| Main | 次へ
16年のキーワードは「復活」と「相互乗り入れ」
 15年のブログも今日でラストになるが、今年を総括するキーワードは「反転」に尽きると思う。
 ファッションの世界では「H&M」上陸以来の‘グローバル&モード’シフトがピークアウトして‘ローカル&ストリート’に回帰し始め、ジーニングや後加工、リメイクが復活し、‘グローバル&モード’が席巻した数年間に作られた真っ白いストアが浮いて見え出した。スタイリングも13年頃をピークとした上下ともスキニーなラインが14年の‘ドメコン’ブームで上下とも構築的なビッグラインに流れた後、15年は下膨れの‘ガウチョライン’が氾濫し、秋冬では緩い腰回りと上下窄まりの‘テディベアライン’へと移行し始めた。
 ビジネスの世界では13年の‘ショールーミング・パニック’から14年は積極的なO2Oに転じて15年は顧客と在庫の一元化を軸に‘オムニチャネル戦略’がキーワードとなったが、先行する企業では行き詰まった店舗事業の経営効率をEC事業の経費効率と在庫効率に近付ける‘経営のオムニチャネル化’へと動き出した事が注目される。
 加えて、インフレが調達コストのみならず不動産コストや労務コストに広がるに連れ、各社各グループの閉鎖的だった事業プラットフォームを相互乗り入れに切り替える動きも始まった。ITビジネスの世界ではとっくにジョーシキとなっていた「オープン・プラットフォーム戦略」がようやくリテイリングの世界にも波及し始めたが、セブン&アイHDは独占的オムニチャネル戦略に固執し、未だ商業施設デベや百貨店の多くがラッダイトなショールーミング恐怖症を脱せず、オープン・プラットフォームな「相互乗り入れ型オムニチャネル戦略」に目覚めないでいるのは異様な機会損失と言うしか無い。
 16年のキーワードはズバリ「復活」と「相互乗り入れ」だと思う。前者はファッションを軸とした消費のトレンドで、60’Sや80’Sに加えて「裏渋谷」や「裏原」のストリートスタイル、モードに追い払われたはずの様々なローカルスタイルが「復活」する。「○○リバイバルブーム」と言い換えてもよいだろう。
 後者は流通を軸としたビジネストレンドで、ポイントシステムやECメディアから受け取り拠点や物流インフラまで、オープン・プラットフォームな「相互乗り入れ」が加速度的に広がるだろう。独占的優位と錯覚していた自社プラットフォームが相互乗り入れに取り残された陸の孤島と化す暗転劇とならぬよう、オープンマインドな戦略視点が求められる。
 「相互乗り入れ」はまた、B2BやB2Cを消費者参加のC2C感覚で運営するオープン・プラットフォーム革命をも意味する。そこまで行くと「相互乗り入れ」と言うより「フリーライド」と言うべきかも知れない。顧客に参加してもらう事で事業運営経費のかなりの部分が「フリー」になり、C2Cパワーが「フリー」で営業を広げてくれる。今やSNS社会のジョーシキとなったビジネスモデルだが、感性の非対称性を売り物にして来たファッション業界や奴隷制資本主義の蟹工船体質を引き摺る流通業界には未だ理解が及ばないのかも知れない。
 マーケットにもビジネスにも置いて行かれないために、16年は「復活」と「相互乗り入れ」を肝に銘じて頭を切り替えたいものだ。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/28 09:54  この記事のURL  /  コメント(0)

パンツVS.スカート
 13年頃のスキニーパンツブームから14年AWにはスカートが多少、押し戻したものの、15年の春からはガウチョブームで再びパンツが拡大している、というのが近年のパンツVS.スカートの流れだが、家計支出調査では婦人ボトム中、パンツが74%と大勢を占める。スカート支出は90年のピークから12年には6分の一まで縮小した後、若干戻しているとは言え、現代女性の衣生活の中ではマイナーな存在となった感さえある。
 ブランド別のアイテム売上シェアを見るとスカート比率はOLとミッシーで高く、ヤングとミセスで低い。ボトム中のスカート比率はOLでほぼ53%、ミッシーでは62%を占めるのに対し、ヤングでは43%、ミセスでは42%と低いが、この関係は過去数年、あまり変っていない。それより注目すべきはスカート、パンツとも月度の売上シェアが年間ほとんど変らない事で、ワンピースも含めて季節波動も月度偏差も小さい年間商品化している。だから「ビー・スリー」のようなパンツのシングルライナーや「トッカ」のようなワンピース中心のブランドが成り立つ訳で、70年代の「LOVE」のようなスカート専門ブランドが出て来ても良いのではないか。
 こんなデータを毎年、子細に調べているのはギョーカイでも当社ぐらいだと思うが、翌年度の予算計画を立案する上で欠く事が出来ない。予算計画の立案には売上月指数と月度アイテム構成比がスタートラインとなるが、自社のデータしか知らない企業が大半で、それも結構、最近のマーケットからは乖離していたりする。好調ブランド/業態の月指数やアイテム構成を知らずして予算計画は立てようがない。
 売上が伸びているブランドの月指数には共通する傾向があり、その視点で見るとグローバルSPA中で最有望が「ZARA」、売上急落の兆候が高まっているのが「ユニクロ」という事になる。何が両者を分けていると思いますか?

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/24 09:22  この記事のURL  /  コメント(0)

2016年の光と空気
 7月に完成した16年春夏版に続いて16年秋冬版「MDディレクション」の作業がほぼ一巡したが、16年の光と空気はどんな感じになるのだろうか。光の色調と湿度感、素材の面感と肌感などから、15年よりナチュラルでヴィンテージ、ウォームでややドライな方向へシフトすると推察される。光色で言えば1000Kほど電球色寄りに動くから、13〜14年頃のクールなモード感で設計した内装が真っ白やコンクリート打ちっ放しの4000K感覚の店舗は商品とも時代の気分とも乖離してしまうのではないか。
 スタイリングはローカルなストリート色が強まり、ヴィンテージな空気感が覆うから、モードっぽい構築的なシルエットやクールな面感は浮いてしまい、ポリ混ぽいウェット感も嫌われるだろう。光は少しセピアに空気は爽やかに・・・・・・
 こんなのクリエイティブな方々には釈迦に説法でしたね。とりわけテキスタイル業界の方々は百も承知の‘既成事実’なんだと思います。でもリテイル関係はもちろんアパレル関係でも、これから考えるという方々も多いのではないでしょうか。デザインやディティール、柄などは今後のコレクションシーンなんかで多少は変わりますが、時代の光と空気、それを反映した素材感の基調は動かないと思います。
 食品にも洋服にも‘賞味期限’があるように、工業デザインや店舗デザインにも‘賞味期限’があります。ファッショントレンドはせいぜい2シーズン先まで読むのが限界ですが、店舗デザインの賞味期間は最低5年、百貨店など大型施設では10年持たないと困ります。目先のトレンドに流され‘賞味期限’が短い類似した店舗デザインが氾濫するギョーカイの現状は如何なものでしょうか。
 CFOやCCOが必要とされるように、CAO(チーフ・アーキテクチャ・オフィサー)が建築や内装のトレンドを社会文明や産業構造の歴史的文脈で読み、近視眼化しがちなファッショントレンドより賞味期限の長い視点で判断していくべきだと思います。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/22 09:23  この記事のURL  /  コメント(0)

「下町ロケット」の熱狂と現実
 昨夜の「下町ロケット」最終回は急展開して絵に描いたような正義の勝利に終わったが、人々の共感を盛り上げる池井戸潤作品の出来の良さはともかく、現実のビジネスではこんな展開はまず有り得ない。帝国重工の役員会の場面など、男達の権力闘争力学が異なる決着をもたらすのが現実の社会だ。正義や真理が通るなら戦争も倒産も不祥事も避けられるはずだが、現実の社会はそうではない。だからこそ「下町ロケット」は視聴者の熱い支持を得たのだろう。
 2013年の夏を熱狂させた「半沢直樹」(銀行員)の技術者版とも言うべき同じ池井戸潤作品だが、半沢直樹の『倍返しだ!』的決め台詞は何だったのだろう。強いて言うなら『100%を目指す技術者魂』あるいは『何時か達成する夢が在る』だったのだろうか。
 現実のビジネスでは夢や理想や技術を抱いていても組織力や資金力、そして政治力や地の利・時の利(早い話が‘運’)に結果は左右されてしまうし、ベストを尽くしたつもりでも何時の間にか「マーフィーの法則」に取り憑かれてしまう事も多い。「女神の後ろ髪」と「マーフィーの落とし穴」の狭間を上手く駆け抜けようとすれば、運頼みと危機管理の狭い選択枝に追い詰められるから、結局は想いのままに突撃して勝利か玉砕かの結末を求めてしまうのが日本的経営判断なのだろう。
 「下町ロケット」も玉砕ひいては倒産という結末も有り得ただろうが(その確率の方が遥かに高かったと思う)、信念のままに突撃した結果であれば男らしく果てればよいという「葉隠れ」的精神論が見え隠れする。‘最先端ものづくり技術’をテーマとしたドラマでありながら、視聴者を引きつけたのは「葉隠れ」的武士道かはたまた年末恒例の「忠臣蔵」的集団活劇だったのではないか。TVドラマとしては楽しめたけど、現実のビジネスで『ものづくり神話』だけで‘バンザイ’突撃するのはアナクロに過ぎると思う。

◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/21 09:08  この記事のURL  /  コメント(0)

クールジャパンはクールじゃない!
 前々から「クールジャパン」については国粋的な優越感が通底する非対称な主張がアジアの方々はもちろん他国の方々にも不快感を与えるのではないかと憂慮していたが、クールジャパン官民連携プラットフォーム設立総会でファッションジャーナリストのミーシャ・ジャネット氏が『自分でクールだと主張しても共感は得られない』主旨の発言をした事がネット上で話題を呼んでいる。
 元より‘クリエイション’‘ジャパンメイド’といった時代錯誤の80年代的な非対称優越感覚を主張する「クールジャパン」についてはSNS時代のグローバル・コミュニケーションとしては不適切で逆効果を招きかねないと憂慮していたが、わざわざ『クールジャパン官民連携プラットフォーム設立総会』のパネルに招いたSNS世代の米国人ファッションブロガーさんが『クールじゃないよ!』と苦言を呈するに至って、ようやく『やり方がおかしいのでは?』という議論に火がついたようだ。
 関係者の発言に石原莞爾に通ずる覇権主義的プロパガンダの匂いさえ感じる方々もいて、アジアの方々の受け止めようによっては予想外の反発を招くリスクさえ指摘されていたから、何らかの見直しは避けられそうもない。2020年の東京オリンピックも様々なケチがついているが、「クールジャパン」もその轍を踏まぬよう慎重な配慮が求められる。


◆小島健輔(KFM)のオフィシャルサイトをリニューアルしました
 2015/12/18 10:13  この記事のURL  /  コメント(0)

| Main | 次へ


ブログ内検索
Web 検索
プロフィール
小島健輔(こじまけんすけ)
小島ファッションマーケティング代表
感性に依存しがちなファッション業界にあって、客観的なデータに基づくマネジメントを提唱し、現場の技術革新を起点とした経営戦略を訴え続けてきたビジネス・エンジニアである。ファッションビジネス、流通業から外資SPAまで及ぶ多彩なコンサルティング、ブランド/小売業態から商業施設までのプロデュース活動の一方、経済紙誌、業界紙誌にも寄稿。
2016年 経済産業省アパレル・サプライチェーン研究会委員。

リンク集
更新順ブログ一覧
最新記事

http://apalog.com/kojima/index1_0.rdf
QRコード
アパレル業界の情報満載の「アパレル携帯版」
右のQRコードで読み取ってアクセスしてください。こちらからも自分の携帯URLを送れます。 QRコード
月別アーカイブ