表示」が消費者庁の摘発じゃなくて消費者の集団訴訟で血祭りに上げられる訳で、何だか消費者金融に対する過払い金請求みたいになっているのかも知れない。平山さんによるとマイケルコースなど総額487.5万ドルも払ったそうだから、6億円近い負担になる。日本もこのくらいの罰金を課すか過払い金返還なみの集団訴訟の対象になれば、塀の上を泳いで来た「偽装二重価格」「有利誤認」常習業者も少しは震え上がると思うのだが、09年に公正取引委員会がB2B専任になってB2Cは消費者庁に振られて以来、摘発体制が整わないまま野放しにされて来た嫌いがあった。
 そんな天網の隙間も今年4月1日から施行される改正景品表示法で閉じられ、厳しく処罰される事になる。不当表示に伴う売上額の最大三年分の3%を課徴金として徴収すると言うから、大手流通業なら数十億円にもなりかねない。売上額が5000万円未満は対象とせず、事業者が自己申告すれば半額で済むとか、購入者に返金した場合は課徴金を減免するなど、お目こぼしはあるようだが、タイムセールやギャンブルセールを煩雑に繰り返す大規模な常習事業者は一罰百戒で血祭りに上げられるに違いない。それが多少なりともギョーカイの浄化と価格信頼感の回復に繋がれば幸いだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/01/14 09:09  この記事のURL  /  コメント(0)

ユニクロ失速の要因と課題
  デフレの勝者として伸び続けて来た「ユニクロ」が11月12月と連続して売上が失速し、ファーストリテイリング社の2016年8月期第一四半期(9〜11月)の売上は8.5%増と一桁に減速、営業利益は16.9%も減少、純利益は30%も減少した。前年同期は売上が23.3%増、営業利益が39.9%増、純利益が63.9%増だったから急失速を否めず、通期の売上予想も1000億円引き下げ、同営業利益も200億円引き下げるなど、業績は一気に暗転した。
 11月の既存店売上は91.1、12月は88.1と二桁割れとなったが、業界の言う『記録的な暖冬』のせいばかりではない。ライトオン(20日〆)など11月は109.8、12月は117.4と飛ばしているし、売上を発表している株式公開15社平均も11月は94.5、12月も98.8と総じて低迷したが、「ユニクロ」の不調は突出している。その最大要因は度重なる値上げによる客離れで、11月の既存店客数は87.1、12月は同85.4と激減しており、『ユニクロもマクドナルド化か!』という声さえ聞こえて来る。
 14年11月も94.3、12月も98.6と値上げによる客離れは始まっていたから、一昨年対比では11月が82.1、12月は84.2と二年連続の値上げによる客離れは深刻だ。この二ヶ月間の売上減少と客離れがどれほど甚大なダメージだったか、11月〜12月に年間売上の三割が集中するというユニクロの特殊性を知れば理解されるのではないか。
 問題はファーストリテイリング社が値上げによる客離れリスクを過小判断した事ではない。本質は1)値上げせざるを得なくなる運営経費の膨張を容認して来た、2)売上を伸ばし運営経費を引き下げるECの拡大が後手に回った、3)11月〜12月と5月に売上が集中する歪なMD展開体質の是正が遅れた、の三点に尽きる。
 一般にグローバルSPA事業では国内EC事業が最も収益性が高く(経費率が低い)、海外店舗事業が最も収益性が低い(経費率が高い)。ファーストリテイリング社もその例に漏れず、海外店舗事業の収益率は国内店舗事業の半分にも届かない一方、国内EC事業の収益率は国内店舗事業を倍近く上回ると推察される。そんな現実の中、ファーストリテイリング社は店舗事業の世界展開を急いで国内のEC拡大が遅れ、海外事業の収益が低迷する一方で国内事業の経営効率も悪化するという結果を招いた。
 もしも海外店舗事業を中華圏を中心とするアジアに集中し、国内物流体系を直流から交流に逸早く切り替えていたら、国内EC事業は爆発的に拡大して店舗販売との相乗効果(ウェブルーミング)も発揮され、経費率と値引きロスの圧縮で円安等による調達コスト増が吸収され、度重なる値上げには至らなかったのではないか。さすれば客離れも起こらず、ユニクロ帝国のマクドナルド化というリスクも回避出来たに違いない。
 こうなる事は半年以上前に予見していたから、15年9月1日発売の販売革新9月号で『ユニクロ一極集中が終わる?』と題してデータを揃えて論証した。御一読頂ければ理解が深まると思う。
 加えて、「ユニクロ」の売上は冬期のパワーアイテムに依存する極端な偏りが是正されないまま今日まで来ており、値上げや暖冬によるパワーアイテムの失速で売上の急落を招き易くロスも急激に肥大してしまう。逸早く交流に転換してECに対応しMD改革を進めて昨春頃から好調が続く「ZARA」と較べれば「ユニクロ」の売上月指数はジェットコースターのように山高く谷深しで、パワーアイテムに依存せずMDを水増しせず在庫を積まないゆえリニアモーターカーのごとく月々の売上が平準している「ZARA」とは両極をなしている。
 EC主導のオムニチャネル化と交流への物流改革、ミニマルにシェイプするMD改革が連動すれば、「ユニクロ」も在庫の偏在と蟹工船体質というチェーンストアの呪縛を脱してIT企業的4.0体質に変貌出来る。経営者の発想転換が急がれよう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/01/13 09:17  この記事のURL  /  コメント(0)

攘夷か開国か
 と言ってもTPPの話でも江戸末期の話でもない。オムニチャネル消費という押し寄せる黒船を頑として拒否する商業施設デベや百貨店が時代に取り残され、消費者の利便も流通インフラの効率化も進まないという「夜明け前」のお話だ。
 先日、顧問先のアパレル企業が店頭でのEC受注や店頭在庫からのEC受注品発送などオムニチャネル対応を進めるについて商業施設デベの了解を確認する一覧表を見せてくれたが、何かとテナントに対して威圧的な某社が攘夷派なのはともかく、穏健派と思われている不動産系某大手デベも実態は攘夷派に近く、開国派と言えるのはパルコさんぐらいという情況から一歩も進んでいない。
 テナント各社は店頭EC受注をデベのレジに通して課金を受け入れるなど穏健な開国を求めているが、デベの方は店出荷にも不快感を隠さず協力的とは言い難い。その要因は課金システムや後方荷受けヤードの刷新を面倒がる以前に、オムニチャネル消費とB2C物流の革命的変貌が見えていない事で、微温湯が沸騰して行くのに気付かない蛙を決め込んでいる。
 1月5日の当ブログ『宅配サービスがなくなる日』で『こんなに急激にECが拡大して、そろそろ頭打ちになるのでは、と期待する向きもあるだろうが、残念ながら当分ブレーキはかからない。なぜなら・・・・・・』と明快に指摘したが、そんな見識さえ共有していないのかも知れない。店舗小売業は運営効率でも在庫効率でも投資効率でもECに遠く及ばず、オムニチャネル消費が拡大する中、ショールームストア方向か出荷&受け取り拠点方向かどちらかの‘オムニチャネル拠点’に変貌しない限り生き残りは難しい。それを既存の商業施設デベが受け入れないなら新興の商業施設デベや異業種のサービス拠点がその役割を担い、オムニチャネル消費を謳歌する顧客(消費力の高い上客だ)を攘夷派商業施設から奪い取っていくだけだ。
 現実問題として、ここまで商業施設デベが頑なだとロードサイド店やダウンタウン路面店の営業自由度が再評価される事になる。売上対比の不動産コストも3倍近い開きがあるから、立地の不利もオムニチャネル拠点化による売上増とコスト削減でカバーされるならロードサイド店の復活劇が広がるのではないか。
 オムニチャネル革命は00年の商業施設革命(定期借家契約導入と営業時間の自由化)を凌駕する21世紀の流通革命であり、攘夷に固執する商業施設デベ‘士族’を丸ごと置き去りにしてしまう。もはや国内の狭い井戸の中で攘夷か開国かを議論している段階ではない。世界のマーケットの際が崩れインバウンド消費と越境ECの取り込みを各国が競うグローバル流通戦争に突入する中、逸早く開国してオムニチャネル強国とならねばオムニチャネル先進国にマーケットを奪われ植民地化されかねない。商業施設デベ‘士族’の覚醒と決起が急がれる。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/01/12 10:01  この記事のURL  /  コメント(0)

ジャパン・クオリティとは何か
 ‘クール・ジャパン’とか‘ジャパン・クオリティ’とか自画自賛的なキャンペーンが海外消費者の好感を得られるか疑問だという指摘も聞くが、その前に‘ジャパン・クオリティ’‘メイド・イン・ジャパン’とは何か再定義する必要がある。
 日本のアパレル生産はもはや国内供給数量の3%にも満たないし、縫製工場を支えているのは老齢化したわずかの日本人と中国やベトナムなどからの研修生?で、散々にコストを切り下げられ疲弊し設備投資も絶えて久しく、もはや突出した‘仕様’や‘技術’を期待出来る情況にはない。一方で、数量的には衰退が著しいとは言え技術水準の高い企業が残るテキスタイルや染織整理・後加工の分野は欧米での評価も高く輸出も伸びている。
 そもそもアパレル製品の‘価値’や‘品質’を何処に問うかだが、縫製始末とか耐久性とか客観的な評価は極めて限られた部分で、価値評価のほとんどは空蝉な感覚に依存するのが現実だ。縫製は露骨な工程省略や未熟な単純分業とか洗練されたセルな手仕事とかの両極を除けば見た目の品質評価は難しいし、洗練された素材の多くは物理的な堅牢性は極めて疑わしい。‘上質’に見えるのは素材の物性(整理加工も含む)やプレス成型に拠る部分が多く、‘クオリティ’を決めるキーデバイス・キー工程を明確に意識すべきだ。
 アパレル製品は芸術家の‘作品’でも手作りの‘工芸品’でもなく量産効率の問われる‘工業製品’なのだから、品質も感性も合理的なコストに収斂される必要が在る。ならば、消費者に品質や洗練を実感させるキーデバイス・キー工程にコストを集中させるべきではないか。現実にはキーデバイスはテキスタイル、キー工程はプレス成型や後加工であり、手縫いのオーダー製品でも無い限り縫製工程にそれを求めるのは無理が在る。
 ‘ジャパン・クオリティ’はもっと消費者に見える品質や感性を訴求すべきであって、作り手側の‘ものづくり神話’を押し付けても理解は広がらないしコストにも見合わない。近年の‘メイド・イン・イタリー’は旧東欧圏などで縫製しながらテキスタイルとプレス成型はイタリア国内にこだわるという割り切りを見せているが、‘メイド・イン・ジャパン’もアジア生産地との垂直分業を模索すべきではないか。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/01/08 09:06  この記事のURL  /  コメント(0)

前倒すの後倒すの?
 今初春は冬物バーゲン明けを待たず春物を立ち上げるアパレルが目立つそうだが、バーゲン後倒しの間を埋めるためなのかプロパー消化率を高めるためなのか、各社の説明は要領を欠いている。
 当社の主催するSPAC研究会では毎年、各シーズンの投入時期と実売ピーク時期をメンバー企業に聞いて来たが、プロパー消化率が低迷する近年は早期のプロパー消化を期して投入時期が年々、前倒される一方、実売ピーク時期は実需期に集中し、投入から実売までの期間がどんどん長くなって在庫回転日数が長期化する傾向が顕著だ。
 加えてEC販売比率が高まる中、売れ筋商品がEC先行で消化し、店舗に在庫を抱える非効率性が問題になっている。ならば店舗在庫を抑えてDC在庫を積むか、米国チェーンの多くが実行している‘Ship from store’(店在庫を店から出荷)を活用するか、どちらかの方法で最速で顧客に届け在庫回転を速める必要があろう。
 春物に限らずシーズン商品の前倒し投入は、SNS拡散を先兵にECが先行し、そのウェブルーミング効果で顧客をストアに誘導する仕掛けがなければ在庫期間が長くなるだけだ。早期投入にはなんらかのインセンティブ(ポイント○倍など)やストアへ誘導するクーポンなどが不可欠で、実需ピーク時期を一週でも前倒したければキックオフなどのインセンティブが必要になる。
 投入を前倒したりバーゲン時期を後倒したりとギョーカイはなり振り構わず利益確保に必死だが、投入の時期や量は在庫消化の年間リズムを戦略的に設計して行うべきものだ。20年以上に渡って有力各社の数字を検証して来た経験則だが、消化歩留まり率は売上と在庫の平準性に相関し偏差性に逆相関する。要は毎月の在庫と売上の波がフラットであるほど消化率が高まり、波が大きいほど値下げロスが大きくなるという事で、ピーク月の売上を高めるより閑散月の売上を嵩上げする方が改善効果が大きい。昨年末のブログで『ZARAに良い兆候、ユニクロにリスキーな兆候』と言った訳もそこに在る。
 目先の前倒すの後倒すのという戦術論の前に、年間の在庫と売上の流れ、ECと店舗を連携する販売と在庫引き当ての仕組みを戦略的に構築するのが先だと思う。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトはこちら
 2016/01/07 09:25  この記事のURL  /  コメント(0)

前へ | Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ