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規制緩和の弊害?
 と言っても幾度も犠牲者を出して来た貸切バス業界のお話ではない。我らアパレル業界の‘悲惨な’お話だ。貸切バス業界の今日の疲弊を招いた規制緩和は2000年だったが、我らアパレル業界の今日の疲弊を招いた規制緩和も2000年だった。
 3月1日には定期借家契約が導入され、出店保証金が無くなって出店コストは格段に低くなったが、定借期間終了後の営業継続の保証も無くなり、出店コストの低下でオーバーストア化が加速して販売効率が低下し、不採算店が溢れる今日の苦境を招いた。6月1日には大店立地法が施行されて営業時間が自由化され、夜10時11時までの延刻が広がって販売員?不足が慢性化し、人件費の負担と運営力の劣化で店舗運営の採算はジリジリと悪化して行った。
 これにモバイルショッピングの急拡大も加わってオムニチャネル消費が急進し、ECの二桁成長が続いて店舗販売を圧迫する一方、商業施設や百貨店などの‘館’はテナントの販売を活性化するO2Oアクションを規制するばかりで積極的な支援に動かず、テナントの採算悪化を加速させるばかりだ。
 規制緩和の弊害で業界が行き詰まる中、突破口は‘館’からの脱出なのか、規制への回帰なのか、早々に答えを出さざるを得ないだろう。

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 2016/01/28 08:50  この記事のURL  /  コメント(0)

三越銀座店に空港型免税店が開業
 1月27日、三越銀座店8Fに待望の空港型免税店が開業した。諸般の事情で開業が遅れたが、計画時点から訪日観光客が急増した事で初年度売上見込みも150億円と50億円積み上げられた。
 空港型免税店は消費税のみが免税される市内免税店とは違って関税、酒税、たばこ税も免税されるからメリットは格段に大きく、空港型免税店が出来ると周辺の市内免税店から顧客を奪ってしまう。三越銀座店も非公式ながら、空港型免税店の導入による売上増と裏腹に既存売場の免税売上は50億円以上減るのではと懸念している。3月31日に開業する東急プラザ銀座の8〜9Fに4420平米という三越の空港型免税店(3300平米)を上回る規模で進出するロッテ免税店は初年度2000億ウォン(200億円)を計画しているから、インバウンド特需に潤って来た銀座地区百貨店の打撃は小さくないと推察される。関税免税と言っても品目によって課税率に差があり、時計は市中免税店と差がないが化粧品や皮革製品、宝飾品では価格差が大きく、それらの品目は空港型免税店に流れる事になる。
 となれば空港型免税店の目玉は化粧品に加えて皮革製品や宝飾品の‘ラグジュアリーブランド’という事になるが、三越銀座店の8Fに並んだ9つのブランドブティックのうち「グッチ」「サンローラン」「ボッテガ・ヴェネタ」「バレンシアガ」「ブシュロン」と5つまでがケリング傘下のブランドというラインナップを見てしまうと、東京プラザ銀座のロッテ免税店にはLVMH傘下のブランドブティックが並ぶのかと勘ぐりたくなる。「シャネル」「エルメス」(旗艦店が近接し過ぎてあり得ないが)の去就を含めて注目される。
 空港型免税店での購入商品は出国時に空港で受け取るから‘究極のショールームストア’という点でも注目されるが、サンプルやタブレット(煙草と酒のみ)を見て購入しDCに用意された別の同一品を空港で受け取る仕組みは工業製品たる煙草と酒だけで(時計や化粧品も可能だと思うが)、個々の絶対単品に微細な差が出る衣料品や服飾品、宝飾品はすべて、店頭で顧客が選んだ‘個体’を顧客の面前で包装して空港へ運ぶそうだ。土一升金一升の銀座の一等地に在庫を積み上げるという不合理には唖然とさせられるが、‘個体’を確認したいという訪日客のニーズにも頷ける。
 三越伊勢丹は4月に福岡三越に空港型免税店を導入、三越銀座店の店外や伊勢丹新宿本店の周辺にも配置すると計画しているから、周辺ライバル百貨店の免税売上は大きな打撃を受ける事になる。中国政府が消費の国外流出を阻止すべく内外価格差の是正を急ぐとともに、一級大都市の空港や市内に‘空港型免税店’を大量布陣すれば、‘爆買い’は一時の泡と消えてしまう。インバウンド特需はそんな‘棚ぼた’と心得て国内消費の掘り起こしに注力すべきであろう。





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 2016/01/27 11:22  この記事のURL  /  コメント(0)

オムニチャネルが解っていない!
 2月4日に開催するSPACニューイヤーコンベンションに向けて業界の最新情勢と提言をまとめたレポートがほぼ完成したが、その巻末を締めるメンバーアンケートに少なからずショックを受けた。メンバーの理解がO2Oで止まったまま、EC軸で全社の経営効率を革新しようというオムニチャネル戦略がほとんど理解されていない(理解したくない)という実情が露呈していたからだ。
 全社の経営効率を革新するオムニチャネル戦略には、1)顧客便宜と販売機会拡大を追求する店舗の出荷・受け渡し拠点化(商物一体の徹底)、2)商物分離で在庫効率・運営効率を追求するショールームストア化、の二方向があってそのクロス運用も可能だ。前者では売上は増えるが、店舗の物流業務が増えて運営コストが肥大し、在庫効率の改善も望み難い。後者では店舗の運営コストも在庫効率も画期的に改善されるが、顧客が馴染んでくれるか不安が残る。中長期の経営革新を見据えれば後者の選択が望ましいが、メンバーアンケートでは前者のスタンスが色濃く、実態はそれ以前のO2O次元を出ていないと推察される。
 オーバーストア化やインフレで店舗運営の採算が悪化する中、成長性も収益性も店舗販売を圧倒的に凌駕するECを拡大し、サイトやSNS拡散などで店舗に顧客を誘導して店舗売上も嵩上げ(ウェブルーミング)、欠品時などには店舗からサイトに顧客を誘導する(ショールーミング)というO2Oまでで手一杯であり、顧客データと在庫データの一元管理までは行っても在庫物流の一元運用まで行く企業はまだ少数派のようだ。
 そんなスタンスはEC担当者の評価や処遇にも影を落としており、EC売上の評価が縦割りの各事業部や店舗に偏って横串のEC事業がサービススタッフ扱いされているケースも多い。そんな縦割り組織ではEC担当者がオムニチャネル戦略に目覚めても欲求不満が募るだけで、やがては会社を見限る事になりかねない。
 メンバー企業のオムニチャネル戦略が停滞するもうひとつの要因が、ショールーミング行為の禁止はもちろん、ウェブルーミングに絡む店出荷や店受け取りにまで非協力的な商業施設デベや百貨店の頑にラッダイトな姿勢だ。百貨店も商業施設もECに較べれば運営コストが倍も高いという負い目も無視して強硬姿勢を続ければ、テナント企業の路面店やECサイトへの移行を加速させる事になる。
 オムニチャネル消費と越境ECの奔流は加速するばかりで、時代に後戻りはない。関係者の一刻も早い覚醒が望まれる。

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 2016/01/26 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

縫製工場は労働集約産業?
 1月19日に開催された経済産業省の第二回サプライチェーン研究会の席上、縫製工業会や縫製機械業界の代表委員から思いもかけぬ発言が出て、長年の固定観念をバッサリ否定された。それは『縫製工場(ニッターも含む)は最新自動機器によって労働集約体質を脱して装置産業化出来る』というもので、『低賃金労働力によって成り立つ労働集約産業』という長年の認識をひっくり返された。
 労働集約産業という思い込みで日本から中国、そしてベトナムやバングラデシュなどの南アジアへと移転して来た縫製工場だが、次はアフリカ、その次は?という疑問に縫製業会のリーダーは『自動化で装置産業化し中先進国に戻る』という大胆な仮説を打ち出した。オムニチャネル化の急進に伴う物流のB2B〜B2C一貫効率化と消費地DC軸の交流化いう奔流を考えれば、消費地(日本はもちろん今や中国も消費地だ)近接の自動化された縫製工場とプレス仕上げ〜物流加工基地を軸に販売動向に即応した省時間=省在庫コスト=省物流コスト=省ロスのサプライチェーンが形成される可能性は決して低くない。
 これって何だかラ・コルーニァの生産・物流ハブを軸としたインディテックス社の欧州内サプライチェーン(アジア生産のカジュアル単品を除く)に似てませんか?インディテックス社の肝は企画〜仕様開発〜染色・整理〜縫製準備(裁断と副資材手配)〜プレス仕上げ〜物流加工の本社集中とファスト化であり、素材の前倒し調達・保管と染色・整理工程の内製化がその前提となっている。素材の前倒し調達・保管による縫製のファスト化と補給の否定という点はメーカーズシャツ鎌倉にも通じる割り切りだ。
 80年代までの日本や今日まで続く韓国の『テキスタイル業界のファストな見込み生産・供給を前提とした消費地近接縫製工場によるアパレルのファスト供給』という理想的なサプライチェーンが再現される可能性を感じるが、縫製工場が自動化されてファストな装置産業になってもテキスタイル業界がリスクを負ったファストな見込み生産・供給体制に回帰しない限り、絵に描いた餅でしかない。今、戦略的に投資を集中すべきはファストなテキスタイル・コンバーターと染色・整理工場、プレス仕上げ工場だと思う。

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 2016/01/25 09:20  この記事のURL  /  コメント(0)

TOYOTOWNのヒ・ミ・ツ
 開発中の某郊外SCの商圏を検証しているとトヨタのCMに出て来る‘TOYOTOWN’にイメージが重なって来るが、CMの撮影地はあの『デスパレートな妻たち』の舞台となったウィステリア通りなのだとか。
 ウィステリア通りはユニバーサルスタジオ・ハリウッドの中にある丸ごとセットの町で、現代西海岸の住宅地と言うより50〜60年代サバービアエイジ東海岸の田園都市という、ちょっとタイムスリップした感じの町並みだ。『デスパレートな妻たち』は一見、平和そうな絵に描いたような郊外住宅地の中でミステリアスな出来事がエスカレートしていく怖いお話だったが、‘TOYOTOWN’のCMも『デスパレートな妻たち』と何処かで繋がるヒ・ミ・ツっぽさが通底している。登場するキャラクターの住む家を『デスパレートな妻たち』の登場人物とクロスさせているところを見ると、意図して連想させるよう仕組んでいるのかも。夫(堺雅人)や郵便配達(阿部寛)の謎めいた行動も『デスパレートな妻たち』に通ずるものがあるが、その原点は50年代のヒチコックや戦前のジェームズMケインのミステリーに遡る。
 それはともかく、絵に描いたような郊外住宅地を舞台に時代を象徴するドラマが進行すると言えば、田園都市線のたまプラーザあたりを舞台とした『金曜日の妻たちへ』(83年)が思い出される。不倫をテーマに‘金妻ブーム’を巻き起こしてトレンディドラマの先駆けとなった話題作だが、開発中の某郊外SCの街も80年代の田園都市線沿線を想起させる‘絵に描いたようなサバービア’だ。さて、「ハイブリッドの木」ならぬ「リニモ」が貫くこの街でどんなドラマが始まるのだろうか・・・・・


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 2016/01/22 09:12  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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