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オープン・プラットフォーム?
 先週はセブン&アイ・ホールディングスのクローズドなオムニチャネル戦略が却って足を引っ張っているのではないかと指摘したが、日曜の日経コラム「今を読み解く」では「21世紀型産業革命の行方」と題して、個別企業(あるいはグループ)内のサプライチェーン・マネジメントに留まっていた「IoT」がグローバルな産業構造再編に発展して行く「インダストリー4.0」の論展を取り上げていた。
 「インダストリー4.0」は東西冷戦終結から始まってインターネットが世界を覆って行く過程で必然の産業革命だったと思うが、その‘革命’に取り残されたのがローカルな系列的垂直統合に固執してグローバルな水平分業構築に出遅れコスト競争から脱落した我が国産業界だった。トヨタのJIT生産など80年代までにクローズドな系列内で確立されたサプライチェーン・マネジメント術が、90年代以降のグローバル水平分業化とオープン・スタンダード化に対応出来ず、‘失われた20年’を招いた事は残念と言うしか無い。
 我らアパレル・流通業も80年代までの半鎖国環境から90年代以降の規制緩和・市場開放のステップを経て、00年の二つの革命と08年の二つの衝撃、13年以降のインフレ転換とオムニチャネル化の嵐を体験したはずだが、未だ「インダストリー4.0」なオープン・プラットフォーム戦略を理解出来ない経営者が大半だ。IT技術に詳しくてもサプライチェーン・マネジメントに卓越していても、オープン・プラットフォーム戦略を‘体感’で解っていないとビジネスチャンスは開けない。
 難しい事ばかり言いやがってと思われるだろうから簡単に言い換えると、オープン・プラットフォーム戦略とは『プラットフォームを解放して皆でタダ乗りしてもらい、利用者の活動が自社の収益を押し上げるオープン戦略』であり、タダと言っても何処かで薄く課金する仕掛けがあったりするが、薄く広くなので誰も抵抗感がないまま湯水のように金が雪崩れ込んで来る。インターネット時代の‘ジョーシキ’と言っても良いぐらいなのだが、これが‘体感’で解らないトップが上に居ると会社の将来が閉ざされてしまう。『‘BtoB’や‘BtoC’を‘CtoC’で考える』SNS的感覚だと言えば解ってもらえるだろうか。
 若いベンチャー経営者の発言など『解っているな』と思う事も多いが、団塊世代から上になると頑にクローズドな発想ばかりが目に付く。『ものづくりでは負けない』的発想はその最たるもので、サプライチェーンの中に居場所が無ければ只の流通在庫になってしまう。‘クリエイション’とか‘発信’といった‘BtoC’な非対称感覚(BがCよりクリエイティブという錯覚)では‘CtoC’なオープン戦略は理解出来ないから、ファッション業界人には不得手な戦略感覚なのだろう。だから「インダストリー4.0」という21世紀の産業革命に独り取り残されつつあるのだ。
 今や必定となったオムニチャネル戦略にしても、百貨店や商業施設デベの多くはクローズドな化石感覚に留まったまま頑な態度を取り続けるばかりだが、これでは明治維新の武家のように‘革命的’に置いて行かれてしまう。オープン・プラットフォーム戦略は利便的には電車の相互乗り入れみたいなもので、近江商人流に言えば‘たらいの水’の商訓であり、何時の時代も‘三方良し’を建前でなく本音の戦略とする者が勝者となるようだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/17 10:01  この記事のURL  /  コメント(0)

イセタンサローネMEN’Sの印象
 12月12日の開店当日の朝、ご無理を言って「イセタンサローネMEN’S」を見せて頂いた。丸の内の新東京ビル「バーバリー」跡地にワンフロアほぼ300坪近いメンズ特化店を開業したもので、六本木の「イセタンサローネ」(レディス特化)とは店舗環境も品揃えも運営もまったく別物だ。
 お店に入ってすぐ感じるのが店舗環境と照明が六本木とはまったく異次元という事で、六本木の白を貴重としたモダンな環境とクールな照明(4000kイメージ)に対して、ホテルオークラ本館ロビーを思わせる障子グリッドのジャポネスク調環境とハロゲン色照明(3000kイメージ)の丸の内はクラシックで落ち着いた大人向けという印象だった。正直言えば、13年3月6日の伊勢丹本店婦人服リモデルのモダンだけれど装飾で誤摩化した店舗デザインは建築デザインの歴史的系譜上ではファドなトレンドに過ぎず賞味期限が短いという点であまり好感は持てなかったが、この辻村久信氏による丸の内の「イセタンサローネMEN’S」は賞味期限の長い良いデザインだと思う。内外のエグゼクティブの方々はオークラ本館ロビーを想起して好感を持ってくれるのではなかろうか。
 めずらしく誉めた後は何時もの通りお小言を幾つか。最大の懸念は売場の品揃えに対する限られたストック在庫で、店内奥二ヶ所と地下一カ所を合わせてストックスペースは売場の一割強ほどしかなく、意図して在庫を積んでいる靴を除けば300坪近い売場をフォロー出来るとは思えない。新宿本店のストックから朝夕二便ぐらいでピストン補給するのか、メーカーのDCから毎日補給させるか(肝心の土日には止まってしまうが)しないと欠品は避けられないと見たが、果たして伊勢丹さんはどんな物流体制を採っているのだろうか。
 860平米では品揃えは知れているから、新宿本店メンズ館のサテライト化してタブレット接客かフェイスタイム接客で品揃えを拡張し、顧客直送かご来店渡しする体制を採るのだろうと推察したのだが、見渡しても何処にもそんな仕掛けは無く、オムニチャネル対応は先送りされたようだ。売上課金型の商業施設でなく路面店的な運営が可能な物件なのに、ホントもったいない事だと思う。






◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/16 09:13  この記事のURL  /  コメント(0)

やっぱ怪しいブランドだった!
 数日前、‘LA発’と鳴り物入りで登場し一時は行列騒ぎとなったあの「Kitson」がアメリカ全土の17店舗とECサイトを閉鎖して全事業を終了すると報じられていた。
 「Kitson」は00年3月にビバリーヒルズで創業して09年には日本にも上陸。伊藤忠商事が契約元となって(株)ブランディングが(株)キットソンジャパンを設立し、新宿ルミネやラフォーレ原宿に出店して開店当初は行列騒ぎになったが、商品開発体制が貧弱で雑貨頼りに流れて短期で人気が冷却。既に都内には店舗が存在せず、アウトレットとECに残るのみのようだ。
 「Kitson」が華々しく登場した時、このギョーカイの歴史に詳しい方は「PERSON’S」に通じる‘怪しさ’を感じたに相違ない。ブランドのオリジンや開発体制が貧弱なまま、ライセンス商品を広げてプロモーションを仕掛け、煽りに煽る一方で一時的に供給を絞って行列させる‘商法’は玄人目には見え見えで、当時は『絶対に怪しい!』『二年も持つまい』と訝ったものだ。案の定、二年も待たず人気が離散して都落ちしていったが、怪しいのはLAの御本家も大差なかったようで、今回の事業終了となった。
 さて、この‘怪しい’ビジネスモデルは国内市場が閉鎖的で海外ブランドの価値を粉飾出来た前世紀の遺物だと思っていたが、性懲りも無く似たような仕掛けで商売を続けている方々もいらっしゃる。つい最近も‘イタリア発’という某ブランドを大々的に売り出しているが、既に多くのアイテムが国内企業にライセンスされており、ブランド人気の失速も時間の問題だと思われる。
 東西冷戦が終わって生産も流通もグローバル化して四半世紀が経ち、欧米有力ブランドの多くが直販戦略に転じて久しい一方、ライセンス供給を引き摺った著名NYブランドが次々に行き詰まるなど、ブランドビジネスのグローバルダイレクト化は決定的な流れとなったのに、未だ前世紀の怪しいビジネスモデルに固執するのは如何なものか。「Kitson」の結末を見るまでもなく、怪しい商売から一日も早く足を洗うべきだろう。

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 2015/12/15 09:07  この記事のURL  /  コメント(0)

来年は絶対、売れないよね!
 今朝、届いたWWDジャパンの最終ページ「+ファッションパトロール」の「2015年ファッション業界流行語&ヒット商品」に載っているルックを一瞥して、『これって何年前のルックなの?来年は絶対、売れないよね!』と一瞬にして痛感した。マーケットに氾濫すれば鮮度が消費されて古くさく見えてしまうという‘消費の論理’が明快に看て取れた面白い企画だった。
 来秋冬のアパレルのランウェイや展示会は年が明けてからになるが素材展の方は既に一巡しており、今シーズンで消費され切った素材、来シーズンも継続出来る素材、来シーズンの台頭が期待される素材、と既に線引きは明快に定まっている。そんな素材の消長とスタイリングやユーティリティの消長はピッタリとクロスしており、今年流行ったスタイリングやユーティリティで消えて行くもの、継続するものはほぼ解るし、新たに台頭するスタイリングやユーティリティも想像がつく。
 国内のブランド別販売動向やスタイリング変化、ストリートで台頭しているユーティリティに素材展の傾向を重ねれば、来シーズンのスタイリングやユーティリティは大方、見えて来る。当社の『16年秋冬MDディレクション』もそんな手順を経て既に構成が固まり、テーマ別に素材ボードを作製して年内に完成する。
 レディスでは60〜70年代ヴィンテージと80〜90年代ストリートが基調で、面はナチュラル〜ヴィンテージ、シルエットもゆるナチュラルなトラペーズが多く、‘ドメコン’などモードな面や構築的シルエットは急速に後退すると推察される。メンズでも70年代ヴィンテージと90年代ストリートが基調で、無国籍で暴力的なストリートレイヤードが台頭し、良い子なプレップや女々しいジェンダレスは後退する。面はナチュラル〜ヴィンテージ〜ダメージが主流だが、タフな機能素材を加工するサープラス感覚も注目される。
 来秋冬を一言で言うなら、『街は戦場や無法地帯になり、男達は逞しく悪っぽく、女は優しく柔らかくなる』としておこう。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/14 09:44  この記事のURL  /  コメント(1)

‘商事’は男性優位??
 昨日は早朝からのクライアント店頭VMD指導や先物企画指導を終えた後、じたばたと「ファッション販売」の原稿を仕上げ、三菱商事ファッションが9日〜10日と恵比寿の「EBiS303」で開催中の「16年秋冬アパレル総合展」に駆け込んだ。
 三菱商事ファッションのアパレル総合展は毎シーズン、必見の展示会だが、「アパレル総合展」とは銘打っても中身は「アパレル向け素材背景展」で、翌シーズンへ向けての主力素材がテーマ別・生産地別(イコール価格帯別)に紹介されるのが肝だ。これは行けそうという素材が、見た目は大差なくても(触れば差が解ります)上は20$超から下は4$そこそこまで何段階かで紹介されるから、あのブランドなら幾ら、このブランドなら幾らで出て来るか想像がつく。だから業界の玄人に必見の展示会なのです。
 そんな見応えのある展示会なのですが毎回、ひとつだけ残念に思う事があります。それは今時珍しい‘男性優位’なのです。
 企画のディレクションもソーシングもメンズ向けは突出して充実しているのですが、レディス向けは産地に依存する面も多く見劣りがします。案内や説明をして下さる方々も皆、男性で、‘女の子’は受付と後方で笑顔を振り撒くばかり。大手商社ってこんな風土なのでしょうが、女性の社会進出が急進する今日、時代錯誤は否めませんし、ファッションビジネスをリードする‘商事’のブランディングにもそぐわないと思いました。
 レディスの企画・ソーシングもメンズに並ぶよう力を入れて欲しいし、実力ウーマンさんたちも表に出して欲しいものです。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/11 09:41  この記事のURL  /  コメント(0)

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プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

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